マップ上にある資源を集めて加工し、それを元に様々な製品を製造して販売していく経営シミュレーションゲーム「Industry Giant II」。製造・販売だけでなく製品をトラックや鉄道、船や飛行機などを使って輸送するため、製造、輸送、そして販売をプレーヤーが一人ですべて行なわなくてはならない。各行程でのコストを考えながら街で自分の製品を売りさばいていくという実に硬派な内容だが、グラフィカルでわかりやすいメニュー系統と箱庭味満点のゲーム画面とで、遊びやすい経営シムである。 |
■ 資源から製品を作って売りさばく経営シミュレーション
「Industry Giant II」は、マップ上にある資源で様々な製品を製造し、それを点在する街まで運んで売りさばく経営シミュレーションである。プレーヤーは鉱山や農場などから資源を採取し、それを工場で材料に加工、さらに様々な生活用品にして街で販売する。そういった一連の加工・製造部分と、材料や製品を別の工場や街に運ぶ輸送部分、そして街での販売部分という3つのパートのバランスをとりながら、会社の規模を大きくして利益を上げていかねばならない。
資源を加工して製品を販売するというと、以前紹介した「Capitalism II」に大変よく似ているが、「Industry Giant II」では、プレーヤー自ら道路や線路を引き車両を用意することも多く、資源を何がしかの製品に加工する楽しさと、荷物を輸送してどしどし販売していく痛快さの両方が味わえる。
ゲーム内に登場する製品はバラエティに富んでいて、沼地でワニを養殖してワニ皮からハンドバックを作れるマップがあれば、様々な材料から電子レンジや洗濯機などの電化製品を作ってしまうマップもあり、そういった身近なアイテムがたくさん登場するのも楽しさのひとつだ。
ゲーム内には「会社の規模をいくらにしろ」などのクリア条件を達成すると、新たなマップが登場していくキャンペーンモードと、ずっと会社経営が続けられるエンドレスモードのふたつが用意されており、いずれも膨大な数のマップがあるので、かなり長い時間遊べるだろう。
農場で生産した卵やベーコン、ミルクは加工せずともすぐに販売できる | ズームイン画面。描きこまれたグラフィックが箱庭気分を盛り上げる | ワニの養殖場でワニ皮を得て工場で加工。材料や製品は一度倉庫を経由する |
■ 資源を加工して製品に
では、ゲームの大まかな流れを紹介していこう。プレーヤーは、まず資源マークの付いた土地に鉱山や石油所などの採取施設を建てたり、平原や森林に農場や伐採所を建てたりして資源を確保する。
このゲームで大事なのは倉庫の存在で、採取施設や工場はそれ単体では稼動せず、かならずそばに倉庫が必要だ。採取施設を稼動させると、近くにある倉庫に自動的に資源が蓄積され、その倉庫のそばにある工場で製品や材料に加工されて、それらがまた倉庫に収められる。そして、それらの製品は倉庫の影響範囲内にある小売店で販売することになる。
つまり、生産した資源や材料は必ず倉庫を経由してやりとりすることになっているのだ。鉱山→倉庫→工場と材料が移動して、工場→倉庫→小売店と製品が移動することになる。
資源が倉庫に貯まり始めたら、今度はそれを加工する。資源がある倉庫のそばに建てた工場で、いきなり製品にするか、もしくはそれらの材料となるような加工を施す。たとえば、石油はプラスチックにもなれば、そのまま洗剤として製品としても利用できる。
また、材木であれば、最初に丸太として採取して、それを材木工場で板やウッドチップにし、そこから家具やトイレットペーパーなどに加工することになる。工場で生産したものは近くにある倉庫に自動的に貯まり、今度はこれを街の販売店で売ることになるのだ。
地面にあるドラム缶のようなものが石油があるというマーク。ここで石油を採取し、化学工場を作ってプラスチックを生産する | プラスチックができたら、今度はそれをおもちゃに加工する。工場ひとつにつき1種類の製品しか製造できない |
■ 資源や材料、製品を大都市へ輸送する
できた製品を街まで輸送する。今回はトラックでの輸送。一番コストが低いが、あまり量は運べない |
倉庫の影響範囲内にある施設での物の行き来には何の輸送手段も必要なく、自動的に資源や製品が出し入れされるのだが、どこか遠い場所に物を運ぶにはトラックや鉄道などの輸送手段が必要になる。つまり、離れた場所にある倉庫同士だと、トラックや鉄道などで物をやりとりしなくてはならないのだ。
輸送するには、倉庫の影響範囲内にトラックターミナルや駅を作り、運び込む先の倉庫そばにも同じようにターミナルがあることが必要だ。物を運ぶ時は、トラックや貨車の積載量、輸送施設のランニングコスト、トラックや列車などひとつひとつにかかる費用を考えなくてはならず、考えなしに作りっぱなし運びっぱなしにしてはすぐに破産してしまう。
輸送手段にはトラック、鉄道、船、飛行機などがあり、大型の乗り物ほどコストはかさむ。また、ゲーム内の年代が進むにつれて新たな車両が登場するため、積載量が多くてスピードも速い新車両が登場するたびに、輸送効率の向上を夢見てワクワクする。ただし、輸送スピードが速ければ速いほどいいかというとそうでもなく、お金のロスをなくすよう、運ぶものに見合った量と時間を考えて輸送手段を選ぶ必要がある。
■ 資源や材料、製品を大都市へ輸送する
トラックで運んできたものを街で販売。黄色い建物が販売店の販売数を左右する住居だ |
棒グラフの緑の部分が街での需要、そして赤い部分が実際に販売した数 |
街に販売店を設置する場合は、店の影響範囲内にどれくらいの住居があるかで販売数が決定されるため、住居が密集している場所、かつ、倉庫にも近い場所を探して慎重に建設する必要がある。また、製品によっては季節で販売数が上下するものが多く、サンオイルなら夏場にどっと売れ、洗濯機なら一年を通じて平均的に売れるといったように差が大きい。あらかじめ手持ちの商品「どの時期にどれぐらいの売上が見込めるのか」を把握しておく必要があるわけだ。
つまり、このゲームでは、採取施設や工場などの稼動費用、倉庫間での輸送費用、小売店で毎月販売できる量などを考え、多すぎず少なすぎずの供給量を考えて、製品を製造、輸送し、売っていかなくてはならない。ちなみに、マップ内に点在する街は商品をコンスタントに色々運びこめば成長が見込め、また、お金をだして特別な建物を建てることで、規模拡大を促すことができる。街の住人が増えればそれだけ商品が売れるので、余ったお金を目当ての街につぎ込んでさらに売上アップを図れるようになっている。
またこれは「Capitalism II」にも言えた事だが、「Industry Giant II」も身近な実在の製品がゲームの題材になっているのが楽しい。おもちゃや生鮮食品、家具や電化製品などなど自分が普段の生活で使用している様々なものを社長気分で製造し、それを売ってお金にするというのが非常にプレイ意欲を刺激する。また、事業を拡大していく中で、お金がお金を生む喜びを感じられ、かなりプレイに熱中してしまった。
製造量を微調整しつつ、月にどれくらいの製品を製造・搬入するか考えるなど、きちんとした事業計画が求められるゲームだが、製造・輸送・販売の3つがぴたりと決まって利益を生み始めた時の喜びはとても強い。何かと何かを組み合わせて身近な製品を作る製造の楽しさ、そしてそれを輸送・販売してお金を儲ける楽しさの両方がつまった、非常に欲張りな経営シミュレーションである。
飛行機はスピードがあるのだがコストがすごいことに。量とスピードなら鉄道が一番かも? | 最初に輸送手段を確立した時は華々しくムービーが流れる。社長の気分を満喫 | 新しい車両が登場! どれくらいの積載量があるのかすぐにチェックしてしまう |
橋がかけられないような場所では、一度にたっぷり運べる船が非常に役に立つ | キャンペーンの難易度は3種類あるのだが、それぞれにマップがいくつも存在する | 小さなトラックが荷物を運んでいるのをアイコンで確認できる。箱庭風なのがいい |
(C) 2002 by JoWooD Productions Software AG.
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■ 今週の気になる直輸入ソフト
一年を通じて見て、夏場が一番新作が少ないような気がするのだが気のせいだろうか。先週に引き続き今週もやや新作タイトルは少なめ。ただ、経営シム好きには、「Capitalism」のEnlite Softwareが開発したホテル経営シミュレーション「Hotel Giant」が注目かもしれない。
JoWoodは日本支社がある数少ない海外メーカーのうちのひとつで、今年のE3の取材では、日本語版の発売にも力を入れるとのことだったで楽しみである。JoWoodのこれからの発売予定タイトルには、RPGの「GothicII」や中世ヨーロッパのギルドをシミュレートした「The Guild: Europa 1400」などがあるので、ぜひ注目していてもらいたい。
プレーヤー自らが内部の改装にまで腕をふるえるホテル経営シミュレーション。客が満足するようなホテルにするべく、デザインやマネージメント、ホスピタリティなどの様々な点で苦心していく。UK版のパッケージが秋葉原LaOXゲーム館とT-ZONE PC-DIY店に並んでいた。
(C) 2002 by JoWooD Productions Software AG.
隠し車両や隠しショートカットなどの定番要素も備えた、爆走トラック野郎といった感じのレーシングアクションゲーム。20種以上あるトラックはプレーヤー自らアップグレードすることができる。
(C) 2002 by JoWooD Productions Software AG.
(2002年7月31日)
[Reported by 西尾ゆき]
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