トレーディングカードゲームの一時代を築き、今なお熱心なファンを獲得し続けている「Magic: The Gathering」。これまでにも何回かPCゲーム化されているが、今回の「Magic Online」は一味違う。なんと、ネット対戦では現金購入したオンラインカードを使用するのだ。実際にお金を払ったカードでしか対戦できないため、自分の納得がいくデッキを作るには、やはりそれなりにお金をかける必要がある。将来的には紙のカードと等価交換を可能にする予定もあり、「Magic Online」はネットゲームの新たな地平を切り開きそうだ。 |
■ ネット対戦専用版「Magic: The Gathering」
世界9カ国語、60カ国以上で親しまれているトレーディングカードゲームの人気作「Magic: The Gatering」のネット対戦専用版「Magic Online」の正式サービスがスタートした。
「Magic: The Gathering」(以下MtG)」は、1対1の対戦を行なうカードゲームで、リソースとなる土地カードを使ってクリーチャーを召喚したり、各種の効果を持ったカードを使用して、対戦相手の生命ポイントを0にしたほうが勝ちというカードゲームだ。対戦時にどんなカードを準備するのか(デッキの準備)、そこからランダムに引いたカードが手札になった時、どういう戦略を取るのか。そういったことも含めつつ、相手の攻め具合や対戦状況などを見極め、臨機応変な戦い方をするのがとことん熱い、偉大なるカードゲームである。
「Magic Online」はMtGのネット対戦専用バージョンだ。単なるネット対戦クライアントかと思いきや、実にユニークなことに、対戦で使用するカードはプレーヤーが現金購入する仕組みになっている。クライアントソフトは無料ダウンロードなのだが(パッケージ版もある)、対戦に参加するためのアカウントと、ゲーム中に使用するカードはお金を出して買うという仕組みなのだ。
専用のネットショップで購入したオンラインカードだけが対戦で使用でき、そのため、自分が模索する強いカードの組み合わせを実現するには、現実世界同様のお金のかけ方が必要となる。
すでに、現実世界で有形の紙カードが存在するだけに、ネット上でのデータにお金を払うというのは、何とも落ち着かない気分になるかもしれない。だが、将来的にはオンラインカードは紙のカードと等価になる予定であり、オンラインカードではあっても現金で購入して集めたカードということで、対戦やデッキ作成では驚くほど真剣なプレイモチベーションを保てる。
「Magic Online」は、
・昼だろうが夜中だろうがいつでも気軽に対戦相手が見つかる
・リーグ戦やトーナメントも開かれている
・各種対戦にも対応
・デッキエディターでデッキ構築も手軽に思いのまま
・リアルタイムランキングもあり
といったオフラインでのプレイに勝るとも劣らない環境が揃っている。英語カードでのMtGに慣れている人ならば、非常に購入&プレイしがいのあるタイトルだ。
対戦画面。テーブル上にはミニカードが置かれ、カーソルを合わせると大きくて文字がはっきりしたカードが左上に表示される | ずらりと並んだ対戦テーブル。トレーニングルームならカードを購入しなくても事前に用意されたデッキでプレイできる | 購入したカードはコレクション画面で確認できる。オンラインカードか、トレードか、紙カードなのかなどが記録される |
■ ネット対戦用のオンラインカードをショップで現金購入
ネットショップの画面。既存のネット通販とほとんど変わらないが、カードはすべてオンライン専用 |
ゲーム本体のクライアントを無料ダウンロードでゲットしたら、まずはネット対戦に参加するためのアカウントを作ることになる。これは専用のネットショップで9.99ドルで購入するのだが、この時、個人情報なども併せて登録する。ただし、現時点では住所の国名選択に日本や韓国などが含まれていないため、「州:International、オーストラリアのTOKYO JAPAN」などというようなでっちあげ住所を書いて切り抜ける必要があった。
アカウント作成の時、もしパッケージ製品として売られているスターターキットを購入したのであれば、新規アカウント作成代9.99ドル分が含まれているので、CDケースにあるナンバーでアカウント代が免除になる。清算コーナーでクーポンナンバーとして登録すればOKだ。ちなみに、パッケージ版には、CD-ROMのほか、フルカラーのマニュアルとルールブックが同梱されている。
無事、ショップでゲームのアカウントが購入できたら、オンラインカードも同様に購入する。買い物の仕方は、ほしいものをほしいだけカートに足していく方式で、既存のネット通販とほぼ同様だ。カードの値段は現実での紙カードと全く同じで、テーマデッキ9.99ドル、ブースターパック3.29ドルとなっている。Seventh Editionのテーマデッキだけ7.99だ。
各種テーマデッキ…9.99
各種ブースターパック…3.29
Seventh Edition Theme Deck…7.99
専用のネットショップで販売されているのは第7版以降で、Seventh Edition、Invasion、Planeshift、Apocalypse、Odyssey、Tormentのテーマデッキとブースターパック(InvasionとOdysseyはトーナメントパックも)が購入できる。
今回、アカウント作成でショップを利用した際、メールでプロモーショナル・クーポン(販促おまけ券)が来た。正式サービスが開始されたての利用なので、このようなおまけがついたのだろうか。クーポンの価格は9.99ドル分だったので最初のテーマデッキを無料購入でき、ネットでしか通用しないオンラインカードを購入することへの抵抗感がぐっと薄らいだ。
ショップで購入したものはすぐにゲームに反映される。もちろん送料無料 | コレクション画面に購入したブースターパックが表示された | 買ったパックをひとつずつ開けていく。袋の中身がどばっと表示される |
■ ネット上だが対戦の真剣さは損なわれない
アカウントを作成したらいよいよゲームスタートだ。いきなり対戦することも可能だが、MtG初心者用にトレーニングルームが用意されており、ここで一通りの操作方法とプレイ方法、どういったゲーム進行なのかをわかりやすく知ることができる。全くMtGをプレイしたことがない人にも配慮された内容なので、これからMtGを始めたい人に嬉しいモードだ。
チュートリアルが終わったら、同じトレーニングルームにあるプラクティスゲーム部屋(練習部屋)で、カード購入前でも気軽に対戦練習できる。プラクティスゲームならば、7th Editionのテーマデッキで自由にプレイできるのだ(トレーニングルーム以外では無効)。カードを現金で買う前にじっくりとMtGの概要を学べるようになっている。
作成したアカウントでログインすると、各種のゲームモード別に分けられた部屋が表示される | 対戦相手を募集しているテーブルをクリックすると、プレーヤーのアバターが着席し、相手がゲームを始めてくれる | もちろん、自分でゲームを立てることもできる。対戦のスタイルや使用するデッキを決定して、対戦相手を待つ |
トレーディングルームでは活発にカードがやり取りされている。カード同士の交換や1ドルチケットを利用したものまで様々 |
デッキの構築もPC上で簡単にできる。カード名だけでも組めるし、カードの絵と効果を確認しながらも組める |
ランキングはすでに猛者たちで満杯。MtGオンライン版の世界ランキングに参加するのも一興 |
また、画面右下のプレーヤーリストを右クリックすると、1:1のプライベートチャットや試合の申し込み、無視指定などが行なえる。また、フレンドリスト機能(Buddies機能)もあって、自分のプロフィールを特定の友人にだけ公開することも可能だ。チャットはプレイベートチャット、グループチャット、クラン内チャットなどを行なえる。
自分でゲームを立ち上げる場合は、Standard、Invasion Block ConstructedやTorment Theme Decks、Openといったようにゲームで使用できるデッキタイプを指定できるし、対戦相手がそのような指定をしている場合は、対応するデッキでないと対戦はできない。また、カジュアルプレイルームの中でも、ルームによってはMultiplayer、Sealed、Draftといったように対戦内容が特定されている部屋があるので、希望者はそちらでプレイできる。
対戦相手を募集、または誰かのテーブルに参加したら、さっそくゲームスタートだ。進行は、オフラインでの対戦と全く同様で、タップなどのカード操作をワンクリックやクリック&ドラッグで処理してもらえるのは、PC版ならではの便利さがある。ゲーム中にはカードがアニメーションするといった余分な演出はなく、淡々とカードゲームが進められる。ただ、画面の見た目的には静かだが、どのカードがどのカードにエンチャントするかとか、カードの効果がどこに及ぶのかといったことは矢印などでリアルタイムに表示してくれて、非常にわかりやすかった。
ただし、テーブル上のカードは最大サイズにしてもやや文字が読みにくくく、マルチプレーヤーなどでのプレイでは、カードの文字はほとんど判読できない。カーソルを合わせると左上に大きいバージョンのカードが瞬時に表示されるので、あまり不便はないが、カードの絵面と効果をある程度覚えておくと、戦いはよりスムーズだろう。
対戦は、自分の戦いのみならず、よその対戦もロビーからテーブルのワンクリックで手軽に見学できる。また、PC版ならではなのが、対戦したゲームは、日付や対戦相手などの条件と供にすべて記録され、後でリプレイデータを自由に再生できるのだ。これで、自分の戦いを分析できるだろう。
「Magic Online」では、通常の対戦やリーグ戦のほか、トーナメントやチャンピオンシップなどのイベントも行なわれている。これらは、カジュアルプレイルームとは別のルームになっていて、希望者は任意のルームに行けば対戦できるのだが、月別のチャンピオンシップなど、ゲーム側が主催するプレミアイベントには、ショップで購入する1ドルチケット何枚かでの登録が必要になる。イベント参加代というわけだ。
もちろん、このゲームでは他のプレーヤーとのカードトレーディングが可能だ。トレードを始める前に、自分のカードの中でトレーディングに出してよいものを、コレクションアルバムでトレード可能という風に設定してしておく必要がある(全てのカードをトレーディングOKにすることもできる)。トレード可能なカードの指定を終えたら、トレーディングポストルームで「○○を交換に出します」などと叫ぶか、対戦相手などに直接トレードを申し込む。
相手の名前を右クリックすると出るメニューに“Trade”という項目があるので、これをクリックして申し込み、好きなカードや1ドルチケットなどを利用してカード交換するのだ。トレードの申し込みが受け入れられて交換が始まると、相手との1:1の交渉画面が開かれ、そこでお互いのコレクションアルバムを見ながら、交換するカードをすり合わせていくことになる。
「Magic Online」はゲームを始めるまでの登録攻勢にやや疲れれたが、一度プレイできるようになると、いつでも対戦相手がおり、トレードなども行なえる便利さは得がたいものがある。
不思議なもので、現金で購入したカードで構築したデッキには、たかがコンピュータゲームという感覚が全くなく、ネット上、PC上でプレイする場合の利便性はしっかり保ったまま、真剣な対戦を楽しむことができた。また、常にウィンドウモードで安定稼動するゲームなので、何か仕事をしていて、合間に立て上げていたクライアントでさっと対戦を開始できるのが、非常に心地よかった。
現在はまだ紙のカードとの互換性はないが、FAQでは、
Will card collation in booster packs be identical to the paper-based product? A: Collation will be as close as possible. The mathematical equations will be the same, but real life production errors will not be duplicated.
とあるので、オンラインカードと紙のカードとのボーダーが取り払われる日も近いだろう。
お金を払って購入したオンラインカードは、現実の紙カードに勝るとも劣らない重みがある。「Magic Online」でのネット対戦ならば、オフラインでの対戦同様の熱い戦いが経験できる。
対戦中の画面。一人でカード運びが確認できるソリティアモードもある |
(C) 2002 Wizards of the Coast, Inc., a division of Hasbro, Inc. All rights reserved.
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□関連記事
【1月17日】Wizards of The Coast、「Magic Online」の詳細を発表
オンラインで集めたカードを実際のカードに引き替え可能に
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020117/magic.htm
【11月06日】Wizards of The Coast、「Magic:The Gathering」のオンライン版「Magic Online」を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011106/magic.htm
■ 今週の気になる直輸入ソフト
今週はやや、新入荷ソフトが少なめ。だが、先日発売が開始された「Warcraft III」の海外版のコレクターズエディションパッケージが各店で12,000円前後で発売されていた。また、ゴブリン、アンデッド、人間、ナイトエルフの4種類がある「Warcraft III」海外版通常パッケージだが、どこの店でもナイトエルフのパッケージが品切れ気味。やはり、一番人気なのだろうか?
その他では、新作ではないが、LaOXゲーム館には、人気の経営シミュレーション「TROPICO」のデラックスパック「TROPICO MUCHO MUCHO Edition(4,380円)」が置かれていた。これは本体と拡張版がセットになったお買い得パックである。
F1ドライバーへの第一歩、カートレースを題材にしたレーシングゲームだ。駆け出しの頃のMichael Schumacherにならって、次々とレースに参戦していく。オンライントーナメントも開催されている。
(c) 2002 JoWooD Productions Software AG.
Xboxでも発売されていたバイクレーシングゲーム。バイクでのレースという点にゲームを絞った、アーケードスタイルのシンプルな内容となっている。様々なレース場をバイクで爽快に駆け抜けられる。
(c) 2002 Wizards of the Coast, Inc., a division of Hasbro, Inc. All rights reserved.
DreamCatcherが発売するアドベンチャーゲーム。ミヒャエル・エンデの「ネバーエンディングストーリー」にインスパイアされた内容とのこと。プレーヤーはアトレイユとなって、失われた“Auryn”を探して旅をする。
(c)2002 Dreamcatcher Interactive, Inc.
(2002年7月17日)
[Reported by 西尾ゆき]
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