「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ
ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第26幕】
イタヲタのレトロなゲームライフ~ジョン・カミナリのハプニング満載オタク人生~
僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝えるために漫画も使うことにした。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくぞ!
- 今回の時代設定:
- 1993年
- イベント:
- スーパーファミコン用の「がんばれゴエモン2」が日本で発売!
- ハプニング:
- クリスマス・イヴまでにローマのゲームショップに届くのだろうか?
1993年のクリスマス。大人になったばかりの僕の人生は(イタリアでは18歳で成年になる)、何も変わっていなかった。相変わらず、ゲーム友達とテレビの前で週末を過ごしていた。当時、僕も、エマちゃんも、そして、今回初めて登場するファビオさん、愛称でファビちゃんもスーパーファミコンの日本版を持っていた。
ファビちゃんのモットーはこうだった。「リセット&再開」。つまり、本当に面白いゲームはクリアしても、ゲーム機をリセットして、また最初から遊びたくなるものだ。ファビちゃんはKONAMIのゲームの大ファンだった。「グラデュウス」、「パロディウス」、「がんばれゴエモン」、「悪魔城ドラキュラ」などなど、KONAMIのゲームを全て持っていた。
もちろん、僕もエマちゃんもKONAMIのゲームを愛していた。というわけで、ゲーム雑誌に「スーパーファミコンでKONAMIの新作がいよいよ発売されるぞ」という情報を見つける度に、ローマのゲームショップに電話をかけていた。「いつ届くの?」と、みんなですごく楽しみにしていた。
1993年のクリスマスはずっと忘れられないクリスマスになった。なぜなら、12月22日に日本で「がんばれゴエモン2」が発売されたからだ。ローマには、僕たちが常連客だった、「レインボー」という日本のゲームの専門店があった。輸入品だったから、日本の価格よりも高かったが、僕たちはそれでもお金を惜しまずに日本の新作を買っていた。
「『がんばれゴエモン2』はいつ入荷するんですか?」
受話器の向こうの店長が、何かをチェックしているようだ。
「そうですね……多分、ちょうどクリスマス・イヴに届くと思いますよ」
「ほ、本当ですか? 確実ですよね?」
「約束はできませんが、可能性は十分あると思いますよ」
その瞬間、僕たちは祈り始めた。「神様、来年からもっと良い子になるから『がんばれゴエモン2』が届くようにして下さい」。今思えば、神様に失礼だろう。そんな身勝手な願いがあるだろうか。でも、僕たちにとってそれは、最高の喜びを意味していた。
クリスマスという幻想的な雰囲気の中、外で雪が降っていて、そして、温かい部屋で日本からのすごい新作で友達と遊ぶ。そのイメージが頭に思い浮かぶだけで、幸せを感じていた。「届くように!」、友達と一斉に魔法の言葉を繰り返した。
12月24日の朝。運命の日が来た。今日で、僕たちのクリスマスが決まる。ファビちゃんもエマちゃんも僕の家に来ている。早速、受話器を手に取る時が来た。唾を飲み込みながら、コール音を聞く。出た!
「もしもし」
「はい、レインボーでございます」
「あの……」
「早く言えよ」と、ファビちゃんは肘でつついてくる。
「あの……『がんばれゴエモン2』入荷しましたか?」
「『がんばれゴエモン2』ですか。少々お待ち下さい」
1、2、3、4、5……5秒が1日よりも長く感じた。そして、店長の声がまた聞こえてきた。
「残念ですが、間に合わないみたいです。入荷日は、おそらく冬休みの後、1月7日以降になります」
ノーーーーー! 世界の崩壊だ! 冬眠したい気分だった。僕の思い描いていた幸せいっぱいのクリスマスが、店長の事務的な声で一瞬にして台無しにされた。
「そうですか……」
電話を切られた後も、僕達はしばらく呆然と虚空を眺めた。ファビちゃんもエマちゃんも断腸の思いのようだった。
18時。エマちゃん達と家の近くを散歩している。これから、みんな自宅に戻り、家族と一緒にクリスマスを祝うのだ。
クリスマスツリーのプレゼントはきっとゲームとは無縁のセーター、ズボン、帽子だろう……毎年そうだった。今年もそうだろう。だからこそ、自分でゲームを買おうと思っていた。クリスマスプレゼントの予想話をしていたら、ファビちゃんの足が、ある店の前に止まった。見たことのない店だった。
「どうしたの、ファビちゃん?」
僕もエマちゃんもファビちゃんの目線をたどっていく。ショーウインドーの商品に向かっているようだ。僕たちも見ると、そこにスーパーファミコン用の日本版ゲームが並んでいたのではないか!KONAMIのゲームも展示されていた。
「もしかすると……」
そう言いながら、ファビちゃんは咄嗟に店内へと入った。その店はゲーム、おもちゃ、音楽CDなど様々な品物を扱っていた。何でも屋さんなのか。まさか、家の近くにも日本のゲームを扱う店が存在していたとは、夢にも思わなかった。
「あの、日本のゲームを探しているのですが……」
店内はとても乱雑だった。どこにでも箱があり、そこから商品が溢れ出すほどぎっしり詰まっていた。一体ここは、どういう店なのだろう……。そう思っていると、カウンターの奥から、暗い感じの痩せた男性が現われる。痩けった顔がネズミのようにも見える。
「どんなゲームをお探しですか?」
「日本で発売されたばかりの、スーパーファミコン用の『がんばれゴエモン2』を探しています」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
そうすると、男性はカウンターの奥の棚から箱を取り出した。
「今朝、日本から届いた箱ですが、確か……」
「確か?」
「そのようなゲームが……」
「そのようなゲームが?」
手品師が帽子から兎を取り出すかのような感じで、謎の店員はカラフルなゲーム箱を取り出した。
「あった!」
やっぱり、サンタクロースは存在していた。なぜ、今まで疑ったのだろう。この人とは初対面だが、僕たちにとって、ある意味神様だった。
「どうしますか、お客様、購入しますか?」
「も、も、もちろんです」
驚嘆のあまり、一斉にどもる。しかし、お金は家にある。店が閉まる前にすぐ取りに行かないと!
「3本下さい。今から家にお金を取りに行ってきます!」
その時、タイムを計っていれば、多分僕たちは100メートル走の世界記録を更新したと思う。閉店まであと10分。急がないと!果たして、待ちに待った最高のクリスマスが実現するのだろうか?
25日の1時。家族とのクリスマス・イヴが終了した。お決まりのセーターを沢山もらった。しかし、今、最高のプレゼントが、僕の部屋で待っている。それは、もちろんスーパーファミコン用の「がんばれゴエモン2」だ!
3人揃って、家の近くに発見した謎の「何でも屋さん」で購入できた。しかも、予想外のリーズナブルな価格だった。KONAMIの新作のおかげで、ファビちゃんもエマちゃんも僕も、ずっと忘れられない最高のクリスマスを過ごしたのだった。
がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス
- プラットフォーム:
- スーパーファミコン
- 発売元:
- KONAMI
- 発売時期:
- 1993年
- ジャンル:
- アクション
「がんばれゴエモン」シリーズの、スーパーファミコン用の2作目が、多くの新要素を持っていた。第一に、ワールドマップが初登場し、各ステージでは、ファイナルボスに至るまでのルートが複数存在していたので、バラエティも増していた。2人プレイも健在。2人目のプレーヤーをおんぶしたまま、敵を倒しながらステージの中を歩き回るという場面はユニークだった。ときどき、処理落ちがあったが、グラフィックスがすごかったので、それほど気になるものではなかった。
そして、本作の見所は、「ゴエモン・インパクト」だった。本作では初めて、ゴエモンが巨大なからくりロボット、「ゴエモン・インパクト」に搭乗して、主観視点でボスと戦うステージが追加された。それを初めて見たとき、あまりのすごさで自分の目を疑った。スーパーファミコンの得意な分野だった縮小・拡大・回転エフェクトがふんだんに使われていたのだ。ロボットアニメを彷彿とさせるコミカルなイントロも必見。ゲーム性とは関係ないが、ゴエモンが搭乗したシーンで「ゴエモン・インパクト」の頭を十字キーで回転できるという演出が印象的だった。
「がんばれゴエモン2」の町ステージに隠されたミニゲームやサプライズも大きな付加価値だった。特に印象に残ったのは、ステージ2で特別なルートで辿り着ける遊園地ステージ、「からくり わーるど」だった。ここでは、ネーミング通り、多くのアトラクションやミニゲームが存在し、バラエティ豊かなコンテンツがプレーヤーを楽しませていた。KONAMIの有名なゲームシリーズ、「悪魔城ドラキュラ」のパロディーだったアトラクションも用意されていた。ステージ3に進む前に、ここで最高に楽しい2時間を過ごしたことをまだ鮮明に覚えている。
残念ながら、大好きだった「がんばれゴエモン」シリーズは、2005年のDS用の作品以来、沈黙を続けている。KONAMIにここでお願いしたい。このシリーズを続けて下さい。スーパーファミコン作品のエッセンスを守るドットグラフィックスの続編を低価格のダウンロードソフトとして作って下さい。必ず、そのようなゲームで遊びたいゲーマーが多くいるはずだ。現実からかけ離れたコミカルな世界の中で、最高のクリスマスをもう1度過ごせたらと願っている。
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