佐藤カフジのVR GAMING TODAY!

「東京ゲームショウ2015」で見えてきた国産VRコンテンツの力と課題

普及はAAAスタジオが本気で作ったコンテンツがカギに?

【著者:佐藤カフジ】

 VR関連コンテンツが主役のひとつとなったTGS 2015。PlayStation VRやOculus RiftといったVRデバイスが、かつてない高い関心を持って迎えられた。予想通りというかなんというか、開場直後から試遊希望者が殺到する様子はまるで地獄の釜が開いたかのうような光景だった。体験出来た人は本当にがんばったか、本当に運がよかったかのどちらかだ。皆様本当にお疲れ様です。

 「サマーレッスン」や「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project VR Tech DEMO」で、キャラの魅力と実在感に言葉を失なうほどの衝撃を受けた人。人類初の“VR e-Sports”を掲げる「RIGS」の迫力と面白さに大興奮した人。Oculus Rift(Crescent Bayプロトタイプだったけども)の映像美にハインドVRの未来を見た人。TwitterなどのSNSを追うと、「VRヤバい!スゴい!」と驚きの声を上げる人たちが本当に多かった。苦労して体験機会を得た方々には、その感動をどんどん拡散していっていただきたい!

なお、小島秀夫氏もPSVR、Oculusの双方を堪能した模様。KOJIMAワールドがVRに現れる日も……?

 さて、Oculus Riftは来年の第1四半期、PSVRは2016年の上半期のリリースを予定しており、各VRプラットフォーマーがこぞって大規模出展を行なう機会は、このTGS 2015がほぼ最後だ。そういった時期であるだけに、それぞれのVRコンテンツが製品に近い体験を与えてくれるものと期待していた人も多かったに違いない。

 そういった視点で振り返ると、国産VRコンテンツが目指すべき方向性がハッキリ見えた点はよかったが、この時点であるべき完成度という点で、ガッカリする部分もあった。今回はTGS 2015を振り返り、そこで見えてきたVRゲーミング界隈の現状・将来と課題について考えてみよう。

VRはすごく楽しい。コンテンツが楽しければ!

大手デベロッパーの参入がグッドニュースとなったPSVR

 SCEがPS4用に開発するVRシステムについては、「PlayStation VR」という正式名称が発表されたことが注目されがちだが、筆者が重視したいのは、ここにきて国内大手デベロッパーからの参入が続々と明らかになったことだ。

大勢の来場者でごった返したPlayStation VRコーナー

 PlayStation VR試遊コーナーで「ファイナルファンタジーXIV: VRタイタン討伐戦」を披露したスクウェア・エニックスに、「サイバーダンガンロンパVR 学級裁判」を披露したスパイク・チュンソフト、「真・三國無双7 VR Demo」を披露したコーエーテクモゲームスは、「デッド オア アライブ エクストリーム 3」のPSVR対応も明言。

 これに加えて以前から参入が明らかになっているバンダイナムコエンターテイメント(『サマーレッスン』)や、カプコン(『KITCHEN』)、セガゲームス(『SEGA feat. HATSUNE MIKU Project VR Tech DEMO』)あたりを加えると、国内大手の大半がPSVR参入を果たしたことが確認できたといえる。

 それぞれのデモを体験して強く再確認したのは、既製コンテンツのVR展開の強さ、特にキャラクター資産の強さだ(関連記事)。

 「真・三國無双7 VR DEMO」で武術をレクチャーしてくれるイケメン趙雲(あるいは巨乳で話題を集めていた王元姫)の存在感は、ファンなら卒倒してもおかしくない破壊力。「ファイナルファンタジーXIV: VRタイタン討伐戦」も、いつもはフラットスクリーンで見ているキャラクターをVRの実在感で見られるのはファンにとって衝撃の大きい体験だ。「サイバーダンガンロンパVR 学級裁判」でお馴染みのキャラクターたちに囲まれて法廷論争に参加する感覚も実に印象的。ミクファンなら「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project VR Tech DEMO」オンステージ体験に大興奮するのも無理からぬことだ。

 PSVRのローンチ後、このように既存コンテンツを活用したアトラクション的なVRコンテンツは、純粋にVR向けに設計されたゲームよりも人気を博すかもしれない。ファンにとっては体験としてわかりやすいし、魅力的だし、メーカーにとっても新規ゲームを作るよりずっとリスクが少なく、非VRゲームのPRにも使えるなど、投資を正当化しやすくもあるからだ。

 特にキャラの魅力そのものが製品の魅力に直結している「デッド オア アライブ エクストリーム 3」のPSVR版などは、これまで同シリーズ作品をフラットスクリーンで嗜んできた紳士淑女にとって破壊的な威力を持つはずだ。VR向けにきちんと調整されれば、それこそ「サマーレッスン」よりもキラーになりうる。

「知ってるキャラをVRで!」というアピールには計り知れない魅力がある

しかし実験レベルなコンテンツも多く、及び腰な雰囲気が漂う

VR酔いを忌避しての縛られっぷりに「う〜ん面白いか?これ」と固まってしまうの図

 というわけで国内デベロッパーの強みである既存IPとキャラクター資産の活用という面で明るい展望が確認できたPSVR界隈。しかし残念なのは、SCEファーストタイトル等の一部を除いて、まだまだ製品レベルのVR体験が提供できているとはいえず、実験レベルに留まっているように見えたことだ。

 例えば「ファイナルファンタジーXIV: VRタイタン討伐戦」はVR酔いを防ぐためであろうが、右スティックによる回転操作がオミットされていて、敵を素早く正面に捉えることすら困難という縛りぶりに加え、UIもVR向けに調整されておらず見難く、ポジショナルトラッキングに対応していないため没入感もいまいちという即席作りだったし、「真・三國無双7 VR DEMO」は、趙雲(もしくは王元姫)レッスンの部分はよくできていたものの、肝心の戦シーンは、これまたVR酔いを避けるためだろうが、移動速度が極度に遅くされ、回転操作はオミットされ、敵は棒立ちであり、各攻撃アクションもレスポンスが悪いなどなどから、オリジナルのウリであるアクションの爽快感が完全に殺されていた。

 VR酔いを避けるためいろいろと縛りを入れるのも、やりすぎるとゲームとしての面白さを削いでしまう。もちろん、ある程度の配慮は必要だが、今回は明らかにやりすぎなケースが目立った。そこに、“とりあえず実験版で様子を見て、評判がよさそうなら注力しよう”といった、メーカーの及び腰な姿勢が透けて見えてしまい、残念なのである。

 それに引き換えSCEファーストタイトルのひとつである「RIGS」を見て欲しい。立体的なリングを駆け巡り、スピーディに飛び、跳ね、動きまわる敵に狙いを定めて射撃。VR酔いを避けるという面では相性最悪となるスポーツ系FPSの骨格を持つ作品だが、多少の酔いもなんのその、ゲームとしての面白さ、VRならではの迫力、いずれも随一だ。確かに酔うけど、操作が上達すれば緩和されていくし、VRゲームとして抜群に面白いので、もっとやりたい!と思わせる力がそこにある(関連記事)。

【RIGS - E3 2015 | PS4】
VR酔い上等(もちろん軽減するためのノウハウはつめ込まれているが)で面白さを追求する「RIGS」。ゲーマーにVRヘッドセットを被らせるだけの強い説得力がある

 大手デベロッパーによるAAAクラスのVRゲームに、ユーザーが期待するのはそういうことではないだろうか。アトラクション系コンテンツならゲームとしての洗練は必要なく、快適であればなんとでもなる。だが、ゲームならばまず面白くなければやる意味が無い。一定の快適さは必要だが、ゲームとしての面白さを犠牲にしてまで高めるべきかどうかは怪しいところだ。ゲームはまず面白くなければならない。

 VRシステム普及の障害となるVR酔いを忌避するあまり「具合が悪くなるほど面白くない!(血涙)」となってしまっては、それもまた普及の障害となる。一部コンテンツがそこにハマっているのは、まだまだ実験レベルであるということだ。だから、今回TGS 2015で苦労して各種VRデモを試した結果“そんな凄くないな……”と思ってしまった人も安心してほしい。製品ではちゃんと調整され、快適さと面白さが両立するコンテンツになっていくはずだ。

 後発の各メーカーには、実験の段階を早く終え、自社IPの魅力を最大限に引き出すVRコンテンツ、VRゲームを実現していくことを期待したい。

Oculus陣営への参入を進めるモバイルゲーム系大手の存在感

PC陣営のVRシステム筆頭、Oculusブース
自社ブースでOculus Rift向けVRデモを展示したグリー
サラとケマル、二人三脚で古代遺跡を探検していくVR体験

 PCベースで展開するOculus陣営については、コロプラ、グリーといった国内大手のモバイルゲーム/ソーシャルゲームメーカーによる積極姿勢が明らかになったことが、TGS 2015における大きな収穫となった(関連記事)。

 特に、自社ブースに専用の試遊スペースを作ってまでVRコンテンツを披露していたグリーの力の入れ具合は印象的だ。今回グリーが出展したVRデモ「サラと毒蛇の王冠」は、複数人でひとつの体験を共有する“ソーシャルVR”を掲げており、まだ巷では珍しいマルチプレイVRコンテンツとして、かなり手堅い作りとなっていたのだ(関連記事)。

 体験のボリュームとしては5分少々と小粒だが、短い中にも古代遺跡への探検、目まぐるしく変わる風景、各種のパズル、2人共同での謎解き、といったたくさんの要素がつめ込まれ、極めて密度の高いVR体験となっていた。

 特に面白いのは、プレーヤー2人の冒険者「サラ」と「ケマル」の姿を、客観視点でカットシーン的に見せるパートと、一人称視点で成り代わるパートとを行き来することで、世界への没入と、キャラクターへの感情移入、そしてVRならではの主観的体験というものを1つのコンテンツの中で成立させていたことだ。

 客観視点と主観視点の行き来にの間は、まぶたをつむるような映像演出(これを仮に“ブリンク”と呼ぼう)が挟まれ、それによってユーザー視点の混乱を抑制している。短時間にコンテンツを詰め込み過ぎなのか、ブリンクの回数・頻度が高すぎてやや興をそぐ部分もあったが、方向性としては非常に手堅い。あとは、これを順次調整・拡張していくだけでで、商品レベルのVRコンテンツが完成できそうだ。

【Social Virtual Reality 謎解き脱出ゲーム「サラと毒蛇の王冠」 協力型VR編【GREE】】
ソーシャルVRというコンセプトを打ち出した、グリーらしいVRデモ

 惜しむらくは、3Dグラフィックスとしての品質が充分でなかったことだ。全体的な質感はスマートフォンでも描画できるレベル(PS2以上PS3未満くらい)だし、サラの長い髪や衣服は物理シミュレーションされておらずカッチカチ。キャラクターはユーザーのヘッドトラッキングに合わせて多少動作するものの、動きが固く地蔵っぽく、人と一緒にプレイしているという実感も薄かった。こういった点、PSVR向けにAAAスタジオが作ったコンテンツとは真逆の部分に課題があるように見られた。

 たしかに、グリーのようにモバイル端末を主戦場としてやってきたメーカーは、AAAクラスのグラフィックス製作についての実績がなく、スキルセットも整っていないという現状があると思う。だが、VR時代に比較対象となるのは国内外のAAAゲームデベロッパーたちや、ハイエンドCGの膨大なノウハウを持つ映像系企業たちだ。PC向けに展開するならばなおさらである。VRコンテンツ設計の筋の良さや、ソーシャルゲームで培ってきた各種ノウハウをさらに輝かせるためにも、そういった弱点を克服していく必要はあるだろう。なにしろ早期にVRにお金を使うようなアーリーアダプターなユーザーたちはやたらと目が肥えているのだ……。

 というわけでいろいろな好材料と課題が見えてきたTGS 2015のVR界隈。来年春〜夏にかけての各製品版ローンチに向けて、各社各様の取り組みがまだまだ続いていく。その競争が激しければ激しいほど、我々ゲームファンにとっては理想的だ。大いに期待しよう。