【連載第23回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


HD時代のゲームプレイ動画のつくり方
キャプチャーからエンコードまで。高画質なゲームプレイ動画を作って楽しもう


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプ トに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、 様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



 ■ もはやPCゲーマーの常識? ゲームプレイ動画のつくり方

 最近、各種動画サービスでゲームプレイ動画が人気のコンテンツになっている。筆者の聞くところによれば、動画投稿サイト「ニコニコ動画」のコンテンツのうち、実に7〜8割までがゲーム関連の動画なのだそうだ。これはもちろんPCゲームだけでなくコンシューマーゲームタイトルも含む数字なのだが、それにしても凄い割合である。

 筆者自身、動画サイトのヘビーユーザーなので、よくゲームのプレイ動画を見る機会がある。国内最大手の「ニコニコ動画」では、ゲームのプレイ模様を素直に紹介する実況プレイ動画を無数に見つけることができるし、YouTubeなど海外系の動画サイトでは、攻略法を説明するウォークスルー動画や、スーパープレイを収めたデモプレイ動画を多く見ることができる。

 中でも自分の好きなゲームのプレイ動画は気になるものだ。腕前に関係なく楽しそうにプレイしている映像は見ていて和めるものだし、プレイスタイルや攻略法といった面で新たな発見があれば、また自分でそのゲームをプレイしたくなってしまう。面白そうな動画をたどっていたら、未プレイの秀逸なゲームを見つけることができて、体験が広がっていくというのもいい。ゲーム動画は、ゲーム産業にとって素晴らしいマーケティングツールになっていると言ってもいいだろう。

 その中でもPCゲームは、ベースがPCなのでその気になれば自分でも簡単に動画を作れる。コンシューマーゲーム機では動画取り込みの際にキャプチャーボードなど追加のハードウェアが必要になってしまうが、PCならプレイ中のマシン上で直接動画を取り込んでしまうことができる。しかも、最近の高性能なPCではHD解像度の高画質動画も手軽に作ることができるのだ。思い立ったらすぐやれるというわけである。

 というわけで今回は、自慢のプレイシーンを動画で残すためのノウハウをまとめてみたい。今回は全てWindows 7対応の方法をとり、さらに最近注目のGPUエンコードなども試してみた。すでにゲームプレイ動画を作ったことのある方にも有用な情報がお届けできれば幸いだ。

本稿で動画キャプチャー、エンコードに用いたPC環境
CPU Intel Core2Duo E8500 @ 3.8GHz (FSB 1600MHz)
GPU NVIDIA GeForce GTX 285 シングル
メモリー DDR 1066 4GB (1GB×4)
HDD Serial ATA 7200RPM 500GB (書き込み速度66MB/秒)



■ まずはプレイ画面をキャプチャー。空きディスク容量を大量に用意して!

取り込みのサンプルとしてコードマスターズの「DiRT 2」を使用。筆者のゲームマシンでHDキャプチャを行なうにはギリギリの重さだった

 まずは動画のキャプチャー方法から話を進めていこう。ゲーム画面を動画に落とす際、PCでは1台のPCでゲームのプレイと取り込みを同時に行なうスタイルが最も簡単で、コストも低く抑えることができる。

 動画キャプチャーの基本的なアルゴリズムは、プレイ中のゲームグラフィックスが描画されているフレームバッファ(そのほとんどはDirect 3Dのオンスクリーンサーフェイス)を一定のフレームレートでメインメモリ上に転送し、ハードディスクに書き出すというものだ。

 3Dグラフィックスを描画することに比べればにずっと単純で、軽量な作業だ。とはいっても、ゲームそのものがPCのマシンパワーを食いつくしてしまっていると、動画の取り込みのための十分な処理時間が与えられないことに繋がるため、ゲームを動かした上である程度PCの処理能力に余裕が必要でもある。

 今回、筆者が動画作成のサンプルとして使用したCodemastersの「Colin McRae: DiRT 2」は、その点ではギリギリの選択だった。HD解像度の1,280×720ドット、描画品質をすべて最高にした状態で、筆者のPCでのフレームレートは40〜60fps程度である。この解像度をそのまま動画に取り込む場合、フレームレートがさらに下がって最低が30fpsほどとなる。これにより、以下の2種類のキャプチャーツールの使い勝手を比較することができた。

 以下、取り込んだ動画のプレビューをご覧いただこう(元動画は非圧縮で520MBもあるため、数秒間を切り抜いたプレビュー用のファイルリンクを掲載する)。レースのリプレイ画面を記録したもので、シーンごとに動きの差が激しい動画となっている。画面内の情報量が非常に多く、後に紹介するエンコードテストでも違いがわかりやすい素材だ。

【「DiRT 2」キャプチャーツール比較用のシーン(プレビュー用圧縮データ)】
非圧縮のサンプルはこちら(video1_preview_dl.avi 2秒 40MB)
※再生にはFRAPSコーデックが必要



・軽くて使いやすいキャプチャツール「FRAPS」

「FRAPS」

 まず最初に紹介したいソフト「FRAPS」は、ゲーム画面のスクリーンショット撮影と動画キャプチャーのために作られたアプリケーションだ。入手先はこちら。シェアウェアとなっており、正式版を利用するための登録料金は37ドル。とはいえ、無料版でもほとんどの機能を使うことができるので、とりあえず気軽に試してみてほしい。

 「FRAPS」を常駐させた状態でDirectXもしくはOpenGLで画面を描画するゲームを起動すると、ゲーム画面の端にフレームレートの数字が表示されるようになる。あとは対応するホットキーを押せば、スクリーンショットの撮影、動画のキャプチャーを行なうことができる。Windows 7環境であれば、動画撮影の際にマルチチャンネルオーディオを記録することも可能だ。

 このソフトの特徴は、とにかく動作が軽いことである。スクリーンショットをBMP形式で撮影するくらいなら、ゲームの実行パフォーマンスにほとんど影響を与えない。動画キャプチャーに際しても、今回「DiRT 2」で行なったテストで明確なフレームドロップを生ずることなく、ほぼ安定して30fpsの動画を取り込むことができた。

 キャプチャした動画は独自コーデックのAVIファイルに格納され、生データで取り込んだと仮定した場合に比べ、およそ半分〜1/4程度のファイルサイズとなる。今回使用するサンプル動画の元データはFRAPSで取り込んだものだが、1,280×720ドットの30fps、30秒で520MBというのは、かなり優秀なのではないだろうか。


「FRAPS」には動画キャプチャーのほか、スクリーンショット撮影、簡易ベンチマークといった機能がある。Windows 7にも対応しており、OpenGL、DirectX を利用するほぼ全てのゲームで問題なく利用できる

・ストリーミングや動画の分散書き込みも可能! 高性能国産ツール「DxTory」

「DxTory」

 もうひとつのオススメキャプチャーツールが「DxTory」だ。入手先はこちら

 国内のデベロッパーが開発したこのツールは、スクリーンショットの撮影と動画のキャプチャーに特化した機能を備えており、機能の幅広さという点で前述の「FRAPS」を超えるソフトウェアだ。また、公式フォーラムで日本語でのサポートも得られるのが良い点だ。価格3,600円のシェアウェアとなっているが、無料でも一通りの機能を利用することができる。

 特に動画のキャプチャー周りは多機能だ。ピクセルフォーマットとして非圧縮32bit、RGB24、YUVなどを指定できるほか、CPUパワーの余裕に応じて圧縮のありなしを指定することもできる。さらには複数のハードディスクへの分散書き込み機能も備えており、高解像度ビデオを取り込む際のボトルネックを最小限に抑えることが可能だ。

 特に筆者が気に入っているのは、動画キャプチャーの出力先としてDirectShowを指定でき、そのままリアルタイムのストリーミング配信に用いることができる点だ。そのほかにも、ゲーム側のフレームレートを一定に制限してくれる機能、動画キャプチャーにゲームのフレームレートを同期させる機能など、細かな調整項目が豊富なので使い出がある。

「DxTory」のメイン機能は動画キャプチャーとスクリーンショット撮影。特に動画キャプチャー周りには沢山の設定項目があり、ユーザーのPC環境や画質の要求に応じて柔軟に動作をカスタマイズすることができる

・キャプチャー時のパフォーマンスは?

こんなシーンは特に動作が重く、GPUもCPUもフル回転。キャプチャーツールには非常に限られた処理時間しか与えられない
今回キャプチャーに使用したHDDの速度は、「DxTory」のベンチマーク機能によれば66MB/sほど。非圧縮RGBのHDキャプチャには帯域が少々足りない

 動画を取り込むマシンパワーの余裕がギリギリあるかないかという「DiRT 2」でのテスト。次に設定を変えることでキャプチャーデータにどのような変化が生まれるのか検証してみた。

 まず「FRAPS」ではおおむね良好に1,280×720ドット×30fpsの動画をキャプチャーすることができた。ただし、ゲーム自体が重くなるシーンで若干のフレームレート低下があり、その際の最小fpsは24fpsほど。ディスクに記録された動画のビットレートは18MB/秒ほどで、書き込み速度には余裕があったため、CPUの能力限界が出たというところだろう。

 「DxTory」ではキャプチャー設定を色々変えてみることができるので、まず最高品質の設定から、30fpsのキャプチャーを安定して実現できるところまで設定を下げつつパフォーマンスを確かめてみた。

 まずはRGB24非圧縮設定。この場合1秒間に記録されるファイルサイズは以下のような計算になる。まず画素数が1,280×720ドット=921,600、1ピクセルあたり24bit=3バイトなので1フレームあたりのバイト数は2,764,800になる。これが1秒間に30フレームで秒間およそ82MBの書き込みが発生する。これは筆者のゲームPCでキャプチャー用に割り当てているHDDの秒間書き込み速度(約66MB/秒)を少し超えた数字になっているため、30fpsの動画を取り込むことは不可能だ。

 案の定、RGB24非圧縮設定では、30fpsを達成したのは最初の数秒のみだった。メモリキャッシュへの書き込みだと思われる。その後は平均22fpsほどのキャプチャーが続く。最終的なファイルサイズから秒あたりのビットレートを計算すると、63.4MB/秒ほどになった。完全にハードディスクがボトルネックになった格好だ。これは別途分散書き込みのオプションを使うことで回避できる。

 次にRGB24圧縮設定でテスト。非圧縮時に比べてキャプチャー時の平均フレームレートはかなり向上し、シーンによっては30fpsで記録されるタイミングもあった。しかしフレームドロップが起こるシーンも多く、特にゲームシーンが重いところでは24fps程度のキャプチャーとなることもあった。最終的にできたファイルから実効ビットレートを計算すると、50.6MB/秒ほどなので、ハードディスクの帯域はギリギリまで使いきった上で、シーンによってはCPU能力の限界に達したと見られる。

 「ピクセルフォーマットYUV420、非圧縮設定」を選択することで、ようやく常時30fpsの完璧なキャプチャーが行なえた。YUV420では1ピクセル当たり12ビットなので、RGB24に比べて半分の帯域で記録できるというメリットがそのまま出た形だ。また、YUV420で圧縮をかけた場合、ゲームが重くなるシーンで24fps程度までキャプチャー速度が下がることがあった。これはCPU速度の限界にヒットしたものだろう。なお「ピクセルフォーマットYUV420、圧縮設定」では、CPU負荷が高まって逆にフレームレートが低下する現象が発生した。

 というわけで筆者の環境では、完璧に30fpsの動画を記録できたのは「DxTory」でのYUV420非圧縮設定のみ。実用圏内と考えられるのは、YUV24の圧縮設定と、「FRAPS」によるキャプチャーという感じだ。

 参考のため、今回のケースでほぼ30fpsキャプチャを達成した各設定における、ファイルサイズとデータレートを以下にまとめておこう。ファイルサイズが最も小さくなったのは「FRAPS」で、18MB/秒ほどのレート。これは「DxTory」でピクセルフォーマットYUV410に圧縮をつけた場合に匹敵する。ただ、YUV的な「赤色の低解像感」は最小限に抑えられているので、符号化に独自の工夫が凝らされているのだろう。

1280×720ドット×30fps×30秒キャプチャー
ファイルサイズと使用HDD帯域
使用アプリ 設定 ファイルサイズ 秒あたりのサイズ
FRAPS 標準 514MB 18MB/s
DxTory YUV420 1192MB 39.7MB/s
DxTory YUV420+圧 754MB 25.2MB/s

 総合的に評価してみると、キャプチャツールのオススメは「DxTory」。機能的には「FRAPS」の上位互換という感じで幅広い設定があり、分散書き込み機能を用いることでより高解像度・高fpsのキャプチャリングが可能というのがさらにおいしい。一方の「FRAPS」は、最小限のHDD使用量でそれなりの画質を達成できるため、長時間の録画を考える人にオススメしておきたい。また、「FRAPS」はマルチチャンネルオーディオの録音に対応しているので、サウンドにこだわる方はその点も考慮しておこう。

 本章の最後に、以下にRGB24、YUV420、FRAPSコーデックのそれぞれにおける拡大画像を掲載しておこう。画質の差がわかるだろうか?


RGB24。最高品質 YUV420。赤色の解像感が若干失われている FRAPS。解像感は保っているが、細部が少しボヤケる



■ キャプチャーした動画をエンコードする

短時間のキャプチャーでも簡単に数GBもの容量を食う。モリモリ動画をキャプチャーしているとあっという間にHDDが満タンなので、順次エンコードして小さくしよう

 さて、キャプチャーした動画は、1分間で1GB以上にもなる巨大なものになっている。このままでは長期保存もままならないので、手ごろなコーデックで手ごろなサイズにしてやろう。

 無数にある動画コーデックのうち、HD品質の動画圧縮のスタンダードとなっているのがH.264(MPEG4-AVC)だ。数え切れないほどの対応エンコードアプリケーションが存在しており、最近ではGPUを使って超高速にエンコードできるソリューションも登場中だ。また、YouTubeやニコニコ動画では、MP4コンテナ(.mp4)に格納されたH.264動画をそのままアップロードして公開できるので、オンライン配布用にもちょうど良い。

 では、どのようなソフトを使えば綺麗なH.264動画が作れるのだろうか? フリーソフトと有料ソフト、ざっと調べただけで両手に余るほどのエンコーダーが存在するのでそのすべてを紹介することは難しいが、H.264の出力が可能なアプリケーションに共通することとして以下の2点を挙げることができるだろう。

 1点目はフリーソフトと有料ソフトの違い。まず、フリー系のエンコードソフトは、UIがコマンドラインだったり、構成的に他のツールと組み合わせて使うことを前提にしていたりと、とにかく使い始めるまでの準備が大変だ。これに対して有料のソフトは、ソフト単体で簡単にエンコードまでこぎつけることができる。

 2点目はCPUエンコーダーとGPUエンコーダーの違い。各ソフトのCPUエンコーダーは、オリジナルのx264エンコーダーと同等の画質でエンコードすることが可能なようだが、GPUエンコーダーの場合、同等のビットレートで若干、画質が落ちるという状況がみられる。これは、符号化のアルゴリズムがCPU実装とGPU実装で少々異なるということなのだろう。

【すぐに使えるエンコードツールの例】
TMPGEnc 4.0 XPress
エンコード品質が非常に高い有料ツール。対応フォーマットも充実しており、これ1本買っておけばエンコードで困ることはない。CUDA対応で一部処理がGPU化されている
AVS Video Converter
海外製の有料エンコードツール。対応フォーマットが豊富で操作も簡単にまとめられている。ただし、H.264がAVIコンテナ用になっているなど、微妙に使いにくい点も
H.264 Encoder
フリーウェアのソフトウェアエンコーダー。簡単に使えるものの、解像度や画質などの設定項目がなく、柔軟な使い方はできない。



・爆速!! GPUエンコーダーの実力

badaboom。ワンボタンでGPUエンコードができるが、細かな調整項目はあまり用意されていない
AviUtil+libx264環境。フリーソフトのみで構成したソフトウェアエンコード環境だ。知識があればあらゆる調整が可能

 では、近年注目を集めているGPUエンコーダーの実力を確かめてみよう。今回使用したのは「badaboom」というソフト。これはNVIDIAのCUDAエンコードに対応することがウリの商用アプリケーションで、簡単な操作で各種デバイスや動画サイト向けのH.264動画を出力することができる。有料ソフトではあるが、30回までのエンコードであれば無料で利用できる。

 比較対象としたのはフリーウェアによるソリューション。有名ツールのAviUtilに、オープンソースのソフトウェアH.264エンコーダー(libx264)を組み合わせたものだ。無料である代わりに使える状態まで持っていくのために少々ややこしいセットアップが必要。詳細は割愛するが、きちんと設定できれば標準的な実装のH.264エンコーダーを使って非常にビットレート効率のよい高画質動画を出力することができる。

 エンコード比較のための素材としたのは、先ほどと同じく「DiRT 2」。高速車両のリプレイシーンをキャプチャーして作った1分ジャストの動画を使って、エンコード速度と画質を比較しよう。ソース動画の解像度は1,280×720ドット、フレームレートは30fpsだ。キャプチャーしたAVIファイルをそのまま入力データとして、それぞれのアプリケーションで1,000〜8,000kbpsでエンコードした。ちなみにDxToryでキャプチャーした動画はそのまま「badaboom」で読み込むことができなかったので、使用したのはFRAPSでキャプチャーしたものである。

 設定については、プロファイル「メイン」で、Cabacはオン。libx264のほうは動き予測や量子化の方法を細かく設定できるのだが、badaboomではそのあたりの調整が不可能であるため、とりあえず上記の設定以外はデフォルトとしてある。また、badaboomは1パスエンコードしかできないので、libx264側も1パスでのみテストした。そうして速度を比較したのが下の表だ。

エンコード速度比較
ビットレート libx264 badaboom 速度差
8,000kbps 8.77fps 45.2fps 5.15倍
4,000kbps 10.46fps 48.8fps 4.67倍
2,000kbps 13.05fps 53.1fps 4.49倍
1,000kbps 16.02fps 54.7fps 3.41倍

 ソフトウェアエンコードの待ち時間に慣れてしまっていると、GPUエンコードの爆発的速度にたまげるばかりだ。しかも、badaboomではエンコード中にCPUがほとんど使われないため、他の作業を平行して行なうこともできる。長編動画をエンコードする際になんとも手放せないものになりそうだ。

【「DiRT 2」キャプチャーツール比較用のシーン】
こちらが今回のエンコード比較のために使用した素材。非常に高速に映像が流れていくシーンが多いので、ビットレートと画質の関係を把握しやすい




・ビットレートVS画質VSエンコード速度

 では、画質はどうだろうか。上記の各設定でエンコードした実際の動画を下に掲載するので、実際にその違いを見て欲しい。ソフトウェアエンコードとGPUエンコードの間で、決定的な差があることがわかるだろう。


libx264 badaboom
8000kbps
動画DL 59,730 KB 58,631 KB
4000kbps
動画DL 29,792 KB 30,032 KB
2000kbps
動画DL 15,122 KB 15,615 KB
1000kbps
動画DL 7,964 KB 8,715 KB

 ソフトウェア、GPUとも8,000kbpsでは両者とも満足いく画質だが、4,000kbps以下になるとbadaboom側でかなりブロックノイズが目立ち始める。libx264でエンコードしたものは、2,000kbpsでもかなり綺麗だ。そして1,000kbpsの動画にいたっては、badaboomでエンコードしたものは見るに耐えない。動画サイトへの投稿をためらうレベルだ。

 それでは実際に動画サイトにHD画質のゲームプレイ動画を公開しようというときに、どれくらいのビットレートが必要になるだろうか? 今回のケースでは、badaboomの場合は4,000kbpsは確保しておかないと、ブロックノイズが目立って高画質とは言えなくなりそうだ。一方で、ソフトウェアエンコードでは2,000kbpsで必要十分、設定を詰めれば1,500kbpsくらいでも十分綺麗な動画を見せることができそうだ。

 GPUエンコードは非常に高速なかわりに、すくなくとも現時点の実装では、画質面でソフトウェアエンコードに及ばないということがわかった。ネット上で公開するために動画を作るのであれば、現時点でのベストチョイスはソフトウェアエンコーダーということになるだろう。ただ、多少サイズが大きくなっても手軽に保存できることを優先するようなシチュエーションでは、GPUエンコードのほうがフィットする。つまりは動画の使用目的に応じてエンコード方法を変えるというのが1番賢い選択になるだろう。




■ 編集ツールにもGPU時代が到来。ゲーム感覚で動画編集ができる「Super LoiloScope」


AviUtil+libx264環境。フリーソフトのみで構成したソフトウェアエンコード環境だ。知識があればあらゆる調整が可能

 ここまでキャプチャーからエンコードまで最新事情をご紹介してきたが、人に楽しんでもらうための動画なら、ただ単に撮ったままを垂れ流すのではなく、気の利いた編集をかけておきたいというのが人情というもの。複数の動画を組み合わせて1本の動画を作るというのは従来から本当に大変な作業なのだが、最近また劇的に使いやすいツールが登場しているのでご紹介しよう。

 それがこの「Super LoiloScope」だ。第一線の元ゲーム開発者達が立ち上げた株式会社LoiLoによる、オールインワンの動画オーサリングツールだ。有料のソフトウェアであり、価格はオンライン販売で8,800円。30日間の無料体験版が公開されており、その機能の全てをすぐに確かめることができる。

 最大の特徴は、従来のWindowsアプリケーションの枠を大きくはみ出したかのようなユーザーインターフェイス。拡大縮小が自由自在のバーチャルデスクトップを飛び回り、素材の整理・収集からタイムライン編集、エフェクト追加、エンコードまで、非常にゲームっぽい感触でいじくることができるのだ。派生バージョンの「LoiLo Touch」ではWindows Touchにも対応していて、タッチパネルで動画を切ったり張ったり、ほとんど遊び感覚で動画編集を楽しめる。

 開発元の技術者がもともとゲーム開発に携わっていたこともあり、動作の軽快さについても最善のソリューションが組み込まれている。まず、編集ソースとなる動画を高速にデコードするため、NVIDIA、AMDのGPUによるH.264再生支援機能を搭載。2月4日にリリースされた最新版ではモバイル向けIntel Core i5/Core i3のGPU機能にも対応し、ミドルクラスのPCで快適なHD動画編集を行なうことができる。

 また「Super LoiLoScope」では様々な形式で動画を出力することができるが、H.264形式ではGPUによる高速エンコードも利用できる。現時点ではNVIDIA CUDAにのみ対応で、前述の「badaboom」に匹敵する速度でHD動画を出力可能だ。

素材フォルダーから動画クリップや画像などの素材をデスクトップに置いていき、タイムラインウィンドウにドロップして切り貼り作業。ひととおりの編集が終わったらCUDAエンコーダーで出力。それなりの動画を、最小限の時間で製作できる


・操作を覚え、コメント入りのダイジェスト動画を作成するまでわずか1時間

タイムラインにテキストを追加。タイムライン上で「上のほう」に配置されているものが前面に表示される仕様なので、動画クリップは下のほうにずらしてある
ニコニコ動画用の出力にも対応。プレミアム会員向け、一般会員向けのサイズ・ビットレートがあらかじめ設定してある

 それでは実際に「Super LoiLoScope」を使って動画を作ってみた。前述の「DiRT 2」より、3分強のリプレイシーンをキャプチャーし、タイムライン編集で1分ジャストにまとめた上、テキストコメントを追加したものだ。

 「Super LoiLoScope」のユーザーインターフェイスは、自由に素材を配置できるデスクトップ、素材を一覧できるフォルダーウィンドウ、動画を編集するためのタイムラインウィンドウなどから構成されている。ホイールでズームイン、ズームアウトしながら画面をスクロールし、自由自在に作業位置を変えることができるという柔軟なユーザーインターフェイスが楽しい。

 肝心のタイムライン編集のほうは、「Adobe Premiere」などの動画編集ソフトを使ったことのある人であれば、2〜3分でほぼ使い方がわかるようになっている。独特の操作感に慣れるのに少々時間はかかるが、動画のクリップを切り貼り、長さを調整したり、トランシジョンを適用したりといった操作が極めて直感的にまとめられているので、サクサクと動画を編集することが可能だ。

 また、様々なエフェクトを適用することもできる。今回はゲームのダイジェスト動画なので、派手なエフェクトは不要だろうと思い使っていないが、テキストボックスを追加する機能だけは非常に重宝した。テキストのサイズ、表示時間、フェードイン・アウトの調整がわずか数クリックで行なえるので、本当に大事な内容の部分に気力を集中できるというわけだ。

 そういった感想を抱きつつ、今回のサンプル動画はおよそ1時間ほどで全ての編集が完了した。このうち数十分はトライアンドエラーで操作方法を確認するために消費したため、次回以降同じような動画を作る際は、10〜20分で完了しそうな手ごたえだ。以下に作成した動画を掲載するので、参考にしていただきたい。

【「Super LoiLoScope」で初作成】
おおむねゲーム関連のユーザー製作動画は、キャプチャーされたシーンと、テキストコメントで構成される(時には実況音声も)。その点において、「Super LoiLoScope」のインターフェイスと編集機能は最適な構成だ。
高画質版のダウンロードはこちら:video3_preview_dl.mp4 15,394 KB




■ マシンパワーに余力があればストリーミング配信も試してみよう

Windows Media Playerで閲覧できるよう、ストリーミング配信をするには?
「Microsoft Expression Encoder 3」

 動画ファイルを作ってそれをみんなで共有して楽しむのもいいが、リアルタイムに配信しながらプレイぶりを見てもらうという楽しみ方も良いものだ。マシンパワーに十分な余力があれば、プレイ中のシーンをそのままストリーミング配信することで、より楽しさが広がるのだ。

 Windows環境でストリーミング配信を行なうには、DirectShowのストリーミング形式でプッシュし、Windows Media Player形式のマルチメディアプレーヤーを通して視聴者に接続してもらう方法が一般的だ。P2Pストリーミングのソリューションである「PeerCast」を使って、より多くの人々に見てもらうこともできる。

 ところが、筆者が個人的にやってみようと思ったところ、Windows XP時代に配信ツールとして愛用してきた「Windows Media Encoder 9」は、Windows 7で動作しないという悲しい事実にぶちあたった(マイクロソフトマルチメディアサポートチームのブログ)。既にゲームマシンをWindows 7に移行して数カ月経っており、いまさらWindows XPに戻してやりなおすというのは辛すぎる。どうしたものかと頭をかかえつつ情報を集めたところ、Windows 7で使える配信ツールとして「Microsoft Expression Encoder 3」の名前が浮上してきた。

 このツールは、マイクロソフトが有償で販売しているエンコードツールで、主にMicrosoft Silverlight用の動画を出力するためにデザインされたツールだ。とはいえ、「Windows Media Encoder」とほぼ同等のDirect Showストリーミング出力機能もあり、今回の目的に沿った使い方も可能だ。評価版のダウンロードはこちら(http://www.microsoft.com/japan/products/expression/products/encoder_overview.aspx)。

 有償ツールではあるものの、30日間の評価期間内では全ての機能を無償で利用できるほか、無償期間が経過した後は「Express版」として、一部機能を継続利用できる。どうやらDirect Showストリーミング機能はExpress版の無償利用機能に含まれているようで、ほっと胸をなでおろした次第だ。




・DirectShow形式で入力、エンコード、配信! そのおおまかな手順

DxToryでDirectShow形式の出力を指定する
それをExpression Encoder側の動画ソースとして指定。エンコード設定はマシンパワーと相談して!

 Windows 7環境に移行したことによる副作用がもうひとつある。国内のフリーソフト製作者が配布しているDirect Show Filter形式対応のキャプチャーツール「SCFH」だ。動作が軽く、スケーリング処理も柔軟で、Windows XP時代は大いに活用したものなのだが、Windows 7ではフレームバッファの扱いが変化したせいか、フルスクリーンのゲーム画面キャプチャができなくなってしまった。ウィンドウモードならいけるものの、ゲームの種類によっては辛い。

 そこで、おそらく現時点で唯一でベストのソリューションとなるのが、前述の「DxTory」によるDirect Show出力だ。筆者の環境では、最新のバージョン1.0.85でExpression Encoderが落ちるという問題があり、安定版の1.0.81ではキャプチャーが途中で勝手に止まるという問題が出ていて完璧ではないが、少し前のバージョン1.0.84あたりではそれなりに安定して使えていた。これらの問題が今後バグフィックスされることを期待する。

 さて、実際の設定方法について簡単に解説しよう。まず、DxToryを起動して、キャプチャー設定の画面で出力形式に「DirectShow」を指定する。次に、DirectShowの設定画面を開いて、リアルタイム配信に耐えられる出力解像度を指定する。筆者の場合は16:9で出力したいので、640×360ドットで配信することが多い。1,280×720ドットのちょうど半分の解像度なので、スケーリングが最も綺麗に仕上がるからだ。

 次にExpression Endoderを起動。デフォルトではオフライン動画作成モードなので、まずメニューバーから「ライブモード」に切り替える。するとDirectShow Filter形式のソースデバイスを選択できるので、「DxTory Video Source」を選択。サウンドソースには「再整理ダイレクト」を指定すると確実だ。次いで、エンコード設定として、配信解像度とビットレート、フレームレートなどを指定。ここはマシンパワーと相談して、ゲームに必要なパワーを食い尽くさない程度にしておこう。次に、出力設定のペインを開いて、ストリーミング、ブロードキャストを選択。そして「開始」ボタンを押して配信を開始しよう。

 ここまでできたら、ようやくゲームを起動する番だ。ゲームが起動して、DxToryのフレームレートオーバーレイ表示が出たのを確認したら、キャプチャー開始のショートカットキーを押して、キャプチャリングを開始。これで、ゲームの様子が配信されるようになるはずだ。確認のため、LAN内に別のPCがあれば、Windows Media Player互換のプレーヤーを起動し、192.168.x.x:8080といったローカルIPアドレスで直接接続して、再生が正しく行なわれるか見てみよう。

 正しく再生することができたら、DxToryとExpression Encoderそれぞれの設定を保存しておき、あとで簡単に使えるようにしておくといい。あとは、ゲームの重さと相談しつつ、配信時のフレームレートやビットレート、エンコードの複雑さなど微調整して、プレイ可能な範囲で最高の画質を得られるようにしたい。ちなみに、今回試した「DiRT 2」は、ゲームが重すぎて、両者の設定をかなり下げないとプレイ可能なフレームレートが得られなかった。はやいところ、CPUを大幅に強化したい……。




■ 「作る楽しみ」もPCゲームならではのこと。いろいろ試してみよう

 以上、PCゲーム動画まわりのあれこれを駆け足でご紹介してきた。筆者はこのジャンルの専門家ではないので、ここでお伝えした方法が現時点におけるベスト・オブ・ザ・ベストだとは言い切れないが、すくなくともWindows 7環境での「ゲーム映像の配信」ということに関しては必要十分な結果を得られるとは思う。

 各種ハードウェアの準備、ソフトウェアのセットアップ等、動画の作成や配信は必ずしも敷居の低いものではないが、それでも近年様々なツールが豊富に出てきていることで、素人でもある程度簡単に取り組むことが可能になっている。敢えて筆者の希望を言うならば、LoiLoの開発者にがんばってもらって、「Super LoiLoScope」がリアルタイム配信にも対応してくれれば、さらに敷居が下がって完璧なソリューションとなりそうだ。

 PCゲーマーの皆さんには、プレイ動画を作って配信するという形で、広くその楽しみを共有するというおもしろさを体験していただきたいと思う。なにしろ、PCは消費するだけでなくモノを作るための装置でもあり、それこそがコンシューマーゲーム機とPCを決定的に異質なものにしている一要素だからだ。筆者もPCゲーマーとしての楽しみ方を存分に発揮して、充実したゲーミングライフを過ごしていきたい。




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(2010年 2月 18日)

[Reported by 佐藤カフジ ]