【連載第90回】韓国最新オンラインゲームレポート

【特別企画】韓国オンラインゲーム RMT最新事情
“BOTは止められない”。元業者が語るRMTビジネスの実態






 MMORPGで仲間たちと冒険を楽しんでいる一方で、1人あるいは複数人で黙々と同じ動作を繰り返している人がいる。話し掛けても返事はない。ただ、狩りを続けるだけ。プログラムされたソフトウェアで自動的にキャラクターを行動させ、細かい操作を入れなくても狩りができる。BOTと呼ばれるモノだ。

 BOTは、ゲームを自動的にプレイできるというだけで、別にそれ自体は規約違反行為であったりしても犯罪行為ではない。特にアジアのオンラインゲームはオフィシャルでBOTを搭載しているゲームはいくらでもあり、ありふれた存在だ。「どう遊ぶかはユーザーの自由」というのがアジアでの基本的なスタンスになりつつある。

 BOTが問題なのは、それを悪用する人間がいることだ。1人のプレーヤーが多くのアカウントを持って複数のBOTを操り、ゲーム内の狩り場を独り占めする。ゲームの中はBOTだらけで、普通に1キャラクターで冒険を楽しもうとするプレーヤーたちは被害を受けるわけだ。こうした悪行を事業として行ない、その活動によって利益を得ている集団がRMT(リアルマネートレード)業者である。彼らにとってBOTはビジネス上なくてはならない存在であり、RMT業者≒BOT使用者というのが、韓国オンラインゲーム界での認識である。

 その行為と影響は、知れば知るほど悪質で甚大であり、ゲームメーカーや様々な団体はそれを阻止しようと日夜活動を続けている。現在韓国では、悪用しうるBOTプログラムを制作、配布した人は違法行為で処罰となるほどだが、BOTは依然として無くなる気配はなく、その被害は今も尚、続いているのが現実である。

 どうしてこういう状況が続いているのか? なぜ決定的な手を打てないのか? それは、BOTやRMTに関してこれまでゲームメーカーやゲーム関係機関、警察などからの情報ばかりで、RMT業者が実際にどういう人間で、どういうロジックで活動しているかがわからなかったこともその一因に挙げられるだろう。

 そうした中、韓国のゲームメディアであるinvenでは、RMT業者としてBOTを運営して今は辞めている元社長とのインタビューに成功し、 全文掲載に踏み切った。その内容は、RMT業者ならではの答えが多く、まさに韓国オンラインゲームの闇を赤裸々に報告する衝撃的なものだった。

 GAME Watchでは、invenの厚意を得てこのインタビュー全文を日本語で紹介したい。BOT問題は韓国独自の問題ではなく、日本にも大いに関係がある要素だからだ。このインタビューを通じて、日本でもRMTやBOT問題を考えるきっかけになってくれれば幸いである。




■ まずはRMTの道具「BOTプログラム」の知られざる機能と入手法について

インタビューはA氏が住んでいるという仁川市内のとあるカフェで行なわれた。個人名を明かさないことを条件に行なわれたため、A氏という匿名で紹介する。
韓国で販売されていたUSB用のBOTデバイス。今年の7月6日のゲーム産業振興に関する法律の改定により、BOT関連プログラムやデバイスの制作、販売が禁止された。今は通常のルートで手に入れることは不可能になっている

――A氏はRMT業者はどのぐらいやってたのか。

A氏:4年ぐらい運営した。

――どういう経緯で始めるようになったのか。

A氏:オンラインゲームは「九龍争覇」からプレイした。当時はゲームしか知らなかったが、弟が「R2」というゲームが出たから一緒にプレイしようと言ったので「R2」を始めるようになった。最初は普通にプレイしたが、なかなか良かった。1日2〜3万ウォンは稼げた。2カ月プレイしたあたりから弟がRMT業者をやろうと提案してきた。最初の資本金は俺が全部出して始めるようになった。

――4年で辞めた理由は?

A氏:子供ができたからだ。この生活が苦しいのは生活パターンが逆になってしまうこと。どうしても夜ゲームをプレイするようになる。だから、夜起きて朝帰宅する生活が続いた。家にも数日に1回ぐらいしか帰れなかった。嫁が普通の生活をしようと声を掛けてくれた。

――今は何をやっているのか?

A氏:今は普通の会社に入社して仕事している。

――RMT業者たちが主にプレイするゲームをどんなものなのか。

A氏:「リネージュ」も多いし、「R2」や、「プリウス」、「蒼天」、「C9」、「Call of Chaos」、「AION」など、色んなゲームをプレイした。どのようなゲームをプレイするのかより、単純に時間対利益で良い方のゲームをプレイした。

――お気に入りのゲームは?

A氏:「AION」は最初、本当に金になるゲームだった。1番稼げた。その代わり、ncsoftのゲームは頻繁にBANされるので危険度も高かった。ただ、「リネージュ」の場合、相場が安定的で、固定的な収入源となった。他のゲームは時期によって異なるが、たまには稼げる時期がある。

――このゲームでRMTをすることを決める決め手は何なのか?

A氏:ゲームは多い。大作といえばマーケティングも活発で、記事も多い。そういうゲームは何が何でもCBTに参加してプレイするようにしている。実際にプレイしてこのゲームがお金になるのかどうかを見定める。お金になるようだったら、これまでプレイしていたゲームは辞めて、そのゲームのプレイを準備する。スタート直後が1番稼げるからだ。

――新作ゲームをプレイするには、BOTが必要ではないのか?

A氏:OBTが始まって1カ月するとそのゲーム専用のBOTプログラムが開発される。BOTプログラムはCBTが始まった段階で開発がスタートする。

――BOTプログラムはどんなものを使用するのか? 業者専用のものか?

A氏:一般向けも業者専用もどちらもある。「XXX(仮名)」や「YYY(仮名)」のようなものは一般ユーザーもすぐ手に入れられるが、有名なのでその分、BANされる可能性も高い。一般市場で手に入るものはゲームメーカーやセキュリティー会社もすぐ手に入れて対策ができるからだ。俺の場合、「ZZZ(仮名)」というものを使ったが、これは業者のみが購入できるものだ。機能的には大きな違いはないが、業者だけ使うので露出が少なくその分BANされる可能性が低い。

――ZZZは誰が開発したものなのか?

A氏:フィリピンで開発するが、開発者は韓国人だ。

――開発者と連絡もするのか?

A氏:たまに電話もする。フィリピンに1度遊びに来てお酒でも飲もうといっているが、「会社はどうするんだ?」とやり返している(笑)。

――逆にBOTプログラムの機能を提案したりもするのか?

A氏:もちろんある。中国のBOTプログラムは難しい。まず、言語が違うし、開発者から買うのではなく、仲介業者を通じて連絡しているので直接連絡もできない。流通段階が複雑だ。「ZZZ」の場合は、開発者が韓国人なので、電話で“この機能を入れて欲しい”とフィードバックすることができた。アイテムを拾う速度を早くしてとか、アップデート後ラグができたので直して欲しいとか。そういう話を伝えてBOTプログラムがアップデートされた。

――BOTプログラムは毎週メンテナンスで、BANされないのか。

A氏:BANされる。でも、1日か2日でそれを突破するアップデートが行なわれるので、問題はない。

――BOTプログラムはどのような機能を持っているか?

A氏:最高だ。できないことは何もない。

――アラーム機能もあると聞くが。

A氏:ユーザーが攻撃してきたら“3番攻撃、3番攻撃”と叫んで知らせてくれる。3番というのはPCの番号のことだ。

――韓国語で叫ぶのか?

A氏:開発者が韓国人だからか、韓国語だ。女性の音声だ。ちなみに、普通、オンラインゲームでGMの姿は側に居ても見えないが、そういうGMが登場したらBOTが勝手に認識して、街に帰還しログアウトする。BANを避けるためだ。

――USB用のBOTもあるようだが?

A氏:昔は使ってたが、最近は使わない。USB BOTは画面の特定のピクセルを1秒間に数万回も撮って、モンスターを発見すると攻撃するといった方式だが、重い。パソコンに負担が多い。一般ユーザーは、BANの確率が低いのでこっちの方を利用するが、業者の場合はハードウェアに負担が多いからあまり使わない。通常のBOTがもっと自然で、簡単に起動できるので良い。



■ RMT業者は本当に儲かっているのか? 経費や利益など実際の運営に関しての具体的な話

韓国最大のRMT仲介サイト「itemBay」。殆どの業者はここに集まって取引をする

――RMT業者のビジネスモデルが聞きたい

A氏:例えば、1つのBOTキャラクターが丸1日回して5,000ウォン(約350円)を稼ぐとしよう。そのぐらい稼げたら良くやったものだ。60台のパソコンを回すと1日30万ウォン(約21,000円)稼げる。1カ月なら900万ウォンだ(約630,000円)。

 経費は、1カ月の1台のPCの使用量が2万ウォンぐらい(約1,400円)するので、PCを60台回すと毎月BOTの運営費だけで120万ウォン(約84,000円)を使う。人件費等も含めて全体の固定費として400万ウォン(約280,000円)がかかるとしたら、500万ウォン(350,000円)が手に残る。大金ではないが、悪くはない。もちろん、少なくとも500万ウォンということだ。上手く行かなくても1日5,000ウォンは稼ごうとする。人を雇えば人件費も出るが、俺の場合、後半は2人でやって、1人で見る時もあった。

――1カ月にどれぐらい稼げたか?

A氏:1カ月いくらとか、そういう風には計算してなかった。仲介サイトの1日取引履歴を見て、今日は赤字だなと思っていたぐらい。

――多い時はどのぐらい稼げたか?

A氏:1日、100万ウォン(約70,000円)を稼げた時もある。その月は使った費用を全部で計算して、2,000万ウォン(約140万円)の純利益が出た。もちろん、安定的な収入ではないし、毎日がこうではない。ゲームでお金を稼ぐ方法は無限にあるが、むしろ俺が怠けてるから、少ないだけ。

――税金の問題はどうなっているのか?

A氏:ソフトウェア開発として法人登録した。法人登録すると1年の取引を4,800万ウォン(約336万円)の以内にすると簡易法人として、税金はゼロになる。

――4,800万ウォン以上の売上がありそうだが?

A氏:ほかにBOT用アカウントの名義があるから、それで個人取引をする。個人取引の場合は、1,200万ウォン以下とすれば、課税対象ではない。つまり、法人で4,800万ウォン、あとは個人で1,200万ウォン、1,200万ウォン、1,200万ウォン。こういう風になる。また、できれば仲介サイトを使わず、直接取引した。

――直接取引は誰とするのか?

A氏:多くの人たちだ。特にこの仕事も長くなると、多くの城主、ギルドマスターと知り合いとなる。仲良くなるとBOTキャラクターが攻撃されなくなる。お互い円満な関係を維持したほうがお互い得だからだ。RMT業者たちは、一般のユーザーとは比べ物にならないほど、多くのアイテム獲得するからだ。例えば、1人のキャラクターが丸1日狩りに費やして1本の剣をゲットしたとしよう。それが業者の場合、1日に60個の剣をゲットするわけだ。それを手に入れることによってギルドを強化できる。早くアイテムを揃えたいのなら、BOTキャラクターは攻撃しない方が得策だ。

 どうせRMTをするユーザーはいる。お互い信頼出来れば、少し安く渡すのもできるし、ユーザーたちも仲介サイトを使う手数料を節約できるわけだ。有名なギルドマスターの電話番号は全部持っている。電話でアイテムを安くして欲しいと連絡がくれば、すぐ取引したりした。

――維持費はどれぐらい掛かるのか?

A氏:従業員の食べ物、タバコ、お酒などを全部提供し、さらに人件費がかかる。電気代、インターネット回線費用もあるし、夏はエアコンで電気代はさらにアップする。エアコンも工場で使用するようなものを使う。

 ほかにBOT使用料やアカウント費、また時にはキャッシュアイテムも必要だ。変身とか乗り物とか能力増加とか。 BOTキャラクターが上手く狩りをするためには、時にはキャッシュアイテムを全部使って上げなければならない。

――1人で管理するのは難しいようだ。他のスタッフは?

A氏:実際に働きたい人は多い。好きなゲームをプレイしながら、お金も稼げるからだ。ここにくれば、飯も食べられるし、お酒も飲める。寝るところも提供される。そういう面を見て人たちがくる。ゲームの掲示板などに募集するとすぐ削除されるけど、隙を見て人たちが連絡してくる。

――その人たちの年齢代は?

A氏:殆どが20代頭ぐらい。1番高年齢では35歳もいた。

――従業員への給与はどのぐらいになるのか?

A氏:業者によって違う。80万ウォン(約56,000円)から120万ウォン(84,000円)ぐらいの固定の給与をくれるところもいるし、俺の場合は基本給50万ウォン(35,000円)で、与えられた目標アイテム金額を集めれば100万ウォン(約70,000円)。それ以上のアイテムを集めたら場合はみんなで分けた。多い時は1月250万ウォン(175,000円)を支給したことがある。

――頑張ればそのぐらいは貰えるのか?

A氏:時期の流れがある。ゲーム内のイベントがあるとかの時期がそうだ。

――採用する際はどういう人たちを優先するのか?

A氏:ゲームが上手いという人も、ここに来れば最低でも2カ月は覚えなければならない。BOTプログラムのセッティングや使い方などの勉強がある。また、上手いというのも一般的なユーザーは自分が良くいく狩り場しか行かない。しかし、この仕事は全てのマップを把握し、アイテムのドロップ率を覚えて置かねばならない。

 レベル10のキャラクターは丁度レベル10の狩り場に置かなければならないし、レベル30のキャラクターも丁度レベル30の狩り場に置かなければならない。また、狩り場も時間帯によって変えなければならない。BOTだからといって簡単という訳にはいかない。緻密にセッティングしなければお金は稼げない。

 「AION」の場合は、スキルも多いから順番もちゃんと設定する必要がある。ゲームの全てを極めてから、お金は稼げる。後にはどのエリアのどこにモンスターが何匹でるとか、全てがわかるようになる。ゲームシステムも完璧に熟知する必要がある。

――使用するパソコンのスペックはどのぐらいなのか?

A氏:直接運営するメインのパソコンはいいスペックにし、その他は適当なグラフィックス設定でプレイできる中古のパソコンを購入する。モニターは1台に数台のパソコンを接続して、切り替えながら使用する。

 俺の場合、最初は新しいパソコンが欲しくて、メインのパソコンには100万ウォン(約70,000円)、その他は50万ウォン(約35,000円)ぐらいで買ったが、バカだった。全部中古でも十分だった。ゲームによってスペックも違うが、「AION」に例えると、中古で25万ウォン(約17,500円)のパソコンなら十分だ。これを100台購入すると2,500万ウォン(約175万円)になる。だから、初期費用がでかい。

――インターネット回線はどうする?

A氏:ブロードバンドルーターはダメだ。全部が1つのIPだと、BANされやすいからだ。HUBのようにIPをそれぞれ作ってくれる装置がある。1つの回線をこの装置に接続して使うと、それぞれ違うIPになる。これも会社によって異なるが、1カ月20万ウォンの費用になる。

――キャラクターを作るためには、個人情報も必要だが、その辺はどうするのか

A氏:個人情報を販売する仲介サイトがある。公認認定証で本人の認証もやってくれる。そういう方法もあるし、俺の場合、妻や従兄弟、親戚のを全部集めてやった。住民登録番号1つで3つのアカウントを作れる。また、これを本人認定のために携帯電話も12個購入した。
(参考:韓国では個人情報保護という名目で、アカウント登録には“公認認定証”というものが必要となる。公認認定証とは個人情報が含まれたデータを、HDDやUSBメモリーといったストレージ1つだけに保存しておくシステムだ。公認認定証の使用は法律で義務付けられていて、ゲームだけではなく銀行などでも使用されている)



■ メーカーの対策は実際にどうか? RMT業者が本当に恐れるものとは何か!?

ncsoftの「リネージュ」では、2009年に、約5万5千個のアカウントをBANするというイベントを実施したが、無実のプレーヤーたちもBANされてしまった
警察がRMT業者を取り締まって押収したもの。韓国でのRMTは“業者”として行なうのは2007年から違法とされている。しかし、実際にはまだまだで、取り締まりも甘いようだ

――メーカーにBOTをBANされた後はどうするのか?

A氏:60台のPCでBOTを回すとしたら、50台は通常の狩りをさせて、残りの10台は別の作業をする。ユーザーが少ないところで、予備のキャラクターを育成するのだ。BOTキャラクターが1つBANされたとしたら、予備のキャラクターがその穴を埋める。そして、また予備キャラクターを育成する。

――だから、一般のユーザー側からすると、いっこうにBOTが減らないように見えるのか?

A氏:そうだろう。でも、実際は相当BANされている。

――1番BANするメーカーはどこか?

A氏:堅実で大量にするのはncsoftだ。本当にとんでもない規模でBANする。「AION」の場合、BOTキャラクターが1カ月生きていたら大当たりだという。その前に全部BANされるからだ。他のメーカーの場合は、着実にBANされるかと思ったら、ちょっと緩くなったりする。

――BANはどのぐらいされたのか。

A氏:多い時は1日10個、20個のアカウントがBANされたことがある。少ない時は1日に1個ぐらい。

――BANされると、やはり商売にも影響があるのか?

A氏:もちろんあるし、苛立たしい。特にアイテムを大量に持っていたキャラクターがBANされたときはたまらない。900万ウォン(約63万円)相当のアイテムを持ったキャラクターがBANされたこともある。

 でも、悪い面ばかりではない。BANされたからといってBOTが使えなくなるわけではないし、例えば、「AION」で1万個のアカウントをBANして、1万キャラクター分のBOTが消えたとする。そうするとBOTが生産していたアイテムはいきなりなくなるし、その生産量も少なくなるから、結果としてゲーム内の物価やRMTのレートは高くなる。レートが高ければ利益がデカくなるので、挽回すればいい商売になるわけだ。だから、またBOTが増えるし、レートも安定してくる。

――BANされたアカウントはどうする? もう使えないのか?

A氏:そうだ。でも、サイトからアカウント削除すれば問題ない。アカウント削除してから1カ月から3カ月したら、また再登録できるようになる。そうしたら、また、3つのアカウントが作られる。そうやってアカウントを回していた。だから、RMT業者も頭の回転が必要なのだ。

――ゲーム内ではクイズを出したりなど、色々なBOT対策のシステムがあるが効果はあったか?

A氏:どうだろう。特に問題になったとか、邪魔だという認識はなかった。

――元業者の立場から見て、BOTを防ぐ方法は何かあるか? IPブロックは効果があるか?

A氏:BOTを防ぐ方法はない。中国やその他の国にも韓国企業は進出している。また、俺も韓国のIPを使っていたし。そういう問題ではないと思う。

――本人認定を強化したところで解決する問題ではないようだ。

A氏:仲介サイトを使えば、公認認定書も一緒にやってくれる。それも意味がない。

――システム的にBOTが不可能なゲームを開発すればいいという話もある。例えば、「TERA」はノンターゲッティングだから、BOTが難しいという意見もある。

A氏:そんなことはない。BOTを回せないゲームなどない。「サドンアタック」のようなFPSも可能だ。BOTが不可能だから、BOTがいないのではなく、業者としてお金にならないからいないだけ。同じ時間BOTを回して、もっと利益が出るゲームがあれば、そっちのゲームに専念する。「TERA」もBOTは問題なく投入できる。

――ゲームメーカーは何故BOTを処理できないのか?

A氏:処理できていないわけではない。ncsoftの場合、1度に1万個以上BANしている。ただ、彼らはすべてをBANするつもりはないと思う。仮に月額制のゲームの7割がBOTだとしよう。全部のBOTをBANするとしたら、いきなり売り上げの7割が消えるわけだ。そんなことはできないはずだ。

 BOTの多いゲームは、BOTを全部無くせば、ゲームは潰れる。キャッシュアイテムも業者が優先して買う。キャッシュアイテムで強くしたほうが、効率の良い狩りができるからだ。俺の場合、数台の携帯を使ったが、キャッシュアイテムの決済で100万ウォン(7万円)ずつ出した。
(編注:RMT業者がゲームの売り上げに貢献するというのは、あくまでRMT業者の目線での話。実際に被害を受けて離れてしまうプレーヤーも多いし、ゲームメーカーはセキュリティーやBANを管理する時間、人件費を相当かけているため、トータルでは大きなマイナスになっているのは言うまでもない)

――この前、BOTプログラムの制作や販売は韓国では全て違法となった。

A氏:まだ法律で定められたことではないと思うが、違うか?

――違う。最近では、実際に警察がRMT業者を拘束したという報道も多い。

A氏:そうなのか? 俺の周りでは拘束されたという業者は誰1人いない。俺のところには、1度警察官が来たことがあるがすぐ帰った。「ソフトウェアを開発している」と話したら、「そうか」と言って帰った。ゲームを知らないし、こっちの仕事を知らないとわからないはずだ。そんなに気にしてなかった。

――どうすれば取り締まりできると思うか? RMT仲介サイトならすべてを知ってるはずではないのか?

A氏:当然、知ってるだろう。でも、RMT仲介サイトにとっては俺たちはVIPだ。時にはRMT仲介サイトの担当者から電話が来て、“商売はどうですか?”と親しく話してくる。手数料も安くしてくれる。特別扱いもしてくれる。

――もし、警察側がその気になって、リストを提出して貰い、取り締まれば、できるものではないだろうか。

A氏:可能だと思う。でも、規模が大きい業者は直接取引をしていない。間にブローカーがいる。我々もRMT仲介サイトの取引は、そのブローカーがやってくれる。その分、手数料はかかるが。でも、本当に怖いのは何なのか知ってるか?GM、警察、メーカー、ユーザーでもない。

――なんだろう?

A氏:停電や、パソコンの故障、インターネットの切断だ。一昨年、雷で停電になり、パソコンの電源が壊れた時があった。その後は、60台を回すとしたら、パソコンは80台用意するし、電源も30〜40個、ビデオカードも10個ぐらい予備を用意した。パソコンから変な音がしたら“爆発したから、取り替えろ”と言う。



■ RMTビジネスも中国に押され気味。「RMT業者は9割は潰れる」

――韓国国内にRMT業者はどのぐらいいるのか?

A氏:末端の従業員まで含めて、1万人ぐらいいると思う。

――韓国を離れて中国で業者をやってる場合も多いのでは?

A氏:確かに数年前までは中国に渡ってやってる人が多かった。それは人件費が安いから。その当時は1カ月に8万ウォン(約5,600円)ぐらいで1人雇えた。だから、BOTを使わず、手動でもできるというメリットがあった。そうやって育成したキャラクターを売ってもBANされる心配はないし。でも、今は人件費が高くなったのだ。それなら、韓国でBOTを回した方が便利だと思い、戻った人たちが多い。でも、社長が韓国に帰ると、使っていたパソコンや人たちは残るだろう。それをそのまま中国人が回しているのだ。感覚的には今や韓国業者はRMT業者全体の3割ぐらいしかいない。

――マフィアが絡んだりもするという話も聞いた。

A氏:ゲームではBOTキャラクターを攻撃すると、他のキャラクターが暴言を吐いたりするのは事実だが、その程度で、マフィアが絡むような話は100%嘘だ。

――業者たちの間でもゲーム内で紛争はあるのか?

A氏:ある。いい狩り場があれば、確保したいだろう。その場合、1番手っ取り早い方法が、相手の業者のBOTを申告し続けることだ。そうするといつかはBANされる。BANされたらうちのBOTで狩り場を占有する。そういう手法で狩り場を確保するから揉め事も多い。チャットで暴言を吐いたり、「番号言え、リアルPKする(編注:現実世界で殺す)」とかいう。でも、実際に電話すると、大人しい声で話す。「どこで作業しますか?」、「お互い苦労するじゃないですか」とかね。そうやって全国の業者たちと知り合いになる。

 でも、中国のBOTはそれができない。まず、言葉が通じない。うちがBOTを1人置いてある場所を、人件費の安い中国の業者だと3人のBOTを置く。こうなると、その場所はもうお金にならない。1度や2度の申告では終わらないし、結局、数で負けるので、他の場所へ移動することになる。ゲーム内のBOTの割合を見ると、ベトナム3割、中国5割、韓国2割ぐらいのようだ。

――キャラクター育成はどうしてるのか?

A氏:それは手動でする必要があるが、人件費が持たない。9割は中国でやってる。

――アイテムの仲介サイトを直接運営する業者はいるのか?

A氏:それは初めて聞いた。我々の時代にはそういう必要はなかった。

――一部の業者は新作ゲームデベロッパーに電話して、“うちのBOT以外、全部BANしてくれ。その代わり利益はわける”という提案もしているという噂を聞いた。

A氏:それはありえないと思う。業者が1つのゲームの狩り場を全部担当するのは、物理的に無理だ。ほとんどの業者は多くても100台程度のPCでやってると思う。800台の規模でやってる業者もいると聞いたが、それでも無理だろう。中国では600台の規模もあるようだ。

――業者をやるという人は、最近でも多いのか

A氏:多い。特に若い人がやろうとするが、今は一般ユーザーもBOTプログラムを使う。だから、100台以上の規模じゃないと難しい。9割以上は今後潰れるだろう。4年前に一緒にスタートした他の業者たちで、まだ生き残ってるところは少ない。

――業者をやっていて辛いことはあるか?

A氏:とにかくストレスが溜まる。4年やっていて円形脱毛症になった。また、始める前は視力が右1.5、左1.5だったが、今は右0.4、左0.4だ。60体のキャラクターを同時に操作するということは想像以上だ。BOTプログラムを使うといって、全部が自動的にお金が稼げるのではない。

 キャラクターはどういう風にセッティングして、どの位置に置くと、1番利益が出るのか、1つ1つ考えなければならない。また、攻撃するユーザーがいると、脅迫用のキャラクターが守ることも必要だ。とはいえ、ずっと守るのも難しいので、またBOTを移動させなければならない。

 中国の業者なら言葉が通じないのでいいが、韓国業者だとチャットで話してくるので、相手しなければならない。レベルごと、どの狩り場が1番レベルアップできて、アイテムが多く出るのか考えて、60個をわけて置かねばならない。最終的にはユーザーが妨害する。GMもいるし。そういう緊張感がストレスになるのだ。

 最初の3〜4カ月は頑張ってやろうという気持ちがあるが、時間が経つと“放って置こう”と思うようになる。実際に、こういう仕事をやろうという人は、怠けてる人が多いじゃないか。社会や組織には慣れないし、ゲームをしながらお金も稼ぎたくてやるのが殆どだ。後には、適当に管理しても、それなりの利益が出るので放っておくが、そうなると潰れるのだ。だから、誰かこれをやりたいというと、俺が9割は潰れるから辞めろという。

【AION】
1番お金が稼げるゲームだったという「AION」。韓国オンラインゲームでは「リネージュ」の時代から現在に至るまで“ncsoftのMMORPGはRMTゲーム”という認識は多かれ少なかれ残っている


(2011年 10月 4日)

[Reported by DongSoo“Luie”Han]