【連載第55回】韓国最新オンラインゲームレポート

Wemade、オンラインRPG「Avalon Online」プレイレポート
韓国に新種のオンラインゲームが登場!? 「Warcraft III」の人気MOD「DotA」をモチーフにした異色のオンラインRPG

「Avalon Online」
オープンβテスト実施中




 今回の連載で取り上げる「Avalon Online」はMOVONが開発し、WeMade Entertainmentがサービス運営を担当するオンラインRPGだ。3月26日からオープンβサービスが開始されており、正式サービスの日程は未定。ビジネスモデルはアイテム課金が予定されている。

 本作はBlizzard Entertainmentのリアルタイムストラテジー「Warcraft III」の人気カスタムマップ「Defense of the Ancient」(以下、DotA)のシステムをモチーフにして作られた印象が強い作品だ。ゲームシステムやルールから、インターフェイス、英雄の仕組みなど、あらゆる面で「DotA」を彷彿とさせる。

 「DotA」は「Sentinel」と「Scourge」と呼ばれる2つの陣営に分かれて、最大5対5でお互いの拠点を破壊し合うという「Warcraft III」のオリジナルMODだ。各陣営は左上と右下に分かれて、3本の道で繋がってる構造になっている。「DotA」では「Warcraft III」の英雄たちのほか、オリジナルの英雄たちも多数登場しており、プレーヤーは英雄を1人選択してゲームに参加する。

 英雄はそれぞれ、盾型、近距離攻撃型、遠距離攻撃型、サポート型という特徴を持っており、英雄の成長と、チームの英雄の組み合わせ、連係プレイ、攻撃を仕掛けるタイミングといった駆け引きの要素が微力の作品になっている。多くのユーザーはそれに熱狂しており、ヨーロッパではeスポーツ向けの大会も多く開かれる状況だ。

 一方、韓国では「DotA」の原作者が活動をやめてから、「Chaos」というカスタムマップがまた別の人によって開発されている。その「Chaos」は、韓国内で「Warcraft III」の本編より人気があるといっても過言ではないほどだ。定期的にアップデートもされているが、あくまで一般ユーザーによる「Warcraft III」のMODということから、その存続に疑問がもたれる状況だった。その状況で、登場したのが「Avalon Online」である。全く別のゲームだが、基本的なシステムだけ見ると「Warcraft III」の枠から離れた「DotA」(もしくは、「Chaos」)と見てもよいほどのものだった。

 「Avalon Online」は「オリエンス」と「イオニア」という2つの陣営が、“霊物”と呼ばれるお互いの拠点を破壊することを目的としたゲームである。対戦人数は、2対2もしくは5対5の2種類で、プレーヤーは英雄と呼ぶキャラクターを操作して、戦闘に参加する。ロビーでマッチングを行ない、毎回レベル1から新しくスタートし、英雄の成長の仕方と、装備の整え方、戦闘時の細かいユニットコントロールがゲームの勝敗を左右する要素となっている。オンラインFPSゲームのように、セッションを作ってプレーヤー同士の対戦を繰り返し楽しむタイプのRPGだ。



■ 2つの陣営による功城戦。お互いの“霊物”を破壊せよ!!

ゲームは基本的にロビー型のマッチングシステムを通じて対戦相手を募集し、対戦を行なう

 「Avalon Online」は、ロビーサーバーにログインしてセッションを作って対戦者を募り、対戦を楽しむというMOタイプのオンラインゲームだ。プレーヤーは1つの家紋という設定で、1アカウントに複数の英雄を保有できるものの、プレイできるのは1人のみ。英雄は数十種類用意され、いずれも本作オリジナルのキャラクターたちだ。

 ゲームの基本的なルールは相手陣営の最奥に位置する“霊物”を破壊することだ。“霊物”に辿り着くまでには重要建物が幾つか用意されており、順番に破壊しない限り、次の建物を攻撃できない仕組みになっている。

 マップの構造はお互いの拠点が真上と真下に位置し、2本の道が繋がってる構造だ。「DotA」は3本の道なので1本少ないことになる。その2本の道には“前哨基地”をはじめ、“モンスターバラック”、“クリーチャーバラック”が順番に設置されており、最奥には“霊物タワー”、“霊物”が設置されている。

 “前哨基地”は最前線に位置する防御用の建物だ。1本の道に2つが設置されている。そして、注目したいのは“モンスターバラック”である。“モンスターバラック”からは一定時間置きに数匹にモンスターが生産されて、敵陣営に進撃する。プレーヤーは敵モンスターを味方のモンスターと“前哨基地”の攻撃能力と共に倒して、英雄のレベルを容易に上げることができる。素早くレベルアップをするために、チームは基本的に“前哨基地”でレベルアップするプレーヤーとマップのあらゆるところに位置する“クリープ”という中立モンスターの狩りを重心にレベルアップするプレーヤーに分かれて行動する。

 “クリーチャーバラック”は“クリーチャー”と呼ばれる強力なモンスターを召喚できる建物だ。“クリーチャー”の召喚には材料が必要で、材料は“クリープ”からランダムに得ることができる。“クリーチャー”は防御のほかにも、敵陣営を攻撃する際にサポートできる強力なモンスターだ。なお、「DotA」では登場しない、オリジナルのシステムである。

 最奥には“霊物”1つとその回りに“霊物タワー”が2つ設置されている。“霊物タワー”を完全に破壊してから“霊物”を攻撃することができ、“霊物”の破壊を先に成功した陣営が勝利となる。本作はトップビューで、操作といったあらゆるインターフェイスも「Warcraft III」に近い。そのため、基本的なプレイ感覚や面白さは「Warcraft III」(「DotA」)そのものだが、建物の種類やマップの構造、そのほか細かいルールは異なっており、「Warcraft III」および「DotA」の面白さを保ちながらオリジナリティーを出したいという意欲が感じられる作品だ。


各陣営にはこれら建物があり、これらを破壊することがゲームの目的だ。前哨基地(左上)、モンスターバラック(右上)、クリーチャーバラック(左下)、霊物と霊物タワー(右下)


■ 細かいコントロール、チームの戦術、戦法が共に問われるレベル高い戦闘が展開

全ての英雄は危機のときは拠点に帰還できる能力をもっている。5分おきに使用可能だ

 本作はオンラインRPGだが、他のオンラインRPGと大きく違うポイントとして、毎回、英雄のレベルが1からスタートするところが挙げられる。オンラインRPGでは基本中の基本である日々継続して自分のキャラクターを育成するという部分からして違うわけだ。

 英雄は1つの奥義スキルと3つの一般スキルを持っており、レベルアップすることで貰えるポイントでスキルを覚えたり、スキルレベルを上げることができる。スキルを覚えずにポイントを使ってステータスを上げることも可能だ。また、英雄は死亡しても、数秒の待機時間後、スタート時点で再生される。

 本作をプレイしていると感じるのはまず、英雄の成長する過程がゲームの勝敗に大きく左右されることだ。英雄が死亡すると、持ち金の一部が削られ、再生するまでの待機時間がある。反対に上手く敵の英雄を倒していくと、死亡後の待機時間と持ち金の減少のおかげで、徐々にレベル差が開き、戦局を有利に進めることができる。英雄を倒すことが勝利条件ではないが、倒せば倒すほどあらゆる局面で有利に立つため、勝利に繋がるわけだ。その駆け引きが本作の面白さである。

 それを可能にするためには、連携プレイと、プレーヤーの高いコントロールスキルが必要だ。本作の英雄は数十種類が用意されており、タンク向きの英雄から魔法攻撃を得意とする英雄、相手の動きを封じることが得意とする英雄、建物を破壊することを得意とする英雄など、様々なタイプの英雄がいる。

 また、覚えるスキルによって、英雄の特徴が分かれる。たとえば、「オリエンス」の「ライクシャ」という英雄の場合、多くは攻撃スキルを重視したタイプで成長させるが、ステータスを上げた一般攻撃タイプにも育てることができる。また、英雄によっては先に覚えるスキルによって、序盤の特徴が攻撃型か、妨害型かなどの特徴が分かれる。

 相手陣営との戦闘ではそういった英雄の組み合わせを考えたベストな連係プレイが必要とされる。また、スキルは1回使用すると再使用待機時間があるため、1対1では相手が不利になったら、再使用待機時間の間に逃げられる可能性が高い。チームとの連係プレイで瞬時に倒す必要があるのだ。

 各局面では、魔法攻撃を完全に防ぐことができる「魔法防御膜呪文書」と「魔法防御膜呪文書」を解除できる「呪文解除ポーション」といった消費アイテムの使用も重要になってくる。上手いタイミングで「魔法防御膜呪文書」を使用すれば、相手のスキル攻撃を使わせながら、ダメージを回避することができるからだ。そういったプレーヤーの高いコントロールスキルが要求されている。

 英雄が1度倒されて押されてる状況だとしても、何とかレベルアップし装備を備えて、次の戦闘で流れを変えることも不可能ではない。仲間と共闘して一気に敵英雄を倒すことができると、その間に建物を破壊することができるからだ。また、建物を破壊することを得意とする英雄を筆頭に、英雄同士の戦闘を控えながら、建物を破壊して戦法も可能である。組み合わせによる微妙なバランスが取れており、その駆け引きに高い戦略性が問われるゲームになっている。

前哨基地でのレベルアップ班、クリープによるレベルアップ班に分かれて行動する。1人で狩りをすると、レベルアップが早いが、狙われる可能性が高い

相手の動きを封じて一点攻撃をするのは基本的な戦術だ


■ 英雄のスタイルによって、装備アイテムの選択も大事。装備アイテムを組み合わせることで、さらに強い装備アイテムをゲット!

幾つかの条件を満足すれば、究極アイテムの購入メニューが開かれる。場合によっては逆転のきっかけとなるような強力なアイテムが手に入るかもしれない!?

 英雄は8つのインベントリー空間を持っており、このインベントリーにポーションといった消費アイテムや装備アイテムを備えることができる。装備アイテムはインベントリーに置くだけで、アイテムの能力を得ることができる。消費アイテムはインベントリーに置いておけば、あとはショートカットキーを押すだけで使用することが可能だ。消費アイテムと装備アイテムを同じスペースでシェアしているため、装備アイテムが多くなるほど、置ける消費アイテムの数がその分少なくなる。なお、インベントリー内のアイテムは、英雄のレベルと同様に、ゲームが終わるとすべてリセットされる。

 装備アイテムと消費アイテムは、フィールド上のショップで購入することができる。“C”キーを押すと消費アイテムのショップが開き、キーパッドの数字を押すと装備アイテムのショップが開く。ここで購入するとインベントリーに自動的に入る。アイテムを買うには“ゴールド”が必要で、“ゴールド”は自動的に貰えるもののほか、モンスター、敵英雄などを倒すことで獲得できる。

 注目したいのは装備アイテムだ。装備アイテムには攻撃力アップ、攻撃速度アップ、防御力アップといった幾つかの能力値を向上させる基本的なものがショップで用意されており、これらの装備アイテムを複数購入して組み合わせることで、全ての能力が合わさった強力な1つの装備アイテムを作ることが可能だ。

 例えば、移動速度+110、攻撃速度20%の能力値を持つ「神速のブーツ」とHP+300、マナ回復量増加+3の能力値を持つ「魔力の印章」をインベントリーに入れて組み合わせると、移動速度+150、攻撃速度+20%、HP+300、マナ回復量増加+4の「暗黒の鎖ブーツ」を作ることができる。プレイ序盤では「神速のブーツ」を装備しておき、後々お金がたまると「魔力の印章」を購入して組み合わせると、もっと強い装備アイテムを作られるわけだ。また、色んな能力値を持つアイテムがインベントリーのスロット1つに収まる効果もある。

 装備アイテムは攻撃力と攻撃速度重視か、マナ回復重視か、体力と防御力重視かなど、英雄の特徴に合わせて備えるのが基本だ。また、敵の英雄の特徴を考えて、備える必要がある。身を隠すことができるステルス能力を持つ英雄が敵陣営にいたとすると、ステルスを探知するアイテムは備えておきたいところだ。

 これら、組み合わせられる装備アイテムは約30種類にも及ぶ。また、“10分以内に4キルを達成”といった特定の条件を満たすことで貰える“究極アイテム”もある。これらの各アイテムの特徴を熟知しておき、自分の英雄と敵陣営の英雄、状況などを考慮しながら、瞬時かつ適切に備える必要がある。アイテムの使い方ひとつとっても戦略的な要素が高い作品だ。しかし、そういった事前知識が多い分、初心者には難しいという印象を受けざるを得なかった。

ゲーム画面の上には組み合わせの装備アイテムを見て、組み合わせることができる。どういう装備アイテムを備えるか考えながら購入することが必要だ。また、ゴールドさえ十分なら、一気に組み合わされた装備アイテムを購入することが可能だ


■ 「戦略戦闘モード」を始め、4つのモードを実装。アイテム課金のビジネスモデルを可能にする倉庫システムに注目

 本作はこれまで説明したルールで2対2、もしくは、5対5の対戦が楽しめる「戦略戦闘モード」を基本に、チュートリアルモードでもある「ミッションモード」、シングルプレイの「シナリオモード」、Co-opプレイの「冒険モード」と4つのモードが実装されている。

 全てのモードを通じて、ロビーで使用されるゲームマネー“アロン”の獲得と家紋のレベルを上げることができる。英雄のレベルはゲームが終わるたびにリセットされるが、家紋のレベルはリセットされない。家紋のレベルが上がると英雄の基本ステータスを増加させることが可能だ。“アロン”を使うことで倉庫用のアイテムを購入することができる。

 倉庫はロビーで購入したアイテムや、様々なモードを通じてもらった倉庫用の装備アイテムを保存できるシステムで、このアイテムを実際のゲーム内で使用できる。倉庫に入れたアイテムを使用するには、“ゴールド”に加えて、倉庫ポイントという専用ポイントが必要になる。


ミッションモードでは基本的なシステムを覚えることができる。しかし、アイテム種類が多いため、熟知までは時間が掛かりそうだ

倉庫は「DotA」にはない、「Avalon Online」ならではのシステムだ。狙いはアイテム課金か


■ 戦略性、戦術性が高く、対戦の遣り甲斐がある作品。難しいゲームシステムをどう乗り越えられるかがポイント

今回のβテストでは、ダンジョンをクリアすると経験値を一定量獲得できるシステムになっていた

 本作は戦略性、戦術性が高いゲームになっているため、プレイに大きなやり甲斐を感じられる。装備をどう整えるべきかを瞬時に把握できるようになったり、敵英雄との相性を考えて対応できるようになったりなど、ゲームをプレイして自分のスキルが上がっていくことが明確にわかる。

 こうした性質は、原点である「Warcraft III」がそうであるように、「Avalon Online」もまた、非常にeスポーツに向いている作品だといえる。実際に、韓国eスポーツ協会(KeSPA)は本作をオープンβテスト中のタイトルであるにも関わらず5月26日に公認種目として認定。パブリッシャーであるWeMade Entertainmentもこれを受けて、毎週「Avalon Online」の公式大会を主催しており、ゲーム専門ケーブルTV「Ongamenet」を通じて韓国全土に放送されている。

 しかし、ちゃんとプレイするには熟知が必要な要素が多いため、初心者には慣れ難いという問題点もある。ゲーム内やホームページにチュートリアルは用意されているものの、覚える必要があるものが多い。「DotA」のプレイ経験が無いと、ゲームが難しいというユーザーからの意見も多かった。こういった点をどのように改善していくのかはWeMade Entertainmentの課題である。今後の展開が期待される作品だ。

「オリエンス」のシナリオでは新しい大族長「ライクシャ」の物語が用意されていた。彼は民族から認められるために、旅に出る。完了すると報酬として倉庫アイテムが貰えた

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Published by WeMade Entertainment Co., Ltd.

(2009年 7月 22日)

[Reported by DongSoo“Luie”Han]