【連載第52回】韓国最新オンラインゲームレポート

韓国Nexon、「マビノギ英雄伝」第1次CBTレポート
あの「マビノギ」が、Valve「Source Engine」採用の美麗アクションゲームに!!

3月20日~22日第1次クローズドβテスト実施




 韓国Nexonは3月20日から22日まで、「マビノギ英雄伝」の第1次クローズドβテストを実施した。

 「マビノギ英雄伝」は、米Valveのゲームエンジン「Source Engine」を採用したアクションRPGで、「G-Star 2007」で初公開されたタイトルだ。MMORPG「マビノギ」の世界観をモチーフにしていながらも、まったく異なるゲームに仕上がっている。基本キーボードのみを使用し、「Source Engine」採用による重厚なアクションと様々なインタラクションが特徴的で、冒険の舞台となる「ダンジョン」では、オリジナルストーリーが展開される。

 今回のβテストでは、プレイタイムにして5~6時間ほどのボリュームのコンテンツが公開された。チュートリアルは今後のストーリー展開について暗示する内容となっており、その後のクエストもすべて関連のあるストーリーとなっていた。「マビノギ」は韓国産MMORPGでもストーリー性の高さを最大のウリとしているが、「マビノギ英雄伝」においてもストーリー性を重視していくという意志が濃厚に伝わってくる内容に仕上がっていた。

 本作は、前回の連載で取り上げた「C9」と共に、韓国で最も期待されている作品の1つであり、今年の台風の目となっているアクションRPGのひとつだ。早速ご紹介していこう。



■ 魔族との対立をダークな雰囲気で描いた世界観とストーリーを中心に構成されたダンジョン

「マビノギ英雄伝」のタイトル画面。Sourceエンジンを使用しているせいか、タイトル画面やオプションのUIが「Half-Life 2」や「Counter-Strike: Source」を髣髴とさせる
ミニマップ機能はなく、街でALTキーを押してショップの位置を把握できる

 本作は「マビノギ」の独特の世界観とストーリーを伝えることに力を入れた作品だ。その全体像はいまだ見えていないが、ストーリーに関わる一連の出来事がイベントシーンやクエストを通じて伝えられる。チュートリアルでは、物語のプロローグとなる街の守護獣でありながら凶変してしまった巨大なクモの暴動を阻止するという内容だ。

 庸兵団の新入りであるプレーヤーは、守護獣のクモと話し合おうとする巫女「ティー」の護衛として戦闘に参加する。「ティー」の言葉は届かず、最終的に守護獣を倒す決断が下されることになるが、凶変してしまった理由については謎のままでクモの残した「魔族の印」が唯一の手がかりとなった。さらに、各地では似たような事件が多発しており、庸兵団の一員としてそれらの事件を解決していくのが本作のあらすじとなっている。

 ゲームでは各事件の解決が、それぞれクエストになっている。庸兵団から事件のことを聞き、クエストとして受託することになる。また、ショップのNPCなどからはサブクエストも受けることができる。

 本作では街はMMO空間になっており、多数のユーザーがひしめき、ダンジョンはパーティーのみが入場できるインスタンスになっている。登場する街は「コルヘン街」という名前で、建物の殆どが木でできた中世の小さな村を思わせる雰囲気だ。街とダンジョンの出入り口は船着場がその機能を果たしている。

 船着場はこのゲームにおけるロビーの役割になっており、プレーヤーは受託したクエストのセッションを作ったり、そのセッションに参加することができる。セッション内では最大4人までのパーティーを組むことができ、ダンジョンへ移動するようになっている。

 ダンジョンは1本道で、最後にボスモンスターが登場し、これを撃破するとクリアというのが基本的な流れとなる。「モンスターハンター」シリーズや「ファンタシースター」シリーズのように、ダンジョン内の謎解き要素というのはいまのところないが、道中に設置された足元の綱に触れると天井から丸太のようなものが落ちて来たり、巨大な歯車が行き来するなどのトラップが盛り込まれている。襲ってくるモンスター以外にも緊張感を漂わせていた。

 なお、スクリーンショットを見れば感じられることと思うが、全体的なゲームの雰囲気は暗く、「マビノギ」のほのぼのとしたグラフィックスとは相反している。もっとも、サービス中の「マビノギ」は可愛らしいグラフィックスの割には殺伐としたストーリーを持っており、世界観が変わったというわけではない。魔族との戦いをダークに描いた本作は、世界観がその見た目ともよりマッチしていると言えるだろう。


ゲームを開始するとプロローグ映像が流れた。暴れ出した守護獣のクモに説得を試みようとする巫女「ティー」が、攻撃にかかろうとする庸兵団を諌めた
プレーヤーはクモがいる塔の最上階まで「ティー」を護衛する。結局、「ティー」の声は届かず、クモを倒すはめに…。映像の最後に登場した謎のキャラクターと何か関わりがありそうだ

船着場は一般的なロビー型のシステムになっていた。パーティーはここで組むことになる
マップには様々なトラップやオブジェクトが盛り込まれている


■ モンスターの攻撃パターンを読みきることが重要。オブジェクトとのインタラクションに注目

 「マビノギ英雄伝」の操作は基本的にキーボードのみを使用する。ただし、本作はアクションRPGであることと、海外展開を踏まえ、最初からゲームパッドでの操作にも対応している。

 ゲームの基本的な操作は、基本攻撃、スマッシュ、回避、掴みの4パターン。スキルに関しては、攻撃力アップのようなパッシブ系のスキルは用意されているが、必殺技のようなアクティブスキルは存在しない。主に基本攻撃を連打しながら最後にスマッシュでトドメを入れるコンボ攻撃を用いて戦闘を行なうスタイルだ。基本攻撃は3回連続で入力可能で、さらにスマッシュで追撃できる。攻撃モーションは、「マビノギ」を意識して、キレのある重々しいアクションになっている。

 注目したいのはスマッシュのダメージだ。本作の基本攻撃のダメージはとても低く設定されており、基本攻撃だけでは一般モンスターすら倒すことが容易ではない。大ダメージを与えるにはスマッシュ攻撃が必須だが、スマッシュのダメージはコンボとして決めた基本攻撃の回数によってダメージ量が決定されるというシステムになっている。つまり、基本攻撃を先に多く決めるほど、最後のスマッシュのダメージが大きくなるわけだ。

 この一見アンバランスに見えるダメージシステムのおかげでボス戦が非常に白熱するものとなっている。雑魚モンスターは気にせずコンボ攻撃を入れて倒すことができるが、ボスモンスターはそうは行かないからだ。短時間でコンボをたたき込み、敵の大技を回避する。プレーヤーのコントロールがことさらに要求されるデザインになっているのだ。

 ボスモンスターには幾つかの攻撃パターンがあり、プレーヤーはその攻撃パターンを読みながら、隙をみて適切なコンボを入れなければならない。攻撃回数が多くなるとボスモンスターから反撃を食らうことになり、反撃を食ってしまうとスマッシュに繋げることができない。

 逆に逃げてばかりだと、基本攻撃回数が少ないため強力なスマッシュにつなげることができず、戦闘が長引いてしまう。また、攻撃時にはスタミナゲージを消費するため、スタミナ管理も重要となる。スタミナは行動せずにいると徐々に回復されるもので、ボスとの戦闘には非常に頭を使う。

 また、本作は「Half-Life 2」や「Counter-Strike: Source」でお馴染みの「Source Engine」を採用したことのメリットのひとつとして、フィジックス(物理演算)も活用されている。マップ中に散らばった柱の破片や木材のほかにも倒したモンスターの死体を持ち上げて、敵に投げつけたり、武器として使用することが可能だ。

 見た目的におもしろいだけでなく、しっかりゲーム性にも寄与しており、たとえばモンスターの死体を抱えることで、それを身代わりにして飛んでくる弓攻撃を防ぐこともできる。また、持ち上げたオブジェクトで基本攻撃からスマッシュもでき、基本武器である剣以外にもあらゆるものを武器として使用することができる点もおもしろい。本作は重量感のあるプレイ感覚と共に、「マビノギ」の世界観の中で様々な方向でのアクション性にチャレンジしている作品といえるだろう。


スマッシュはダメージのほかに、基本連打数によってモーションも異なる
どのようなものでも武器として使用可能だ
モンスターから攻撃を受け続けると装備が破壊される。ダンジョンから出ると元通りだ
ボスモンスターとの戦闘は非常に難しい……。モンスターの攻撃パターンを読みきるのが重要だ


■ 2つのクラスが用意され、クエストを中心とするストーリーを楽しむ展開に!

今回のβテストでは、ダンジョンをクリアすると経験値を一定量獲得できるシステムになっていた

 最後にバトル以外の情報を簡単にまとめておきたい。今回のクローズドβテストで実装されたプレーヤーキャラクターは「ピオナ」と「リシーター」の2人。「ピオナ」は剣と盾を扱うオーソドックスな剣士スタイルの女キャラクターで、「リシーター」は二刀流を使用する男キャラクターとなっている。余談だが、「マビノギ」にあるようなキャラクターが年を取るシステムは盛り込まれていない。

 筆者がプレイした「ピオナ」は回避キーで盾防御することができた。ボスモンスターからのスマッシュは防ぎきれないが、それ以外の攻撃なら防御してただちに反撃に転じることが可能で、それを広い攻略法として使用できるクラスだった。「リシーター」は、攻撃速度こそ速いが、防御はひたすら回避するしかないため、「ピオナ」に比べるとやや上級者向きだった。

 キャラクターは、レベル制の成長システムを採用しており、経験値をためてレベルアップするとAPというポイントを獲得できる。最初のキャラクターには「コンバットマスタリー」、「スマッシュマスタリー」、「ディフェンス」などのスキルが用意されており、これらをランクアップさせたり、新規スキルを獲得するためにAPが必要となる。スキルは「マビノギ」のようにランクEからスタートする。ランクはスキルレベルのことを意味し、高いほど性能が良くなる。ランクアップさせるには必要条件のAPを消費するようになっている。

 経験値については、現時点ではダンジョンクリア時の報酬として貰うだけで、モンスターを倒しても経験値は溜まらなかった。キャラクタの成長は多くのモンスターを倒すことよりも、より多くのクエストを獲得してクリアすることが重要である。

 今回のテストでは、ゲーム序盤のほんのさわりの部分だけが実装されだ。プレイタイムにして5~6時間ほど。クエストを解くためにダンジョンが用意されており、ダンジョンをクリアすることでストーリーを楽しむことができる。設計上、ダンジョンとストーリーは不可分の関係性にあるため、コンテンツの追加には莫大な時間が強いられることが予想される。

 プレーヤーのコンテンツ消費スピードをふまえたアップデート計画があるかどうかについてとても気になるところだが、ゲーム性そのものは、デベロッパーの意欲が「マビノギ」とはまた違った形でひしひしと伝わってくる作品だった。ゲームのラグや進行問題で不具合が多く見られ不満の声も多数あったが、プレイ中にデベロッパーの様々なチャレンジ精神が感じられて高く評価したい作品だ。今年、注目すべきタイトルの1つとして間違いないタイトルといえるだろう。

様々な要素で各ダンジョンは異なる楽しさを提供する。激しいユーザーのコンテンツ消耗速度にきっちり対応できるかがポイントだ

(c) 2009 NEXON Corporation. All Rights Reserved.

(2009年 4月 14日)

[Reported by 三浦尋一]