山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第52回
7年前と同じように、あるゲームに泣かされてとても良かった話
2017年3月1日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
以前にあるゲームのインタビューをさせて頂きました。当時のインタビュー記事を探してみると、なんともう7年も前のことでした。……そんなに月日が過ぎたような気がしないのですが。
そのゲームは、いわゆる無名の新作に近いもので、僕もなんとなく雰囲気が自分好みなような気がして、何の気なしに購入して、あくまで仕事とは関係なく、個人的にプレイしてみました。
その時は……それほど多くの期待はしていなかったような。
だけれど、そんな気だるい出会いとは裏腹に。そのゲームを一気に遊び倒し、スタッフロールを眺めながらボロボロと泣いていました。
その後すぐに編集部に連絡して、(レビュー記事はもう別の人が書かれていたので)そのゲームのインタビューをやらせて欲しいとお願いしました。怠け者な僕が自分から「この仕事をやらせて欲しい!」と、本気でお願いするなんていう珍事は、数年に1度あるかないかでした。
それが7年前のことでした。
自分が「これは良いな」って感じたものをわずかでも応援できること、良さを誰かに伝えられること、今まさに感じているように「あのとき、そうして良かった」と思える日がまたいつか来ること。それはゲームメディアに記事を掲載してもらうライターという仕事をする身にとって、1番幸せなことだと思います。
そんな気持ちにもなるような、7年前に夢中になったゲームの続編が発売されました。
7年前と同じことが起きました。
いや、正確には同じではなくて。前作を良く知っているぶん、信じられないことばかりでした。
そのゲームはとても力強くなっていました。グラフィックスも、アクションも、世界も。曲調やその音圧もリッチになって強さを感じさせるものになったと思います。
そのプレイは、驚きの連続でした。途中には「これ、どこまでやるの? 最後はどうなんの?」という気持ちにすらなりました。「先の予想がまったくできないこと」、ゲームに限らず物語を追う形式の全てにとって、それは1番いいことだと思います。
事実、僕は、「この物語は最後まで素晴らしい終わりを迎えてくれるのだろうか? 途中で息切れしたりしないだろうか? ちょっと残念な気持ちになったりはしないだろうか?」と、ハラハラするような気持ちを抱えつつも、その先が知りたくて。夢中でそのゲームを遊び続けました。
ここで1つ断っておくと、僕はそのゲームは「そういうテイストが好きな人にとって、最高なもの」だと感じていまして。どんなものだってそうですけど、合わない人だっていますから。そのゲームは、そういう意味ではものすごい尖り具合です。制作者さんのセンス一点突端な感じがするインディーズゲームも真っ青なぐらいです。
そのゲームはどういう人に合うのか? とりあえず僕のことを書くと、僕は「切なさや儚さ、悲しさに、特に美しさを感じる」。そういう好みをしています。無情さや無意味さすら感じさせるほどの退廃的なもの、そこで描かれる真に迫るもの、強いメッセージ、美しい楽曲、どれもが悲しいからこそ、とても美しい。そんな、ちょっとアレな人が「最高だな」って思って、こんなアレなコラムを書いています。
そのゲームを一通り遊び終えて、
7年前と同じことが起きました。
僕はスタッフロールを楽しみながら、やっぱり涙ぐみはじめ。結局、なぜか理由のわからない涙を流していました。
面白かったからでしょうか。その面白いゲームが終わってしまうからでしょうか。美しかったからでしょうか。そのゲームが7年前の前作もそうであったように他にない色をしていたからでしょうか。「ゲームってなんでもありだなー」と思ったからでしょうか。ゲームは自分の想像を遥かに超えるものを見せてくれることがあるからでしょうか。
まぁ、それら全部込みで「いいゲームだったなー」って思ったから、という感じです。
この半年ほど、本当に大作目白押し、面白いゲームが毎週発売といった様子で、僕も目まぐるしく遊び倒してきましたが、個人的な好みを入れれば、今回の“そのゲーム”が1番好きです。僕の好みにとって……と一応付け加えますが、最高でした。
こういう作品に時々出会えて、こんな気持ちになっちゃうもんだから、そんなんだからゲーム好きは辞められません。
こちらこそ本当に、
本当に、ありがとうございました。
というわけで、
「NieR:Automata」をプレイし終えてのコラムでした。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。