E3 2012 レポート

西川善司の3Dゲームファンのための「Wii U」講座 Ver.E3-2012

Wii Uは3画面出力に対応。Wii Uに採用されたNFC機能は「タンジブルビット」ブームを巻き起こすのか?


6月5日〜7日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center


■ Wii Uの液晶ディスプレイ付きコントローラ「Wii U Game Pad」に施された変更点

 今年のE3で、任天堂は昨年発表されたWii Uに対して、仕様のアップデートを行なった。もっとも大きなアップデートは、液晶ディスプレイ付きコントローラーの「Wii U Game Pad」に対してだ。


任天堂E3プレスカンファレンスの様子 ブラックボディのバリエーションが存在することが明らかになった「Wii U」

 昨年発表時点では、ニンテンドーDSやニンテンドー3DSに採用されていたアナログスライドパッドだった部分が、アナログスティックに変更され、さらに、押し込みボタン操作にも対応することになった。任天堂は「熱い要望に応えて仕様変更した」と述べていたが、実際のところ昨年の発表段階で、ゲームスタジオやユーザー側から「よしとしない」フィードバックが相当届いたためだと思われる。

 それとも細かい点だが、Wii系特有のボタンの[+]、[-]が、昨年時点では液晶画面下部に実装されていたものが、[X]、[Y]、[A]、[B]ボタンの下側にレイアウトされている。

 昨年、筆者は、Wii Uの半次世代機相当の進化スペックやWii U Game Padに実装された左右のデュアルショルダーボタン、デュアルアナログスティック(昨年時点ではアナログスライドパッドだったが)のような、プレイステーション 3やXbox 360のコントローラーとほぼ互換の操作系は、PS3やXbox 360に展開されるシェーダーグラフィックス世代のHD(High Definition)ゲーミングタイトルをWii Uにも展開してもらうための裏戦略があるのではないかと邪推した。

 今年のE3では、PS3のコントローラーとXbox 360のコントローラーのハイブリッド仕様のような「Wii U Pro Controllers」が、Wii Uの新周辺機器として追加ラインナップされることが発表されており、そうした裏戦略は確かにありそうだ。

 Wii UをWii Uらしく活用せず、Wii UをPS3、Xbox 360的な「ひとつのHDゲーミングコンソール」として捉え、マルチプラットフォームタイトルの展開先の1つ……として扱ったタイトルは、現行のPS3、Xbox 360時代が続く限りは、そこそこ出てきそうではある。ただ、そうしたタイトルをあえて、PS3、Xbox 360的な操作感でWii Uでプレイしたいという特異な人は多くはないはずだ。


今回初お披露目となった「Wii U Pro Controllers」




■ NFC搭載。ゲーム用途、ノンゲーム用途、双方の可能性を示唆

 既にメディアで報道がなされてはいたが、今回のE3でも、Wii U Game Padに「NFC」機能が搭載されることがアナウンスされた。

 NFCとはNear Field Communicationの略で、ソニーやフィリップスが開発した非接触型のICチップのリーダー・ライターの新規格だ。日本では既になじみ深いFelicaやSuicaに代表される非接触型IC規格の、世代の新しい国際標準規格版というイメージだ。


任天堂、Wii U ソフトウェアプロデューサの江口勝也氏

 今回のE3では、任天堂のWii Uソフトウェアプロデューサーの江口勝也氏が「NFCについてはゲーム用途、ノンゲーム用途の両方に活用できるものにしたいが、今は、その内容を明らかにする時期ではない」というコメントを残すに留まった。

 なお、NFCのリーダー・ライター本体は、Wii U Game Padの左側、デジタル十字パッドの下に位置していると説明されている。


十字パッド下の四角形のマーカーが描かれているところにNFCがある

 今年のE3で公開されたWii U Game Padでは、NFCリーダーライターの位置がわかるようなマーカーが本体上面に描かれており、NFCは規格上はリーダー・ライター搭載位置から十数センチほど離れたICチップまでを読み出せるはずだが、基本的には、このマーカー位置にICチップ内蔵デバイスをかざすことになる。

 今年初旬、UBISOFTのWii U用に開発されているRAYMANシリーズ「Rayman Legends」において、実体物のフィギュア(人形)をWii U Game Padにかざすと、そのキャラクターがゲーム世界側に出現する予告映像がリークされて話題を呼んだが、これはまさしくNFCの機能を活用したものだろう。すなわち、ICチップがフィギュアに内蔵されていて、これをNFCリーダー・ライターが読み込み、その情報に紐づけられたゲームキャラクターをゲームロジックがゲーム世界に出現させたのだ。

 リーク映像では、Wii U Game Padの液晶画面の直上にフィギュアを置く演出となっていたが、このコンセプトデザインが製品版のWii Uでも実現されるのかは不明だ。

 今回、UBISOFTブースにこの件に関して取材してみたが、コメントは得られなかった。

 おそらく、NFCマーカーが明示的にWii U Game Padに描かれていることからも推察すれば、液晶画面の上ではなくこのマーカーの上でICチップを読み書きさせることを奨励するはずだ。

 「ゲームにも使えるICチップ入りのゲームキャラクターフィギュア」は、「ポケットモンスター」シリーズのような収集系要素の強いゲームで展開させれば、商業的にかなり盛り上がりそうな気がする。

 ゲーム世界のような仮想世界に存在するものは、本来は手に触れることはできない。これを何らかの技術を用いて、現実世界に実体化して触れられるようにしたり、あるいは現実世界側のものを仮想世界に透過的に組み入れる概念をタンジブルビット(Tangible Bits)と呼ぶが、3DSで拡張現実(AR:Augmented Reality)に手を出した任天堂は、もしかすると、Wii Uでそういった世界を切り開こうとしているのかもしれない。

 あるいは、もっとシンプルにトレーディングカードゲームに用いるカードにICチップを導入するのもわかりやすいNFCの応用手段だ。これまでにも幾何学マーカーなどをあしらったカードを用いた拡張現実型のカードゲームは存在したが、カードを簡単にコピー機で複製が作れてしまうという問題があった。ICチップベースならばそういったことも起こらない。

 江口氏は「NFCは、お客さまが手軽に電子決済するしくみとしても利用することはできる」という旨の発言もしており、任天堂はNFCを多目的に応用していく計画があるようだ。





■ 1台のWii U本体に2基のWii U Game Padが接続可能。技術的にはもっと接続できる?

 昨年のE3時点では、「1台のWii Uに接続できるWii U Game Padは1台まで」という風に説明されていたが、今回のE3では「2台までの接続をサポートする」と改めて発表された。

 Wii Uは、今年の年末に発売すると予告されているが、発売当初から、2台のWii U Game Padが接続できるかは明言されていない。少なくとも、今回のE3では、1台のWii U Game Padを接続してのデモしか行なわれていない。


Wii Uは、最終的には、メイン画面1枚、子画面2枚の合計3画面出力をサポートすることとなった

 Wii U本体とWii U Game Padの無線映像伝送にはWHDI、WirelessHDのような規格が採用されているとみられているが、その伝送帯域はたかだか3〜4Gbpsだ。これはベースバンドの無圧縮フルHD映像を1ストリーム伝送するには十分すぎる実行性能だが、さすがに複数ストリームの伝送には力不足である。

 しかし、Wii U Game Padの液晶画面はHD解像度でなくSD解像度であることがアナウンスされているので、帯域的には2画面分どころかギリギリ8画面分くらいまでは60fpsで伝送ができるはずだ。なので、今回発表された2画面分の伝送自体には無理はない。

 問題はGPU側の負荷だが、現状、Wii UのGPUはDirectX 10.1世代のAMDのRADEON HD4000系と言うことしかわかっていないため、「これくらいまでは大丈夫」という見積もりはしづらい。

 今回のE3では、江口勝也氏が「1メイン画面+2画面の全部の3画面でハイクオリティの映像を出すことだけが最高のゲーム体験ではないはずだ」という主旨の発言をしており、裏を返せば「それはなかなか難しいかも」ということなのだろう。


きわどい質問にもフランクに解答する江口勝也氏

 全く異なるシーンの3視点レンダリングはメモリフットプリント的にも、GPU負荷的にも大変そうだが「同一シーン内の3視点」というような状況であれば、追加画面のWii U Game Pad側の解像度はSD解像度なので採用されているRADEON HD4000系GPUがよほどの低スペック版でない限りはギリギリなんとかなりそうな気はする。例えば、サッカーゲームなどは、同一フィールドを駆けている3選手ということであれば、シーン内の選手のモーション(アニメーション)処理は全て1回分の更新で済むわけだし、テクスチャ類もキャッシュに載りやすいため、3視点を高効率にレンダリングできる。





■ PS3、Xbox 360対応のマルチプラットフォームタイトルのWii Uへの展開が始まる

 新ハードには商業的に成功するかのリスクがあるため、サードパーティは「よほどの理由」や「ゲーム機メーカーからの手厚い支援」がない限りは、様子見のタイトルを投入する程度に留まる。

 様子見のタイトルといえば「過去のヒット作の移植版(リメイク版)」というのがド定番となるわけだが、Wii Uの場合は、比較的新しいタイトルの移植(あるいは拡張移植)がアナウンスされている。

 今回のE3で公開されたのは「Aliens:Colonial Marines」、「NINJA GAIDEN:Razor's Edge」、「Batman Arkham City Armored Edition」、「Mass Effect3」、「Darksiders II」「Assasin's Creed III」など。


「Aliens:Colonial Marines」 「NINJA GAIDEN:Razor's Edge」
「Batman Arkham City Armored Edition」 「Mass Effect3」
「Darksiders II」 「Assasin's Creed III」

 このうちUBISOFTブースのWii U版「Assasin's Creed III」の開発スタッフに取材したところでは「Wii U版はWii U Game Pad対応要素以外は、ライティングエンジンも、テクスチャも、3Dモデルも、シェーダーまでもがPS3、Xbox 360と共通で済ませることができた」とのことであった。

 レンダリング解像度までが完全同一かは明かしてもらえなかったが、実際問題として、ゲームスタジオ側では、Wii Uは、PS3、Xbox 360のパフォーマンスと同程度を想定した開発を行なっているようだ。

 Wii Uのプロセッサパワーについては未知数な部分が多かったが、今年になってサードパーティの取り組みを見た限りでは、「PS3、Xbox 360クラスの性能はある」ということまではいえそうだ。


Wii U版「Assasin's Creed III」より。グラフィックスクオリティはPS3版とXbox 360版とほぼ完全に同等
実際にWii U版「Assasin's Creed III」をプレイすることができたが、確かにグラフィックスクオリティはPS3、Xbox 360と同等であった

 会期初日の午後に行なわれた「任天堂デベロッパーディスカッション」において江口勝也氏は、「プロセッサパワーが高ければ高いほど、よりすぐれたパフォーマンスや高度な表現が発揮できるのは当たり前だ。Wii Uでは、ある想定した本体価格に配慮してパフォーマンスを決定した。結果、皆さんや私の(笑)お小遣いで買える本体価格にすることができたと思う」という主旨の発言をしている。

 今回のE3では、Wii Uの価格は明らかにされなかったが、こうした発言からも、Wii Uの価格は、先代Wiiの初登場時の価格とほぼ同程度になると見込まれている。

 先代Wiiの時と同じく、今回のWii Uでも、「独特なゲーム体験を提供すること」を優先させつつ、「最大性能よりはコストパフォーマンスを重視したハードウェア設計」を採択したということだ。

(2012年 6月 7日)

[Reported by トライゼット西川善司]