(2016/4/21 00:00)
任天堂を代表するシューティングゲームと言ってもいい、「スターフォックス」のシリーズ最新作がいよいよ4月21日に発売される。シリーズの完全新作は、およそ10年ぶりだ。
最新作「スターフォックス ゼロ」は、Wii UならではのGamePadを活かした“2画面 3Dシューティング”。開発は任天堂とプラチナゲームズの共同で行なわれた。また、本編と言える「スターフォックス ゼロ」と同時に、ダウンロード販売のスピンオフタイトル「スターフォックス ガード」も発売される。2作をまとめて、レビューしていこう。
「スターフォックスゼロ」 - 2つの画面で操る「アーウィン」の独特な操作が、歯ごたえと上達の喜びを生む
科学者Dr.アンドルフ率いるアンドルフ軍による激しい攻撃を受ける惑星コーネリア。侵略の手はライラット系の銀河全域に迫ろうとしていた。攻撃を受けるなか、コーネリア防衛軍司令官ペパー将軍は、最後の切り札である“やとわれ遊撃隊”「スターフォックス」に戦いを依頼する!
「スターフォックス ゼロ」はステージクリア型の純粋なシューティングの形を保ちつつも、操作方法をはじめとした多彩なギミック、それを楽しめる豊富なシチュエーションがギュッとつまった作品だ。
最大の特徴は操作。“2画面3Dシューティング”というジャンル名のとおり、今作ではテレビ画面とWii U GamePadとで別々の画面を表示する。テレビ画面は自機である主力戦闘機「アーウィン」を後方から見る“ビークルビュー”、Wii U GamePadにはコックピット内にいる主人公フォックスの視点で主に攻撃の照準を操作する“コックピットビュー”が映し出される。2つの画面は入れ替えも可能だ。
アナログスティックで「アーウィン」を動かしつつ、Wii U GamePadを上下左右に傾けてのジャイロ操作で照準を操作してショットを放つというのが、この操作のポイントだ。
この2つの操作を同時に行なうというのは、はっきり言って簡単ではなくかなり慣れが必要だ。プレイし始めには誰でも、“ビークルビューでセンターにある照準を自機ごと動かしてショットする”という、従来の操作が中心になるだろうし、もどかしさも感じるだろう。
だが、プレイの熟練度が上がってくると、少しずつ変化が生まれてくる。ふとした一瞬の「あともう少しだけ横に撃ちたい」というときにジャイロでの調整をわずかに使うようになり、それが伸びていくと、左右にアーウィンを振りながら、照準は細かに狙いをつける、という芸当もできるようになっていく。
「最初はもどかしいほどだからこそ、上手くなっていく自分を実感しやすい」。
操縦桿と射撃照準を別々にコントロールする、いかにもメカメカしい操作も、いわゆる“ロボット好き”的なものを惹き付ける独特な魅力があり、最初は難しかったそれを、上手く使えるようになっていく上達の喜びもそこにある。
なお、自機のコントロールと、射撃のコントロールという2つの操作を2人プレイで分担するという、一風変わった協力プレイも可能だ。このギミックならではのユニークな協力プレイとなっているので、一緒にプレイする人がいるなら、より楽しめる。
ステージ中は基本的に前へ前へとルートを突き進んでいくスタイルだが、ボス戦など特定のシーンでは、全方向に自由に飛び回れる「オールレンジモード」で戦うことになる。
オールレンジモード中はシューティングゲームというよりもフライト物のような感覚がある。戦闘機同士が高速ですれ違い、後ろに張り付き、逆に後ろを取り返したり……そうしたドッグファイト的なプレイが楽しめるシーンだ。
オールレンジモード中は自由に飛べるぶん敵を見失うときもあるのだが、そうしたときには、「ターゲットビュー」ボタンを押すと、目標の敵を画面内に捉え続けてくれる。
「アーウィン」のアクションは、シリーズ譲りに多彩かつ機敏な動きが楽しめる。右アナログスティックでの加速/減速は、前方へとルートを突き進んでいくステージ構成のなかで、敵機の出現タイミングすらコントロールできるところがあり、特にハイスコアを狙っていくときに重要だ。
敵に後ろに張り付かれたときには、左右のアナログスティックをクイッと上下に入れて、宙返り。これで上空を1回転し、背後の敵のさらに後ろへと回り込む。たくさんの敵の弾が迫ってきたときには、右アナログスティック2回入れのローリングで、弾をはじき返す。シリーズ譲りの華麗なアクションをうまく使いこなせるようになっていくことで、やはりプレイの面白さが高まっていく。
ステージによってシチュエーションが様々で、プレイもガラッと変わる。アーウィンはAボタンを押すことで「ウォーカー」という2足歩行兵器に変形可能。地上を走り、アーウィンでは入り込めない敵艦や基地の内部へと入り込んで、弱点を突くような攻略が必要なときもある。巨大戦艦にアーウィンで攻撃しつつ接近し、ウォーカーに変形してボスの内部を攻撃、そこからアーウィンへと戻って離脱……こんなプレイも可能だ。
地上戦がメインのステージでは、戦車型マシン「ランドマスター」に乗り込むことも。ウォーカーよりも攻撃力が高く、悪路も乗り越えるマシンで、短時間ならこちらも飛行形態に変形できる。
一風変わったテイストのマシンが、ヘリコプタータイプの「ジャイロウィング」。ホバリング飛行で静かな潜入の可能な偵察機で、ダイレクトアイという小型ロボットを投下してのコンピューターハッキングなど、探索や謎解きをするステージで活躍するマシンだ。
シリーズ作もそうだったが、今作も難易度はそこそこに高め。見た目とは裏腹なところもあるだろうか。のんきにプレイしていると瞬く間にシールドが削られ、やられてしまうこともある。
だがこれが、繰り返しプレイをして敵の出現タイミングやボスとの戦い方を熟知していくと、驚くほどに結果が変わっていく。先読み気味に敵機の編隊にショットを撃ち込み、敵の弾をローリングではじき、もちろん敵に狙われて助けを求めてくる仲間もしっかりと助けていく。
そうなってくればステージの様子をよく見るという余裕も出てくる。すると、最初は気づかなかった“何かありそうなポイント”を発見することも。そういうところで何かをすれば、ステージが分岐して新たなルートやボスへとたどり着くこともあるのだ。本作にはそうした分岐ルートがあるほか、特定の条件を満たすと本編のメインミッションとは異なる追加ミッションが増えることもある。
「スターフォックス ゼロ」 - スターフォックスらしさ、宇宙を舞台にしたスケール感もばっちり。やりこみ派のプレーヤーにオススメしたい1本
結論を言うと、10年ぶりの完全新作となったが、2画面を活かした独特な操作、歯ごたえのある難易度、分岐ルートや追加ミッションの存在、それらが“やりこむことで面白さが高まっていく魅力”を生み出している。他にない操作感なので、最初は戸惑いやもどかしさも出るのだが、そこからスタートするからこそ、上手く操作できるようになっていく良さがクッキリとわかる。
もちろん、“スターフォックスらしさ”は抜群だ。“やとわれ遊撃隊”「スターフォックス」の仲間たちの声がWii U GamePadからひっきりなしに聞こえてくる。仲間のピンチを救い、スリッピーがかわいくお礼を言ってくたり、ペッピーがいかにも古株らしい喋り方をしたり、ファルコが相変わらず強がったり。宇宙や様々な惑星、基地を舞台にしたステージも壮大でギミック豊富。そんな軽快さのある世界で、やりこみの魅力を味わっていく。
シリーズの原初的な魅力をしっかりと押さえつつ、多彩さと独自の面白さを入れ込んだ1本だ。
DLタイトル「スターフォックス ガード」 - 気分はガードマン!プロテカムの映像をタッチ操作で切り替えてロボット軍団を撃退!
ダウンロード配信およびダブルパック同梱のみで発売される「スターフォックス ガード」。こちらは、1,620円(税込)で購入できるスピンオフ的なタイトルだ(「スターフォックス ゼロ」とセットになったダブルパックは7,020円 [税込])。
遊撃隊「スターフォックス」の一員であるスリッピーのおじ、グリッピーが経営する会社のレアメタル採掘場に、不審なロボが侵入しようとしてくる。プレーヤーはその会社の新入社員。採掘場に設置されているプロテカムという採掘場に設置されているレーザー射撃装置つきの監視カメラを切り替えて、侵入してくるロボを撃退する。
テレビ画面には12個のプロテカムが映している映像、Wii U GamePadには採掘場のマップとプロテカムの設置位置が表示されている。
プロテカムの映像を監視し、ロボの不審な姿が見えたらWii U GamePadのプロテカム番号をタッチ! 操作するプロテカムを切り替えて、レーザー射撃でロボを破壊していく。映像を監視して遠隔操作で撃退するガードマンが、プレーヤーというわけだ。
ゲームそのものは一定量の敵を撃退するまでしのぐ、いわゆる“タワーディフェンス”的なものに近いが、自分がプロテカムを切り替えて、狙いをつけて撃つという操作なので、手触りはだいぶ異なる。
敵を見つけるまでは12個の画面を凝視し、発見するやいなやカメラを切り替えて撃退! だが当然、その“切り替えや撃退中”にこっそり別方向から侵入してくるロボが出てくる。
例えば2番のプロテカムを操作してロボを撃退中に、視界のはしでは、10番にロボが迫っているのが見えていたり。心の中では「あ……やばい……10番にも……きてる、きてる!」という思いが出てきて、その焦りが、“今、撃退中のロボへの狙い”を狂わせる。冷静にスピーディーに切り替えと撃退をしていけばいいのだが、そこがなかなか難しく。そして面白みでもあるというわけだ。
ミッションは全100種類用意され、基本的なルールで挑む「メインミッション」以外にも、特殊なルールで挑む「エクストラミッション」も存在する。エクストラミッションでは、限られた弾数で狙い撃って防衛を達成する“スナイパー”や、パラシュートで空から敵が降りてくる“エアボーン”、動きまわるトットリーというロボの背中にプロテカムが設置されている“トットリーツアー”などなど、かなりトリッキーなルールが用意されている。ここで紹介した以外にも様々なエクストラミッションが用意されているということで、遊びごたえたっぷりだ。
また、自分でステージを作成して(侵入ロボットの出現タイミングや種類などを組んで)、それをインターネット上に公開することもできる。もちろん、他のプレーヤーが作成したステージをプレイすることも可能だ。
シンプルなゲームながら、Wii Uならではのギミックを上手く活かした、パズルアクション的なゲームとなっている。敵ロボットのうまく隙間をついてくるような押し寄せ方など、その出来は秀逸。本編である「スターフォックス ゼロ」にもない、またひと味違う楽しみを味わえるタイトルだ。
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