「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」レビュー

METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN

消えない痛みを叫ぶ“怪物”にあなたは何を感じるのか?

ジャンル:
  • タクティカル エスピオナージ オペレーション
発売元:
開発元:
  • KONAMI
プラットフォーム:
  • PS4
  • PS3
  • Xbox One
  • Xbox 360
  • WIN
価格:
8,400円(税別)
発売日:
2015年9月2日

 KONAMIより、9月2日についに発売となるシリーズ最新作「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN(以下、『MGSV:TPP』)」。先日にはインプレッションをお伝えしたが、発売間近の今回は、いよいよレビューをお伝えする。

 インプレッションでは最後に「本作を例えるならば“怪物”だった」という言葉を書いたが、このレビューでは、その意味をできる限り伝えていきたいと思う。「MGSV:TPP」は、おそらく誰も想像していないような独特のテイストとアプローチの作品だ。

 なお、インプレッションと同様にプレイはブートキャンプこと、「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN BOOTCAMP 2015」で行なったものをもとにしている。もちろんネタバレを極力抑えているのだが、そのためにちょっとわかりづらい表現になっているところも多々ある。そこはご容赦頂きたい。

 インプレッションでは数時間分のプレイ内容をベースにしたが、このレビューでは3日間の合計38時間ほどで、ラスト付近までプレイした上でのレビューをお伝えしていこう。

 先に断っておくと、38時間でラスト付近にたどり着いたというのは、ストーリーを中心にかなり駆け足気味にプレイした結果であって、本作のボリュームはそんなものではない。プレイしてみるとすぐにわかると思うが、本作をスピードクリアするなんてもったいない。もちろん筆者は仕事なのでしょうがないのだが……じっくり遊びこむのをオススメしたい。

【MGSV:TPP LAUNCH TRAILER】

“本当の意味での”自由度と、魅力を実現するための作り込み、シリーズ最大級のボリューム

 まずは前回のインプレッションには書かなかった、ミッションをプレイ中に気づいたこと、感じたこと、あれやこれやを伝えていこう。

 大事なポイントと感じたのは“画面は基本的にスネークの見えている世界である”ことだ。視点でいえば画面はスネークの姿を背中越しに見るいわゆるTPS的なものだが、その画面には例えば定番の体力表示やレーダーなどはない。

 武器と弾数はさすがに視覚的にUIで見せてくれるが、体力は画面のダメージ表現で伝えられる(体力は自然回復式)し、発見した敵の位置は気配や音を感じているような表現で見せてくれる。ただ、どれも最低限のもの、スネークの感じているもの、見えているものだけになっている。

 本作にはシステムメニュー的なものもほとんど存在しない。「いやいや、ミッションリストとかマザーベースの指示画面とか、あるでしょ?」と思った人もいると思うが、それらの全てはスネークが所持している端末「iDROID」の画面であり、プレーヤーはそれを見ている。完全にゲーム的な表現の画面になるのは出撃画面ぐらいだろうか。

 マップについては例外的に、プレーヤーがタブレット端末などにコンパニオンアプリを入れて連携させると、そちらに表示させられる。本作をプレイする上で、特にマップや地形が頭に入る前には非常に便利だ。

 話を戻すと、ミッション中だけでなく全編にわたってこの「スネークが見えているもの、聞いているものをプレーヤーも同じ目線で感じる」というところに、こだわりが感じられる。そしてそれは、本作全体のコンセプトとしても大事なことなのかもしれない。

 あなたは「スネークという存在をとおして、この世界を、そこに生まれた報復の連鎖を、しっかりと見て、感じて、考えていく」ことになる。

 そんなスネークのそばには、2人の欠かせない男がいる。「カズヒラ・ミラー」と「オセロット」だ。ミラーはスネークの右腕とも言える副司令であり、オセロットは最初の出会い以来スネークに惚れ込んでいる。

 2人はもちろんストーリーに大きく関わるほか、ミッション中の無線通信でもスネークをサポートしてくれる。ときにはカズが、ときにはオセロットが、そしてときには2人で。

 だが、2人はもちろん性格が異なるし、考えていることも異なる。ミッション中にもミラーとオセロットの助言は異なってくる。

 スネークを中心にした“男の三角関係”だ。

 ミッションのアプローチ、潜入、戦い、連れて行くバディ。それら全てをプレーヤーであるあなたが決められる。そして、そのプレイによって、自分なりのドラマが生まれていく。大事なことは自由度の高さであり“あなたに選択権がある”ことだ。

 本作では、序盤こそミッション中のアクションであったり、やるべきこと、プレイのヒントとなることを主に無線で丁寧にアドバイスしてくれるのだが、ある時期を過ぎると、それがぱたっとなくなる。プレイのTIPSはまだまだあるのだが“自分で見つけ、考えること、そしてそれを使うかどうかはあなた次第”というわけだ。

 例えば、これはローディング画面のヒントに表示されるので書いてしまうが、敵の拠点には回転している大きなアンテナがある。それは対空レーダーだ。特に画面に表示が出るわけでも、指示されるようなこともないのだが、これを破壊すると出撃時のヘリのランディングゾーン(着陸地点)が増える。あなたがレーダーを破壊したからだ。

 そうすると、ミッションの目的地に直接飛ぶということも可能になる。ただし、敵のまっただ中を強襲するわけで、ものすごく危険だ。滞空中からヘリから制機射撃しつつ降りていくことになる。うまく敵を殲滅できなければヘリから降りる前に撃ち落とされることもある。腕に自信があるなら……というものだ。

 これはもちろん一例で、他にも“ゲーム側から教えられるわけではないが、やると良い事”はたくさんある。

 そうしたたくさんの要素があることで、プレーヤーそれぞれのプレイスタイルが異なっていく。「自分のスネークはこんな感じ」、「いやいや、自分はこういうプレイスタイルですよ」という会話がブートキャンプでもたくさん交わされたほどだ。そんな中では「え!? そんなこともできるの?」という驚きも生まれる。

 おそらく皆さんも発売後にプレイし、一段落してからネット上なりSNSなどで、同じくプレイ中の人の言葉を覗くと同じ驚きや楽しさを味わえるはずだ。

 さて、ミッションを選び(ちなみにミッションは繰り返しプレイできる)、装備、バディ、キャラクター(スネークだけではなくマザーベーススタッフでもプレイできる)を選び、最後にヘリの降下地点を決定して出撃となるのだが、プレイスタイルによってここからすでに、人それぞれの個性が出てくる。戦闘重視の人は重装甲のバトルドレスを、潜入重視な人はスニーキングスーツを、兵器の開発を全然していない人だと……苦労する。

 なかでも大きく変わってくるのは相棒「バディ」の存在であり誰を連れて行くのか、だ。バディには存在が明かされているものだと、白馬の「D-Horse」、美人スナイパーの「クワイエット」、忠実な大型犬「D-Dog」、二足歩行兵器「D-Walker」がいる。もちろんバディの装備も開発していくことになり、彼らに何を持たせるか、装備させるかで役割も変わってくる。

 バディはプレイスタイルに合った選択が大事。例えばクワイエットならステルスの潜入サポートに役立つし、D-Walkerは好戦的なプレイに合っている。筆者はDDこと「D-Dog」を1番連れて行ったのだが、DDの野生の嗅覚は科学的なレーダー装備を凌ぐものがあり、万能に役立ってくれる。

 バディとの好感度も存在する。たくさんのミッションに連れて行ったり、ミッション中に声をかけたりすることで上がっていくようだ。余談だが、筆者はミッション終了後にヘリのピックアップが到着するまでの時間を「スーパーよしよしタイム」と命名し、D-Dogにひたすら「よしよし」と声をかけ、なで回していた。そんなわけでDDとの好感度だけがものすごく高くなっていた。

 なお、“自由な遊び方がもたらすもの”として、もっと大きな、重要な話なのだが、ブートキャンプ中にラスト付近までプレイできたメディア陣3人のうち、筆者だけはちょっと違いが出ていた。それは、筆者のある行動が原因だったのだが……「何をするのも、しないのも、あなたの自由だ」。自由の中にたくさんの隠れた要素があり、それをどう使うかもあなた次第。

 本作の“本当の意味での”自由度と、ボリュームには呆れるほどのものがある。

 アクションで特筆したいのは“操作性の良さ”。デフォルトのボタン配置は「GROUND ZEROES」からも一部に変更が入っていて、より統一感のあるレイアウトになっている。

 ある強敵との戦いで、銃弾をかいくぐり、障害物を乗り越え、その陰に張り付き。放たれたランチャーのミサイルに反応してまた走りだし、ダイブしてギリギリで爆風を避ける! そんな一瞬の判断でスピーディーに操作する場面でも、操作の迷いが出たり、レスポンスが悪くなるようなことがなかった。

 個人的に「MGS」シリーズはボタン配置が独特な印象があって、実は筆者は「GROUND ZEROES」でも「あれ? この操作だけはこっちのボタンになっているんだっけ……」という感じに不一致感が出て少し苦労したのだが、「MGSV:TPP」ではそれはなかった。自然に理解できるし、操作に対するレスポンスに一体感があり、モーションのリズムも手に馴染む。いわゆる感触がいい。

 そうした良い手触りのなか、強敵と死闘を繰り広げる。マザーベース支援班に爆撃を要請し、弾薬の投下も要請する。物陰に隠れ、リアルタイムに敵が迫ってくるなか、必死にiDROIDを操作する。ときには半透明のiDROID画面越しに敵が迫っているのが見えて、操作を途中で切り上げて回避するなんていう場面もあった。iDROIDを手に取り焦る気持ちは、スネークとリンクしてくる。

 前回インプレッションで「本作に難易度選択はない」ことをお伝えしたので、「難しいミッションを自分にクリアできるだろうか……」と不安な人もいれば、「高難易度のミッションにもチャレンジしたいんだけど!」という人もいるだろう。

 まず、本作のストーリーベースの基本となる難易度は、そこまで高くはない。というのも、たっぷりとお伝えしてきているとおり本作ではいろいろな戦い方ができるので、どんなアプローチをするか次第で難易度が変わってくる。じっくりと考えれば……または兵器開発をしっかりと行なっていれば、それらを駆使して乗り切れる。基本的には兵器開発を進めれば楽になる。

 では、高難易度のミッションはというと……こちらもしっかりと用意されている。救済策である「チキンキャップ」も禁止で、とてつもない攻撃にさらされるミッションなり、ノーアラートが条件のミッションなど様々なものがある。

 筆者もいくつかそうした高難易度のミッションに挑んだが、「これは厳しい……!!」と声を上げながら何度もリトライしたほど。そうした高難易度ミッションでは、自由に楽しむというよりも“使えるものは全て使って本気で挑む”という方向が強まっていく。

 例えば、ノーアラートが条件のミッションでは段ボールに隠れじりじりと進み、バディのDDことD-Dogを敵兵にけしかけまくるという、文字通り“使えるものは何でも使う”戦法で進んだり、デコイなどの陽動を駆使しまくって敵兵たちを動かして、なんとか隙をついて目標を達成したり……。

 ある意味、高難易度ミッションの方が本作の真髄とも言える面白みが見えてくるところがあった。ぜひチャレンジしてもらいたい。

2つのオンラインプレイ「FOB ONLINE」と「METAL GEAR ONLINE」

 本篇を遊びこみ、それに一区切りがついてもなお、「MGSV」は終わらない。報復の連鎖が終わらないように、オンラインでのプレイ体験が続いていく。

 そのひとつ「FOB ONLINE」についてはインプレッションでお伝えしたが、自分が集めた仲間、開発のための資源などをプレーヤー同士が奪い合うという、まさに“報復の連鎖”をその身で楽しむというものだ。

 FOB(前線基地)やそこを守備する警備兵、彼らの装備、さらにドローンなどの防衛設備などは、プレーヤーそれぞれが作りこんでいく。プレーヤーの数だけ歯ごたえのある潜入ミッションが生まれていく。そしてそれをプレーヤー同士で脅かしていく。

 なお、この「FOB ONLINE」には課金要素もある。そのひとつは「FOB(前線基地)を増やす」というものだ。無料でひとつは建設できるが、それをさらに増やしたい場合は有料でというわけだ。

 FOBはひとつあれば基本的な遊びには充分ということで、筆者としてもそう思えるのだが、例えばマザーベーススタッフの最大人数枠をすぐにでも増やしたいときに、有料でFOBを追加で建設すれば枠を増やせるという。そうした時間短縮をしたかったり、よりどっぷりと遊びたい人向けの課金要素となっている。

 また、他には“他プレーヤーに奪われたときの保険”のようなものもあるという。例えば旅行にいくなどしばらくプレイができないときにFOBの仲間や資源が根こそぎ奪われても、課金で保険をかけておけば、奪われたのと同等の仲間や資源がもらえるという(仲間は同じキャラをそのままではなく、同等のキャラになるという)。

 課金要素はそうした「時間短縮であったり、特殊な希望を実現する」ためのものになるということだ。

 もうひとつのオンラインプレイである「METAL GEAR ONLINE」は、先日に発表されたとおり、プレイステーション 4/3版、Xbox One/360版の開始時期が、米国太平洋標準時で10月6日より全世界一斉にサービスが開始される。

 今回はまだ「METAL GEAR ONLINE」はプレイしていないのでレビューには含めていないが、こちらも楽しみだ。なお、オンラインプレイは同じハード同士でのマッチングとなる。

全てのゲーム内要素や表現が“あなたに伝えてくる”。それをどう受け取るのかもあなた次第

 軍拡すること、力を持つこと……核を保有すること。生きるために銃を取る子供たちの現実。そして、報復は連鎖して、さらなる報復を生むということ……。本作には「メタルギア」シリーズの重要なキーワードが、例えるならドキュメンタリーテイストに込められている。

 プレイ中、常に感じたのは“「MGSV:TPP」は考えることを求めている”ということだ。そのための材料となるものをたくさん投げかけてくる。それは直接的な言葉ではなく、ときにゲームプレイの中に、ときに突きつけるような光景の中にある。

 ミッションの舞台はオープンワールドとなり、アプローチの仕方、使う装備や携行品、連れて行くバディ、変化する昼夜と天候、そして、人間らしい反応と行動を見せる兵士たちがいる。その世界に対してプレーヤーはどう楽しむのか。自分で考え、工夫できる人ほど楽しめる“やりこみ”の方向性だ。

 それは、旧世代のレールをなぞるようなデザイン、プリレンダムービーを見るためにプレイを進めさせるようなデザインからの脱却であり、ある意味でより原初のゲームにあった手触り重視の魅力に近づいているとも言える。

 その楽しさをしっかりと実現するために、ミッションは細かなところまで作り込まれている。そしてゲーム全体のボリュームも圧倒的だ。逆に、そうした“遊びこめる”方向性なので、駆け足気味にプレイしてしまうと得られる楽しさは少なくなってしまうかもしれない。それもまた自由がもたらす結果だ。本作をいかに楽しめるかは、全て、あなた次第と言える。

 物語において、あなたは常にスネークの目線に立ち、目の前で起きることをただそのままに受け止めていく。現実と同じように眼に見えるものだけを考えても、真実や本質は掴みづらいかもしれない。あっさりとした遊び方であれば、そうなる。

 「MGSV:TPP」は多くを語らない。強制的に見せたり伝えたりすることが非常に少ない。あなたが“知りたい”のであれば、カセットテープの音声記録を聴いたり、ミッション中の光景や敵兵士たちの会話、マザーベースなど様々な場所でそれを探し、見つけていく。どこまで知り得ることができるのか。それを知って何を想うのか。現実同様に全てあなた次第だ。

 オンラインプレイのひとつ「FOB ONLINE」では、報復の連鎖を自らのプレイで得た資産とも言えるものを奪い合うことで、楽しく体験しつつ、考えていく。そこにあるテーマは「報復の連鎖とはどういうものか?」だ。ゲームだからこそ可能な“プレーヤーに体験してもらう”というアプローチであり、言葉を押しつけるものではない。プレーヤーは面白いゲームを楽しみつつも、そのテーマに自然と身を投じていく。その先にあるものにあなたは何を感じるだろうか。全て、あなた次第だ。

 ゲームプレイの全てが“報復の連鎖”を自ら体感し、考えていくきっかけになっていく。その統一されたコンセプトとメッセージ性は、直接的な言葉ではなくプレイの楽しさの中に生きている。

 ゲームという表現はこれだけ人間力を伝えられるところまで、たどり着いた。

「THE PHANTOM PAIN」、消えない痛みを叫ぶ“怪物”

 レビューというのは要するに「そのゲームがどんなゲームだったのか」を伝えるものだ。筆者は「THE PHANTOM PAIN」がどんなゲームなのかを表現するのに何日も考え続けることになった。これまでにたくさんのゲームレビューなり記事なりを書いていろんな表現をしてきたが、1番難しかった。

 ようやく出てきた言葉は“怪物”というものだ。

 公式に宣言・宣伝されているとおり、「THE PHANTOM PAIN」は復讐の物語、報復の物語だ。「GROUND ZEROES」で失った、仲間、栄誉、そして体の部位。そして生まれたファントムペイン、消えない痛み。復讐のために再び仲間を集め、軍拡を繰り返していく。暗部のテーマと言っていい。

 ファントムペインとは日本語で「幻肢痛」、何らかの事故などにより体の一部を失っても、脳はそこに失った体があるかのように感じる現象が「幻肢」。そして、そこに痛みまでをも感じるのが「幻肢痛」だという。そしてその症状は鏡に自らを写し、それを見ることで緩和されるという。

 カズヒラ・ミラーやオセロットの言葉、そして引き起こされていく出来事に、スネークは多くを語らない。今作のスネークは寡黙で、まるでプレーヤー自身とリンクしているかのようだ。

 スネークが自分の言葉を多く持てば、プレーヤーの考えていること、思っていることとのリンクは切れ、スネーク自身が映画の登場人物の1人のようになり、プレーヤーはその言葉を聞くのみになって、考えることを止めてしまう。「THE PHANTOM PAIN」はそうではない。「THE PHANTOM PAIN」はあなたに痛みを叫び続ける。報復の連鎖の、ありのままを叫び続ける。スネークは語らない。それに対し何をするのか。するべきか。誰もその答えを教えてはくれない。答えはあなたが見つけなければならない。

 ファントムペイン、幻肢痛。失ってもなお消えない痛み。あるはずのない痛みを抱え続ける苦しみ。その心は痛みを与えた者への報復を促し、報復は新たな報復を生む。メタルギアのサーガにおいて、一体何が歯車を壊したのか。命の始まりのように、メタルギアサーガもまた痛みが生み出しのか。この後の時代として描かれてきたソリッド・スネークの物語もまた、報復の連鎖の先でしかなかったのか。

 本作の宣伝に使われている“傑作”という言葉は筆者としても正しく思えるが、そのニュアンスは、単純に「おもしろい!」と笑顔になれるゲーム……という意味には留まらない。その先の領域を含めてだ。これは面白いプレイができるゲームであると同時に、得体の知れない恐ろしさも併せ持っている。そして、妥協も打算もなく“本気”で襲いかかってくる。もしかしたら、そのメッセージ性や光景に、あなたは「怖さ」を感じるかもしれない。

 例えるならば、これは“怪物”。モンスターだ。ヴェノム・スネークはその容姿から「鬼」に例えられるが、本作は、「怪物じみたメッセージ性のなかを鬼とリンクしたあなたが歩んでいく物語」と思える。怪物はあなたに投げかけ続ける。問い続ける。大事なことは何か。考えるべきことは何か。その工程は娯楽という言葉にも当てはまらないかもしれない。ただただ、人間力が込められた作品を浴びていく。そしてそれが、あなたの心に染みこんでいく。

 筆者なりのレビューの結論は「このゲームをプレイしてあなたは何を想うだろう?」というものだ。面白いゲームであることは間違いないが、問題はその先だ。そこに込められた人間力に、描かれているものに、あなたはどんな反応をするのか。どんな想いを持つのか。それは人それぞれに異なるだろうし、想像しきれないものがある。

 ゲームはどれほどのことを伝えられるのだろう。ゲームだからこそできる伝え方とはどういうものか。あなたは何を想うだろう? どう表現するのだろう? 痛みを受け入れることができるのだろうか?

 見届けなければならない。

 ……。

 ……と、このままシリアスなままに終わってもいいのだが、実はここまでお読み頂いた皆様に謝らなければならないことがある。

 ブートキャンプの最終日に、小島監督から「最後だけはプレイしないで欲しい」という要請というか、お願いが出されたのだ。そのため筆者は最後の手前までは到達したが、その先に待ち受けるもの、そして、その意味を知らない。

 最後には一体何が待っているのか? その眼と心でぜひ確かめて欲しい。

(山村智美)