PS4/Xbox Oneゲームレビュー

シャドウ・オブ・モルドール

ウルクの軍勢の権力闘争を再現した「ネメシスシステム」

ウルクの軍勢の権力闘争を再現した「ネメシスシステム」

ウルクの集団を表現するネメシスシステム
ミッションではウルクの行動に干渉できる
メインクエストでは1人のウルクとの出会いを通じてネメシスシステムを学ぶ
タリオンを殺した敵は強力になる

 主人公タリオンは敵であるウルクのすむ土地「モルドール」のど真ん中で戦いを続けていく。ウルク達は階級社会を形成しているが、誰もが激しい上昇志向をもっており、何かのきっかけで仲間同士の血みどろな戦いが始まる場合もある。タリオンはこの習性を利用し、ウルクの軍団を崩壊させようともくろむ。

 ウルクの軍団の階級制度を利用するのが本作の目玉「ネメシスシステム」だ。ウルクは4から5人の軍団長を頂点に、4段階の階級制度を形成している。各小隊長にはパワーと弱点、特性が設定されており、上に行くほど強い。

 ウルクの社会は弱肉強食だ。常に強いことを示さねばならず、部下の前で獣と戦う「試練」や、他の小隊長との「抗争」、さらに負けた小隊長を殺す「処刑」などを行ない、勝つとパワーを得て、さらに上の階級に上がる場合もある。タリオンがウルクを倒し空位になっていたり、自ら上の階級の者を倒し、その地位を手にする場合もある。

 また、タリオンが倒されるとウルクの世界は大きく影響を受ける。タリオンを倒し力を証明したウルクはパワーを得て地位を上げる。小隊長以下の一般兵だった場合、タリオンを倒したことで小隊長になる場合もある。さらに小隊長はタリオンとの戦いを記憶している。タリオンと刃を交えるとき、「おまえは俺が殺したはずだ!」、「あのときは俺は逃げられた。俺は強くなっておまえを倒す」といったセリフも話す。プレーヤーごとに全く異なる戦いが体験できるのだ。

 まず最初、プレーヤーはこのネメシスシステムの斬新さに驚かされるだろう。ウルク達は様々な特性を組み合わされ生まれ、そして成長していく。ゲームになれない序盤など倒されることも多く、ウルクが成長して焦ってしまう場合もある。小隊長が次々と出てきて撤退しなくてはならない状況なども多い。

 しかしプレーヤーもまたタリオンをうまく扱えるようになり、得たスキルで戦術の幅を広げていく。群れで待ち構えるウルクに対して、どう戦いを展開していくか、火に弱い小隊長をたき火の前に誘い込んだり、カラゴルが嫌いな小隊長の鼻先にカラゴルを誘い込んだり、全ての状況を自分に有利にするために活用していく。ここにワクワクする楽しさがあるのだ。

 さらにゲーム中盤からはタリオンの持つ“幽鬼の力”がパワーアップし敵を支配下に置くことができる。小隊長の場合は支配をしてから「命令」することも可能になる。“黒の手”の配下のウルクの小隊長を全て支配下に置くこと、これが目的となるのである。このため支配下に置いたウルクが決闘で勝利したり、試練を乗り越えることを手助けすることもある。「毒をもって毒を制す」を地でいく楽しさがある。

 自分の息の掛かった隊長達を育て上げ、組織を自分の支配下に置くというのは、ダークな面白さがある。さらにこの支配の力はスキルをとることで戦闘中でも活用できるようになる。戦いながら味方を増やすのは、従来の逃げて隠れて戦うのとはまた違った感触を生み出す。まるで自分が吸血鬼になり、どんどん仲間の怪物を増やしていくような感じだ。

 このネメシスシステムは「新しいゲームをプレイしている」という楽しさをもたらしてくれる。複雑なシステムであり、常に多数の敵と戦う本作だからこそ得られるリアリティがある一方、難易度も高めではあるが、焦らずタリオンを育て、ゲームを進めていくうちに体得していける。今後この作品の開発者や、本作のシステムに刺激を受けたクリエーター達がどのような作品を生み出していくかも楽しみだ。

【「ネメシスシステム」トレーラー】

【ネメシスシステムがもたらす新たなゲーム性】
ウルクは権力闘争を繰り広げている。タリオンはこの争いを利用し、ウルクの信頼を失わせ、軍を弱体化させていく
支配したウルクは白い光に包まれる。自分の息の掛かったウルクを勝たせ、軍に食い込ませていく
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(勝田哲也)