PS4/PS3/Xbox One/Xbox 360ゲームレビュー

サイコブレイク

少ない体力、弾丸、危険を覚悟しての探索……“常に厳しい戦い”が続く、絶妙なゲームバランス

少ない体力、弾丸、危険を覚悟しての探索……“常に厳しい戦い”が続く、絶妙なゲームバランス

炎や瓶、様々なものを活用して戦っていく

 「サイコブレイク」はかなり厳しいゲームだ。弾薬も体力も常に少なく、それなのにそこかしこに動き出すかもしれない死体が転がっていて、さらに様々なトラップが仕掛けられている。それに加えて歯車が追いかけてきたり、地震で地面が割れたりと、こちらを追い立てるような演出もたくさんあり、危機感をあおり立てる。

 まず、ホーンテッドのタフさが尋常じゃない。1匹倒すのだって数発の弾丸を弱点である頭部に当てなくてはいけない。ホーンテッドは走ってくるし、攻撃するときにはダイナミックに身体を動かす。しかもこちらも長時間銃を構えていると狙いがどんどんぶれていく。もちろんボスの耐久度の高さはホーンテッドの比ではない。「サイコブレイク」を始めたばかりの時は、その戦いの厳しさに誰もがびっくりするだろう。

 プレーヤーはこの強いクリーチャーをどう倒していくか、もしくはすり抜けていくかに頭を悩ませることになる。ホーンテッドは背後からならステルスキルが狙える。落ちている瓶を投げ注意を引いたり、進路を微妙に調節し、相手の背後を狙うことで弾丸を消費せずに倒せる。また、敵の脚を撃つことで床に転ばせ、マッチで火をつけても弾丸の節約になる。さらにうまく敵を誘導すればまとめて火がつけられ、多くの敵が一気に倒せる。ゲームが進むと入手できるショットガン、スナイパーライフル、手榴弾などを活用すればさらに有利に戦えるようになる。

 武器の中でもボウガンの「アガニクロスボウ」はとても便利だ。敵を打ち抜く銛のような「ハープーンボルト」の他に、爆発する「マインボルト」、閃光を発する「フラッシュボルト」、電気を放出する「ショックボルト」、周囲の敵を凍らせる「アイスボルト」の5種類の矢が使える。トラップなどを解除することで得られるパーツで5種類どの矢でも作れる。筆者にとってはマインボルトがかなり使いやすかった。敵をまとめて吹っ飛ばせるし、敵の進行方向に設置することでトラップとしても使える。ボスとの戦いでもかなり役立った。

【闇の中を進む】
明らかに敵が潜んでいる場所。弾薬も体力が少なくても前に進むしか道はない

 こうした強力な武器を持っていても戦いはきつい。弾の入手は限られているし、持ち運べる上限は少ない。上限はタティアナの病院でグリーンジェルを使って上げていくことになる。アイテムは見えているものだけでなく、壊せることができる木箱や、机の引き出し、ロッカーなどにも隠されている。グリーンジェルが入った瓶もそこかしこにあるので、探索すればするほど入手できる。

 このアイテム数のバランスは、本作でよく練られていると感じる部分だ。広い地域を探索するのは、余計な敵やトラップと出会うことも多くなる。それはとても怖いし、できれば早くステージを駆け抜けていきたい。本作は殺されるとチェックポイントまで戻され、入手したアイテムなどもチェックポイントを通過した状態に戻される。次のチェックポイント寸前で倒されたときなどは、再挑戦時には一気にゴールまでの最短距離を進みたくなる。しかしアイテムを手に入れておかなければその先の戦いがきつくなる。「サイコブレイク」はこの葛藤が楽しい。

 時にはアイテムが潤沢になり、そうなると無敵になったような気分になる。実際には決してそんなことはなく、つい弾丸を消費してしまったあげく、弾薬やマッチが少なくなっていることに気が付き、目の前が真っ暗になる。この気持が激しく上下するプレイ感覚はとても面白い。

 さらに実は、「サイコブレイク」は難易度選択以外の部分でも、ゲームバランスが変化しているようなのだ。入手アイテムの数や、敵のAI、数などはチェックポイントから再スタートする場合でも変わるのである。実際、何度か同じところを挑戦していた時、さっきまでいたホーンテッドがいなくなっているのが確認できた。このように、うまい人にはさらにきつく、アクションゲームがあまりうまくない人でもきちんと進められるような工夫が随所にされているようである。

 筆者が中級難易度である「サバイバル」をプレイした実感では、ホーンテッドの群れから逃げられたりするところなどで「ひょっとして手加減してもらっているのかな」と思うことがあった。この微妙な調整は決してゲームがぬるくなるわけではない。アイテムのやりくりや、進むルート、武器の選択などで最大限努力し、色々なことを試し、失敗から学び、そして何とか切り抜けていく、そういうバランスを実現するための調整なのである。だからこそ、危険を突破したときに、強い爽快感があるのだ。

【巨大クリーチャー出現】
巨大な蜘蛛型クリーチャー。街灯と大きさを比較すればその巨大さが伝わるだろう。この敵との戦いはゲーム中盤から後半にかけてだが、スピード感がすさまじく、必見である

 また、プレイしていて感じたのは、「サイコブレイク」は“実況”映えする作品だといこうとだ。初プレイでひたすら怖がるのも良いかもしれないが、プレイした自分にとって“最凶”の姿はぜひ見たいという気持ちが強くなった。本作には「サバイバル」をクリアして選べる、「ナイトメア」、そしてその上に、1回のダメージで死んでしまう「悪夢」という難易度が用意されている。この悪夢を超絶テクニックで進んでいくプレーヤーのプレイ映像が見たい。最高難易度ではホーンテッドなどのクリーチャーがどう動くのかとても気になる。

 もちろん、サバイバルより簡単な「カジュアル」という難易度も用意されている。あえて難易度を下げて、恐怖の演出や、ステージの作り込みをじっくり楽しむという遊び方もありだ。さらに1度クリアするとデータを引き継ぎ、強力な新武器もアンロックされる「NEW GAME +」というモードがあることも書いておきたい。グリーンジェルでのパワーアップを引き継いだ高性能のキャラクターと、強力な追加武器でプレイする「サイコブレイク」のニューゲームは、1度目とは全く違うものになるだろう。厳しさだけでなく、とことん爽快感を追求するゲームプレイも用意されているのだ。

 全体的に難易度が高いゲームではあるが、ホラーが好き、三上氏の作るゲームが好き、「バイオハザード」をはじめとしたサバイバルアクションが好きという人に強くオススメしたい。くじけない心があればあまりアクションがうまくないプレーヤーでも進められる。このゲームバランスの取り方、そして何より“恐怖”をテーマにここまでゲームを練り上げた作品から受ける衝撃は、一見の価値があると思う。ゲーム史に残る、長く人に語られる完成度を持った作品だと感じた。人を選ぶ作品ではあると思うが、それでも多くのゲームファンに遊んで欲しい。

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(勝田哲也)