(2014/6/5 00:00)
巨大ロボットや、改造人間、月面基地、巨大砲を備えるUボートなど、謎の超科学を駆使した秘密兵器で第2次世界大戦を勝ち、世界を征服したナチス。大戦末期に頭に傷を受け、14年間昏睡状態だった主人公ブラスコヴィッチは、眠りから覚め、世界を覆ったナチスに立ち向かう。
「ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー」は、圧倒的不利な状況の中で、戦い続けるブラスコヴィッチの活躍を描く。弊誌ではプレビューで本作の“感触”を紹介したが、今回はより掘り下げ、世界観や、ゲーム要素をより細かく紹介したい。
「ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー」の世界でのナチスの悪辣さはかなり強調されており、“倒すべき敵”として描かれている。また、“世界を股にかけナチスと戦う”部分を強調したステージの描写はワクワクさせるものがある。世界の描かれ方に注目して欲しい作品だ。
「こいつらは絶対に倒さねば!」。思わず怒りがこみ上げるナチスの描写
強大な軍事力を背景に、世界を支配する悪のナチス。「ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー」ではナチスの悪さを、繰り返し見せつける。その描写は力が入っていて、プレーヤーの心に強く刻み込まれるだろう。
その中でも、最も強烈な場面がチャプター1にある。ブラスコヴィッチは連合軍の1人として「デスヘッド」と呼ばれる男の基地を強襲するのだが、後一歩というところで罠にはまり捕まってしまう。ブラスコヴィッチは押さえつけられ、目の前に2人の仲間が連れてこられる。デスヘッドは言う。「どちらが私の研究に役立つと思う?」。
ここでプレーヤーはデスヘッドに“犠牲”を強制的に選ばされる。歴戦の勇士であるファーガスか、若いワイアットかどちらかをデスヘッドに差し出さなければいけない。選ばなかった場合、殺されてゲームオーバーだ。ゲームはここでファーガスとワイアットそれぞれのストーリーに分岐する。この決断はブラスコヴィッチだけでなく、生き残った兵士も「生き残るのはやつの方がふさわしかったんだ!」と自分とブラスコヴィッチを責め続けることになる。無力なだけにデスヘッドへの怒りがこみ上げる描写だ。
そして戦争に勝利したナチスは世界を覆っていく。ブラスコヴィッチは基地を脱出する際の頭部の怪我が原因で、身体が動かず長い時を過ごすのだが、目覚めるきっかけもナチスの暴虐だ。精神病院の患者達を何の感情も見せず撃ち殺し、止めようとする院長達も手にかけるナチスの兵達に、ブラスコヴィッチは14年の眠りから覚め、その闘争本能のおもむくままに戦いを再開する。
その後もレジスタンスを収監する刑務所や、収容所などで繰り返しナチスの“支配”の恐ろしさ、残虐さを見せつけられる。特に醜悪な描写がブラスコヴィッチと協力者のアーニャが身分を隠して列車で移動しているときに、ナチスの女性高官フラウ・レンゲルに呼び止められるシーン。彼女はただの観光客であるはずのブラスコヴィッチを呼び止め、「汚れた血が混じってないか調査する」というのだ……銃を突きつけて。
彼女は次々とブラスコヴィッチに2つづつの写真を見せる。間違った方を選ぶと射殺するという。いくつかの写真を見せた後、ブラスコヴィッチに銃口を向け彼女は言う。「冗談よ、これはただの旅行の写真」。緊張感を煽る演出、傲慢きわまりない彼女の態度……端的に今、ナチスが世界にどのような態度で“君臨”しているかを見せつける演出だ。
この他にもナチスの支配によって威圧的な建物に覆われてしまったロンドンや、地中海を横断してアフリカまで伸びる道路など、ナチスの超科学のすごさ、支配された世界が様々な角度から描かれる。また、様々な場所で見ることができる新聞や雑誌の記事からもナチスの世界征服が描かれる。特にレジスタンスの隠れ家で見ることができる新聞の切り抜きは、アメリカや中国、ヨーロッパでナチスがいかに侵攻し、世界にその勢力を広げたか、様々な記事から読み取ることができる。
ゲームはただ本筋を追うだけでなく、敵を倒した後マップの細かい部分をチェックしたり、クエスト目標を達成せずにレジスタンスの隠れ家を歩き回ったり、自由にフィールドを歩き、探索できるところが大きな魅力だ。本作は、「ナチスに支配された世界」という現実とは異なる歴史を歩むパラレルワールドをじっくり楽しめる。しっかりと作り込まれた世界を感じられるというのは、「ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー」の大きな魅力だ。