PS3ゲームレビュー

BEYOND: Two Souls

数奇な運命に翻弄される女性を丹念に描く異色作
悲しみに負けず、ジョディはエイデンと共に歩み続ける

ジャンル:
アドベンチャー
発売元:
ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元:
プラットフォーム:
PS3
価格:
5,980円
発売日:
10月17日
プレイ人数:
1〜2人
レーティング:
CERO:D(17歳以上対象)

 「彼女はいったいどうなってしまうんだろう?」その思いこそが、本作をプレイする原動力となる。「BEYOND: Two Souls」は非常にユニークな作品である。ある霊体と生まれた時からずっと一緒にいる1人の女性ジョディの半生を丹念に描く。不思議な力を持ってしまった彼女は、孤独で過酷な運命にさらされ、もがき苦しんでいく。プレーヤーは彼女の人生の様々な場面を見ながら、より深く感情移入していく。

 ハリウッド女優のエレン・ペイジがジョディを演じ、グラフィックスはとても写実的であり、映画やTVドラマを見ているかのような気持ちにさせるが、プレイしていると、開発者が“ゲーム”という手法に強いこだわりを持っているのがわかる。インタラクティブなゲームでしか楽しめないドラマの手法と物語を、本作は持っている。

 ジョディはとても“かわいそうな”女の子だ。彼女は優しく、素直で、傷つきやすい心を持っている。その願いは「みんなのようになりたい、友達が欲しい」というささやかなものだが、彼女の運命がその願いから彼女を遠ざける。この子に幸せが来て欲しい。プレーヤーはそう思いながら、エレンの半生を追体験していくことになる。

 なお、ゲームの性格上、本稿ではゲームのストーリーをかなり紹介している。ネタバレを嫌う方は、ぜひプレイしてから読んで欲しい。

ジョディとエイデン。離れることができない2人の半生と運命を描く物語

エレン・ペイジが演じる主人公ジョディ
ウィレム・デフォーが演じるネイサンは彼女を見守り続ける
シーンの最初に表示されるライン。シーンの時間軸がわかる。シーンは時系列的にばらばらに追加されていく
「終わりなんて来ない」。胸に突き刺さる言葉だ

 ジョディは「エイデン」という“霊体”と生まれた時から繋がっている。エイデンはジョディと不思議な光の帯で繋がっている。エイデンは鏡を見ても姿は映らず、プレーヤーは彼(彼女?)の声を聞くこともできない。エイデンは霊体と言われているが、生前はどんな人物なのか、そもそも人間だったのかもわからない。エイデンと意思疎通ができるのは、ジョディのみなのだ。

 作中、エイデンはまるでジョディの抑えられない意識、暴走する超能力のようにも描かれる。しかし、ジョディはエイデンを自分と繋がっているものの、全く異なる意識を持った別な存在だと認識している。ジョディはエイデンについて「私とくっついていてどこにも行けない、だから怒っている」という。エイデンとジョディはどう生きていくのか、それこそが「BEYOND」のテーマだ。

 プレーヤーの前に提示されるのは1つの“ライン”だ。ここに「失意」、「実験」といった項目が浮かび上がってジョディのエピソードが語られていく。プレーヤーはしばらくゲームを進めることでこのラインは過去から未来へと伸びるジョディの人生であり、このラインによって今見ている記憶がジョディの半生のどの位置にあったことなのかを知るのである。

 項目は次々と増えていき、プレーヤーはジョディへの理解を深めていく。ジョディが過去何をしたのか、この時のジョディの境遇はどういった理由によるものなのか……こういった答えはずっと後になって判明することもある。プレーヤーはばらばらのピースを与えられそれをはめ込んでいくことで、だんだん全体の“絵”がわかっていくという構成になっている。

 ジョディはとても不幸な女の子だ。「実験」という記憶では幼いジョディが気乗りしない様子で実験をするシーンが描かれる。隣の部屋にいる女性が持つESPカード(超能力実験に使われる模様が描かれたカード)を当てるというもので、ジョディは“エイデン”を通じて彼女のカードを見る。エイデンは壁をすり抜けることができ、光の帯でジョディと繋がっている。エイデンの視点をジョディは共有することができ、それにより女性のカードを見ることができる。

 「次の実験をしよう」という声にジョディはエイデンを使って女性の周りのものを動かす。エイデンは何かをはじくかのようにものを動かせるようだ。女性は何もない空間でものが動くことにパニックを起こしてしまう。次々とものを動かすエイデン。隣の部屋からジョディの悲鳴が聞こえる。ここでプレーヤーはエイデンが制御が難しい力であること、ジョディ自身にも制御できないことを知るのである。部屋に飛び込んできた研究者ネイサンに抱き留められるジョディ。「終わったんだ、終わったんだよ」とネイサンは言うが、ジョディは答える「終わりなんて来ない」。彼女の力と運命の恐ろしさが垣間見えるシーンだ。

 「パーティ」というシーンはジョディが中高生くらいの時のものだ。ネイサンと研究所の女性職員が気を利かして女性職員の娘の誕生パーティーに招待してくれるのだが、全く趣味の合わないジョディは娘と招待客に疎まれいじめられる。押し入れに閉じ込められた時、エイデンの力でジョディは復讐をする。ポルターガイスト現象に泣き叫びパニックを起こす娘と友人達。スティーブン・キングのホラー「キャリー」を思わせるシーンだ。娘達がいきなりジョディをいじめるところはちょっとオーバーな感じもするが、ジョディの友達を求める切ない気持と、それが無残に踏みにじられるところで彼女の悲しく寂しい境遇が痛いほど伝わってくる。

 ジョディが真っ赤でセクシーなドレスに身を包んだ「大使館」というシーンはそれまでのジョディとは全く異なる印象を受ける。ジョディは警戒厳重な大使館でエイデンの力を使って情報を盗み出すことに成功する。しかしここでもエイデンの力を使いすぎ身体に負担が掛かる描写が入る。エイデンの力は決して便利なだけではないことがはっきりと描写される。

 そして何度も取り上げている「逃亡」というシーンでは、政府に追われるジョディが描かれる。華奢なジョディに容赦なく銃を向ける追っ手にジョディが何をしたのか、強く興味が惹かれる。「BEYOND」はこのように様々なシーンを断片的に出し、プレーヤーに“間”を想像させる。ゲームが進むことでいくつかの疑問は解消されるもののさらなる謎が提示されたり、物事への印象自体が大きく変わることがある。ジョディに感情移入し、彼女の幸せを願いながら、物語そのものへ大きく引き込まれていく感触は、多くの人に体験して欲しい。

【ジョディの半生】
エイデンの力が暴走する「実験」。自分の人生をあきらめているかのような幼いジョディが痛々しい
友達が欲しいという気持を無残にも裏切られる「パーティ」
ジョディがスパイとして活躍する「大使館」
警察や政府機関から追われる「逃亡」
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(勝田哲也)