伝説の英雄「マスターチーフ」が遂に帰ってきた。2007年9月に発売された「Halo 3」以降、外伝的な作品「Halo Wars」、「Halo 3: ODST」、「Halo:Reach」の3作が発売されてきたが、「Halo」3部作の主人公「マスターチーフ」は登場しなかった。しかし開発元がこれまでのBungie Studiosから343 Industriesへと変わり、新たな「Halo」シリーズの幕が開けた。
果たして343 Industriesは「Halo」をどう表現するのか。「マスターチーフ」や「コルタナ」の運命はどうなるのだろうか。更に新種族「プロメシアン」の謎と、恐ろしい実力は……。「Halo」シリーズお馴染みのCO-OPモードや、対戦モードはもちろん、今回新たに追加される「スパルタンオプス」などのマルチプレイ要素も充実している。このレビューでは「Halo 4」の魅力をお伝えしていきたい。
■ 新たな勢力プロメシアン、迫るコルタナの寿命……。マスターチーフの新たな戦いが始まる!
惑星「レクイエム」に降り立った「マスターチーフ」。彼をこの先待ち受ける運命とは!? |
「マスターチーフ」のパートナーとして行動を共にしてきたAI「コルタナ」 |
これまでの敵「コヴナント」。 |
新たな敵「フォアランナー」。 |
物語は「Halo 3」の約4年後、大破した宇宙船の中でコールドスリープに入っていた「マスターチーフ」がコルタナの手によって目覚める。「コルタナ」にAIとしての寿命が近づいている事を告げられた「マスターチーフ」は、彼女を救うため地球に戻ることを決意する。大破した宇宙船の中にはかつての人類の敵「コヴナント」が出現、交戦状態に陥る。なんとか宇宙船から脱出した「マスターチーフ」は謎の惑星「レクイエム」に不時着。地球に戻るため「レクイエム」を探索し、地球に帰る手段を探す「マスターチーフ」達は、古代種族「フォアランナー」の建築物や、謎の敵勢力「プロメシアン」を発見。人類と、「コヴナント」、そして「プロメシアン」の三つ巴の戦いに雪崩れ込んでいく。
「Halo」シリーズはSF FPSシリーズ。プレーヤーは UNSC(United Nations Space Command: 国連宇宙司令部) に所属する“英雄”「マスターチーフ」となり、人類の存亡をかけエイリアン種族「コヴナント」などと戦っていくFPSシリーズだ。特徴的なのはSF感溢れる独自の武器と、ジープや戦車といった乗り物から「コヴナント」の乗り物まで乗れるプレイの幅広さである。
本作は、シューターとして銃撃戦が楽しいのはもちろんだが、入り組んだマップを探索するのも楽しみの1つだ。宇宙船の残骸の上を登って行くとなぜか「スナイパーライフル」が落ちていたり、正面から突っ込むと敵が多すぎて集中砲火を浴びてしまうような場面でも、敵の集団を側面から攻撃できる別の道があったりと、練りこまれたマップになっている。また収集要素もあるので、1週クリアした後も別の攻略方法を見つけたり、収集要素を探したりと、何度も遊びたくなる。
グラフィックス面も素晴らしく、登場人物の肌の質感や、微妙な表情まで細かく描写されていたのが印象的だ。また光の演出も効果的で建造物の中のくぐもった光、マグマから漏れるオレンジの光、「フォアランナー」の遺跡の内部を照らす神々しい光など、総合的な演出面は大きく向上している。また一部イベントではQTEも導入されており、ボタンを連打してドアをこじ開けるシーンや、スティックを使ってハシゴを登っていくシーンがあり、この演出により自分自身が「マスターチーフ」であるという没入感を得ることができた。
効果音もよりリアルな音に代わり、迫力が増している。例えばマシンガン系の武器はどこか乾いたような音になっていたり、爆発音は低音がより強調され、戦闘の緊張感が高まっている。オーケストラによる重厚なBGMも印象的で、特にクライマックスではオーケストラによる重厚なBGMがストーリーとマッチしていて、画面の前で鳥肌が止まらなかった。もし本作をプレイするなら、ヘッドフォンや5.1chサラウンドシステムなど、少しでも良い音楽環境でプレイするべきだと感じた。
そして「Halo 4」で最も刺激的なのは新たな敵「プロメシアン」との戦闘だ。これまでにも登場した「コヴナント」達も今の我々から想像もつかないような独自の武器や兵器で戦ってきたが、「プロメシアン」は更に戦いの幅を広げてくる。特にこちらが投げたグレネードを投げ返してくる敵、壁面を猛スピードで移動しながらこちらに向かって射撃してくる敵、ダメージをある程度与えると瞬間移動して逃げたり、後ろに回りこんで攻撃してくる敵など、新鮮な気持ちで戦闘を楽しめた。
「マスターチーフ」が目覚めた宇宙船の残骸に「コヴナント」達が攻め込んでくる | |
惑星「レクイエム」に不時着。先ほどの戦艦の残骸が多く落ちている | |
光の表現が印象的な「フォアランナー」の遺跡 | |
巨大艦船「インフィニティ」が不時着したジャングル | |
実写ドラマに劣らないキャラクターの感情の表現や、細かい演出が楽しめるイベントシーン |
■ 数で押してきて、テレポートで撤退。密接な連携もしてくる強敵「プロメシアン」
新たな敵プロメシアンに、新武器で立ち向かう |
群れて大量に出てくるのがプロメシアンの特徴だ |
本作の大きな特徴は謎の新勢力「プロメシアン」の登場だ。これまでのシリーズでは主に人類とエイリアン種族コヴナント、そして知的生命体に寄生する謎の生物フラッドの戦いを描いた物だった。戦い方や使用する武器が大きく異るプロメシアンの出現で新たなプレイフィールを得られる。
プロメシアンには大きく3タイプの敵が出現する。「プロメシアン ナイト」、「プロメシアン クローラー」、「プロメシアン ウォッチャー」だ。
プロメシアン ナイトはナイトという名の通り戦士タイプの敵で、高い防御力と体力が特徴的だ。ジャンプして一気に間合いを詰め近接攻撃を仕掛けてくるパターンと、ランチャーなど強力な武器で中遠距離から射撃攻撃を行なうパターンがある。更にピンチになると瞬間移動をすることがあり、後述する「プロメシアン ウォッチャー」と連携する前面にとシールドを形成したりとかなり厄介な敵だ。「ショットガン」など破壊力の高い武器で確実に仕留めていくのが良いだろう。
プロメシアン クローラーも中々の曲者だ。狼の様な外見で動きが非常に早く、攻撃を当てにくい。更に搭載されているAIが優秀で、集団で動き一気に襲い掛かってくることもあれば、前方の集団に気を取られている隙に後ろに回りこんで不意打ちをしてくる事もある。ただ体力は低めなので、冷静に1体ずつ撃破していくのが鉄則だと感じた。
最も厄介なのはプロメシアン ウォッチャーという個体だ。空中を浮遊しながら、他のプロメシアンを支援するような役割を担う。ダメージを受けたプロメシアン ナイトの前面にシールドを形成し攻撃を防いだり、死んだプロメシアン ナイトを復活させることもある。更にこちらが投げたグレネードをキャッチし、投げ返してくるという今までのシリーズには登場しないタイプの新しい敵だ。敵が密集しているところにはとりあえずグレネードを投げて一掃するというのがFPS攻略のお約束だが、プロメシアン ウォッチャーの登場によりそう簡単には行かなくなった。優先的に破壊したいが、空中を高速で移動するため攻撃が当てにくい。正確なAIM力が求められる敵だと感じた。
更にプロメシアン達が使っている武器も新たに使用できるようになった。人類の武器とも、コヴナント達との武器とも違う、独特の見た目、ユニークな射撃感を楽しめる。オレンジ色の光を放つプロメシアンの武器は光学レーザーのような物を射出する。武器を拾うとパーツに各別れていた武器がガチャガチャと組み上がっていくモーションが見られ、あまり見たことがない表現なので興味深い。武器の使い勝手は人類の武器に近いような感触で、突出した性能の優劣などは感じなかったが、戦場で手に入れやすいという点で秀でている。
特にアサルトライフルの様に銃弾をばら撒く「サプレッサー」、中距離の敵に有効なスコープ付きライフル「ライトライフル」、チャージし強力な1発を射出できるハンドガン「ボルトショット」の3つが戦場で手に入れやすく使い勝手も良く感じた。
飛び込んでこちらに迫ってくるプロメシアン ナイトと、支援を行なうプロメシアンウォッチャー | |
動きが早いプロメシアン クローラー。単体で出てくることは少なく、他のプロメシアンと同時に出てくることが多い | |
新武器「サプレッサー」。アサルトライフルの様な使用感の武器だ | |
新武器「ライトライフル」。中距離の敵に使いやすい |
■ 充実のマルチプレイ! 対人戦「ウォーゲーム」に加え、毎週新エピソードが追加されるCO-OPモード「スパルタンオプス」
プレーヤーはプレイを重ねることで、アーマーをカスタマイズしていく。それぞれのこだわりが感じられて面白い |
対人戦の「ウォーゲーム」はルールも豊富で楽しめる |
本作ではキャンペーンモードを最大4人でプレイできる「キャンペーンCO-OP」、同じく最大4人でプレイできるミッションクリア型の新モード「スパルタンオプス」、そして対人戦の「ウォーゲーム」がある。
「キャンペーンCO-OP」ではその名の通りキャンペーンモードを複数人数でプレイできる。シングルプレイでは攻略が難しかった場面でも協力してプレイすれば意外とあっさりクリアできた。個人的にCO-OPプレイでは難易度「ノーマル」では簡単に感じたので、1つ上の「アドバンス」や最高難易度の「インフィニティ」でプレイするには4人の仲間での、連携したプレイが必要となりそうだ。
「スパルタンオプス」は本作から登場する新たなモードで、最大4人でミッションをクリアしていく。キャンペーンとの違いは1ミッションが大体10分前後でクリアできる位のボリュームになっている。またステージによってかなり特徴が違い、スタート地点に大量の乗り物が配置されており、乗り放題なマップもあれば、「スナイパーライフル」などスコープを使って遠距離から狙撃していくマップなど、キャンペーンとは違う楽しみ方ができる。また4人プレイを前提としているのか、出現する敵の数が多く「お祭り」の様な形で楽しめた。
またこのモードのストーリーはキャンペーンモードのストーリーとも連携しているようで、キャンペーンに出てきた登場人物が無線に登場する。本編と合わせてプレイすればお互いのストーリーにも深みが出そうだ。
「ウォーゲーム」は対人戦のモードで、その中に更に10種類のルールがある。2チームに分かれ、相手を多く倒しスコアを競いあうモードもあれば、個人戦で個人技を競うモード、鬼ごっこのように他のプレーヤーをドンドン感染させていくモードもある。マッチングでは大体同じレベルのプレーヤーとマッチングされるようで、一方的に蹂躙されるといったことも今のところはほとんど起きていない。後述するカスタマイズ要素もあわせれば、長く深く楽しめそうだ
「スパルタンオプス」、「ウォーゲーム」では操作キャラの「スパルタン」を自分好みにカスタマイズできる。例えば武器を「アサルトライフル」ではなくスコープ付きの「バトルライフル」に変更するといった事が可能だ。しかし最初から自由にカスタマイズできるわけではなく、マルチプレイを行なうことで経験値やポイントを入手し、それを使ってアンロックしていくシステムだ。この要素のお陰でマルチプレイにも目標ができ、モチベーションも上がっていくと感じた。
1人では手強い敵も2人居れば一気に楽になる | |
「スパルタンオプス」には趣向を凝らした様々なマップが用意されている | |
プレーヤースキルをガチンコに競い合うモードや、お祭り的なモードなど「ウォーゲーム」も幅広い |
QTEによる演出でよりマスターチーフになりきっている感が味わえる |
ここまで紹介してきたように、1人でプレイしてもストーリーが楽しく、「プロメシアン」の登場により、また新たな感覚の銃撃戦が楽しめる。マルチプレイでもアンロック要素や、カスタマイズ要素もあり、長く深く楽しめる作品に仕上がっている。
特にキャンペーンモードでは「マスターチーフ」と「コルタナ」の掛け合いはもちろんだが、他の登場人物の描かれ方も丁寧で、物語にグッと引き込まれた。お気に入りは、「トーマス ラスキー」という人物のシーンで、彼が上官の命令を無視し、「チーフ、ご無事で」とチーフを送り出すシーンでは、短いセリフの中に、彼の覚悟や信念を確かに感じることができて、鳥肌が立った。演出や、キャラクター描写に感心させられたシーンの1つだ。
本作は、意外な展開もある。次々とチーフの前に展開する「プロメシアン」の秘密や、「フォアランナー」の超技術など、様々な壮大な風景は、プレーヤーに驚きをもたらすことが必至だ。できればネタバレになるような情報は見ずに、自分の目と耳で「Halo 4」のストーリーを文字通り“感じて”頂きたい。
(2012年 11月 16日)