★ PS3ゲームレビュー★
キャラクター描写は手描きのアニメーション
アニメとRPGを融合させた挑戦的なタイトル
「時と永遠~トキトワ~ LIMITED EDITION」
ジャンル:
  • アニメーションRPG
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • PS3
価格:
7,980円
発売日:
2012年10月11日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:C (15歳以上対象)

 10月11日、株式会社バンダイナムコゲームスからプレイステーション 3「時と永遠~トキトワ~」が発売された。登場するキャラクターの描写はCGではなく、手描きアニメーションという新しい試みのRPGとなっている。本作の開発はPSP「ソールトリガー」やPSP「セブンスドラゴン2020」などで知られる株式会社イメージエポックが担当している。

 通常版(7,980円)に加え、ゲームソフト、サントラとボイスドラマを収録したスペシャルディスクや48ページにも及ぶアートワークブックレット、特製収納BOXで構成されたリミテッドエディション(9,980円)も同時に発売されている。また、通常版の初回封入特典には2種類のカスタムテーマ、リミテッドエディションには11種類のカスタムテーマのダウンロードコードが封入されている。

 早速、キャラクター原案にVOFAN氏(化物語など)、サウンドコンポーザーにゲームファンなら知らぬ人はいないであろう古代祐三氏、アニメーションは数々の名作を手がけてきたサテライト社、プロデューサーは広野啓氏(「ガンダムバトル」シリーズなど)と、豪華スタッフにより開発された本作を紹介していきたい。



■ コメディタッチで描かれる、トキとトワ、2つの魂を持つ新婦とのデュエルラブストーリー

 ゲームは、結婚式の前日となるカムザ王国の騎士である主人公と王女トキの新居から始まる。その翌日、結婚式で誓いのキスを交わそうとする2人だったが、何者かの襲撃を受け、トキをかばった主人公は致命傷を負ってしまう。ここで突如、トキがもう1つの人格トワとなり、襲撃者を撃退。そして、襲撃の原因を取り除くべく、トキは時間魔法を発動させ過去へと戻る。

 トキとトワ、2つの魂を1つの体に持つヒロインと主人公が過去へと時間移動し、無事に結婚式を迎えるべく、襲撃の原因を取り除いていく本作。時間魔法を使うことのできない主人公の魂は小さな竜のドレイクの体に入ってしまい、ドレイクの姿でトキとトワをサポートする。物語の大筋はシリアスながら、刺されて致命傷を負ってしまいながらも「ふふ…ここまで男らしい死に方なかなかありませんよね。僕は今…100%かっこよく…そして…間違いなく…モテる」と発する主人公など、全体的にコメディタッチな仕上がりとなっている。


 レベルアップ時やゲーム中に稀に入手できたり、DLCで配信されているコショウにより、トキとトワの人格が入れ替わりながら物語は進む。このため、同じイベントであっても、トキとトワどちらでイベントに突入するかはプレーヤーにより異なり、会話の内容も違ってくる。主人公の魂が入っているドレイクに至っても対する人格次第ではやり取りが異なることも。人格は意図的に変更できるので、2周目以降のプレイでは1周目とは違った人格でイベントを体験してみるのもいいだろう。

メインストーリーに関する部分はCV付きで進行。もちろん、CV付きのパートも人格によって会話が変化する

 主人公は代永翼さん、トキは花澤香菜さん、トワは喜多村英梨さんが演じている。他にもゆかなさん(レージョ役)、能登麻美子さん(ウェディ役)、悠木碧さん(エンダ役)、遠藤綾さん(マキモナ役)、杉田智和さん(ビコード役)ら、今をときめくキャストが参加している。

主人公 18歳
CV:代永翼さん
カムザ王国の騎士。王女であるトキと相思相愛の仲で、結婚式を間近に控えている。トキとはまだキスすらしておらず、結婚することで“先”に進めると胸を躍らせている
トキ 16歳
CV:花澤香菜さん
花嫁。カムザ王国の王女。結婚式が何者かに襲撃される…という占い師の発言を受けて不安に思いながらも、主人公との結婚を待ちわびる16歳の少女
トワ 16歳
CV:喜多村英梨さん
トキのもうひとつの人格。性格は破天荒でワイルド。表情や声のトーンで、受ける印象は随分と異なる
レージョ 16歳
CV:ゆかなさん
昔からのトキの親友。大金持ちのお嬢様。主人公に対しては厳しくあたる
ウェディ 16歳
CV:能登麻美子さん
トキの友人で、ウェディングプランナー。心配性な性格だが、トキには幸せになってもらいたいと願っており、トキと主人公の結婚式を自ら取り仕切る
エンダ 14歳
CV:悠木碧さん
トキの学校での後輩にあたる少女。天真爛漫な性格をしており、とっても素直。惚れっぽい性格で、惚れた時の行動力はあなどりがたい…ようだが

 イベント中に選んだ選択肢によって愛の重みが変化し、重みによっては新居で二人語りイベントが発生する。選択肢の結果によって、特別なグラフィックスが閲覧できたり、キャラクターのステータスが向上する。

イベント中に選んだ選択肢などによって愛の重みが変化。トキ、トワのどちらに愛の重みが傾いているかはメニューから確認することができる。基本的にゲージの位置が中央になることはないが、特定の条件を満たすことで中央にすることができるようになり、これにより特別な展開が発生する

 アニメーションRPGというだけあって、キャラクターが良く動く。例えば、冒頭の主人公とトキの新居での会話シーンでは、キャラクターたちがまばたきをするのはもちろん、足を組み替えたり、お茶を飲んだり、発言者を他のキャラクターが見ていたりする。これらのアニメーションはイベントシーンだけでなく、バトルなど、隋所に見ることができる。ただ、アニメーションRPGということから、TVアニメのようなものをイメージするかもしれないが、あくまでアニメーションを主体としてはいるものの、TVアニメのようなコマ数ではなく、リップシンク(セリフと口がぴったり合う)もない。いくつかのパターンが用意され、セリフや状況に応じてキャラクターが動くといった具合だ。

冒頭の会話シーン。静止画ではわかりづらいかもしれないが、1つのシーンであっても、キャラクターたちが様々なポーズをとっていることがおわかりいただけるだろう


■ 敵の行動の見極めが重要となるアクション性の高いバトル!

 アニメーションだけでなく、バトルシステムも特徴的なものになっている。バトルはプレーヤーの操作するトキ or トワと敵1体が戦う1対1の方式(戦闘・回復など自動で行動し、サポートしてくれるドレイクがいるので正確には1対1ではないが)。1度の戦闘で複数の敵が参加する場合は、1対1で連戦していく形となる。

 物理攻撃ができる武器は近距離用の剣と遠距離用の銃の2つ。トキとトワどちらも同じ装備が可能だ。戦闘開始時には互いが離れた位置から始まり、左スティックの前を入れて敵の前へと移動するか、敵がこちらに移動してくることで近距離戦となる。通常の物理攻撃は○ボタンで繰り出せ、距離により銃と剣が自動で切り替わる。


物理攻撃に関しては、トキは銃による遠距離戦を、トワは剣による近距離戦を得意とする。例えば、トキは銃撃の際、○ボタンを入力し続ける限り連続発砲が可能だが、トワは3連射で一旦銃をおろしてしまうし、トワはトキと比べて同じ装備でも剣攻撃のダメージが高いといった特性を持つ。また、物理攻撃は連続ヒットさせるとコンボとなりダメージアップ、ガード中の敵に一定数以上のコンボを決めるとガードブレイクとなり、一定時間ガードできなくなるいったシステムや他に特定の敵との戦闘中に特定の条件を満たすと○ボタンが表示され、入力するとファイナルバウトアタックという強力な一撃が繰り出せるシステムも存在する

 敵の攻撃はL1ボタン長押しでガード、左スティックの左右で回避できる。ガードは操作キャラクターの頭上に「!」マークが出ているときにタイミング良くL1ボタンを押し始めると、対近距離物理攻撃なら攻撃をさばいて強力なカウンター攻撃が繰り出され、対遠距離物理攻撃ならダメージを通常よりも軽減できる。ただし、魔法に対してはガードは意味をなさない。回避はほとんどの攻撃を無効化できる手段。例えば右に入力し続けると、右→中央→中央→……のように、左もしくは右に入力し続ければ連続して回避行動をとる。中央に戻ってから次の回避行動に移るまで、若干の隙があり、タイミングが悪いと攻撃を受けてしまうため、攻撃を見極めて入力するようにしたい。また、自分が物理攻撃など、何か行動をとっている場合、その行動が終了するまでガードや回避はできない。

 通常の物理攻撃以外にスキルが存在する。スキルには武器を使った物理系、魔法系、ドレイクへの指示の3タイプがある。同じレベル・敵・装備で撮影した下記スクリーンショットでは、銃撃のダメージが36、魔法のダメージが2,041となっているように、本作では特に魔法系の威力が物理系と比べて圧倒的に高い。装備やスキル、相性などにもよるが、ほぼ全てにおいて魔法系が物理系を遥かに凌駕する。物理攻撃だけを使っていくとなると、戦闘はかなり長引いてしまうような、魔法必須のバランスに調整されているので、魔法を使わない手はない。適正レベル・装備で、属性を合わせていれば、大抵の敵は魔法1~2発と倒すことができる。ただし、魔法の使用にはスキルポイント(SP)が必要な上、詠唱に時間がかかり、特定の攻撃を受けると中断されてしまう。

 このため、戦闘では魔法使用に必要なSPを稼ぐことと、魔法詠唱を中断されないことが重要になる。SPは時間経過や通常物理攻撃などで増やすことができる。通常物理攻撃をしながらSPを稼ぎ、敵の行動を読んで魔法を詠唱し、敵を撃破していくわけだ。敵の行動は攻撃→ガードなどパターン化されており、行動パターンの見極めが肝心な攻略性のあるバトルになっている。


魔法の威力はかなり高め。詠唱時間さえ稼げれば、物理攻撃を遥かに上回る圧倒的なダメージを与えることができる。トキは炎の魔法、トワは雷の魔法の詠唱時間が短いなど、魔法においても人格で得手不得手がある。また、魔法は連続して決めるとチェインとなりダメージが増加、土→炎のように特定の順番でチェインさせるとケミストリーとなり、敵にデバフ(不利な効果)を付与することができる

 物理攻撃やスキル以外にも特定の条件で入手できる時間魔法というものがある。使える回数に限度はあるが、自分だけの行動速度を大幅に上げたり、敵の時間(動き)を止めたりとかなり強力。使える回数はレベルアップやアイテムなどで回復できる。

時間魔法はかなり強力。時を止める魔法を連続使用すれば、ボスですら何も行動させることなく完封できてしまう。使える回数には限度があるが、戦闘中でもアイテムを使えば回復できる。このアイテムは多少高額ではあるが、ショップでも販売される


■ ギフトを習得することでキャラクターのスキルが増加!
  セットしたスキルでキャラクターの性能は大きく変化する!

 本作におけるキャラクターの強化は、レベルアップ、装備、ギフトによるスキル習得の3つ。多少のレベル差は立ち回りで補えるが、装備なり、ギフトでキャラクターを強化しておかないとゲームを進めるのは難しい。

 戦闘で経験値を稼いでのレベルアップ、ショップなどで購入できる装備については細かく説明するまでもないと思うが、ギフトやスキルシステムは少し変わったものになっている。

 ギフトは“炎の魔導士”、“ルーンナイト”などがあり、戦闘やクエスト達成により得られるギフトポイント(GP)を消費することで習得できる。それぞれのギフトには特定レベルで習得できるスキルが設定されている。ただし、ギフトを習得してもその瞬間にスキルが追加されはしない。レベルアップ時に、習得済みのギフトに対応、かつ習得レベルを満たしたスキルが追加されるようになっている。


ギフトはツリー状になっており、ラインが繋がっているギフトしか習得できない。例えば、上記スクリーンショット左側なら、“炎の魔導士”を習得しなければ、GPがいくらあっても“黒の魔導士”は習得できない。2つのギフトからラインが繋がっているものは、どちらかのギフトを習得していればOKだ

 戦闘でプレーヤーがコマンド入力して使うアクティブスキルは、△、□、×ボタンに自由にアサイン可能。アクティブスキルの性能は攻撃、回復、補助系など様々だ。さらにスキルには自動で効果を発揮するパッシブスキルがある。パッシブスキルはアクティブスキルとは別のスロットにセットするもので、剣/銃の攻撃力上昇、アクティブスキルやパッシブスキルのスロット数増加、初期SPや最大SPを増やしてくれるものなどがある。

 これら2タイプのスキルにより、キャラクターの性能は大きく変化する。本作は魔法の威力がかなり高いため、アクティブスキルには様々な敵に対応できるように複数属性の魔法スキル、魔法の威力を上げる/敵の魔法防御を下げるスキルがオススメだ。回復スキルも習得できるが、回復はアイテムでも可能だし、魔法を使えば相手を圧倒できるので、限られたスロットは攻撃力アップに使う方が良いと思われる。アクティブスキルではスロット数を増やすスキルをなるべく多く導入し、SPと時魔法に関するスキルをセットしておくのがいいだろう。

ギフト、スキルによりキャラクターの性能は大きく変化する。ギフトに対応したスキルはレベルアップ時に習得するので、GPがあるなら、入れ替わる人格のギフトを習得させてからレベルアップさせると効率がいい。また、スキルはものよって消費SPが異なるため、消費SPの大きいスキルばかりを入れてしまうと使い勝手が悪くなってしまうので注意したい



■ 最後に

 クエストをクリアしていくだけでゲームが進んでいく本作。謎解きなどはないし、戦闘で詰まることはあっても、進行で詰まることはまずない。特に進行をスムーズにさせているのが各種マップの存在。ワールドマップでは、ゲーム進行で行くべき場所、サブクエストの発生・報告場所までもが記されている。また、フィールドでのマップでは、メインクエストの目的地、宝箱、サブクエスト発生地、セーブポイント、ウェイポイント(1度触れておけば、各ウェイポイントまで瞬時に移動できる)、サブクエストの目標地点までもが記されている。

 アニメーションの部分がクローズアップされがちなイメージのある本作だが、バトルは特徴的で、敵の行動パターンを見極めての行動が求められるといった攻略性のある、やりがいのあるものになっている。ただ、適正を大きく上回るほど高いレベルまでキャラクターを育てない限り、適当にボタンを押すだけでは勝つことはできないため、それほど難解なシステムではなく、難易度が高い訳でもないが、その理解度によっては大きく印象が異なることが予想される。

 いつでもノーマルとイージーの2つの難易度が変更可能、戦闘で敗北してもリトライ(難易度を変更してのリトライも可能)など、アクション性が高いとは言っても誰でも遊べるようにもなっている。また、戦闘中、ゲーム時間を停止させてアイテムが使えるのも遊びやすくさせている点。アイテム使用は瞬時で行なわれ、攻撃を受けている最中ですら使用できる。回復アイテムについては、敵が頻繁にドロップしてくれるので、わざわざショップで購入する必要もないはずだ。もし回復アイテムを大量に消費しなければならない状況であれば、それは恐らくレベルなどが適正に達していないか、敵への対応が誤っていると思われる。

 装備やレベル、スキルによるキャラクター強化も誰でも遊べるようにしてくれている要素と言える。メインクエストやサブクエストには適正レベルが記載されているのだが、適正レベルなら、強い装備・スキルで正しい立ち回りをすればボスすら圧倒できる。雑魚敵ならレベル差がある程度あれば、ノーガードでも受けるダメージは0になるほどレベルアップや装備でキャラクターは強くなってくれる。逆に適正レベルに満たない場合の心配もあるかもしれないが、2~3レベル低くとも全く問題はない。スキル習得に必要なGPは敵との戦闘やクエストで入手できるため、サブクエストをこなしながらプレイしていれば、レベル不足になる心配もないはずだ。もしレベルアップして安全に進めたいなら、経験値アップのアイテムを使うと効率良くレベルアップできる。アイテム購入に必要なお金は敵からはあまり得られないが、宝箱などから入手できる換金アイテムを売ることで充分な額が得られるようになっている。

 筆者のクリアまでのプレイタイムは21時間ほど。クリア後にはキャラクターのレベルやアイテムの引継ぎはないものの、所持金やスキルなどを引き継いでプレイできる。レベルは低くとも強力なスキルがあるので、サクサクと進められるようになっている。さらに2周目以降でしか味わえないイベントも用意されている。また、DLCも配信中。「伝説の水着職人とリゾー島 feat.トキ」、「幻の魚とリゾー島 feat.トワ」など、本編では味わえないシナリオのDLCになっているため、本作のシナリオやキャラクターが好きなら購入してみてはいかがだろうか。

 手描きアニメーションのキャラクターが世界を冒険する本作。トゥーンシェーダーなどの発展により、かなり手描きのアニメーションに近いレベルのグラフィックスを実現しているタイトルが多くリリースされる昨今、手描きというのは挑戦的で、かなり労力もかかっていることだろう。今後も本作のような新たな試みのゲームがリリースされ続けることを期待したい。


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(2012年 11月 5日)

[Reported by 木原卓 ]