イメージエポックから10月4日に発売されたPSP「ソールトリガー」。“「セブンスドラゴン2020」、「ラストランカー」、「アークライズファンタジア」、「最後の約束の物語」といったJRPG作品を手掛けてきたイメージエポックが、作品作りへの経験を活かし、携帯機におけるRPGの集大成として皆様にお届けする作品です。”と公言するほどの自信作だ。開発スタッフや声優陣も非常に豪華な面々となっている。
ロード時間を短縮できるデータインストールに対応しており、利用するには412MB以上の空き容量が必要となる。
同社の携帯機におけるRPGの集大成という本作。早速、どのようなタイトルになっているか、紹介していきたい。
■ 光ノ民を弾圧する神機教会に反旗を翻す、魔導の力「ソール」を操るソールトリガー!
野島一成氏が手がけるメッセージ性の強い物語!
都市国家カイゼルハルドは、 ≪神の代弁者≫を自称する領主ナハトガルと 政府機関≪神機教会≫によって治められ、 神と教会に奉仕する敬虔な≪自由神民≫たちにとって 理想郷として知られていたが…… その繁栄は少数民族≪光ノ民≫からの搾取と、 彼らへの弾圧によって成り立っていた。 光ノ民たちの命の輝きとも言える 魔導の力≪ソール≫。 それを抽出し、精製することで成立した魔導技術が カイゼルハルドを強国たらしめていたのだ。 魔導文明の影で光ノ民は、その数を減らしていく。 神機歴740年。 光ノ民の若者らは≪ソールトリガー≫を名乗り 教会に公然と反旗を翻す。 ソールを自在に操り、 カイゼルハルドを駆け抜けた彼らは ついに≪神殺し≫の作戦を実行に移したのだ。 これは、そんな彼らの信義と情愛の物語である。 |
魔導の力「ソール」を操ることのできる光ノ民。都市国家カイゼルハルドを治める政府機関「神機教会」は、彼らの力「ソール」を抽出し、エネルギーとして利用。それにより国は繁栄している。搾取を続ける「神機教会」に対し、光ノ民の若者らは「ソールトリガー」を名乗り、立ち向かう。このシナリオは「ファイナルファンタジーVII」や「キングダム ハーツ」などで知られる野島一成氏が手がけている。
ゲームを進めることで「ソールトリガー」、「神機教会」、それぞれの置かれている現状、思惑、謎が解き明かされていく。そして最後には衝撃のエンディングが待っている。実際プレイしてみれば「これで終わり!?」と思うことだろう。しかしながら、続編に続く訳ではない。中途半端に終わることはなく、続きも遊ぶことができ、一連の物語を本作1本で堪能することができる。
ソールを操る光ノ民、光ノ民のソールをエネルギーとして利用する神機教会との戦いが描かれている。時には重要な選択を迫られる場面があり、選択次第では先の展開が異なってくるといった要素も用意されている。時折挿入されるアニメーションはJCスタッフ社制作によるもの |
「ゴッドイーター」や「ペルソナ3」を手がけてきた曽我部修司氏(FiFS)により生み出されたキャラクターたちも紹介しておきたい。演じる声優陣もとても豪華だ。
プレーヤーが操作することになるソールトリガーのメンバーは6人。若きリーダー「ファレル」(CV:鳥海浩輔さん)、ファレルの幼馴染にして彼の良き理解者「エマ」(CV:花澤香奈さん)、先代リーダーに憧れてソールトリガーの一員となった「ヴァルター」(CV:杉田智和さん)、熾烈な過去を持つ女性「ソフィ」(CV:小清水亜美さん)、ファレルのもう1人の幼馴染にして仲間思いの熱血漢「グスタフ」(CV:三宅健太さん)、ソールトリガー最年少の天然系天才少女「シリル」(CV:悠木碧さん)だ。
また、軍事部門の指揮官であり、治安維持のためにソールトリガー狩りに尽力する「イシュトバーン」(CV:大塚明夫さん)、ソールを原動力にした機械の発明やソールの研究など、科学技術に携わる執行官「リトラー」(CV:沢城みゆきさん)、イシュトバーンを閣下と慕う、半身が機械で覆われた少女「フラン」(CV:斎藤千和さん)と、ソウルトリガーのメンバーだけでなく、敵側の神機教会のメンバーや公式サイトにて“新たなるソールトリガー”として紹介されている「ラーズ」(CV:内山昴輝さん)、「クロト」(CV:鈴村健一さん)、「ウィルマ」(CV:早見沙織さん)がどのように物語に関わってくるのかにも注目してもらいたい。
■ 馴染みあるコマンド選択式のバトルながら、スキルのシステムが特徴的なバトルシステム!
特定のアイテムを装備し、戦闘することでスキルを習得!使い込むことでスキルは成長していく!
本作は馴染み深いコマンド選択式のバトルシステムを採用。しかしながら、ソールによるスキルなど、本作ならではの特徴的な要素も組み込まれている。また、戦闘の難易度は雑魚戦でも装備武器で攻撃するATTACKコマンドを使うだけでは勝てないような遊び応えのあるものになっている。
戦闘で使うコマンドはATTACK(装備武器で攻撃)、SKILL(ソールを消費してスキルを使用)、ITEM(所持アイテムを使用)、GUARD(防御)、ESCAPE(戦闘から逃走)の5つ。味方キャラクターのLIFEが無くなる前に、ATTACKやSKILLを駆使し、敵のLIFEを0にすれば勝利となる。
戦闘はランダムエンカウントで発生。馴染みあるコマンド選択式のバトルだ。行動順は味方チーム、敵チームのように回ってくるのではなく、基本的にAGI(素早さ)の高さで決定される。AGIが高ければ敵キャラクターのターンが回ってくるまでに2回行動できることも |
5つのコマンドの内、SKILLは本作で最も特徴的なものと言えるだろう。まずはスキルの習得方法だ。スキルは装備している武器やアクセサリに応じて「アウェイク」(習得)できる。一度アウェイクしてしまえば、装備を切り替えてもそのスキルを使い続けることができるため、アウェイクさせれば、スキルはどんどん増えていく。装備品にはどのようなスキルがアウェイクできるのか、アウェイク条件などが記されているので、装備画面でチェックし、アウェイク条件を満たすように戦闘していきたい。アウェイク条件は“自身の攻撃時にアウェイクしやすい”、“仲間の行動時にアウェイクしやすい”などで、それほど難しい条件は設定されていない。
多くの装備にはアウェイクスキルが設定されている。本作の装備箇所はWEAPON/ARMOR/ACCESSORYの3つだが、この内、WEAPONとACCESSORYがアウェイクスキルの対象。装備には向上するステータスだけでなく、アウェイクスキルの性能やアウェイク条件が記されている | |
条件を満たす行動をすればアウェイクのチャンス。一度アウェイクすれば、装備を変更してもそのスキルを使い続けることが可能だ |
スキルは使用時には、Rボタンで「チャージ」することで性能をアップさせることが可能。チャージすることでより多くのソールを消費してしまうが、威力上昇、単体が対象のものが全体が対象に、ステータス上昇効果追加など、スキルに応じて様々な効果を発揮する。
アウェイクしたてのスキルがチャージできるのは1段階で、スキルを使い続けることで熟練度が上昇し、チャージできる段階が増えていく。任意でチャージ段階が選択できるため、熟練度が上がったスキルでもあっても、無駄なソールを消費せずに使えるようになっている。
スキル使用時にはどの段階までチャージするかが選択できる。チャージ量に応じて、威力や効果が変化する |
さらに熟練度が最大に達すると、限界までソールをチャージする「オーバーロード」が使えるようになる。オーバーロードは消費ソールが大きくなってしまうが、その分得られる効果も大きい。中にはオーバーロード時に攻撃力が1,000%(10倍)になるようなスキルも存在する。その演出もかなり派手で見ごたえがある。
熟練度が最大まで高まれば、オーバーロードが使用可能。消費ソールもかなり大きくなってしまうが、その威力は絶大だ |
戦闘に参加できるのは4人までの本作だが、序盤からファレル、エマ、ヴァルター、ソフィ、グスタフ、シリルの6名がおり、ファレル以外のメンバーは戦闘中でなければ自由に入れ替えることができる。ファレル以外の3人を誰にするか悩み所ではあるが、戦闘メンバーでなくても経験値は入るため、いつ入れ替えても充分に活躍することができる。ただし、スキルの熟練度に関しては使わなければ上がることはない。
簡単ではあるがキャラクターの特徴を紹介しておきたい。ファレルは自己の行動速度を上げられ、単体・全体への攻撃が可能な万能攻撃タイプ、エマは直接的な回復ができる唯一の人材。ヴァルターは様々な状態異常付与のある単体攻撃を得意とするアタッカー。ソフィは単体・全体にダメージを与えられ、さらに味方の消費ソールを減らすことのできるスキルを習得する。グスタフは直接的なダメージに特化したアタッカーで味方をかばうことが可能。シリルは防御力向上や行動順毎にHPが回復するといったサポート能力に優れている。
好きなメンバーで構成できるが、ボス戦ではLIFE回復が可能なエマかシリルは入れておきたいところだ。どのキャラクターも充分に活躍できる能力を持っているが、筆者のオススメはシリル。パーティ参入時のレベル、LIFEが低く、やられやすい面はあるが、防御力向上スキル(熟練度が上がると攻撃力も同時にアップ)、キャラクターに行動順が回ってくるとLIFEが回復するスキルといったサポート能力の高さに加え、単体への攻撃スキルの威力もかなり高い。また、味方を蘇生するスキルも習得してくれる。
入れ替えが可能とはいっても、メンバーを固定してのプレイでもゲームを進めるのに全く問題はない。固定メンバーであれば、装備購入にかかる費用が抑えられるし、スキルも集中して上げられる。その分、消費ソールを良く考えてプレイしなければ、ソールが枯渇し、ピンチになってしまいがちではある。全員を使っていく場合、全員の装備を常に最良のものにするとなると、ある程度お金稼ぎが必要になってしまうことだろう。
スキルに必要なソールはソールトリガー達の生命線。ソールを無駄使いしないようフィールドを進んでいかねばならない。6人の仲間を切り替えていけば、その分スキルが多く使えるため、より楽に進められる | |
ソールを消費して扉を開くといった場面も。ソールの管理は怠らないようにしたい |
LIFEやソールは拠点に戻ることで全回復する。拠点にはフィールド上にあるセーブクリスタルに触れることで戻ることができる。セーブクリスタルはその名の通り、セーブ・ロードも可能。ワープポイントにもなっており、一度触れたセーブクリスタルには拠点からいつでも瞬時に飛ぶことができる。来た道をまたやり直す手間がなく、行きそびれた場所へもすぐに探索へ向かえるのがありがたい。
セーブクリスタルを見つけたら必ず触れておくべき。一度でも触れておけば、拠点からはいつでもそのクリスタルに飛ぶことができる。クリスタルからは拠点に戻ってLIFEやソールを回復できるので、クリスタルの周囲でレベル上げ、スキル習得などを行うのもいいだろう |
■ ステータス向上、スキル習得に関係する装備品は素材を売買することで購入可能に!
一時的に最大ソールを増やすことのできるソールタンクといった要素も!
戻るだけでLIFEやソールが回復する拠点では様々な施設が利用できる。どれも有用なものばかりなので積極的に活用していきたい。
ショップでは、装備や消費アイテムの売買が可能。本作では素材となるアイテムを売却することで装備品などが追加販売される仕組みになっている。新たな装備品の購入は、ステータス向上だけでなく、新スキル習得にも繋がる。
あくまで筆者の考えだが、セーブクリスタルに触れるだけでなく、拠点に戻らなければLIFEやソールが回復しない仕様になっているのは、ショップ利用を忘れさせないようにさせたかったからではないだろうか。装備を変えるだけで、戦闘の難易度は大きく異なるので、頻繁に拠点に戻り、素材を売却し、装備を強化してもらいたい。装備だけでなく、貴重なソールを回復するアイテムや蘇生アイテムなどもいくつかは持っておくといいだろう。
戦闘に大きく関わる施設に「ソールタンク」がある。ソールタンクでは、敵や宝箱から手に入る「フレアライト」というアイテムからソールを抽出、キャラクターにソールを補給できる。一時的ではあるが、最大ソール量を越えた補給が可能なため、新たな冒険やボス戦に挑む際には特に有用だ。
フレアライトからソールを抽出し、キャラクターに補給できるソールタンク。一時的ではあるが、キャラクターの最大ソール量を超えたソールを持った状態で冒険に挑める |
戦闘不能のキャラクターは、拠点に戻ってもLIFEやソールが回復しない。ここで活躍するのが「リカバリープール」だ。無料なので、蘇生スキルを習得するまでは、この施設を利用するといいだろう。
拠点に戻っても戦闘不能キャラクターは復活しない。リカバリープールで蘇生しよう |
■ 最後に
しっかりと作りこまれたシナリオやキャラクター、誰でも簡単にプレイできながらも特徴的なスキルによるバトルシステムを搭載した本作。バトルは、ATTACKをただ選ぶだけでは勝てないよう歯ごたえのあるものになっているが、エンカウント率はそれほど高くないし、スキル習得・成長要素もあるため、バトルに飽きることなく、最後まで遊ぶことができるだろう。歯ごたえがあるとはいっても、レベル上げをせずともクリアできるように調整されているし、難しいと感じたならレベルやスキルの熟練度を上げればあっさりと勝てるようにもなっている。また、スキルメニューに全回復コマンドが用意されているため、回復があっという間にでき、テンポ良く遊べる点も嬉しいところだ。他にもセーブクリスタルが、ソールが無くなりつつあるギリギリな場面に登場するよう絶妙な位置に配置されている点が印象的だった。
筆者のクリアまでのプレイ時間は25時間ほど。クリアデータから新たにやり直すことは可能だが、レベルやスキル、アイテムなど、強さに関係かかわるものを引き継ぐことはできない。選択肢による展開の違いを見てみたいなら、周回プレイをしてみるのもいいだろう。
魅力的なシナリオやキャラクターに加え、簡単すぎず、難しすぎず、バランスの取れたバトルが楽しめる。数々のRPGを生み出してきた同社ならではのRPGに仕上がっている。遊びやすいインターフェースのデザインも見事だ。PlayStation Storeでは体験版が配信されているので、興味があればまずはそちらプレイしてもらうといいだろう。
(2012年 10月 24日)