★Wiiクローズドベータテストレポート★
「DQ」の世界が見事オンライン化 MMORPGの基本を丁寧に押さえ “遊びやすさ”と“DQらしさ”が光る作品 「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン(Wii USBメモリー16GB同梱版)」 |
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世の中にMMORPGが出始めた頃からゲーム好きの間では、「もしも『ドラゴンクエスト』がMMORPGになったらどんな感じになるだろうか?」という話題が出るようになった。まぁいわゆる笑い話的なものではあったが、そうした会話の中で「俺は武器や防具を売って暮らすぜ!」とか、「じゃあ俺は村の入り口で『ここは○○村だよ』って言い続けるぜ!」というような面白おかしい夢を広げたものだ。そして……、その日が本当にやって来た。
記念すべきシリーズ10作目にしてオンラインRPGとなった「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」(以下、「DQX」)。本作は今まさにクローズドベータテスト(以下、ベータテスト)を行なっており、正式サービス開始へ向けて着実な歩みを見せている。
そんなオンラインRPGとなった今作に驚いた人もたくさんいたと思うが、それを聞いて「ちゃんと『DQ』らしい作品になるの?」と不安に思った人も少なからずいたのではないだろうか。そこで本稿では、Wii版のベータテストでのプレイ体験をもとに、本作がどんなゲームになっているのか、“オンラインの『DQ』”にはどのような魅力があるのか。ゲーム内の要素やプレイの流れを紹介しつつ、お伝えしていこう。
■ 2月からスタートし、徐々に範囲を広げているベータテスト
現在のフェーズ「2.0」ではひと通りの基本的な要素が出揃ったという印象
数千人規模のプレーヤーとひとつの世界で一緒にプレイするオンラインRPGとなった「DQX」。2月よりベータテストが繰り返し行なわれている |
まずは、本作や今回のベータテストについて軽く説明したいのだが、「DQX」は完全なオンライン“専用”タイトル。製品版だとゲームスタート当初は、オフラインで物語の序盤をプレイし、さらにオンラインに繋ぐことで広がっていく仕組みとなっているという。
なお、今回のベータテストはオンラインプレイのテストなので、オフライン要素は含まれていない。参加者はみんな、オーガたちの故郷「オーグリード大陸」にある「ランガーオ村」からスタートするようになっている。
ベータテストは2月23日より定期的に行なわれていて、徐々にプレイ可能なエリアや要素を開放しテスト範囲を広げている。本レポートの執筆時点でのフェーズは「2.0」となっており、「オーグリード大陸」と「プクランド大陸」(「プクリポ」たちの故郷)の2つの大陸が開放されており、そこにあるいくつかの町や村、ダンジョンに行けるほか、レベルは30まで育成可能で転職もできるようになっている。
また、いくつかのシナリオの冒頭やミニクエストがプレイできるほか、アイテムを作成する職人プレイも可能。詳しくは追って紹介していくが各種設備も利用できるようになっている。ベータテストで触れられる要素については、おおまかな印象だが「ひと通りの基本的な要素は出揃ってきたのかな?」というところだ。
■ プレイの準備。Wii+USBメモリという組み合わせに違和感なし
アップデートも自然に行なわれている
WiiとWii Uでリリースされる本作では、Wiiだと容量16GB以上のUSBメモリーを組み合わせてプレイする。テキストチャットを快適に楽しみたいなら、USBキーボードもあったほうがいい |
ゲームデータをUSBメモリーにインストールすれば、その後ディスクは不要。Wiiチャンネルの「DQX」からゲームを開始する |
さて、Wii版のプレイにはゲームデータをインストールするための「USBメモリー」が必要になる。USBメモリーは容量16GB以上のものが必要になる。なお、筆者は公式のプレーヤー専用サイト「目覚めし冒険者の広場」で紹介されている、動作確認済USBメモリーの中からTDKの「UFD16GE-TCBKA」を使用している。
従来のMMORPGというと、HDDにデータを格納してプレイするものがほとんどで、「WiiとUSBメモリー」という組み合わせというのは前例がない。果たして、この組み合わせで快適に「DQX」がプレイできるのか気になっていたが、実際は何の違和感もなくプレイできている。これまで、ベータテスト中にアップデートが何度も行なわれているが、それらのデータも問題なく受信できている。速度や挙動にも不自然なところはなく、一般的な他のMMORPGと同じように遊べている。
実際のところUSBメモリーさえ用意すれば本作はプレイできるが、もうひとつ“あったほうがいい”のが「USBキーボード」。これは言わずもがな、ゲーム内でテキストチャットを快適に行なうためのものだ。筆者はとりあえず、余っていたPC用のUSBキーボードをWiiに繋げてみたが、それだけで何も設定せずに使用できた。汎用的なドライバで動作するUSBキーボードであれば(特殊なデバイスでなければ)、Wiiに繋げるだけで大丈夫だろう。
ちなみにベータテストではプレイにゲームディスクは不要だ。製品版でどうなるかはわからないが、USBメモリーにゲームデータをインストールすると、Wiiのチャンネルリストに「DQX」のチャンネルが作成されるので、そこからゲームを開始するという仕組みになっている。ディスクレスにプレイできるのは手間がかからず嬉しい。
■ キャラクタークリエイト。選べるのは5つの種族
初期の職業は6種類から選択するがおなじみの転職も可能
プレイを開始するにはまず、「DQ」シリーズのファンにはおなじみの「冒険の書」ことセーブデータを作成していく。冒険の書には、今回のベータテストでは3人のキャラクターが作成できた。
自分のキャラクターを作成する「キャラクター作成」には、大きな特徴がある。副題にもある通り本作には「五つの種族」がいて、プレーヤーのキャラクターもこの5種族(ウェディ、ドワーフ、オーガ、プクリポ、エルフ)の中から選ぶのだ。スタンダードな種族、人間があえていないことが特徴的。
【五つの種族】 | |
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本作に登場し、プレーヤーキャラクターとして選べる5種族。男女の性別があるが、能力的な違いはない |
「キャラクター作成」では、それぞれ性別(男/女)が選べるほか、顔の輪郭、顔の作り、眼、髪型と髪の色、体型をそれぞれ数パターンから選択して作成していく。
身体の大きさ、肌の色、髪型、髪の色、顔の輪郭、眼の色をパターンから組み合わせて自分好みのキャラクターを作っていく |
最後に選ぶのが「職業」で、初期に選択できるのは6種類ある。なお、職業はあとから転職することもできる。
初期に選べる職業は6種類。後に転職も可能になるが、それまでは最初に選んだ職業でプレイしていくことになる |
- ・「戦士」
力が強く攻守にわたって仲間を守る頼れる存在。
片手剣・両手剣・オノを装備可能。
・「僧侶」
回復呪文のスペシャリスト。強い武器を装備しての攻撃も得意。
ヤリ・スティック・棍を装備可能。
・「魔法使い」
強力な魔法で敵を殲滅する攻撃呪文のスペシャリスト。
両手杖・短剣・ムチを装備可能。
・「武闘家」
力と素早さに優れた最強のテンションの使い手。
ツメ・棍・扇を装備可能。
・「盗賊」
力が強く回復をこなすお宝探しのプロフェッショナル。
短剣・ムチ・ツメを装備可能。
・「旅芸人」
様々な芸で盛り上げる旅の仲間のムードメーカー。
短剣・棍・扇を装備可能。
「種族ごとに職業の向き不向きがあるのか?」というのが気になるところだと思う。例えば、オーガなら前衛職(戦士や武闘家)、エルフなら魔法系のような“しっくりくるイメージ”というのは誰の頭にも浮かぶと思うが、それほど能力的な向き不向きがあるという印象はない。実際にはオーガの僧侶やプクリポの武闘家がいるし、一緒にプレイしていて能力差を強烈に感じるようなことはなかった。このあたりは自由に選べるという印象だ。
■ 初ログイン! 無数のプレーヤーが行き交う「DQX」の世界へ!
コミュニケーションには「よく使うセリフウィンドウ」が便利
「DQX」の世界は、5つの大陸と暗雲に包まれた謎の場所が存在する「アストルティア」。ベータテストではこの5大陸のうち2つ、「オーグリード大陸」と「プクランド大陸」でプレイできる |
初めてゲームにログインした直後の模様。ベータテストでは全員が「ランガーオ村」からスタートすることもあり、たくさんのプレーヤーが集まっている |
キャラクターができあがったらいよいよ冒険の始まりだ。このベータテストでは前述のように全員がオーガのキャラクターのスタート地点である「ランガーオ村」から冒険が始まる。ランガーオ村は村王と呼ばれる長のもとたくさんのオーガたちが暮らし、雪深い山々に囲まれたひっそりとした村になっている。
製品版では、スタート地点がそれぞれの種族がいる大陸の町や村からになるということなので、他の種族と一緒に遊ぶのは、ある程度ゲームが進んで大陸間を行き来できるようになってからになるのかもしれない。
画面には中央に自分のキャラクター、左下に周辺のミニマップ、右側にはレベルやHP・MPといったステータスが表示される。3D視点の画面構成で、「DQ」シリーズをプレイしている人は、「ドラゴンクエストVIII」を思い浮かべてもらえればわかりやすい。
画面を見てまず眼がいくのは、行き交う人々(他のプレーヤー)の姿だ。トゥーンシェーディングで描かれているキャラクターの頭上には、プレーヤーの名前が表示されている。青い名前はプレーヤー、白い名前はNPCだ。グラフィックスから受ける印象はまさに「DQ」だが、紛れもなくオンラインRPGになっている。頭ではオンラインゲームの「DQ」なんだと事前に理解していても、実際に目にすると結構なインパクトがある。
そうしたプレーヤーキャラクターたちが、自由にテキストチャットでセリフを言っているのもオンラインRPGならではの要素。初めてのログイン直後には他のプレーヤーもプレイを始めたばかりということで、そこかしこから「こんにちは!」という挨拶が飛び交っていた。セリフは、キャラクターの頭上にコミックライクなフキダシで表示されるほか、画面の右上に顔のアイコンと一緒に表示されるようになっている。
手軽に定型文のチャットができる「よく使うセリフ」。これが非常に便利で、最初から一通りのセリフが揃っているのも嬉しい |
チャットではUSBキーボードがなくても、ソフトウェアキーボードで入力することもできる |
飛び交う挨拶のチャットに「自分も何か言いたい!」という気持ちがわき上がり、bボタンを長押しして「よく使うセリフウィンドウ」を開き、「こんにちは!」と返してみたりした。モーション付きの定型文なのだが、この「よく使うセリフウィンドウ」がなかなか便利。これのおかげで、キーボードなしでもある程度のコミュニケーションができた。呼び出すための操作が「bボタンを長押しする」だけなのでスムーズで使いやすい。
「よく使うセリフウィンドウ」には、挨拶のほかにもパーティーを希望するセリフなど、プレイしていると必要になるセリフが最初から一通り用意されている。もちろん自分でセリフを登録することもできるし、しぐさ(モーション)も組み合わせられる。
他のオンラインゲームでもこうした定型文の機能がだいたいあるが、セリフの中身が最初から用意されているものは案外少ないという印象がある。このように、最初からセリフが用意してあれば機能がわかりやすいし使いやすい。また、それをベースにセリフをアレンジしたり、足りないと感じたセリフを自分で登録しようという流れにも自然となりやすいだろう。こうした細かな配慮がなされているのが、いかにも「DQ」らしいと感じる。
ちなみに、ソフトウェアキーボードも用意されている。-/SELECTボタンを押して呼び出し、十字ボタンの上下左右で「行」を、次に「文字」と選択していくという入力スタイルだ。なお、チャットを伝える範囲は周囲のプレーヤー全員、仲間のみ、フレンドのみの中からいずれかを選択できる。
■ メニューなどのインターフェイスも驚くほどに「DQ」!
でも、オンラインRPGとして快適にプレイできる
メニュー画面はまさに「DQ」そのもの。オンラインRPGになっても「DQ」らしさは変わらない |
機能はどんな感じなのかとメインメニュー画面を見てみると、これもまさに「DQ」シリーズそのもの。「はなす」、「どうぐ」、「じゅもん」など、いずれも「DQ」シリーズでおなじみのコマンドがウィンドウ内に並んでいる。この見慣れたインターフェイスからくる安心感とわかりやすさは、「DQ」の強みと言っていいだろう。
だが、これだけだとさすがにオンラインRPGに必要な機能としては足りない。そうしたオンラインRPGならではの特殊なものは全て「さくせん」で設定できる。「さくせん」の「いろいろ設定」では、他のプレーヤーが自分を調べた時に表示される「フリーコメント」を設定したり、前述の定型文を設定できるほか、自分の今のプレイ状態を示す名前の横にあるアイコンを「仲間募集中」や「離席中」に変えられる。
「従来のシリーズ同様なインターフェイスで快適に遊べるの?」という疑問を持つ人もいると思うが、それも問題なし。bボタン長押しで定型文のチャットを呼び出せようになっていたり、yボタンですぐにマップが開けるようになっているなど、シンプルな操作で必要な機能を呼び出せるように工夫されている。シンプルなぶんだけとっつきがよく、非常に遊びやすい。
メニューの「さくせん」の中には、名前の横のアイコンを変化させる「今なにしてる? 設定」や「フリーコメント設定」など、オンラインRPGに必要な機能が揃っている。yボタンを押すだけで地図を表示できたり、+/STARTボタンでコミュニケーションログも表示できるなど、必要な機能がすぐに呼び出せる |
■ 町中を探索。「タンスをしらべる」ももちろん可能!
本棚には世界観を補足する本が多数並ぶ
「DQ」といえばやっぱり探索。家の中のタンスを調べることも、もちろんできる |
あらかたの機能が把握できたところで、続いては村の中を探索。村には武器屋、防具屋、どうぐ屋といったおなじみのお店があった。本作では、武器や防具は1度身につけると自分専用のアイテムになるという要素がある。他のプレーヤーに渡せなくなるし、売った時の価格も下がってしまう。
探索していると、オンラインRPGとは思えないほど、人々の会話や気になる場所を調べるという要素が充実していると感じた。まるで、オフラインでプレイする従来のシリーズのような充実度。こうした世界観を楽しむところも、しっかりと「DQ」なのだ。オンラインRPGになってもそこに抜かりはない。
また、NPCとの会話、ボタンを押した時の効果音やメッセージ送りの音、住民とのコミカルな会話など、それらも「DQ」テイストそのもの。もちろん、タンスやツボを調べて中にあるゴールドやアイテムを手に入れることもでき、ちいさなメダルを見つけたこともあった。
■ いよいよ冒険の世界、フィールドへ!
パーティーは最大4人。プレイできる時間をシステム側がきっちりフォロー
フィールドは高低差があり、昼夜の変化も美しく表現されている |
いよいよ村の外のフィールドへ! フィールドはエリア同士が繋がっており、1つひとつのエリアは結構広め。また、地域によっていろいろな特徴があるが、いずれも地形が起伏しているのが印象的だった。それによって、フィールドの移動も魅力的なものになっている。例えば、小高い丘がその先の風景を遮っていて、丘の上に登ると眼前に広がる景色が一望できたりと、同じフィールドの中でも起伏による変化が楽しめる。
木々や草花が豊富で、昼夜の変化による風景の変化も鮮やか。フィールドを駆けていき、小高い丘を駆け上がった時に朝日がちょうどよく出たりすると、雰囲気抜群の光景が楽しめる。エリアによって風景がガラリと変わるフィールドの多彩さ、バランス良く起伏している地形、昼夜の変化による美しさ。それらからくるフィールドエリアの雰囲気の良さには、「いいゲームだなぁ」と心から感じることができた。
【オーグリード大陸】 | |
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オーガたちの故郷であるオーグリード大陸は、険しい山々の地形が多く、雪深い山と荒野が同じ大陸内に存在するなど寒暖差も激しい。「ランガーオ村」、「獅子門」、「グレン城」など複数の町や村がある | |
【プクランド大陸】 | |
緑豊かな平原となだらかな丘陵地帯が続く「プクランド大陸」。プクリポたちの故郷であり、中心的な町の「オルフェアの町」にはケーキをかたどったようなユニークな建物もある |
パーティー関連の機能では、「パーティリーダー」と「ストーリーリーダー」が用意されている。ストーリーリーダーは、パーティー全体のシナリオクエストの進行度の基本になるメンバーだ |
パーティーに誘われた時は、1時間だけ、2時間だけというように一緒に遊ぶ時間を伝えやすくなっている |
周囲のプレーヤーが「仲間募集中」のアイコンを出していたので、パーティーを組んでみることにした。プレーヤーキャラクターを調べ、開いたメニューから「仲間に誘う」を選ぶ。誘われた側には、「○○さんから仲間に誘われました!」という通知が「ドラキー」のセリフ風アイコンで表示される。誘いに対する返事は「なかまになる」、「1時間だけなら」、「2時間だけなら」、「ごめんなさい」というものから選べる。時間を指定して返事できるのが特徴的で、これも従来のMMORPGではテキストチャットで意思を伝えていたものだが、システム側からフォローされているので、気兼ねなく伝えやすく、かつ伝わりやすくなっている。
3人のプレーヤーを誘い、最大人数である4人パーティーを結成。4人それぞれが自由に行動することもできるが、本作では移動に関するシステムとして「ついていく」という機能が備わっている。これは、いわゆるフォロー移動のことで、フォローしたいキャラクターを調べてついていくを選べば、自動で追いかけていく。「DQ」といえばパーティーメンバーが勇者こと主人公の後ろに並んでついていく絵が思い浮かぶが、この「ついていく」機能を使うと、いかにもそれっぽい見た目になってくれる。ちなみに、仲間とはぐれて1人で戦闘に入ってしまうのも防止できる。
移動手段では「ルーラストーン」という便利なアイテムが用意されている。これは記憶させた拠点に一瞬で戻れるというアイテムで、MPなどは消費せず何度でも使える。ただし、記憶させられる場所は1カ所だけなので、どこに設定するかは迷いどころ。パーティーを組んでいる時はメンバーの持っているルーラストーンが使えるので、どこかに集合したり、一旦町に戻る時にも便利だ。
重要な移動手段である「ルーラストーン」。記憶させた場所に瞬時に戻れるアイテムで、職業に関わらず誰でも使えるのが嬉しい。パーティーを組んでいる時には仲間が持っているルーラストーンも使える |
■ 戦闘はシンボルエンカウントで、リアルタイムに進行するコマンドバトル
モンスターを“押して”仲間を守るという動きも
シンボルエンカウント方式により戦闘が始まる。フィールドではモンスター1匹でも、戦闘に入ると複数のモンスターの群れが出現することもある |
戦闘は、フィールド上で動き回っているモンスターに触れると始まるシンボルエンカウント方式。ランガーオ村の周辺には「スライム」がぴょんぴょん跳ねていたり、大きな帽子を被ったうりぼうっぽいモンスターの「ビッグハット」が徘徊していた。徘徊していたというより、生息しているという感じで、こちらが仕掛けない限り襲ってこない。
戦闘突入時にはシリーズでも耳慣れたエンカウント音と共にモンスターがアップになる演出が入るが、ほとんどシームレスと言っていい。フィールドのその場で戦闘が始まり、自由に移動しながらコマンドを選択する方式だ。戦闘に参加していない他のプレーヤーやモンスターは半透明で表示される。戦闘はリアルタイムに進行し、数秒ごとに行動できる。戦闘中のコマンドも「こうげき」、「じゅもん」、「とくぎ」、「どうぐ」、「さくせん」といったシリーズおなじみのものだ。
コマンドに「にげる」がないが、本作では戦闘エリアとフィールドの境界線の外へ出ると逃げることができる。全員がラインの外へ逃げれば戦闘が終わるし、誰かが残っていれば戦闘は継続される。逆に、遠くで戦闘している仲間がいるときには、近づけば戦闘に参加できる。ちなみに特定の戦闘では「逃げられない!」こともある。
近接攻撃では、「たたかう」を選ぶとモンスターへ駆け寄っていって攻撃するが、呪文は種類によってタイプが異なる。例えば、メラやヒャドは火の玉やツララを飛ばすが、イオは自分を中心とした近距離のモンスターにダメージを与える範囲攻撃になっている。特徴を理解してうまく使うのがポイントだ。
「DQX」の戦闘はコマンド選択式のリアルタイムバトル。自由に移動可能で、おなじみの攻撃や呪文を特徴ごとにうまく使い分けるのがポイント。モンスターを倒せば経験値といくらかのゴールドがもらえる |
筆者は主に魔法使いでプレイしているが、攻撃魔法は大ダメージを手軽に与えやすいのが特徴。だが、それだけにモンスターから狙われてしまいがちだ。守備力の低い魔法使いでは、呪文を詠唱している時に強力なモンスターに襲われるとひとたまりもない。本作ではこのような状況で、オーガなど体格のいいキャラクターに「モンスターを押してもらう」ことができるため、その間に魔法を唱えることができる。
「モンスターを押す」という行動は、逆にイオのような範囲攻撃の呪文が当たるように、離れているモンスターを押して1カ所にまとめるというプレイにも利用できる。基本は「DQ」シリーズ伝統のコマンド戦闘だが、こうしたオンラインゲームならではの協力プレイもできるようになっている。
また、モンスターの攻撃でHPが減ったり、じゅもんやとくぎを使うとMPが減ってしまうが、本作ではそれらが自然回復しない。いわゆるヒーリングのようなものがないのだ。回復するには、やくそうや回復呪文を使い、それらも尽きれば宿屋に泊まって回復することになる。このあたりもまた「DQ」シリーズの流儀そのものだ。
そのため、戦闘を長く続けるには、それぞれの職業が持つ特性やスキルを駆使するのも大事。例えば、魔法使いや僧侶は杖で攻撃するとダメージを与えつつMPが回復する。また、レベルアップするともらえるスキルポイントを使って武器や魔法のスキルを高めると、特技などが獲得できる。中には「戦闘終了時にMPを少量回復する」という特技があるため、どんなスキルを伸ばしていくかで、キャラクターの個性がガラリと変わっていくわけだ。
【おなじみ「DQ」のモンスターがたくさん!】 | |
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「DQ」シリーズからおなじみのモンスターたちがたくさん登場していて、新しいフィールドに進む時にはどんなモンスターが現われるのかも見所に。モンスターがフィールドを徘徊している様子はもちろん、戦闘での動きも注目だ |
死んでしまったら、他のプレーヤーにザオ系の蘇生呪文をかけてもらうのを待つか、最後に「おいのり」をした教会へ戻ることになる |
HPが0になって死んでしまった時は、教会に戻り復帰するか、他のプレーヤーにザオ系の蘇生呪文で復活させてもらう。教会は従来のMMORPGで言うところのホームポイントになっていて、「おいのり」を捧げることで復帰ポイントに設定できる。死んでしまって教会から戻ると言えば、「DQ」シリーズでは所持金が減るのがお約束。本作でももちろんそれはあって、レベル10以上になると所持金の一部を失ってしまう。
■ 他のプレーヤーを「おうえん」! テンションアップでパワーアップ!
「ジャンプ」して意思疎通したりとアクションでのコミュニケーションがユニーク
戦闘中のプレーヤーを「おうえん」! 独特なシステムだが、これも一種のオンラインRPGならではのコミュニケーションだ。「DQX」は、こういう独特なコミュニケーションの楽しませ方が非常にうまいタイトルだという印象を受けた |
そこかしこで他のプレーヤーやパーティーが戦闘している様子が見えるのもユニークで、そこに近づいて「おうえん」できるのも特徴だ。おうえんされたプレーヤーはテンションが上がり、次の行動で攻撃力が高まる。通りすがりにちょっと「おうえん」して、された側から「ありがとう!」と返されるというような、独特なコミュニケーションができる。
コミュニケーションと言えば、「ジャンプ」も面白い。ZRボタンでジャンプできるのだが、これは特に移動に使うものではなく(もしかしたらそういう場所もあるのかもしれないが)、どちらかというと意思表示に使うことが多い。他のプレーヤーとすれ違う時に違いにジャンプしたり、仲間との会話中にジャンプして、いかにも「オッケー!」と言っているかのような動きをするといった使い方だ。
「おうえん」もそうだが、本作ではテキストだけではなくアクションでコミュニケーションを取るという工夫されたやり取りができるようになっている。知らない人といきなりテキストでの会話はしづらくても、アクションなら気軽にできる。楽しい雰囲気も高まるというものだ。
■グレン城下町に到着! プレイが進んで“定番的なプレイの流れ“が見えてきた
サポート仲間を活用するとソロプレイも快適!
プレイが進み、「グレン城下町」にやってきた。この町はオーグリード大陸の中心とも言える場所で、ベータテストでも多くのプレーヤーの拠点となっている場所だ。ここまでくるとパーティーを組む流れもユーザー間で整理されていて、実際に本作での基本的なプレイの流れがどういったものになるのかが見えてくる。
ここでは、ルーラストーンでグレン城下町を選ぶと到着する出入り口付近に、パーティーを希望するプレーヤーがたくさん集まるようになっている。ここで参加希望を出し、時々自分のレベルなどをチャットでアピールする。レベル上げ以外にも、特定のクエスト達成を目指すメンバー募集などもよく行なわれている。
パーティーを組む傾向としては、やはり回復役になる僧侶が欠かせない。回復呪文は盗賊や旅芸人も使えるが、やはりメインの僧侶がいると安心だろう。また、パーティーメンバーのレベル差についてはあまり強い縛りは感じられない。まだ、取得経験値などにそこまで制限は入っていない印象だが、レベルがかなり離れていると戦力としてどうか、というところのほうが重要になっている。
レベルが20を超えると、町の酒場で「転職」できるようになる。転職しても元の職業のレベルは失われない。新たな職業でレベルを上げて「とくぎ」や「じゅもん」、さらにスキルポイントを獲得すれば、より強くなっていく。パーティーメンバーの構成に合わせて職業を変えられるような、頼もしい存在を目指して育成していきたいところだ。
グレン城下町に到着。門の近くにはパーティー参加希望のプレーヤーが集まって、レベル上げやクエスト達成が目的の仲間を募っている。こうした定番の場所で仲間を集めるのが基本になりそうだ | 酒場にいるダーマ神殿の神官に「てんしょく」させてもらえる |
ソロプレイに欠かせない「サポート仲間」。酒場で希望した職業の仲間を紹介してもらえる。いずれもサポート仲間に登録している他のプレーヤーキャラクターだ |
サポート仲間と一緒にプレイしている時は、まるでオフラインRPGのような感触。「さくせん」で行動を指示し、HPが減ったら「まんたん」で回復呪文を使ってもらう |
一方で、ソロプレイがかなり遊びやすくなっている。それは、「サポート仲間」というシステムのおかげだ。「DQ」で仲間を作ると言えばやはり「ルイーダの酒場」だが、今作では酒場でお金を払って紹介してもらことで「サポート仲間」が仲間になる。
このサポート仲間は、自分のキャラクターを登録するとログアウトし、プレーヤーがプレイしない間に誰かが雇うことができる機能となる。雇われることで自分にも経験値とお金が入るという仕組みになっており、1度サポート仲間にすればこちらから「仲間と別れる」を選ぶまではずっと仲間にいてもらえる。ただし、サポート仲間のキャラクターはレベルアップしないので、ある程度レベルが離れて戦力が不足してきたら新しいメンバーと入れ替えることになる。
筆者も3人のサポート仲間を雇ってプレイ。戦闘に自動で参加し、疑似パーティープレイのような状態になる。僧侶が回復し、武闘家や盗賊がばしばし攻撃する。戦闘後にはメニューの「まんたん」を選択すれば、僧侶がHPや状態異常を回復してくれる。
サポート仲間の戦闘中の動きには、これもシリーズ作品でおなじみの「さくせん」で指示していく。さくせんには、「ガンガンいこうぜ」や「いのちだいじに」などわかりやすいものが並ぶ。「さくせん」はメンバーごとに個別に設定可能だ。
「さくせん」や「まんたん」を駆使してプレイしている感覚は、まさに「DQ」シリーズの感触。この機能があれば「1人でまったりと遊びたいなぁ」という日も安心だ。ログアウト時には「サポート仲間」に登録して終えるというのが、基本的な流れになる。
■ もうひとつの生き方“職人”
アイテム作成の手順にはプレーヤーの試行錯誤の余地がある
武器を作成する「武器鍛冶」職人。熱く焼けた地金をたたいて武器に仕上げていくが、叩くことでゲージが上がっていき、それが完成品のクオリティに影響するという、プレーヤーの腕が影響する仕組みになっている |
さて、戦闘してレベルを上げるばかりが本作のプレイではない。素材からアイテムを作成する「職人」プレイもできるのだ。職人にはメニューを見る限り、「武器鍛冶」、「道具鍛冶」、「さいほう」、「防具鍛冶」、「ランプ錬金」、「ツボ錬金」、「木工」といった種類があるようだが、この限りではないかもしれない。ちなみにベータテストではグレン城にある「武器鍛冶」の職人ギルドに参加することで、武器鍛冶のみ体験できる。
素材は「素材屋」から購入するか、フィールド上で光っている場所を調べたり、モンスターを倒した後に出現する宝箱から入手できる。レシピによって一定量の素材が必要だ。また、鍛冶をするには装備品のハンマーが必要で、ハンマーには使用回数もある。
鍛冶は、ギルドなどに置かれている炉などの鍛冶設備を調べると開始。焼けた素材を「たたく」、「とくぎ」、「しあげる」というコマンドを駆使して仕上げていく。ゲージが表示される“たたく箇所”がアイテムによって複数あって、1度たたくとグーッとゲージが満たされていく。ゲージ内にある緑色で表示されている成功範囲にゲージを収めればOK。
叩くごとに地金の温度が下がっていき、叩いた時のゲージの伸びが変化するなか、できる限りすべての箇所を成功ゲージの中におさめるように調節していく。うまく作れるとアイテム名の後ろに星マークがついて、より性能の高いアイテムが完成する。
アイテムを作ることで経験値を得て、「職人レベル」がアップ! 職人用の「とくぎ」も覚えていく |
そして、最後に「しあげる」を選べば作成完了! 「職人レベル」という戦闘用の職業とは別のレベルを上げるための経験値がもらえる。レベルが上がれば集中力(たたく回数や特技の使用回数)があがったり、「上下打ち」という叩く箇所の上下を同時にたたく特技なども覚えられる。レベルが上がればより高度なアイテムが作りやすくなっていくというわけだ。
単純なパラメーターによる成功率だけでなく、自分でゲージを伸ばし高いクオリティを目指すという面白みがあるのが魅力。成功ゲージまでの残りを見つつ、「あと1回たたくとちょうど良くなるか? いや、オーバーしてしまうかな?」といった感じに試行錯誤しながら作っていく。考える余地があるので、「次はもっとうまく作りたい!」という気持ちも沸いてくる。
周囲の職人プレーヤーが作ったものとクオリティはチャットに表示されるので、たまに星3つ(最高クオリティ)のアイテムを完成させた人がいると、周りのプレーヤーから賞賛の声が上がることもあった。孤独に腕を磨き続けているが1人ではない。ここでもオンラインの魅力が感じられた。
完成したアイテムを売ったり、素材を調達する時には、「旅人バザー」を使うのもいい。これは、プレーヤーがアイテムに値段を設定して出品し、それを購入できる施設だ。武器や防具は店に売るよりも高く買ってもらえることが多いし、職人プレイはしていない人が出品した素材アイテムも売買できる。出品に必要な料金や購入時の手数料があるものの、それでも便利なことに変わりはない。
自分が出品したアイテムが売れるとゴールドが送られてくるが、そうした自分宛のものを受け取るのが「郵便局」だ。旅人バザーでアイテムが売れた時にはゴールドが、アイテムが売れずに返却された場合も、「郵便局」で受け取れる。旅人バザー以外とのやり取りだと、フレンドに手紙を出したり、アイテムやゴールドを送ることもできる。手紙の便せんもデザインの凝った種類があり、「便せん屋」で購入可能だ。
プレーヤーが出品したアイテムを落札できる「旅人バザー」。作り上げたアイテムや、自分に不要なアイテムは、ここで買ってもらうのが基本となる | フレンドに手紙を送る「郵便局」。旅人バザーからとのやり取りも郵便で行なわれる |
■ 「DQX」の世界で暮らす! 土地を購入して“自分の家”を持とう!!
アイテム収納、職人の作業場など様々に利用可能、権限を設定し他のプレーヤーに開放することもできる
「住宅村」というエリアでは、プレーヤーが土地を購入して家を建てられる! カスタマイズも豊富で、外装や内装にこだわれる |
家の中にはたくさんの家具が置ける。設置する家具によって、鍛冶設備なら鍛冶ができるし、ベッドを置けば宿泊もできる。また、家そのものにも「屋根ウラ収納」というアイテム収納がある |
本作では自分の家も持てる。グレン城下町や、オルフェアの町といった大きな町には「住宅村」というエリアがあり、そこの空いている土地を購入することで家を建てられる。住宅村は「○丁目」というように住所が割り当てられていて、同じ構造の町が「丁目」の数だけ存在している。数千人規模のプレーヤーがそれぞれ自分だけの家を持てるようになっているわけだ。現在は、ベータテスト版ということで、土地や家が格安で売られているようだ。
ちなみに、売り地を探すのがなかなか大変ではあるが、現在だとプレーヤー専用サイトである「目覚めし冒険者の広場」で売り地を検索できるようになっている。これはこれで便利だが、できればゲーム内でも売り地の有り無しがわかりやすくなって欲しいところだ。「フェーズ2.0」の時点では、ゲーム内だと実際にその場所に行って見てみないと売り地があるのかどうかがわからなかった
土地が購入できたら、次はいよいよ家を建てていく。家は「建物屋」という家関係のアイテムを売っているお店から「家キット」というアイテムを買って、それを使って建てる。もちろん家キットにも種類があり、できあがる家がそれによって変わる。このベータテストでは、「テント風の家」、「四角い家」、「スモールタワー」という種類があった。さらに家は、屋根や外壁、扉や窓など、外装やその色をカスタマイズすることもできた。
家の中にはもちろん、いろんな種類の「家具」が置ける。家具は「家具屋」から購入でき、家の中に自由にレイアウトできる。家具にもいろいろあって、タンスやチェストといった家具なら、中にアイテムを入れておくことも可能。また、鍛冶設備を置けば家で鍛冶ができるし、ベッドを置けばそれを調べることで宿屋のように休むこともできるようになる。
特徴的なのは、他のプレーヤーに対して権限の設定ができるところだ。家への出入り、外装や内装の変化、収納家具の使用など、家を他のプレーヤーと共有できるようになっている。大きな家を友人や仲間に開放しておく、なんていう楽しみ方もできるだろう。ちなみに家には「屋根ウラ収納」というアイテム収納もあり、これは家のオーナーである自分だけが使える収納となっている。大事なものは基本的に1番便利な「屋根ウラ収納」へというわけだ。
家を持つには、まず売り地探しから。売られている土地を見つけたら、そこに家を建て外装を変え、中には家具を配置していく。家の機能もそこに置ける家具も豊富で、かなり凝った機能になっている |
■ プレイ中に出会ったこんな出来事も!
銀色で、丸くて、とんがっていて、経験値たくさんなあのモンスターも!
フィールドにいる“ぬし”のひとつ「太古のぬし」と戦闘中のパーティーを発見! 周りにはそれを見守るプレーヤーがたくさんいて、ひっきりなしに「おうえん」していた。「DQX」ならではの光景と言えるかもしれない |
こうした各種施設を利用しつつ、冒険と職人の両方のレベルアップにいそしんでいる筆者だが、ある日フィールドを走っていると人だかりに遭遇した。なんだろうと近寄ってみると、他のモンスターとは比べものにならない大きな「太古のぬし」というモンスターと、とあるパーティーが戦っているところだった。フィールドには「ぬし」と呼ばれるモンスターがいると村の住人から聞いたような覚えがあったのだが、これがそのひとつというわけだ。
人だかりは戦っているパーティーにひっきりなしに「おうえん」して、パーティーのテンションを高めていた。それによって繰り出される大ダメージの連続攻撃だが、「太古のぬし」はそれでも倒れない。「太古のぬし」の攻撃によるダメージも大きいようだ。
筆者ももちろん「おうえん」!! ただ見ているだけでなく、戦闘力をアップしてあげられるというのはやりがいがあって、嬉しいシステムだ。そうして周囲からの「おうえん」を一心に受けつつパーティーが戦い続け、ついに「太古のぬし」を倒した! 「おうえん」していたプレーヤーたちからは「おめでとう!」の声がたくさん送られ、パーティーは「おうえんありがとうございました!」とお礼を返していた。
きっと、通りがかりに強敵に挑んでいるパーティーを見つけたら「おうえん」するのはもちろん、強敵に挑みに行ったパーティーの話を聞きつけて、見学がてら「おうえん」しに行く、なんていう出来事も製品版ではたくさん起こるだろう。
パーティーを組んでレベル上げをしていたところ、なんとメタルスライムが出現! |
言葉を交わすまでもなく、メタルスライムを一斉に狙い始めるパーティーメンバーや自分。いつ逃げられるかドキドキしながら「たたかう」連打状態だ |
もうひとつ、「なるほど、これぞ『DQ』」というエピソードを紹介する。それはグレン城下町近くでパーティーを組んでレベル上げをしていた時のこと。モンスターに触れて戦闘に入ると、そこに見慣れないモンスターの姿があった。銀色で、丸くてとんがっている。そう「メタルスライム」だ!
メタルスライムと言えば経験値の塊、レベルアップの近道であり夢の塊。見るだけでテンションが上がるというものだ。パーティーメンバーも突然のその登場に言葉もなかったが、同じように色めき立っていたことだろう。なにしろ本作の戦闘は一定時間ごとに行動するリアルタイム制。おろおろしている間に逃げられてしまう、なんていうこともあり得るのだ。
飛びかかるようにしてパーティーメンバーが一斉にメタルスライムへ殴りかかっていく。一緒に現われた他のモンスターの事なんて誰も気にしていない。だが、なかなか攻撃は当たらない。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら遠ざかろうとするメタルスライム。「あぁ、もうすぐメタルスライムが行動するかもしれない! 逃げちゃうかもしれない!」、そんな焦りの気持ちが高まっていく。だが、メタルスライムはその場でぴょんぴょん跳ねているだけ、従来シリーズで言えば「1ターン、逃げずにいてくれた」ような状態だ。チャンスとばかりにさらに攻撃するパーティーメンバーと自分。
そして、見事メタルスライムを撃破! 戦闘終了後には、その辺りで稼いでいた1戦闘あたりの経験値のなんと50倍近い大量の経験値が獲得できた。おなじみのレベルアップの効果音が何回も繰り返される。この時は筆者も、レベルが一気に2上がった。戦闘終了後にはメンバー全員がその経験値に驚き、メタルスライムが出現した時の驚きや、倒せた喜びを語っていた。
見事、メタルスライムを撃破。大量の経験値をもらって、メンバー全員が一気にレベルアップ!! 一気にテンションが高まる嬉しい瞬間だ |
冒頭にも書いた、「もし『ドラゴンクエスト』がMMORPGになったら……」という例え話には、定番として、「みんなでメタルスライムを攻撃しまくる」なんていうのもあったものだが、本当にそういう体験をする日がきたというわけだ。
MMORPGのレベル上げというと、結構な長時間に渡ってひたすらに戦闘に勝利し続けるというなかなかヘビーな時間となってくるわけだが、そうした中にこのメタルスライムのようなアクセントがあるのは嬉しい限り。それがまた、シリーズでおなじみの要素であり、「DQ」らしさを感じさせてくれる伝統でもあるところが上手い。オンラインRPGという形でもうまく入っているその要素には、「DQ」という題材の懐の深さを感じるばかりだ。
■ “キーレスポンスがちょっとだけ遅い”のが気になるところ
「DQ」らしい“レスポンスの気持ちよさ”を期待したい
最後に1点だけ、気になったところというか、個人的な要望のようなものを書いておきたい。それは、操作のレスポンスがちょっと遅いと感じたことだ。
今はまだベータテスト中だし、オンラインRPGなだけに他のプレーヤーがたくさん行き交うので、処理的な問題もあるとは思うが、ネットワークや処理が一時的に重い場面だけではなく、メニューやコマンドを決定した時のキーレスポンスが、従来の「DQ」シリーズと比較してもちょっとだけ遅くて「気持ちいいの1歩手前」な手触りがした。これがもう少しキビキビとしてくれると、「DQ」の最大の強みである“気持ちいい操作感覚”になってくれるのではと思うのだが……。ここは今後に期待したいところだ。
■ 想像以上に、しっくりとくるオンラインの「DQ」
世界観はもとより、丁寧さや遊びやすさがいかにも「DQ」らしい作品
世界観はもちろん、丁寧な作り込みとバランスの良さからも「DQ」らしさを感じる事ができた。オンラインRPGになっても「DQ」は間違いなく「DQ」。オンラインになったことで生まれる未知の面白さがこれからどれだけ出てくるのか、そこにも期待したいところだ |
オンラインRPGになった「DQ」を、ベータテスト版から見える限り丸ごとお伝えしたが、いかがだっただろうか? おそらく読者の中には、「想像以上にオンラインRPGの基本的な要素がしっかりと揃っている」という感想を持った人がいるのではないだろうか? 筆者が感じているのはまさにそれで、必要な機能や施設がきっちりと揃っている。そしてそれらは、「DQ」らしさを存分に感じさせる丁寧な作り込みや配慮がなされている。そこからくる“遊びやすさ”は「『DQ』シリーズのファンだけどオンラインゲームは遊んだ事がない」という人でも、間違いなく入りやすいはずだ。
まだベータテスト段階であり、今後もさらに調整はされていくと思うが、現段階でも非常にバランス感覚の優れたゲームだと思う。世界観は柔らかく、子供から大人まで安心して遊べるテイスト。それでいて、ゲームシステム側にはレベリングや転職、職人レベルの育成など、がっちりやりこんでいける要素もあり、そうしたやりこみの方面はむしろシリアスなバランスで作られている。ゆるいところと厳しめなところが上手くブレンドされている感覚の上手さもまた、バランスが優れていると感じたポイントだ。
本稿の冒頭では、オンラインになると聞いて「ちゃんとDQらしい楽しみ方ができるの?」と不安に思った人もいたのではと書いたが、その心配はない。「DQ」らしさという点では、世界観やグラフィックス、BGMや効果音といったゲームを構成している素材としての面もそうだし、ゲームの遊びやすさという内面からも、「DQ」らしい良さを感じることができる。良い意味で“オンラインRPGだからといって、従来シリーズから変わりすぎておらず”、その「DQ」らしさの上に、“オンラインRPGならではのコミュニケーションの楽しさや未知の展開”という新しさを丁寧に盛り込んでいる。
発売日や価格、利用料金もいよいよ発表され、ここから製品での正式サービスへと進んでいく「DQX」。現段階ではベーシックなプレイの流れが見えるところまではきているが、果たしてその先にはどんな体験が待っているのか。期待して待ちたいところだ。
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(2012年5月9日)