★ PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
心に傷を負った、ダークヒーローの帰還
黒魔法結社を、デーモンアームで叩きつぶせ!
「 ダークネス 2」
ジャンル:
  • FPS
発売元:
  • テイクツー・インタラクティブ・ジャパン
開発元:
  • Digital Extremes
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
価格:
7,140円
発売日:
2012年2月23日
プレイ人数:
1人(オンライン4人)
レーティング:
CERO:D(17歳以上対象)

 テイクツー・インタラクティブ ジャパンが発売する「ダークネス2」は、闇の力を武器に戦うFPSだ。ゲームのローカライズは英語音声の日本語字幕。ストーリーの合間のジャッキーの独白など、随所から落ち着いていながらダークな香りが漂う、雰囲気たっぷりの作品となっている。

 両手に加え、2本の「デーモンアーム」を持つ主人公ジャッキーは、デーモンアームを鞭のように振るって敵をなぎ払い、敵の心臓をえぐり取って体力を回復する。敵もまた黒魔術を使う邪悪な集団であり、ジャッキーの戦いはド派手で、陰惨なものとなる。

 今作はさらにユニークな4人のキャラクターが登場するマルチプレイの協力モードを搭載しており、こちらも注目だ。


■ 再び開放されるダークネスの力。敵は黒魔法結社ブラザーフッド

主人公ジャッキー・エスタカード。ゲームの合間で、様々な独白をする。彼の話から、ジェニーとの思い出は彼の大事な宝物であることがわかる
不気味なブラザーフッドのリーダー。執拗にジャッキーを狙う
ジェニーの幻影。まるで実際にそこにいるかのように、度々現われる

 「ダークネス 2」はアメリカの米TOP COWのコミック「Darkness」を原作とするFPSで、前作「ザ・ダークネス(The Darkness)」の続編だ。前作とは開発会社が変わっており、ストーリー的な繋がりはあるものの作風は大きく異なっている。前作はリアルさを重視したグラフィックスだったが、今作はカートゥーン調のアレンジがされている。また、ゲーム性もより「ダークネス」の力にフォーカスしたものになっている。

 本作の主人公はジャッキー・エスタカード。彼は孤児院育ちだが、“殺し屋”に育成するためにマフィアのドンである叔父のポーリーに引き取られる。前作「ザ・ダークネス」では、ジャッキーの成長に脅威を感じたポーリーに命を狙われ、ジャッキーは死の寸前、“ダークネス”に選ばれ闇の力を獲得し、復活する。ダークネスの強大な能力で復讐するジャッキーと、あくまで彼を殺そうとするポーリーとの戦いは、マフィア全体を巻き込む争いへと発展していく。

 戦いの末にポーリーを倒したジャッキーは、マフィアのドンの地位を獲得する。しかし、その戦いの中で、ジャッキーは心のよりどころであったジェニーを失ってしまった……。前作のラストで、ジャッキーは己を乗っ取ろうとするダークネスを、ジェニーへの想いを頼りに封印する。今作のジャッキーは、マフィアのドンという地位を得ながらも、最愛の人を失った、癒やせない悲しみを抱えた人物として描かれている。

 物語は、マフィアの部下や、関係者を招いたレストランから始まる。楽しい食事になりそうな雰囲気を、突然車が窓を突き破り突進してきてぶち壊しにする。同時に多数の武器を持った男がレストランを襲い、あたりは阿鼻叫喚の地獄と化す。ジャッキーはその戦いの中、瀕死の重傷を負ってしまう。もうろうとしたジャッキーの眼前で、襲撃者のリーダーと思われる杖をついた男がつぶやく「父親よりはしぶとそうだな」。とどめを刺される寸前、ジャッキーの内側から声が響く。「闇を受け入れるのだ、ジャッキー」。そしてジャッキーは、再び闇の力を解放する。

 こうして、再び闇の力を手にしたジャッキーは、襲いかかる敵と戦いを繰り広げていくことになる。敵は黒魔法結社「ブラザーフッド」。彼らはなぜかダークネスの力を知っており、ジャッキーからその力を奪おうとする。重火器だけでなく、魔術の力も使ってジャッキーや、彼の仲間を攻撃してくる。特にリーダーの杖をつく男は、非常に不気味な存在だ。

 また、何故かはわからないが、行く先々でジェニーの幻影が現われる。彼女は生前の姿のまま、甘い記憶をジャッキーに蘇らせる。この幻影はプレーヤーにも生前の彼女を印象づけ、ジャッキーが失ったものがどれだけ大きかったかも強く感じさせる。彼女は死んでしまった女性だが、間違いなく本作の「ヒロイン」である。彼女の幻影は何故現われるのか。この秘密も、物語の鍵を握っていそうだ。

 一方、ゲーム性に関しては、公式ページに掲載されているインタビューなどによると、開発者は特に今作で「ダークネス」を使った戦いにこだわったという。今作はダークネスの強力な力を満喫できる。ダークネスはジャッキーの体から2つの大蛇のような「デーモンアーム」という形で現われており、敵をなぎ払い、大きな物を投げつけ、怪力を持った超人か、怪獣になったかのような活躍ができる。うまく使いこなすことで、無敵気分が味わえるだろう。

 しかしブラザーフッドは、ダークネスの力を知っており、弱点が「光」であることも知っている。巨大な投光器を肩に担ぎ、こちらに光を浴びせかけてくる敵まででてくるのだ。ダークネスの力を使うには、「光」に注意しなくてはいけない。ダークネスの力を身につけたジャッキーは光に対して常人以上に弱くなってしまっているようで、電灯などに近づいても視界が真っ白になってしまう。このため、常に光に気を配り、電灯など光源を破壊しながら進むという戦い方が求められる。

 強力なダークネスの力と、光への注意、敵との戦い……。「ダークネス 2」は多くのFPSとはひと味違うプレイ感を持った作品である。前作のファンはもちろん、前作をプレイしていない人も楽しめるだろう。ダークネスの力を使う独特な戦いを体験して欲しい。


食事会は一瞬にして悪夢に。絶体絶命の危機に、ジャッキーはダークネスを開放する
再び手にしたダークネスの力で、ジャッキーは血みどろの戦いを繰り広げて行く
度々現われるジェニーの幻影。何か秘密があるのだろうか


■ 両手と、2本のデーモンアームで、立ちはだかる敵を抹殺せよ!

両手と、2本のデーモンアーム。“四刀流”でジャッキーは戦う
スキルツリー。闇のエッセンスで、成長させていく

 ジャッキーは両手と、左右のデーモンアームという、常に“四刀流”で戦う。銃は拳銃やサブマシンガンなどは、両手に一丁ずつ構えることも、片手持ちをすることも可能。片手持ちの場合は、サイトをのぞき、より正確な射撃もできるようになる。遠くの敵を狙うときは、片手持ちが有効だ。この他にも、アサルトライフルやショットガンも登場する。

 そして、左右のデーモンアームはそれぞれ役割が異なっている。右のデーモンアームは、R2ボタン(RBボタン)と右スティックを併用することでアームを鞭のようにしならせ、敵をなぎ払ったり、縦に振り下ろしたり、振り上げることで敵を空中に跳ね上げ、地面に叩きつけることができる。リーチはそれほど長くないため、慣れが必要だが、使いこなすことで強力な武器となる。

 左のデーモンアームは敵や物をつかむことができる。車からドアを引っぺがし、銃弾の盾にすることができたりもする。鉄棒やドラム缶などをつかみ、敵に投げつけることも可能だ。敵の体をつかむには、右のデーモンアームでの攻撃や銃で一端ひるませて隙を作らなくてはならない。また、敵の体をつかむと「処刑」アクションが可能になる。さらに、左のデーモンアームは敵の心臓を“食う”ことができる。心臓を食べることで、ジャッキーの体力は回復するのだ。

 敵を倒すと、「闇のエッセンス」が入手できる。このエッセンスは、マップに点在している“深淵”で利用できる。深淵ではスキルツリーを開くことができ、様々な能力をパワーアップさせることができる。処刑アクションは「闇のエッセンス」をより多く獲得できる行為である。積極的に狙いたいが、処刑アクションをした敵の死体には心臓が残らない。回復優先の状況の時は、心臓を残すようにするなど、より有利に戦うためには、工夫が必要だ。

 スキルは様々で、処刑アクションで体力を回復させるもの、心臓での回復量を増すもの、虫の集団「SWARM(スウォーム)」を敵にまとわりつかせるものなどがある。リロード速度を向上させるなどジャッキー自身の能力も向上させることができる。

 強力なスキルを獲得すれば、敵が心臓の一部がブラックホールを落とすようになり、投げつけることで敵を吸い込ませることができるようになったり、闇のアーマーをまとうようなこともできる。どのスキルをどう上げていくかで、ゲームの進行は大きく異なってくるだろう。


デーモンアームでなぎ払い、心臓を奪い、物を投げつけて敵を倒していく
デーモンアームで車のドアを引きはがし盾に。ダークネスの弱点は光。視界が効かなくなり、闇の力も消えてしまう。電灯を破壊しながら進む必要がある
使い魔である「ダークリング」はジャッキーを援護してくれる。彼の体を操る場面も。右は「デーモンアーマー」のスキルを習得したところ。手が、黒い物質に包まれている


■ なぜかこちらの弱点を知っているブラザーフッドとの戦い。謎が大きくなっていくストーリー

サラおばさんは、ジャッキーの大事な心のよりどころだ
投光器を持つ敵。複合攻撃が脅威だ
十字架に貼り付けにされるジャッキー。このピンチをどう切り抜ける!?

 ブラザーフッドは多彩な敵を繰り出し、ジャッキーを苦しめる。彼らは本来はダークネスからこの世界を守る存在だったようだが、今やその理想は歪み、ジャッキーからダークネスの力を奪い、自分たちのものにしようとしている。

 ブラザーフッドは豊富な資金があり、大量の構成員がいるようで、チンピラ風の者から、最新の武器をあつかう兵士、さらには魔術によって強化された者までいる。特に魔術強化の敵は強敵だ。瞬間移動を繰り返し、近接攻撃を挑んでくる敵は、上半身を不気味な鎧に身を包んでいる。光る鞭を持った敵は、ジャッキーの武器に鞭を絡めて、奪い取ってしまう。巨大な盾を魔力で包み、殴り飛ばそうとする敵もいる。

 特に脅威なのが投光器を持った敵だ。ジャッキーは極端に光に弱い。光を浴びせられると闇のパワーが使えなくなることに加え、周りが全く見えなくなってしまうのだ。「ダークネス 2」は全体的に敵の攻撃が強めで、体力がフルの状態でもあっという間に削られて、ピンチに陥る場合が多い。このため速いペースで敵を倒し、心臓を奪って体力を回復しながら進む、というのが本作の基本パターンなのだが、周りが見えないと、敵の死体の位置も退路もわからなくなり、蜂の巣にされてしまう。

 投光器の敵は銃で倒すしかないのだが、この敵は、ものすごく細かくサイドステップをして銃弾をかわしたりする。このサイドステップの表現は、いかにも“ゲーム的”でリアリティがなく、ちょっと気持ちが冷めてしまうところがあった。「ダークネス 2」は難易度設定ができ、自分の腕に合わせた選択ができるため、FPS初心者も楽しめるが、投光器の敵と他の敵が一緒に出てきたときは難易度が跳ね上がる。出現場所を覚え、遠距離から銃主体で戦い、素早く倒すといった攻略が必要だ。

 また、ステージには「レリック」という宝物が隠されていて、これを探す楽しみもある。レリックは入手できれば、大量の闇のエキスを入手できるため、積極的に探したいところだ。レリックは“説明”も面白い。レリックを解説してくれるのは、こちらのムービーで各要素を紹介しているジョニー。熱に浮かされたような、独特の語り口で宝物の特徴を語られる上、翻訳の日本語テキストもノリノリで、とても楽しい。レリックはオカルト的ないわくつきの代物ばかりなのも、ニヤリとさせられてしまう。

 そして、ネタバレになるため詳しくは語れないが、ゲーム中盤から、「ある要素」が物語に挿入されてくる。大きな謎と、大きな疑惑をプレーヤーに抱かせるその要素は、「ダークネス2」という作品に独特の味わいを加えていく。この要素も、ぜひ要チェックである。

 本作のシングルプレイのボリュームとしては昨今のFPSの標準的なところではあるが、難易度を上げたり、ダークネスの育て方を変えたりすることで、何度もプレイが楽しめる。また、1度クリアすれば、パワーアップを持ち越して最初からプレイできるモードもアンロックされる。そしてさらに、本作には、4人で協力できる「ヴェンデッタ」モードが搭載されており、こちらもかなりのボリュームがある。「ダークネス2」は独特の味わいを持った、FPSである。世界観やキャラクターに魅力を感じた人には、是非プレイしてもらいたい作品だ。


マフィアのボスであるジャッキーは、仲間と共に豪邸に住んでいる。右は彼の部屋。ジェニーの遺影がある
戦いはより陰惨に、凄絶になっていく。この戦いの果てにジャッキーを待ち受けるものは?
マップの様々な場所にあるレリック。入手すると、右のジョニーがノリノリで解説してくれる
鉄球を振り回すクレーン車との対決。ダークリンクの差し出すボンベで攻撃する


■ 個性豊かな4人のキャラクターが登場する「ヴェンデッタ」

「ヴェンデッタ」は本編と同じ時間軸で進むサイドストーリー。本編とは違ったブラザーフッドとの戦いが描かれる

 「ヴェンデッタ」は本編と同じ時間軸で進むサイドストーリーであり、シングルプレイでも進行可能だ。もちろん協力プレイならば更なる楽しさを味わえる。こちらでもキャラクターを成長させることが可能で、やり込みプレイも可能だ。

 このモードでは4人のキャラクターを選択できる。4人のキャラクターは、「イヌガミ」、「ショーシャナ」、「J.P.デュモン」、「ジミー・ウイルソン」。各キャラクターはそれぞれ特殊な能力を持っている。キャンペーンをプレイしていくことで、成長させることができる。

 妖刀クサナギを使うイヌガミは、常に刀に話しかける男。日本人のようでダメージを受けると「イタイ!」と叫ぶ。紅一点のショーシャナはモサドの敏腕エージェントだが、闇の力を放つ魔銃を持っている。J.P.デュモンは呪術師の杖で敵を空中に跳ね上げることができる。ジミー・ウイルソンは魔力を持つ斧で敵を倒す。斧は投げつけても何度も自分の手に呼び戻すことが可能だ。

 ミッションはブラザーフッドの暗躍を調査するというもの。今回は発売前のため残念ながらマルチプレイは体験できなかった。複数プレイを前提にしているようで、敵が多めで、ソロプレイの場合は、難易度を下げてプレイするのが良さそうだ。いくつかのミッションをシングルプレイで遊んでみたが、やはり「ヴェンデッタ」の魅力を充分に味わえたとは言えないと感じた。発売後は、是非マルチプレイに挑戦したい。ちなみに、マルチプレイは、発売前のイベントで見ることができた。こちらも参照して欲しい。



妖刀クサナギを使うイヌガミ。移動速度が速く、近接攻撃が得意だ
ショーシャナはモサドの敏腕エージェント。闇の力を持つ銃で、敵の心臓を破壊する
J.P.デュモンは魔法の杖を使って、敵を空中に舞わせる。ブラックホールを生み出すことも
ジミー・ウイルソンは何度も手元に戻ってくると言う、魔力を持つ斧で敵を倒す。北欧神話の雷神トールのような能力だ

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(2012年 2月 22日)

[Reported by 勝田哲也 ]