ロジクールは、新型ゲーミングマウス「パフォーマンス オプティカルマウス G400」を8月12日より発売した。このマウスは、従来の人気モデル「MX 518 パフォーマンス オプティカルマウス」の後継機種と位置づけられる製品で、高性能オプティカルセンサーを搭載し、ハードなゲーム使用にも耐えられる能力を有している。
ロジクールでは本製品を「パフォーマンスモデル」として、プロユース向けに位置づけられる製品名を冠しているが、本家のLogitechによる海外版では「Optical Gaming Mouse G400」が正式名称。性能的にも内容的にも、本製品はゲーミンググレードのマウスなのだ。
■ 「MX 518」の堅実なアップグレード。ゲーミング専門ブランドを脅かす性能
「G400」 |
ボタン数は8個。奇をてらわず使いやすい配置だ |
3600dpiのオプティカルセンサーを採用 |
「パフォーマンス オプティカルマウス G400(以下、「G400」)」は、3,980円という安価ながら非常に品質の良い有線ゲーミングマウスだ。まずは基本スペックをご紹介していこう。
センサー部には「MX518」の2倍の精度を持つ最大3,600dpi解像度のオプティカルセンサーを搭載。最大追従加速度は25Gで、最大トラッキングスピードは3.56m/秒。これらの数字はRazerやSteelSeriesなどゲーミング専門ブランドの高性能マウスに匹敵する。
また、PCとの通信の頻度を示すポーリングレートは最大1,000Hzを実現。これはRazerの高速レスポンス技術“Hyperesponse”と同等のレートだ。従来の「MX518」が125Hzだったことを考えると、8倍のスペックを実現したということになる。
マウス本体の形状は「MX518」とほぼ同じ。ボタン数と配置も同じだ。ごく小さな違いはあり、本体重量が10gほど軽くなっている。実際に手に持ってみた感触はほとんど変わらず、形状に関してはあくまでマイナーチェンジにとどまっている印象だ。製造時の材料をちょっと節約したレベルだろうか。
そのため本製品は、「MX518」のゲーマーならば全く違和感なく移行できるモデルとなっている。もともと「MX518」は万人受けする使いやすいマウスだったが、本製品はその純粋なアップグレード版と考えていい。センサー性能が上がったことで、FPSなど激しいゲームでの“攻撃力”がぐっと増すことは間違いない。
側面はラバーコーティングされており、手汗が滲んでもグリップを維持するよう工夫されている。また、「MX518」譲りの中央が凹んだ形状のおかげで、摘み持ち、かぶせ持ちの両方のスタイルに適している。また左右メインボタンはゲーミングモデルらしく非常に軽く、瞬間的な操作に適する。
ホイールの前後にはDPI切り替えボタンがあり、デフォルトでは4段階のDPIをオンザフライで切り替え可能。中央にあるボタンはデフォルトでは「標準DPIに切り替え」の機能となっている。各ボタン機能は「SetPoint」ソフトウェアでフルカスタマイズ可能である。
背面のマウスソールは一般的なつくりで、ゲーミングモデルの高性能ソールに比べるとやや摩擦が強い。もし物理的なカスタマイズを加えるとすればまずここだろう。
【G400 基本スペック】 | |
---|---|
接続方式 | USB 有線 |
センサー | オプティカル |
分解能 | 400~3,600 DPI (50DPI刻みで設定可能) |
レポートレート | 125Hz、500Hz、1,000Hz から選択 |
ボタン数 | 8 |
本体サイズ | 72.2x130.3x43.5mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 133g |
形状は従来モデルの「MX518」と同等で、かぶせ持ち・つまみ持ちの両方に適する |
中央ボタンはユーザー好みのコマンドを割り当てるのに好都合な配置。サイドボタンはしっかりとした出っ張りがあって押しやすい |
■ 進化したソフトウェア、高いカスタマイズ性
対応ソフトウェアはロジクールのサポートページでダウンロード可能 |
「Logicoolゲーミングソフトウェア」の画面 |
「G400」は、あのベストセラー「MX518」の後継機として性能的に最新ゲーミングマウスとして遜色のない仕上がりとなっているだけに、日頃からロジクールのマウスを愛用しているロジクールファンのみならず、日頃はロジクールのマウスではないというゲームファンにも非常に気になる存在のはず。
そこで以下、細かく見ていくことにしたいが、個人的にまず気になっていたのは「ソフトウェアも進歩しているのか?」という点だ。何年も前にロジクールのマウスを使った経験を持つゲーマーなら、ロジクールのデバイス統合管理ソフトウェアであった「SetPoint」にあまり良い印象を抱いていないかもしれない。昔のバージョンは確かに、UIは独特すぎるし、挙動が予測できない部分もあったりして、使いにくかったのだ。
そこであらためて最新のソフトウェアを見てみよう。ゲーミングマウスやキーボードを統合的に管理するソフトウェアは「SetPoint」改め、「Logicool ゲーミングソフトウェア」としてゲーム向けに独立したものになっている。これは「G400」の製品パッケージに付属していないため、ロジクールのサイトからダウンロードする必要がある。
メイン画面は非常に小洒落た感じで、なかなか良い感じだ。カスタマイズ項目は大別してボタンとセンサーにわかれている。ボタンカスタマイズは全ボタンについて可能で、各「プロファイル」毎に別の設定を保持しておくことができる。プロファイルはゲームタイトルごと(自動検出される)あるいは任意に追加・編集することが可能で、最大数は基本的に無制限のようだ。
ボタンのカスタマイズ画面は割り当てるコマンドのリストと、コマンドの作成画面に分かれている。マクロを割り当てる場合は「+」のアイコンを押し、コマンドエディタを起動。ここで「マルチキー」を選べばマクロを組めるほか、任意のテキスト(Unicodeプレイバックを指定すれば日本語も可能)を出力するようなコマンドも作れるなど、非常に高い柔軟性がある。
次にセンサー設定。ここではDPI設定を最大5つ指定することが可能だ。DPI設定の数を変えることもできる。また、ポーリングレートを4設定の中から選択可能だが、ここは1,000Hzを指定しておけばよいだろう。DPI設定はプロファイルに関連付けることもできるので、ゲームごとに異なる感度設定を作っておけば、起動するだけで適用されるようにできて便利だ。
総合的に見て「Logicool ゲーミングソフトウェア」は非常に使いやすく、また堅実な造りになっており、RazerやSteelSeries、ROCCATなど他メーカーの設定ソフトウェアに慣れたゲーマーでもすんなり導入できるはずだ。
対応ゲームではゲームコマンドを直接ボタンに割り当て可能 | DPI設定は最大5段階で、各段階の感度を任意に調整できる |
コマンドエディターでは、マクロや任意のテキスト、マウスコマンドや各種アプリケーションのショートカットまで、幅広い操作を作成することが可能だ |
■ ほぼ死角なし。価格も手頃で、一般的なゲーマーならば鉄板の選択肢になる
直線補正はやや強め。精密な操作を高速に行なう際は違和感を生ずるかもしれない |
ゲーミング専門ブランドの高性能マウスに迫る性能、高いカスタマイズ性、使いやすいソフトウェアと、「G400」に死角はほとんど見当たらない。すべてのゲーマーにオススメ……と言っても問題ないところだが、いくつか留意しておくべき点はある。
ひとつは、マウスを縦横にまっすぐ操作する際に働く、直線補正機能がやや強すぎるきらいがあるところだ。右の画像はペイントソフト上で「あまりがんばらずに」縦横の線を引いてみたものだが、横方向の線はときに完全な直線となっており、フリーハンドの微妙なブレが完全に消されている。縦方向の線は、操作がより不正確なのでグニャグニャしているが、よく見ると補正が働いた範囲と、そうでない範囲での境界で、一気にガクッとブレている傾向が見て取れる。
このような「強い」直線補正機能は、一般的な操作のアシスト機能としては優秀なのだが、FPSなどの激しいゲームでは、感覚と直結した緻密な操作を求める際に障害になる場合がある。そのため他社のゲーミングマウスでは敢えて直線補正をカットしていたり、その程度を調整する機能が備わっていることもある。これを気にするのは相当レベルの高いゲーマーに限られると思うが、そういった方は「G400」を試す際、直線補正が違和感につながらないかどうか注意してほしい。
もうひとつは、最近の高性能ゲーミングマウスではほぼ標準になりつつある「リフトオフディスタンス機能」が存在しない点。「G400」のリフトオフディスタンスは、黒色布マウスパッド使用時に筆者実測で2mm程度と、バランスの良い調整となっているものの、マウスパッドとの相性にあわせて限界まで調整したい……というニーズには残念ながら応えられない。
そこまでのこだわりを持つヘビーゲーマーには少々物足りない部分もある「G400」だが、よりカジュアルにゲームを楽しんでいる一般的なゲーマーであれば、非常に満足できるマウスであると断言できる。価格が安いことも合わせて考えると、このカテゴリーにおいて最良の選択肢だ。
そもそも形状やボタン構成が万人向けで、おおむね誰が使ってもハズレにならない製品でもあるため、非ゲーマーやゲーマーになりたての友人、知人への贈答品として本製品を使ってみても面白いかもしれない。お中元の季節だけに、そんな活用もありなのではないかと、ゲーマーの皆さんに提案してみる次第だ。
(2011年 8月 12日)