アメリカのプロレス団体「World Wrestling Entertainment(WWE)」をテーマにしたアクションゲームシリーズ最新作「WWE 2010 SmackDown vs. Raw」が、ついに発売された。新旧スーパースター、総勢70名が実名で登場。1人のスーパースターとしてストーリーに沿ってプレイしたり、ゲームならではのドリームマッチなどが楽しめる。
「WWE」は、最近ではCS放送のJ SPORTSだけでなく、1週間のストーリーをダイジェスト編集した30分番組「This Week in WWE」がUHF局系列で放映され始めるなど、再び認知度が高まりつつある。
マニアの方々には「いまさら、そんなことに言及するのかよ」と言われそうだが、WWEは日本のプロレスとはまた違った面白さがある。以前からのファンはもちろん、「This Week in WWE」で最近知ったという人も、この機会に「WWE 2010 SmackDown vs. Raw」をぜひプレイしてみてはいかがだろうか。なお、本レビューにはPS3版を使用した。両機種版でほとんど差は感じられないため、購入予定の人はお好きなほうを選んでいただきたい。
■ 基本操作 ~スーパースターの華麗な動きを再現~
プロレス(WWEはイメージ戦略からか『プロレス』はNGワードだが、本稿では広義的な意味で使用させていただく)ゲームといえば、スーパースターが繰り出す技を“自らの手で”再現させるのが醍醐味のひとつ。本作も、コントローラーのボタンをフルに活用することで、さまざまなシチュエーションが再現できるようになっている。
基本操作は、左スティックでスーパースターの「移動」、□ボタンで「打撃技」、右スティック(上下左右)で「クイックグラップル」、R1ボタン長押し+右スティック(上下左右)で「強グラップル」、ロープ近くで×ボタンを押せばリング内外やエプロンへの移動、ダウンした相手の近くで×ボタン長押しで「馬乗りパンチ」。「サブミッション」は、強グラップルの状態もしくは倒れた相手の近くでR3ボタンを押せばいい。
相手ダウン中に右スティック下で「ピンフォール」、L1ボタン長押し+左スティックで「走る」、×ボタンで「凶器を拾う」、○ボタンで「ハンマースロー(相手が近くにいるとき)」と「倒れている相手を立たせる」、モメンタムゲージが一定までたまると△ボタンで「シグネチャー」または「フィニッシャー」など。ロープからの跳ね返りや走っている最中に打撃やクイックグラップルを出すこともできる。
ディフェンス操作はシンプルで、一般的な格闘ゲームでは定番の「ガードボタン」のようなものは存在しない。R2ボタンで「リバーサル」、R1ボタンで「ピンフォールキャンセル」、ダウンから立ち上がる前にR2ボタン長押しで打撃やつかみ技を回避する「ディフェンシブスタンス」。前作で打撃とつかみそれぞれに分けられていたディフェンスボタンがR2ひとつに集約されたのは、非常にわかりやすく好印象。ただし、そのぶんタイミングが若干シビアになっているようだ。
応用操作としては、プロレスファンにはおなじみのターンバックルを外す「リムーブ・ターンバックルカバー」がある。外したいターンバックルがあるコーナーに接近して×ボタンを押し、あとは対戦相手をハンマースローで投げつけるだけ。「ダイブ・セットアップ」は、ターンバックルに向かって相手をハンマースローし、そのままダイビング攻撃をする連続攻撃。ターンバックルに相手がもたれかかったら、接近して×ボタンを押すと発動。ただし、相手が背中をターンバックルに向けているときしか狙えない。ロープにふった相手をやりすごすリープフロッグ/ダッキングは、ロープから返ってきたところでタイミングよく×ボタン。
基本中の基本といえる操作は、以上のとおり。アクションゲームに不慣れな人は「えー、こんなに覚えなきゃ遊べないなんてムリだよ!」と思われるかもしれないが、これらはプレイしているうちに身体が覚えるものだし、ボタンの役割が系統立てられているため、仮にマニュアルを見なかったとしても、なんとなくボタンを押しているうちに「あぁ、ここでこのボタンを押すと、こうなるのか」というのがわかってくる。ただし「ラダー」、「マネー イン ザ バンク」、「スティール ケージ」など、特殊なシチュエーションで行なわれる試合に臨む際は、どのボタンでなんのギミックを作動させるのか、あらかじめ頭に入れておいたほうがいいだろう。
なお、今作からキャラクタ選択時「スーパースターのアビリティ」がアイコンで表示されるようになった。アビリティとは、いわば“特殊能力”のようなもので、たとえば「レフェリーシールド」なら、レフェリーの近くで×ボタンを長押しすると、その背後に隠れられる。アビリティには全部で21種類があり、それぞれ一定の状況下でボタン操作が必要なものが大半だが、なかには「フォール返し」のように自動的に効果が発揮されるものもある。いずれもスーパースターの能力を際立たせるもので、ゲームに慣れてきたらアビリティを意識しつつ戦ってみるといい。試合がより白熱したものになることは請け合いだ。
【アビリティ】 | ||
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アビリティは、選手の個性を際立たせてくれる。自動的に発動するものもあれば、特定の状況で使えるものなど、その内容はまちまちだ |
ゲームモードは、「PLAY」、「MY WWE」、「ROAD TO WRESTLEMANIA」、「STORY DESIGNER」、「CAREER MODE」、「CREATE MODES」、「ONLINE」などが用意されている。ここから先は、各モードの主だった特徴について触れていく。
■ PLAY ~選手と試合形式を自由に組み合わせて楽しもう~
好きなスーパースターを選んで、70種類以上があるさまざまな試合形式をプレイできる。ひたらくいえば「エキシビジョンモード」みたいなもので、「One On One」、「Two On Two」、「TRIPLE THREAT」、「FATAL-4-WAY」、「6-MAN」、「HANDICAP」、「ROYAL RUMBLE」、「CHAMPIONSHIP SCRAMBLE」の8種類が選択できる。
【One On One】 | 【Two On Two】 | 【TRIPLE THREAT】 |
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1対1で戦う、もっとも基本的な試合形式だ | いわゆるタッグマッチ。連携が勝敗の鍵 | 3人が同時にリングに上がる、やや特殊な試合形式 |
【FATAL-4-WAY】 | 【6-MAN】 | 【HANDICAP】 |
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4人が入り乱れるカオスな試合形式。立ち回りがとても重要になる | バトルロイヤル、エリミネーションなどバリエーションによってセオリーが変わってくる | ひとりでふたり以上を相手にするため、能力差があっても相当きつい |
【ROYAL RUMBLE】 | 【CHAMPIONSHIP SCRAMBLE】 |
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今作では、相手をエプロン、コーナー外、ロープの真下に投げられるようになるなど大幅にパワーアップ | 時間の経過に応じて新たな選手が参加。時間切れになるまで延々と続く。5分、10分、20分から選択が可能 |
■ ROAD TO WRESTLEMANIA ~年間最大のイベントを疑似体験~
WWEにおいて、1年でもっとも重要なイベント「WRESTLEMANIA」に出場するまでの過程を疑似体験するモード。後述するエディット選手のほか、EDGE、SHAWN MICHAELS、BRAND WARFARE、RANDY ORTON、MICKIE JAMESがそれぞれ選択可能。このうち「BRAND WARFARE(RAWとSMACK DOWNのブランド対決)」は、他プレーヤーとふたり協力プレイが楽しめる。試合形式は、ONE ON ONE、TWO ON TWO、HANDICAPなど、ストーリー展開によってそれぞれ異なる。基本的にはワンマッチごとに控え室に戻る形式となっており、本番が近づくごとにWWEらしい展開が待ち受ける。
なお、本モードは前作同様、プレイしていくことでさまざまな“隠し要素”がアンロックされていく。ストーリー分岐が存在するため、すべての隠し要素を出してから他のモードをプレイしたいという人は、直前セーブを利用してアンロック条件をしっかりと確認しながらプレイを進めていくといいだろう。
ストーリー分岐はアンロック条件に大きく関係してくる。気になる人は、繰り返しプレイする際、以前と異なる展開を心がけるといいかも |
■ MY WWE ~自分だけのWWEを作り上げよう~
基本的には前作同様“自分だけのオリジナルWWE”を作成するためのモードだが、人間関係などがより細かく演出できるようパワーアップしている。サブモードは「SUPERSTAR MANAGEMENT」、「TEAM MANAGEMENT」、「RIVALS」、「HIGHLIGHT REEL」の4つ。
「SUPERSTAR MANAGEMENT」、「TEAM MANAGEMENT」は、各ブランド間の選手移動、アビリティ、ファンのリアクション変更などが行なえるというもの。エディットしたオリジナルスーパースターを編入させることも、もちろん可能だ。「RIVALS」は、各スーパースターが他のスーパースターに対して、どんなリアクションを示すのかを編集できるというもの。「昨日の敵は今日の友」ではないが、一区切りつくたびに人間関係やポジションが千変万化していく“ソープオペラ”スタイルがWWEの特長でもある。過去の人間関係を再現するもよし、あるいは「このスーパースターと、あのスーパースターが手を組んだら面白いだろうなぁ」といった夢の組み合わせを模索するもよし。
「HIGHLIGHT REEL」は、プレイ中の動画を保存して自由に編集できるというもの。機能は、テロップから映像効果まで必要なものが一通り揃っているといった印象。プロが使うツールのように多機能ではないが、PCなどでオリジナルムービーを編集しているアマレベルの人なら、相当凝ったものが作れるはず。面白いのは、作成したオリジナルクリップを、エディットスーパースターのエントランスムービーに利用できること。また、PlayStation Networkを介してYouTubeにアップロードできるのは、いかにも今風の機能といえる。
デフォルトの既存データにも大幅に手が加えられるのがポイント。文字どおり、自分だけのWWEが作れてしまうのだ |
■ STORY DESIGNER ~これぞ夢の実現! ストーリーイベントを自在にカスタマイズ~
“エキプロ”から綿々と連なる数々のエディット機能も「ついにここまできたか!」とうならされるモード。WWEといえば、ハリウッドの脚本家を擁した“完璧なスポーツエンターテインメント演出”で知られるが、その根幹ともいうべき部分を、プレーヤー自身が手がけられる。試合の前後はもちろん、その最中など、さまざまなストーリーイベントを選択して自由にエディットできてしまう。同じ機能を日本のプロレスゲームに搭載したら色々と問題がありそうだが、これもCEO自らが“脚本に基づいた高品質のスポーツエンターテインメント”であることを公言したWWEならではといえる。
ストーリーを作る、というとなにやら難しくきこえそうだが、実際そんなことはない。作り方は、まずストーリーを発生させたいショーを選択し、それぞれ「シーン」または「マッチ」をカスタマイズ。「シーン」では、WWEでおなじみの会話や乱闘シーンが作成できる。キャストの選定とアニメーション、場所を決めたら、アドバンスド・エディタで全体の長さ、テキスト、感情、サウンド、ロゴ、カメラアングルなどをそれぞれ調整していく。「マッチ」では、スーパースター、ルール、難易度や進行条件などを自由に決められる。乱入設定も可能なので、過去にWWEで起こったさまざまな出来事を再現するのも面白そうだ。
このように、実に多機能かつ自由度の高い秀逸なエディットモードなのだが、唯一残念なのは「漢字」に対応していないこと。使えるのは「ひらがな」と「カタカナ」のみで、せっかくエディットしても字幕がひらがなとカタカナのみという、なんというか「シュール」な絵になってしまう。「仕様」と割り切るにはちょっと悲しい気がしなくもないので、このあたりはもう少し頑張っていただきたかったところだ。
エディット機能も、ここまできたか! といった印象。唯一、テキストで漢字が扱えないのが惜しい…… |
■ CAREER MODE ~各クラスの頂点を目指せ!~
好きなスーパースターを選んで、各種タイトルを獲得するまでの道のり(キャリア)を疑似体験。モード中の個人成績は、すべて記録される。本人になりきってプレイするというよりは、ひとりのスーパースターをナンバーワンの地位まで押し上げるといった印象のほうが強いように感じられるモード。試合形式は、すべてプレーヤーが選択可能。前作ほど難易度も高くないように感じられるため、アクションがあまり得意でない人は、ある程度まで地道に育てたエディットスーパースターで挑戦してみるのもいいだろう。
ダメージが残ると次の試合に影響してしまうため、効率のいい戦い方が求められるモードだ |
■ CREATE MODES ~もはや作成できないものは無い!?~
初期シリーズから異彩を放ってきたクリエイトモード。作を重ねるごとにパワーアップしてきたが、今作はツールが一新されるなど、もはや「常識の範疇で再現できないものが、はたして存在するのか?」と思えるほどの仕上がりとなっている。
もっともお世話になるであろう「CREATE A SUPERSTAR」は、リメイニングポイントシステムを採用。最大48ポイント以内で、さまざまなカスタマイズを行なっていく。「こういうのって面倒くさいんだよなぁ」という人のためにテンプレートも用意されているが、フルスクラッチも決して難しいものでないため「徹底してオリジナリティにこだわりたい」人は後者でコツコツと仕上げていくことをおすすめする。
このほかにも、128×128または256×256ピクセルで作成したイメージをスーパースターにテクスチャとして貼り付けられる「PAINT TOOL」、既存のスーパースター衣装を変更できる「SUPERSTAR THREADS」、入場シーンを作成する「CREATE AN ENTRANCE」、ムーブセットを自由に変更できる「CREATE A MOVE-SET」など、ゲーム中に存在するほぼすべての要素に手が加えられる。想像力に富んだ人であれば「無限のオモチャ箱」を手に入れたようなもので、発想と根気があれば、WWEに関する事柄で再現できないものは“ほぼ、ない”とまでいえる。最初はあまりの多機能さに怯むかもしれないが、恐れずにぜひチャレンジしていただきたい。
毎度おなじみのクリエイトモード。今回はツールが一新され実に使いやすくなっている。手軽に済ませたい人はテンプレートを活用するといいだろう |
■ ONLINE ~同じ嗜好をもったユーザー同士、楽しく激しくプレイ!~
前作で大幅にパワーアップしたオンラインモード。ランクマッチ、クイックマッチ、カスタムマッチなどの対戦機能は従来どおり。最大4人のプレーヤーで同時に遊べるマルチプレイは、やはり何物にも代え難い楽しさがある。自作コンテンツのアップロードやダウンロードに関しては、検索キーワードを設定することが可能になった。最大で3つのワードを設定できるため、リングネームや俗称などを同時に入力しておけば、その選手に関するほぼすべての情報が得られるはずだ。
オンライン対戦のレスポンスは、同国内であればすこぶる良好。セッション検索も、それほど待たされる感はない。ただし、モチーフがWWEということもあってか、リストアップされるユーザーの大半は北米もしくは欧州勢。これは本作に限った話ではないが、北米や欧州勢とのオンライン対戦は、どうしても一定以上のラグが生じてしまい、試合展開が大味になりがち。この先、国内や近郊国のユーザーが増えれば話は変わってくるのだろうが、現時点ではある程度仕方がないものと割り切ったほうがいいだろう。
■ 究極の自由度を誇る珠玉のクオリティ ~プロレスゲームファンはマストバイ~
本シリーズは元々完成度が高く、ゆえに新作といっても「こりゃスゲェ!」といった“パッと見ですぐわかる進化”はないかもしれないが、その一方で操作系やクリエイト機能のブラッシュアップなど“細部の進化”では目を見張るものがある。ごく稀に前作でできたことができなくなっていたりと「アレ!?」ということもある息の長いシリーズだが、今作に関してはもう手放しに褒めたい。コアなファンが多いシリーズでつとに有名だが、今作ほどのクオリティであれば、よほど神経が細かい人でもない限りそうそう文句は出ないはずだ。
ただ……ゲーム本編にまったく文句はないのだが、唯一気になるのが、オンラインでマッチングされる海外ユーザーのガチっぷり。ランクマッチは勝敗を競うものだから仕方ないが、プレーヤーマッチでも殺伐とした展開が多く、これまで片手で数えられるほどしか“プロレス”が成立した試しがない。“受けの美学”などといった流暢な姿勢で臨めば、あっさりフィニッシュまで持っていかれて、起伏も余韻もなく試合終了。思わず「あのさぁ……これWWEのゲームだよね?」といいたくなるが、価値観の違いを押し付けてもアレなので、そういった日はさっさと本体の電源を落して寝ることにしている。「国内ユーザーが増えれば、プロレスを楽しむ機会が増えるしれないなぁ」というわけで、プロレスファンはもちろん、気になる人はぜひぜひチェックしていただきたい。
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http://www.thqgame.jp/
□「WWE 2010 SmackDown vs. Raw」のページ
http://www.smackdownvsraw2010.jp/
□WWEジャパンのホームページ
http://wwe.co.jp/
(2010年2月9日)