オンラインゲームレビュー

アニマと共に失った記憶を取り戻す旅へ
ストーリーを重視した完成度の高いMMORPG

「PRIUS ONLINE」

  • ジャンル:MMORPG
  • 開発元:CJ Internet
  • 運営元:ゲームオン
  • 利用料金:無料(アイテム課金)
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • サービス開始日:6月15日(サービス中)

 株式会社ゲームオンがサービスしている「PRIUS ONLINE」は、記憶と魂をテーマにした物語が展開されるMMORPG。物語の中心となるのは、記憶をなくし、感情さえも持っていない謎の少女「アニマ」で、プレーヤーはアニマと共に旅をしながら、様々な苦難を乗り越えていくなかで、感情を覚え、記憶を取り戻していく。

 6月15日から正式サービスを開始した本作は、その後7月22日に実施された大規模アップデートにより、レベルキャップの引き上げや2次職の実装を行ない、さらなる盛り上がりを見せている。ただ、アニマのインパクトが強すぎるあまり、“少女をウリにしたゲーム”と解釈している読者も多いと思う。確かにアニマは目立つ存在ではあるが、本作はそれだけでなく、非常にシリアスな世界観と、奥深いストーリーが秘められている。




■ 突出した部分はないものの、完成度の高いゲームシステム

 本作は基本プレイ無料のアイテム課金制を採用している。グラフィックスは3Dで、システム面に関しては、特に奇をてらった部分はない。目的地をクリックすると移動し、敵をターゲットして、ショートカットに割り振ったスキルやアイテムを駆使して戦っていく。経験値を貯めてレベルアップし、スキルを取得するというオーソドックスなスタイルだ。

 プレーヤーキャラクターは、「ヒューム男性」、「ヒューム女性」、「ロン・マス」、「ロン・フェミナ」、「ベリア」、「アイン」の6種類で、キャラクターごとに職業が固定されている。「ヒューム男性」は強力な攻撃魔法を操る「元素術師」、「ヒューム女性」は銃による遠距離攻撃が得意な「ガンナー」、「ロン・マス」は接近戦に特化した「戦士」、「ロン・フェミナ」は弓と短剣を駆使して戦う技巧派の「ハンター」、「ベリア」は体力回復や補助スキルを使う「楽士」、「アイン」は二刀流の「剣士」となっている。


【プレーヤーキャラクター】
「元素術師」の「ヒューム男性」「ガンナー」の「ヒューム女性」「戦士」の「ロン・マス」
「ハンター」の「ロン・フェミナ」「楽士」の「ベリア」「剣士」の「アイン」


 戦闘では、スキルを組み合わせて追加ダメージを与えたり、職業によっては遠距離と近距離で武器を切り替えて戦う。攻撃には向きの概念があり、後ろを向いたままで攻撃はできない。これは、前方へ移動しながら後ろの敵に遠距離攻撃をする、いわゆる“凧揚げ”(モンスターを引っ張っているような見た目からこう呼ばれる)を防止するためのシステムのようで、他のMMORPGにありがちな、凧揚げができるから遠距離職が強いといったことはない。

 回復アイテムは、再使用時間が数十秒から数分と長めに設定されている。そのため大量の回復アイテムを一気に使うことはできず、戦闘中は回復のタイミングが悪ければすぐにやられてしまう。この倒すか倒されるかというモンスターの強さが絶妙で、特にボス戦はスキルと回復のタイミングを考えたシビアな戦闘が楽しめる。

 また序盤は、特定のレベルに達するごとに装備一式がプレゼントされ、装備を買う手間が省かれている。そのうえお金も貯まり、金策をする必要もなく、割とサクサク進められる。ちなみにゲームバランスは、序盤はソロプレイでも進められる難易度となっており、中盤以降はパーティーを組んだほうが経験値を稼ぎやすくなるという感じだ。

 レベルアップ方法には、本作ならではのクエストを使った特徴がある。NPCから受注するクエストは、「ストーリークエスト」、「アニマクエスト」、「ミッションクエスト」の3種類に分かれている。「ストーリークエスト」は冒険の核となるもので、「アニマクエスト」はアニマの感情や記憶を取り戻すもの、そして「ミッションクエスト」は、各都市のNPCから受注可能なクエストで、モンスター討伐がメインになっている。いずれもクエストを終了すると、報酬としてアイテムや経験値が得られる。

 このうち「ミッションクエスト」は、1度終えたものでも朝6時を過ぎればリセットされ、再度受注できる。これを利用して、1つの都市で受けられるだけのクエストを受けて消化したら、次の都市に行って別のクエストを消化していくという流れで経験値を稼いでいく。目標となるモンスターはクエストによって異なるので、狩り場も転々と変わっていき、毎回フレッシュな気持ちで狩りができるし、色々な場所を冒険している気分になる。「ミッションクエスト」を一挙に10個ほど受けてから狩りに向かい、全てのノルマを達成後に街に戻ってNPCに報告をすれば、経験値がグングン増えていく。これがなかなか気持ちいい。

 移動システムに関しては、ペット型の乗り物やワープゲート、マップ上に目的地を表示するシステムなどがあり利便性がいい。装備の強化システムや転職システムなどの育成要素もあり、昨今のMMORPGにおける基本的要素は一通り揃っている。遊んでいて特に不満を感じることはなく、ゲームシステムは完成度が高い。


戦闘は基本的に複数のモンスターに襲われないように注意しながら、1体ずつ倒していく。派手な効果音やエフェクトが爽快だ
各都市に無料で移動できるワープゲートもある決められた場所へ運んでくれる乗り物も用意されているマップの検索機能を使えば、目的地もすぐわかる



■ 謎が散りばめられたオープニングムービー

この2人は何者なのか、オープニングから謎が秘められたストーリー
アニマは記憶を失っており、感情さえも持っていない

 本作の最大の特徴は、世界観とストーリーにある。まずは世界観を知ってもらうため、オープニングムービー(OP)を紹介したい。

 OPは、セピア調で描かれた、男性が森の中を歩いているところから始まる。男性の両手には女性が抱きかかえられているのだが、その女性は動く気配がなく、生死すらもわからない。男性の言葉から察するに、どうやら2人とも記憶が失われていく運命で、女性をどこかに運んでいるようだ。そして男性は大きな樹に辿りつき、そこで立ち止まる。

 そこで場面は一変し、現在へと移る。そこにさきほどの男性はいるものの、女性の姿はなく、代わりに蝶と戯れているアニマが映し出される。このアニマは記憶を失っており、感情や自分の表現方法を知らない。そこに現われた謎の老人が言うには、男性はアニマに選ばれた存在「ジェナー」なのだという。ジェナーとアニマの関係性は不明だが、どうやらアニマの成長を見守る運命にある様子。そこで男性は自分の記憶を取り戻すため、そしてアニマの記憶と感情を取り戻すため、いつ終わるとも知れない旅を始める。

 記憶をテーマにしたストーリーはこの先が気になるところだが、この男性は本作の主人公ではない。ムービー後に始まるチュートリアル形式のプロローグでは、プレーヤーは先ほどの男性とは別の存在として描かれている。その後「ラグナス」という謎の組織が登場し、アニマはどこか別の場所へ飛ばされてしまう。プレーヤーは仲間とともにラグナスに果敢に挑むも、あえなく全滅してしまう。そしてプレーヤーは見知らぬ場所で目を覚ます……というところからゲーム本編が開始される。

 最初はOPとプロローグの関係性すら謎に包まれており、ラグナス、アニマ、ジェナーが何者なのかもわからない。ここは物語でいえば起承転結の「起」の部分で、自分なりに解釈して、ゲーム本編で謎を解明していくというところに冒険心がくすぐられる。


セピア調のシーンから一変して現在に戻る演出や、よく動く多彩なカメラワークなど、まるで映画のような作りで感動すら覚える



■ アニマの成長が手に取るようにわかるムービーシーン

 ゲーム序盤の目的は、プロローグで別の場所に飛ばされてしまったアニマを探し出すこと。そこで情報を集めるのだが、これが結構苦労する。NPCに教えられた情報どおりに目的地へ向かっても、残されているのは痕跡のみ。アニマの姿は全く見かけないうえ、実時間で1日に1度しか入れない場所もある。これが非常にもどかしく、焦燥感を覚えた。

 そんな心境で数日過ごしながら、NPCにたらい回しにされつつも情報を集めていたところ、ようやくアニマの居場所が判明した。はやる気持ちを抑えながら目的地に向かうと、ひっそりとした森の中に1匹の蝶が舞っており、近づくと森の奥へと誘うように飛び去っていった。誘われるがままについていくと、そこにはオアシスがあった。

 薄もやがかかったようなぼんやりとした光景の中で、蝶は誰かの手の上に止まった。徐々に姿を見せていく、小さな手の持ち主は、長く捜し求めてきたアニマだった。蝶を見つめていたアニマも、その視線の先にこちらを見つけ、駆け出してきた。こうして離れ離れになっていた2人は、無事再会を果たす。

 この感動のシーンを見せるムービーが非常に素晴らしい。まず、ムービーシーンは全てリアルタイムレンダリングなので、キャラクターの姿はゲーム中と全く同じ。プリレンダリングのムービーは確かに綺麗で迫力はあるのだが、ゲーム本編の映像との違いにげんなりさせられる作品が多い。その点、本作では世界観がそのまま保たれているのが好印象だ。

 またムービー中の表現も上手い。OP中にカメラが後方に向けて一気に引いた際には、広大な風景が映し出され、これからの冒険への期待感が沸いてきたし、先ほどのアニマとの再会シーンの中では、アニマが駆け寄ってくる際にスローモーションになる。今までアニマを探していた時間が長かったので、見つけただけでも感動したが、このムービーがさらに感動と感激を与えてくれた。臨場感と迫力に満ち、長編小説のような謎も見せるムービーを1度味わってほしい。


長年オンラインゲームを遊んできたが、ここまでムービーに力を入れているMMORPGは数少ない。映画のような手法で感動シーンが的確に表現されている

アニマが成長すれば微笑んでくれるシーンも見られるようになる

 その後アニマと共に旅を始めてからは、数々のクエストでムービーシーンが挿入され始める。例えば巨大な望遠鏡の修理素材を届けるクエストを完了すると、その望遠鏡を2人で眺めるシーンが流れる。見ている側としては、なぜこんな小さな出来事をムービーにするのか疑問に感じるが、感情も記憶も持たないアニマが、こういう小さなことにも興味を示し、感情が芽生えてくるという成長の様子が表現がされている。

 アニマが感情を取り戻す際にもムービーシーンが挿入される。喜び、怒り、哀しみ、楽しさ、といった感情を取り戻した際に、ムービー内でアニマが感情を表わす。初めは無表情だったアニマも次第に笑うようになっていき、色々と喋る内容も変化してくる。一般的なMMORPGであれば、どれだけ成長したのかパラメータなどで判断するしかないが、本作はムービー内でアニマの成長を目で見て実感できるのが嬉しい。

 他にも、赤ん坊を抱いた女性が獣に襲われており、その場に遭遇したアニマが立ちふさがって必死に女性を守るシーンがある。一般的なMMORPGはテキストで表現するシーンだが、実際にキャラクターが動いて表現される本作はやはり迫力が違う。そういったムービーシーンがあるから、「次の展開はどうなるの?」と期待してしまう。

 MMORPGはキャラクターの成長に注力しがちで、クエストのテキストは読み飛ばしてしまうことが多いが、本作は違う。ストーリーを見たいがためにレベルアップをしていくという、コンシューマーゲームを思わせるような作りになっている。まさにゲームの主人公となって、ストーリーを純粋に楽しめるのが本作の魅力だ。


アニマと2人になってからは、クエスト中にムービーシーンが頻繁に挿し込まれるようになる。そのストーリーとムービーを楽しむためにゲーム本編を進めていくという感じだ



■ 魅力が最大限に引き出され、人間くささを持つアニマ

アニマにコスチュームを着せてみたところ。着せ替えだけでも楽しい

 さんざん話に出てきたアニマについても詳しく紹介したい。アニマは単なる付き添いではなく、プレーヤーのサポート役として活躍してくれる。ゲーム中は後ろをちょこちょことついてきて、アクションを起こすと声を発したり、プレーヤーが立ち止まっていると「早く遊びにいこうよ」という感じで話しかけてくる。アニマのボイスには、声優の田村ゆかりさんが起用されており、どちらかというと甘えん坊という感じの声で愛くるしい。

 アニマには性向という概念があり、「万事に積極的に行動せよ」、「好奇心を持って活発に行動せよ」といった助言や、プレゼントを贈ったりすることで性向が変化する。また冒険中にアニマが初めて見たものに興味を示すことがあり、その際の選択肢の選び方によっても性向が変化する。性向が変わるとアニマが戦闘中に使うスキルも変化する。モンスターに倒されてしまうと機嫌が悪くなり、しばらくの間プレーヤーの援護をしてくれない場合もある。アニマと仲良くなるためにも、プレゼントをあげて喜んでもらうか、厳しくしかって思い通りに躾けるのか考えさせられるわけだ。

 アニマは、クエストでも重要な役割がある。NPCの中には、プレーヤーからは見えない存在のものがいるのだが、アニマを直接操作できる「アニマモード」に切り替えることで、そのNPCがフィールド上に表示されるようになる。プレーヤーキャラクターはその場に取り残されるので戦闘はできず、クエストを進めるための使用がメインになるが、ちょこまかと動くアニマが可愛く、自分自身がアニマになりきって街中を駆け巡ることすら楽しかった。

 プレーヤーの育て方によって口調が変化するのも特徴で、筆者の場合は、初めはよそよそしい感じで喋っていたのが、いつのまにやらワガママを言い始めていた。そういう細かい変化が人間くさくていい。プレイ時間が長くなるにつれてアニマの人間味も増していき、より愛情が深まってくる。愛情が深まれば衣装を買ってあげたくなるし、着せ替えればさらに愛情が深まる。アニマはそういった“可愛さスパイラル”を巻き起こす魅力をもっている。


アニマの性向は、プレーヤーの助言や行動などで変化していく戦闘中はアニマがサポートしてくれる「すぐに戻ってくるから、どっか行っちゃいやだよ~?」と喋ることも
「アニマモード」に切り替えれば、プレーヤーからは見えない幽霊のような存在のNPCにも話しかけられるプレーヤーごとに様々な容姿に着飾られているアニマクマの着ぐるみのような可愛らしいコスチュームもある



■ ストーリーが最大の魅力。マイペースで楽しめるコンシューマ感覚のMMOPRG

 「PRIUS ONLINE」をプレイすると、本作が世界観を重視して作られていることがよくわかる。キャラクターはもちろんのこと、水面や霧などの描画にまでこだわられていて、MMORPGの中ではトップクラスの美しさを誇っている。動作が重く感じる場合は、10項目以上に渡るビデオ項目で負荷を低減できる。またムービーはリアルタイムレンダリングなので、高スペックのPCであればあるほど、どっぷりと世界観に浸れるだろう。

 そのうえで世界観を大切にしていることが、NPCの表現方法からよくわかる。街中のNPCに話しかけるとズームアップして、プレーヤーと同じ目線で会話ができるうえ、それぞれにボイスが吹き込まれていて、NPCがゲームの中で生きているように思えてくる。そういった細かい部分の演出にまで手が届いていて、臨場感たっぷりの世界観が表現されている。

 システム面は完成度が高く、レベル上げの単調な作業をできるだけ排除した「ミッションクエスト」で、飽きることなく楽しめる作品に仕上がっている。そのうえで冒険者として物語の一員となり、アニマと再会し、その成長していく姿を見て、そしてOPとプロローグが繋がっていくストーリーを楽しんでいただきたい。レベルアップを目的にガンガン進めるより、ストーリーを楽しみながらマイペースで遊んで欲しい。MMORPGとしての基本的な要素も一通り揃っているので、これからMMORPGを始める人、そしてコンシューマーのRPGが好きな人にもお薦めしたい。


NPCのボイスや、アップになる演出、クエスト時のムービーシーンも多数用意されており、「PRIUS ONLINE」の世界観が存分に表現されている


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(C)2009 GameOn Co., Ltd. All Rights Reserved.

(2009年 8月 6日)

[Reported by 日高文典]