★オンラインゲームレビュー★
チーム戦FPSの元祖がオンラインFPSに!! 「CS 1.6」から何が変わり何が変わらないのか? 「カウンターストライクオンライン」 |
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「Counter-Strike」は1999年にリリースされた歴史あるFPSで、無数の派生バージョンを生み出しつつ、今なお現役のゲームだ |
多数のオンラインゲームサービスを展開するネクソンは、7月15日より新作「カウンターストライクオンライン(以下、『CSO』)」のプレオープンサービスを開始した。これに先立ち、7月8日からはクローズドβテストが1週間にわたって実施され、本作の手ごたえを多くのβテスターに伝えることとなった。
本作「CSO」は、1999年に「Half-Life」のユーザーMODとして発表された人気ゲーム「Couner-Strike(以下『CS』)」の系譜を受け継ぐオンラインFPSだ。ベースとなるバージョンは、今なおPCゲーマーにプレイされている「CS 1.6」で、ネクソンとValveの共同開発により基本プレイ無料のオンラインゲームとして新たに誕生したのが本作である。
現在では、アイテム課金と呼ばれる収益形態でサービスされているオンラインFPSが多数ある。その中でも「スペシャルフォース」、「サドンアタック」、「クロスファイア」、「AVA」、「STING」……などのタイトルは皆、基本的に「CS」のゲーム性を踏襲したものと言える。具体的には、現代における小規模戦闘をテーマとし、リアルな銃器が登場し、「爆破ルール」と呼ばれるゲームモードで勝敗を決するというものだ。
「CS」はまさしくそれらの祖である。そして、その内容をそっくりそのままプレイ料金無料のオンラインFPSとしてコンバートしたのが本作「CSO」ということになる。ネクソンでも「原点にして到達点」と、元祖との同一性をそのままキャッチコピーにしているようだ。俄然、「CS」で鳴らしたベテランプレーヤーの興味を引くことになるし、「古参プレーヤーがいつも比較対象にする『CS』って実際どんなゲームだろう?」と、“オンラインFPS世代”のFPSプレーヤーの関心も高まるというものだ。
本稿では、「CSO」が実際どのようなゲームで、プレイ料金無料のオンラインゲームとしてどのような部分が元祖から変化したのかを、7月8日から行なわれたクローズドβテストと、7月15日に開始されたプレオープンサービス初日の模様をもとに、「Counter-Strike」のプレーヤーのひとりとしてレポートしたい。
■ 基本的には「CS 1.6」そのままの内容を提供
実力差がつきやすいものの、やりがいのあるゲーム性は健在
標準的な構成のロビー画面からクイックにゲームを開始できる |
内容は「CS 1.6」そのまま。ただしネットワークの更新レートが固定であるなど設定面でわずかな違いも見られる |
ヘッドショットを当てれば、ほとんどのアサルトライフルで1撃だ |
「CSO」は、ユーザーがサーバーを建て、他のユーザーがマッチングロビーからゲームに参加するという往年のPCゲームスタイルの「CS 1.6」を、丸ごと“オンライン化”したものだ。「CS 1.6」はパッケージを購入後は一切追加費用は掛からなかったが、「CSO」はアイテム課金制のオンラインゲームなので、無料で参加できる。有料アイテムや便利なサービスを利用する際にコストが発生するという仕組みだ。
より細かく説明すると、プレイにはネクソンIDが必要となるが、IDの取得、クライアントのダウンロード、プレイ料金はすべて無料となっており、マッチングロビー画面で、任意のルームを選択したり、作成して、自由にゲームをプレイすることができる。
ショップ画面で追加武器を購入したり、クラン(チーム)の管理を行なう機能があったりと、ゲーム外の部分で様々なユーザビリティの向上が図られているというのが「オンライン化」の内訳だ。それにともなってゲーム部分への変化もある。他のオンラインFPSに似て、強力な武器はゲーム内マネーを溜めて使用権を購入する必要があるなど、アイテム課金というビジネスモデルを選択しているための影響だ。
とはいえ、基本となるゲーム性は元祖「CS 1.6」と同等のものが提供されている。これが本作の最大の特徴であり、他のFPSとの差別化が図られているポイントの1つ目である。「CS 1.6」をプレイしたことがない方のために簡単に解説すると、「腕の差が出やすい」というゲーム性が特徴だといえる。
その理由のひとつは、銃の着弾位置のバラけ具合の大きさ(集弾率の善し悪し)が、他のFPSに比べて大きいことだ。アサルトライフルをはじめとした主武装は、移動しながら射撃した場合に非常に大きく着弾が乱れるため、いわゆる「走り撃ち」がとても不正確だ。正確に命中させるためには、射撃の瞬間に移動を一瞬だけ歩みを止める「ストッピング」のテクニックが必要で、同時に正確なエイミングも必要だ。そして、射撃が頭に当たれば必ずヘッドショットとなるし、ヘッドショットになれば大抵の武器で1撃で敵を倒す威力がある。
他のFPSでは、頭部の判定を大きくした上でヘッドショットの発生率を下げ、ビギナーズラックで敵を倒せるように調整が加えられているものが多いが、本作にその類の調整は全くない。したがって、的確に狙って命中させられるプレーヤーと、そうでないプレーヤーの差が歴然となる。さらにいわゆる「爆破ルール」では、ラウンド勝利毎に武器購入資金を獲得するというシステムがあり、先に勝ったチームが装備の面で俄然有利になる。これも、「腕の差が出やすい」という側面のひとつだ。
本作がそういった玄人好みのゲーム性を持つことは不思議なことではない。もともと、オリジナルの「Counter-Strike」は、「Half-Life」のユーザーMODとして登場し、コアなPCゲーマーのコミュニティに揉まれて成長した作品なので、正確でごまかしのない、ストイックなゲーム性を持つことは、むしろ当然なのである。
その一方で、銃の挙動などいくつかの点で、既存のオンラインFPSを経験してきたプレーヤーにある種の「違和感」があるのも確かだ。アサルトライフルを持って走り回りながら次々にヘッドショット、という風景は他のFPSではよくあるものだが、本作で同様の風景を実現させるためにはより正確な操作と冷静さが必要になる。あわてて動きながらフルオート射撃で戦おうものなら、照準をばっちり合わせていてもロクに当たらないものなのだ。そのぶん、練習に傾けた努力が結果に現われやすく、やりがいのあるゲームだとも言える。
元祖「Counter-Strike」そのままの面白さを手軽に楽しめる。他のFPSに比べると玄人好みのゲーム性といえるが、それだけに腕を上げていく実感や喜びは大きい |
■ 「デスマッチ」、「チームデスマッチ」、「オリジナル」の3ゲームルールを提供
デスマッチでは周り全員が敵。最大32人が狭いマップで戦うと、いつどこからやられてもおかしくない |
チームデスマッチではチーム単位のKILLスコアで勝敗が決まる。戦ううちに自然と「前線」ができるので、どれだけ押し上げて有利な位置をとるかが勝敗のポイントだ |
オリジナルモードでは爆破、捕虜救出などのルールがある。そのうち多くのマップが爆破ルール用に作られている |
ストイックなゲーム性をそのままに受け継いだ本作「CSO」だが、やはり違いもある。大きなところではゲームルールの違いだ。本作では現在のところ「デスマッチ」、「チームデスマッチ」、「オリジナル」の3ルールをサポートしている。「デスマッチ」は自分以外の全員が敵となるモードで、「チームデスマッチ」は2チームに分かれてのKILLスコア競争、そして「オリジナル」がもともとの「CS 1.6」と同じ標準ルール(いわゆる爆破モード)などである。
実際にゲームロビーに入ってみると、最もプレイされているゲームモードは「チームデスマッチ」だ。1ゲーム5分、長くても10分程度で、手軽にプレイできることから人気があるのだろう。このルールは、最大32名のプレーヤーが2チームに分かれ、いずれかのチームがラウンドの制限スコアに達するまでの勝負だ。その間、プレーヤーは倒されても何度でも生き返ることができる。所持金の制限もないため、常に自分に合った最善の武器を装備してプレイすることが可能だ。射撃練習がてら、繰り返しプレイしてみるのも悪くない。
「デスマッチ」はチームが存在せず、自分以外は全て敵というモードだ。ある程度短時間でラウンドが終了する点は「チームデスマッチ」と同じながら、倒されるたび、フィールドのランダムな位置に出現し、入り乱れて戦うことになるため、まるでお祭り騒ぎのような様相を呈する。ストイックなイメージのある「Counter-Strike」においては、あくまでお遊びという位置づけだろう。
「オリジナル」は、元祖「CS」に準拠するゲームルールの総称だ。このモードには、他のFPSでは「爆破」と呼ばれる種類のルールや、元祖「CS」ではマップ名の頭に“cs_”がついていた「捕虜救出」ルールがある。このうちメインとなるのはやはり「爆破」ルール。プレーヤーは攻撃側テロリスト(TR)チーム、防衛側カウンターテロリスト(CT)チームに別れ、CTが守る2つの「爆破ポイント」のいずれかに、TRが爆弾を設置して起爆することを目指す。
人気オンラインFPSタイトルである「サドンアタック」等とは異なり、TRチームのうち爆弾を持てるのは1人だけだ。爆弾を運ぶプレーヤーが倒されてしまったら、爆弾はその場にドロップし、他のTRチームメンバーが回収しなければ爆破目標を達成できない。そのぶんTRチームには全員のルールと戦術の理解、それを元にしたチームワークが求められる。戦闘の結果、いずれかのチームが全滅することで勝負がつくことも多いが、劣勢になったTRが爆弾の設置・起爆により逆転することもあり、それを狙っての興味深い駆け引きが見られることもある。
このように、「CSO」は上記3つのゲームルールを提供している。「デスマッチ」で腕鳴らし、「チームデスマッチ」で立ち回りの練習をして、気合が入ってきたら「オリジナル」でチーム戦を楽しむ、というのが理想的な楽しみ方のひとつといえそうだ。ただ、これらのルールは他のオンラインFPSでも同等のものが用意されているケースが普通なので、敢えて本作を選ぶ理由は、やはり本作の基礎が元祖「CS」そのものであるという点に尽きると思う。
爆破ルールでは、倒されてしまうとラウンドが終了するまで観戦状態となる。その間に上手なプレーヤーの立ち回りを観察するのはとても勉強になるが、肝心の射撃の腕前に自身がない場合はデスマッチ系ルールでしばらく練習してみると良いだろう |
■ マップは「爆破」向きのものが中心。ネクソン制作の新規マップは「DM」向きか?
マップについてもご紹介しておこう。本作では、多くのマップが「爆破」ルール向きのデザインになっている。元祖「Counter-Strike」ではこのほかにもいくつかのゲームルールが存在するが、本作ではその中で最も人気のルールを重点的に実装したということだろう。
現在のところ、本作で提供されているマップは、プレオープンサービスが開始された7月15日の段階で全10種類となっている。そのうち4種が元祖「CS」のオフィシャルマップで、「DUST」、「DUST2」、「Assault」、「Aztec」が、オリジナルと全く同じ内容で提供されている。このうち「DUST」、「DUST2」はクラン戦の定番となっているバランスの良いマップだ。
残りの5種類はネクソンによる新規マップ。デスマッチ用の「トンネル」、「ルーフトップ」は狭い空間に障害物が一杯と、乱戦向き。「レックス研究所」、「トゥルース」、「ファーストライン」は「爆破」にも使えるマップとなっているが、現在のところチームデスマッチに使われることが多いようだ。
実際にひととおりプレイしてみて気付いたのは、元祖「CS」のマップとネクソン製マップの間に、マップ制作における哲学の違いのようなものが見受けられる点だ。特にそれを感じるのは「爆破」ルール用のマップ「レックス研究所」と、「捕虜救出」ルールのマップ「カモフラージュ」である。
「レックス研究所」は屋内を舞台とするマップで、「DUST」などと比べると構造が込み入っており、狭い。そして2つの爆破ポイント間の距離が遠いわりに、各チームのスタート地点から各爆破ポイントへの距離は比較的近いため、TR側の戦術がラッシュ一辺倒になりがちだ。どちらかというと、チームデスマッチでのほうが楽しく遊べる印象がある。
もうひとつの「カモフラージュ」は、さらに狭く、TRとCTのスタート地点が建物の屋上とそのすぐ下の地面という、なんとも大胆な構造になっている。ラウンド開始3秒で撃ちあいが始まる始末で、胸が高鳴るような駆け引きの類は期待できない。こちらも、デスマッチ系ルールのほうが向いていると感じられた。こうしてみると、ネクソン製マップは、本作においてよく遊ばれるルールである大人数のデスマッチを念頭に設計されているのかもしれない。
一方、元祖「CS」からの登場となる各種マップは、さすが元祖というだけあって「爆破」ルールなど本来の遊び方ではしっかりと駆け引きの妙を楽しめる。だが、CTが守り、TRが攻めるというルールに基づいて設計されたマップであるため、チームデスマッチなどをプレイするとチーム間に地形由来の格差が生じやすい。
例えば「DUST2」でチームデスマッチをプレイすると、TRチームがCTチームの出現ポイントまで攻め込んで「Spawn狩り」状態になりやすい。「DUST」ではTRが極端に不利になりがちで、「Aztec」はロングレンジで待ち構えることのできるCTが非常に有利だ。「Assault」に至っては、「攻めたほうが負け」である。
こういった点で、本作のマップとゲームルールの間には噛み合っていない部分も見受けられる。より多くのマップを提供できる余裕があれば、デスマッチ専用のマップ、爆破専用のマップと、しっかり用途を分けるべきだろう。簡単にインバランスが発生するマップでチームデスマッチをやり、そんな中で負けチームに属するのは愉快な体験とは言えないからだ。
「DUST2」でのチームデスマッチは、TRチームが勢いづくとCTチームの出撃地点付近まで攻め込んで、圧倒的に有利な体勢を気築いてしまいがち。なるべく爆破ルールで楽しみたいところだが…… |
一方、ネクソン制作のマップは多くが対称構造に近く、デスマッチルール向きの雰囲気。少人数用の狭いデスマッチマップも用意されているので、射撃練習に勤しみたいときなどにちょうど良い感じだ。初心者でもプレイしやすいはずである |
■ 「CS」から最大の変化は「ゲーム内ショップ」の存在
ラウンド中の武器購入メニュー。使用権のない武器は選択できなくなっている |
1ゲームセッションをやり終えるたびに、成績に応じた「クレジット」が与えられる。目当ての武器を使えるようになるまでは結構大変 |
ゲーム内ショップ画面。ここで購入するのは、該当の武器を数日間使用する権利だ。有料だが便利なセットアイテムもある |
本作は多くの点で元祖「CS」の要素を受け継ぎつつも、やはり基本プレイ無料のオンラインゲームということで、重大な変更点がいくつか存在している。そのひとつは上記で紹介した「デスマッチ」等のルールがサポートされ、オリジナルマップが存在していることだが、より重要なポイントとして「ゲーム内ショップ」の存在を挙げたい。
ゲーム内ショップの存在は、「CS」の元祖たる所以であるゲーム性に、いささか大きな影響を与えている。本作のゲーム内ショップでは、他のオンラインFPSと同様に、ゲーム内で使用できる追加の武器の「使用権」を、ゲーム内マネー「クレジット」で購入するスタイルになっている。「クレジット」はゲームプレイの成績に応じて与えられる永続的な蓄積要素で、対戦中に得られる各ラウンドの「武器購入資金」とは、また別個に存在するものだ。
これがなぜ大きな影響を及ぼすのか。そもそも「CS」は、ラウンド勝利の報酬により次のラウンドで強い武器を購入したり、ラウンドを落とした際にチーム全員で節約して次々ラウンドに備えるといった、武器とお金のマネジメントに戦略性があるゲームだ。ところが、「CSO」ではプレーヤーは、ゲーム内ショップであらかじめ「使用権」を購入した武器しか、各ラウンド中で買うことができない。
ラウンドに勝利して$3,000の武器購入資金をゲットし、次のラウンドで「CV-47(AK-47)」を買おうとしても、「使用権」が無ければ、購入メニューで選択することすらできないのだ。ゲーム内ショップを全く利用しなければ、使える武器は、性能が微妙な初期セットだけである。これにより、本来の「CS」というゲームが持つ戦略性に大きな穴が生じることになるのだ。
「CS」で定番の主要装備といえば、CTチームなら「M4A1 Carbine」、TRチームなら「CW-47」あたりだろう。スナイパーなら数ラウンドお金を溜めて「Magnum Sniper Rifle(AWP)」を買いたいと考える。資金に余裕があれば、サブウェポンとして「NightHawk .50C(Desert Eagle)」も手にしておきたいところ。駆け引きに必須の装備として「フラッシュグレネード」も買っておきたい。
しかし、「CSO」ではこれらは全て初期セットに含まれておらず、「クレジット」を溜めてゲーム内ショップで使用権を購入しなければ使えない。仮に1ゲーム15分でおよそ500クレジット稼ぐというのを平均とすると、「M4A1」や「CW-47」の「3日間使用権」はそれぞれ8,000クレジットなので、どちらかを買うためにおよそ16ゲーム、約240分(4時間)のプレイが必要、ということになる。
また、「オリジナル」ルールでは、CT、TR双方のプレイのために両方の武器が必要なので、定番武器をどちらも使いたければ約480分(8時間)のプレイが必要だ。あなたがスナイパーなら、必要なクレジットはもっと多い。しかもそれで得られるのは「3日間の使用権」なので、ほとんど毎日数時間プレイし続けないと、定番武器を維持できない。
倒されたプレーヤーが落とす武器を拾って使うこともできるので、デスマッチ系ルールではそれほどストレスにならないかも |
そこで、本作では定番の武器の使用権をまとめたものを、有料アイテムとして用意している。例えば、上記のアサルトライフル類を含む20種類ほどの武器セットの3日使用権パックは600ネクソンポイント、スナイパーライフルのセットは400ネクソンポイント、といった価格で提供されている。クレジット稼ぎの時間がないプレーヤーはリアルマネーを投じて好みの武器を使おう、ということだ。
他のオンラインFPSでもこの種のビジネスモデルが展開されているなかで、本作「CSO」では、この「武器が有料」というファクターにどうしてもネガティブなイメージが付きまとってしまう。なぜ本作だけが、という理由は明確だ。本作のベースにある元祖「CS」では、全ての武器を使用できるのが当然の権利だからである。従来からの「CS」プレーヤーにしてみれば、その権利を奪われた感じがしてしまうので、なんとなく残念な印象を受けてしまうわけだ。
あるいは、新参のプレーヤーにしてみても、オリジナルの「CS 1.6」がSteam上で9.99ドル、さらにグラフィックスの良い「CS: Source」が19.99ドルで買えるというのは無視できない事実だ。古いゲームとはいえ現在でも国内のプレーヤーがそれなりに存在して、快適なサーバーがいくつも用意されていることを考えれば、本作「CSO」をお金を出してプレイするにはそれなりの動機付けが必要だ。現状の「CSO」はその点ではまだ弱い部分があると判定せざるを得ない。
アサルトライフル、スナイパーライフル系の武器はかなり強気の値段設定になっており、ゲーム中で稼げる「クレジット」による購入だけで常時、定番武器を維持し続けるのはかなり難しい。内容的に武器の差が大きく影響するゲームなので、有料アイテムを利用したくなるタイミングは確かにあるのだが、元祖「CS」を知っていると手を出しにくいというユーザー心理もある |
■ 「オンラインゲームとしての強み」を最大限に生かすには? 韓国で大人気の「ゾンビモード」ほか、オリジナル要素で「化ける」ことを期待
プレオープン初日夜間のロビー状況。BOT相手に練習するプレーヤーも多く、やや閑散とした印象もあった |
韓国版サービスで提供されている「ゾンビモード」の画面。奇天烈なゲーム性が大きな人気を博す。日本版での実装有無、および時期は不明 |
本作「CSO」の印象を様々な側面でご紹介してきたが、これまで述べてきたように本作には課題もある。偉大な元祖「CS」がいまだに現役のゲームであるということがそのひとつの要因ではあるが、「プレイする動機」を提供しなければならないというのは、本作に限らず全てのオンラインFPSに言える話だ。ぱっと見、同じようなゲームがわんさか存在するのだから、ひとめでそれとわかる「違い」が必要なのだ。
実際本作は、ひとあし早くサービスを展開した韓国で、そのような課題に直面した。サービス開始後しばらく、充分な人気を得ることができず苦戦。しかし現在では、それを乗り越え、非常に大きな人気を博している。ひとめでわかる「違い」を提供してみせたのだ。
そのきっかけとなったのが、一部の読者はご存知かも知れない「ゾンビモード」の登場だ。「ゾンビモード」は、プレーヤーが人間チームとゾンビチームに分かれて対戦する変則チーム戦。ゾンビ側は異様なほど素早い動きと凄まじい体力、1撃で人間を倒せる近接攻撃力を持ち、まさに化け物となってプレイする。対する人間チームは、対ゾンビのために開発された強力な武器を使用して、これを撃退するのだ。多数の対ゾンビ武器の中には、「精度と連射速度と弾数を大幅に増やした、長ロングバナナマガジンを装備したCW-47」なるものもあり、もはや漫画の世界というしろものだ。
この「ゾンビモード」は、以前元祖「CS」に、これに酷似したユーザーMODが存在していたので、筆者としてはその存在そのものに若干の抵抗があった。しかし、韓国の「CSO」上で登場するなり信じられないほどの人気を博したため、それを受けてNEXONは本腰を入れて継続開発に注力したようだ。それで、現在はほぼ完全にNEXONオリジナルのゲームと言って差し支えない内容になっている。数々の特殊な武器類がその象徴だ。
一方の元祖「CS」でも、「ゾンビモード」的なものを含め様々なユーザーMODにより変化球的な遊び方をすることはできるが、何事もユーザー側の高いアンテナや、知識、工夫、努力が必要になるため、それが小さなコミュニティの外に波及することはほとんどない。多くの人々にとって、それは存在しないのと同じだ。だがこれこそオンラインゲームの強みが発揮できるポイントだ。
オンラインゲームサービスの強みは、継続的なプロモーション、単一のコミュニティ、安定したゲーム環境がセットになっていることだ。奇天烈なゲームモードも、何万人と大勢のプレーヤーが一緒にプレイすれば、誰もが本気で取り組みたいと思えるほどの魅力を発する。そうなればもはや元祖「CS」とは別物であり、ゲーム内ショップで「対ゾンビ超強力スーパーマシンガン」を購入するもっともな動機も得られるというものだ。また、おのずと「爆破」などノーマルな部分のプレーヤー人口も増えることになるだろう。
日本におけるネクソンの「CSO」サービスは、5,000アカウントを発行して行なったクローズドβサービスの終盤には、深夜にプレーヤー人口が10人を割るような状況があったし、誰もがプレイできるプレオープンサービスに移行した現在でも、他の人気FPSに比べればまだまだ、限定的な規模に見える。ひとつの切り札といえる「ゾンビモード」実装についての公式アナウンスはないが、いずれ近いうちに「テコ入れ」があるのは必定なので、必ずや実装されることになるだろう。
果たして、日本版サービスにおける「ゾンビモード」は、「CSO」が一躍人気のオンラインゲームに化けるきっかけになるだろうか。筆者としては、「ゾンビモード」に限らず、日本版オリジナルの面白いゲームルールが導入されたり、元祖「CS」そのままの貧弱な演出面が改善され、わかりやすいゲームになるといった、多方面の取り組みを期待したい。何しろ、日本には目の肥えたゲームユーザーがゴマンといるのだから、本当に良いものが提供されれば喜んでプレイすると思うからだ。
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(2009年 7月 17日)