「XCOM 2」レビュー

XCOM 2

地球を支配するエイリアンと戦え!
硬派で奥深いシミュレーションRPG

ジャンル:
  • ストラテジー
発売元:
  • テイクツー・インタラクティブ・ジャパン
開発元:
  • Firaxis Games
プラットフォーム:
  • WIN
価格:
7,000円(税別)
(WIN / WIN / WIN)
8,499円(税別)
(WIN)
発売日:
2016年2月12日
(WIN / WIN / WIN)
2016年2月5日
(WIN / WIN)
プレイ人数:
1人(オンラインマルチプレイ2人)

 「XCOM 2」は歯ごたえのある、そしてかなり楽しいストラテジーゲーム(シミュレーションRPG)だ。プレーヤーは「コマンダー」として部隊を率い、地球を支配するエイリアンにゲリラ活動で対抗していく。

 次々と現われ物量と強力な武装でこちらに迫るエイリアン軍、着々と進行していく謎の計画がプレーヤーの気持ちを常に圧迫し、戦いに駆り立てる。このプレッシャーを、どんどん成長し強力な存在となっていく隊員達ではね除けていく。強大な敵に勝利する楽しさ、そして優れたゲーム性は、多くの人に体験して欲しい。

【「XCOM 2」オフィシャルトレーラー“報復”】

支配されてしまった地球。20年の雌伏を経て、XCOMが立ち上がる

 筆者にとって「XCOM 2」が特別な存在と感じたのは、E3の会場での1つのオブジェクトだ。金色に塗られた彫像で、倒れた人間を助け起こす筋骨たくましいリトルグレイ型のエイリアン。……これは、「弱々しい人間を助けて上げる我ら」という構図。そう、「エイリアンに支配された地球」を示す、ゲーム内の設定を端的に表現したオブジェクトなのだ。このセンスに、筆者はシビれた。一気に作品に引き込まれたのだ。

強い印象を与えたE3会場での彫像。
ゲームの基本はストラテジーゲーム。ユニットに指示を出し、様々な戦場で戦っていく
敵の補給船を奪った移動基地「アヴェンジャー」。XCOMの拠点となる
世界中のレジスタンスが支援を求めている。どのように行動していくか、戦略が求められる

 この彫像はゲーム内にも登場する。「XCOM 2」は“エイリアンの戦争に敗れ、20年が経過した地球”が舞台となる。20年の潜伏期間を経て、「多国籍対エイリアン特殊部隊 XCOM」は反撃を開始する。敵の補給船を改造した移動基地をベースに世界を飛び回り、各地のレジスタンスと協力し、エイリアンが進行させている謎の計画をたたきつぶすのだ!

 「XCOM 2」の根本となるのはターンベースのストラテジーゲームだ。プレーヤーはマップに配置されたユニットであるXCOM隊員達を指揮し、様々なミッションをクリアしていく。ユニットには5つのクラスがあり、彼らは戦いを経て“昇進”し、様々なスキルを獲得しより強力な存在へと成長していく。

 ゲームではシビアなルールが採用されており、ミッション中ユニットが倒されてしまうと復活はできない。また敵に攻撃されてしまうと傷を負い、その傷が癒えるまで再出撃はできなくなる。プレーヤーはコマンダーとして、何人も隊員をマネジメントし、育て上げていくことが求められる。さらに敵の装備やエイリアンの死体を研究し、戦力の増強を図るなどチーム全体の運営も行なっていく。

 そして地球の運命そのものもプレーヤーの手にゆだねられている。移動基地「アベンジャー」とXCOM隊員は人類の最後の希望だ。世界各地のレジスタンスの戦力はわずかで、XCOMの助けを求めている。XCOMは世界様々な場所へ移動し、レジスタンスに協力して行く。北米からスタートする反撃の炎をどう広げていくか? 南米を経由してアフリカか、ニューヨークからヨーロッパか、ルートもプレーヤーの判断で決まる。そして、エイリアンの妨害計画を阻止するか、エイリアンの鎮圧部隊に襲われる住民を助けるかなど様々な決断もしていかなくてはならない。

 最初に筆者が本作に抱いていた本作のイメージは、都市伝説とも言える「UFOネタ」をちりばめたある意味楽しいカジュアルさも併せ持ったゲームだった。しかし実際にプレイしてみてその印象は大きく変わった。まずゲーム性がかなりシビアなのだ。隊員達は復活できないし、怪我をさせてしまえば大幅な戦力ダウンとなる。しかも色々な決断は重く、チームマネージメントはやることが多いのにリソースが足りず、気持の上でかなり圧迫される。

 だが、そこを乗り切ると本作のすごさがわかってきた。新兵達を育てるためにベテラン兵と組み合わせて難易度の低いミッションをさせたり、資金を稼ぐためのマップ探索、そしてリソースをつぎ込めばどんな方向性でも確実にチームが強くなるといった実感、敵の計画をあえて進めてチーム増強の時間を稼ぐなど、余裕も出てきて、ゲームのルールそのものを楽しめるようになっていった。

 前作にあたる「XCOM: Enemy Unknown」は、「ストラテジーゲーム・オブ・ザ・イヤー」として有名ブログやゲームサイトに評価されたと言うが、プレイするとその高い評価に納得できる。目の前の戦場だけでなく様々に考えさせられる要素がある。最初はその情報量に圧倒される部分もあるが、プレイし続けることで色々なものが見えてくる。ボリュームもたっぷりでじっくり楽しめるゲームである。

 「硬派なシミュレーションがやりたい」、「ユニットの特性を活かしたチェスのような戦略性を楽しみたい」、「キャラクターに深い愛情を注げ、彼らをチームとして活躍させたい」というプレーヤーにオススメだ。「ファイアーエムブレム」や、「シャイニングフォース」シリーズがヒットする日本だからこそ多くの人にチェックして欲しいタイトルだ。

【地球を我らの手に取り戻せ!】
隊員達は様々な戦場に飛び込んでいく。エイリアンがリトルグレイタイプだったり、硬派な雰囲気の中に“UFOネタ”が盛り込まれているのが楽しい
各地のレジスタンスを助け、抵抗活動を繰り広げていく
敵の死体を解剖するなどエイリアンの技術を解析し、戦力を増強していく

特殊能力を持つ隊員達で、強力なエイリアンに対抗せよ

 ゲームの根幹をなす戦闘部分を紹介していこう。XCOMの隊員は「遊撃兵」、「グレネード兵」、「狙撃兵」、「技術兵」と、ゲームが進むと使える「サイキック兵」の5つのクラスがある。新兵の状態では彼らのクラスはわからず実戦をくぐり抜けることでクラスへの才能を開花させるが、訓練施設を建造することで特定のクラスへ訓練させることも可能だ。

隊員達は昇進することでスキルを取得、強力な存在へ成長していく。いかに育てるか悩むのも楽しい
広範囲の敵にダメージを与えることができるグレネード。障害物も破壊できる
エイリアンの死体からは様々な情報が得られる。ちょっとマッドサイエンティストっぽい場面だが、ガウスライフルや、マインドシールドなど超兵器開発の基礎が得られるのだ

 遊撃兵は姿を隠す“潜伏”技能と、強力な接近戦武器ブレードを使いこなす。グレネード兵はグレネードランチャーと、ミニガンという強力な火器を使う。狙撃兵はスナイパーライフルとピストル。遊撃兵はドローンのような支援ロボットで回復や敵の攪乱、ハッキングを行なう。サイキック兵はエイリアンの技術を研究して生まれ、「サイキック・アンプ」により様々な超能力を使う。

 ゲームでは様々なマップに彼らを投入していく。「敵を全て殲滅せよ」、「住人達を助け出せ」、「施設からデータを持ち帰れ」、「VIPを脱出させろ」などミッションでの目標は様々で、戦い方も異なってくる。敵の増援や進み方で戦局が変化したり、目標や脱出地点が変わる場合もある。

 戦いでは“潜伏”という要素が重要な鍵を握っており、敵に発見されなければ有利に戦える。ターンベースなため敵を見つけることができれば先行で一気に敵を殲滅させることも可能だ。敵には視認範囲があり、ここの外を進みつつ機会をうかがえばいい。技術兵は成長すると特別に広い視界を得られる特殊能力を取得するし、遊撃兵は部隊が発見されても自分だけ潜伏のままにできたり、潜伏時に攻撃力を2倍にできたりする。

 戦う際には「障害物」も気をつけたい。壁を前に戦えば敵の射撃にペナルティがつく。相手の側面や背面に回り込めば命中率が上がる。敵の壁を壊すのにはグレネードが有効だ。グレネードは範囲で攻撃できるので複数の敵を攻撃できる上障害物を壊せる。グレネード兵はより範囲の広いグレネードランチャーを使える上、ミニガンで障害物や敵のアーマーを破壊できる。

 隊員達の特殊な能力をいかに効果的に使うか? この戦略性こそが「XCOM 2」の最大の楽しさだろう。ゲームではまずユニットを「移動」させ、「攻撃」のアクションを行なう。しかし攻撃を行なわなければさらに長い距離を移動できる。序盤や、目的地への移動を優先するミッションでは、移動重視の戦略を多用する。

 遊撃兵は限界まで移動し敵に接敵することでブレード攻撃ができる。狙撃兵は移動してしまうと最大の持ち味であるスナイパーライフルは使えない。いい足場を確保して遠距離攻撃をするのが望ましいが、一方で一気に近寄ってのピストルも実は強かったりするのだ。あらかじめ障害物を壊しておいたりいかに効果的に戦うか組み合わせを考えながらユニットを動かすのが楽しい。

 そして無事戦闘をくぐり抜け一定の功績をあげるとユニットは「昇進」する。この時スキルを取得できるのだが、2つの選択肢がある。技術兵の場合味方の治療を優先させるか、敵ロボットや施設のハッキングを強化するか、狙撃兵の場合狙撃能力強化の他ピストル強化もできる。もちろん方向を定めて特化させることもできるし、昇進ごとにどちらかのスキルを取ってオールラウンドに戦えるキャラクターを目指してもいい。本作では多くの隊員と戦うので、各隊員ごとに様々な成長のさせ方が可能だ。

 さらに彼らの装備も強化できる。エイリアンの死体や、敵がドロップしたアイテムは、研究したり開発素材にすることでより強力なアーマーや、磁気を使ったレールガンなど様々な装備を開発できる。これらを装備させることでキャラクターはさらに強力になる。ゲームが進むとエイリアンはロボット兵器を繰り出してきたり、高性能なアーマーをまとってくる。彼らに負けないように、こちらも新兵器を投入し、立ち向かっていくのだ。

【激しさを増す戦い】
時には敵を誘拐したり、重要人物を護衛したりXCOMの任務は様々だ。ゲームが進むとより恐ろしい力を持ったエイリアンも登場してくる
有利な場所取りは戦闘の基本だ。ユニットをどう動かすかが重要となる
どの隊員を連れて行くか? 新兵を育て戦力の拡充を図っていかねば強力なエイリアンには太刀打ちできない。怪我をした兵士は一定の日数出撃できないので、うまいチーム運用が求められる
新兵器の開発、スキルの取得……キャラクターはどんどん強力になっていくと、ゲームがぐぐっと楽しくなっていく

迫り来る謎の大計画。限られた日数や人員をいかに運用するか?

 「XCOM 2」の面白さはユニットに指示を出し戦場で戦う“戦術”的な面白さだけでなく、どのようなルートで進行していくか、有限の資材や日数をどう使っていくかというより大局的な“戦略”を求められる。この大きな視点が実際に戦っていく戦術と密接に関係するゲーム性こそ、「XCOM 2」を特別なゲームとしているのだ。

世界では様々なイベントが起きており、調査するには日数がかかる。日数を使えば研究は進むが、エイリアンの計画も進行していく。どのように行動していくか戦略が問われる
エイリアンの行動は阻止しないとミッション中の障害が増える
超兵器の開発などで資金繰りは苦しい。時にはエイリアンの死体などを売って稼ぐことも

 まずプレーヤーに提示される大きな課題として“アヴァター計画”というものがある。詳細は謎に包まれているものの、この計画は人類に大きな脅威となるモノであり、なんとしても阻止しなくてはならない計画としてワールドマップにカウントダウンが提示される。このアヴァター計画はXCOMがまだ近づくことができないいくつかの施設で進行している。プレーヤーは戦っていくことでこれらの施設への血路を切り開かなくてはならない。

 「XCOM 2」ではユニットで戦うマップの他、各施設を管理する移動基地「アヴェンジャー」の管理画面、そして司令部から展開する世界地図を使った戦略画面が用意されている。戦略画面ではアヴェンジャーをどこへ動かすかを決めていく。補給物資を得たり、レジスタンスと接触するなどで日数が消費される。日数をかけることで情報を得たり、様々な施設や装備を開発したり、戦士の傷を癒やせるが、一方でアヴァター計画は容赦なく進行していく。

 アベンジャー内部には研究施設や、武器の開発施設、戦士達の休憩施設などがある。また、船内内部は奪ったまま破壊され放置されている区画も多い。この区画を整理し、様々な施設を作ることで戦力を増強させるのだ。研究を進めるためには研究者が、施設の建造には技術者が必要で、こういった協力者の確保も重要なミッションとなる。

 最初は資源は少ないし、研究者達も少ない。それでいながらエイリアンが住人を襲ったりで出撃しなくてはならないこともある。アヴァター計画は進んでいくし、ちょっと焦るかもしれない。しかしプレイを進めることで人材はそろってくるし隊員は育っていく。装備も徐々に整っていくし、自分なりのリズム、ゲームを進める楽しさが見えてくる。こうなるとこのゲームは面白い。グググっとのめり込んでいくことになるだろう。この感覚はぜひ体験して欲しい。

 施設では「ゲリラ戦研究施設」を準備できると、戦場に投入できる隊員を増やせる。この頃には隊員も育っているし、磁力兵器も開発できていればかなり戦いは楽になる。しかし、こういうときに強制イベントが起きたりするのだ。難易度がハードのミッションは敵がバンバン増援してきてかなりの緊張感がある。

 そして強制イベントは「負傷中の隊員も出撃可能」など、総力戦をできる特別ルールになったりする。つまりそれほどの大ピンチだったりするのだ。この戦いの厳しさはかなりのもので、「最近うちのチームも強くなってきたなあ」と思っていた矢先に震え上がることとなる。来るべき戦いに備え、武器の研究や、新兵をリクルートしちゃんと育てておくなど戦力の増強を常にしていきたい。

 そして「XCOM 2」はUFOネタとしてもやっぱり楽しめる、というところも強調しておきたい。エイリアン兵士の指揮系統には脳に埋め込む機械が使われているし、ヘビ型宇宙人が持っている銃は謎の緑の光線を放つ銃だし、脳に機械を埋め込んで人間を操るし、人間をXXXする謎の施設もあるし……。「未知との遭遇」、「インディペンスデイ」、「X-ファイル」など、宇宙人ネタを扱ったドラマが好きな人にはたまらない要素がふんだんに盛り込まれているところもとても魅力的だ。

 「XCOM 2」は本当にゲーム要素の詰まった、やり応えのある楽しいゲームである。世界観やキャラクターデザイン、雰囲気などは“洋ゲー”テイストなので日本のシミュレーションRPGファンには少しハードルが高く感じるかもしれないが、戦いをくり返し成長することで特別な存在になる、ユニットに強い愛情を注ぐ傾向のある人にぜひ遊んで欲しいタイトルだ。もちろん硬派なシミュレーションファンにもオススメだ。この優れたゲーム性を持つ作品に、チャレンジして欲しい。

【戦略的な視点で戦う】
アヴェンジャーの内部で様々な施設を建造し、戦力を増強する。科学者、技術者の確保も急務だ
エイリアンに追われるXCOMの戦いは常に緊張感がある。ハードな任務をこなさなくてはならないことも多い。このバランスと高いゲーム性が、エキサイティングなゲーム体験をもたらすのだ
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(勝田哲也)