スマートフォンレビュー「SH-01F DRAGON QUEST」

SH-01F DRAGON QUEST

選ばれし勇者だけに与えられる幻の装備。「ドラクエ」スマホを手に入れた!

ジャンル:
  • スマートフォン
発売元:
  • NTTドコモ
開発元:
  • シャープ
プラットフォーム:
  • Android
価格:
オープン価格
発売日:
2013年12月7日

 12月7日、NTTドコモから、「ドラゴンクエスト」仕様のスマートフォン「SH-01F DRAGON QUEST」(以下、「ドラクエ」スマホ)が発売された。スライムのシルエットやロトの紋章のシルエットがプリントされたメタリックな外装、スライム形のアイコンが散りばめられたホーム画面、そしてこのスマホでしか遊べないオリジナルの「ドラクエ」アプリ「どこでも冒険ダイス」などなど……。「ドラクエ」ファン垂涎の要素がたっぷり盛り込まれた、まさに夢のようなスマホに仕上がっている。

 筆者は、1986年にファミコン用ソフトとして発売された「ドラゴンクエスト」をリアルタイムでプレイしていた、筋金入りの「ドラクエ」ファン。ナンバリングタイトルはすべてプレイしており、中でもロト3部作は、リメイクされるたびに遊び直している。長年、「ドラクエ」を愛し続けてきた一ゲーマーの視点で、限定3万台という貴重な「ドラクエ」スマホの魅力をたっぷりとレビューしたい。

 「ドラクエ」スマホには、「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」がすぐにダウンロードできる専用ソフトがプリインストールされている。同梱されているシリアルコードを入力すれば、無料でプレイ可能なのも魅力の1つだろう。

スペック
本体サイズ約141×70×8.9mm
重量約139g
ディスプレイサイズ約5.0インチ
解像度1,920×1,080ドット
バッテリー容量3,000mAh
メモリ2GB RAM、32GB ROM
OSAndroid 4.2
下り最大通信速度150Mbps
Bluetooth4.0対応
その他ワンセグのほかフルセグに対応、防水仕様

メタルスライムのかけらでできた、高級感あふれる光沢ボディ

 最初に目に留まったのが、メタリックな外装だ。なめらかでゆがみのない、つるんとしたシルバーボディ。「メタルスライムを倒すと入手できる『メタルのかけら』によって作られている」という設定だそうで、なるほど、メタルスライムを思わせる涼しげな輝きを放っている。スライムやドラキーといったモンスターのシルエットやロトの紋章が控えめにプリントされているところも好印象。キャラもののスマホによくある過度な主張やチープさは感じられず、全体的にとても上品でスタイリッシュな印象を受けた。

 手に取ってみて驚いたのが、その軽さ。金属調の見た目に反して、重量は約139gに抑えられている。これなら片手で長時間「ドラクエ」アプリをプレイしても疲れることはなさそうだ。実使用時間は約98.9時間、データフォルダの容量は25.2GB。「ドラクエI」~「ドラクエVIII」をすべて足すとだいだい6GBの容量になると予想されているので、ヘビーな「ドラクエ」ファンの使用にも長く耐えられる、十分に余裕のあるスペックと言っていいだろう。

背面は「不連続蒸着」という特殊な加工でメタリック調にコーティングされている。本物の金属を使うと精密機器の動作を妨げてしまうのだとか
サイドがなめらかにカーブしており、手にしっくりと馴染んでくれる。大型なのに持ちやすく、片手でラクラク操作できた

壁紙、ホームボタン、電池アイコン、なにもかもが「ドラクエ」尽くし!

ファンにはたまらない、「起きなさい」の名シーン!!

 期待に胸を膨らませて、早速、電源を入れてみると……。いきなり、「ドラクエ」テイスト満載の起動シーンがっ!! 真っ黒な画面に白抜きのウインドウが表示され、「ドラクエIII」の“あの”オープニングを模した起動メッセージが表示された。

 心憎い演出にハートを掴まれホーム画面へと進んでいくと、今度はあちこちに散りばめられたキュートな「ドラクエ」アイコンたちに目を奪われることになる。スライム型のホームアイコン、キングスライムの電池アイコン、宝箱の形をしたコンテンツアイコンに、古文書のようなニュースアイコン……。内蔵されている音声案内アプリ「しゃべってコンシェル」のキャラクターまで勇者ロトのコスプレをしているという念の入れようで、隅々まで抜かりなく「ドラクエ」の世界観で埋め尽くされていた。

 中でもユニークなのが電話の着信画面。通常はスライムが大きく表示されるだけなのだが、NTTドコモが提供する「きせかえコール」というサービスを利用すれば、「ドラクエ」スマホ限定で、戦闘画面をモチーフにした着信動画を設定することができるのだ。電話がかかってくるたびに「○○があらわれた!」というおなじみのメッセージが表示され、ファンでなくとも勇者の血が騒ぐこと請け合い。周りに友人・知人がいるようなシーンなら、電話がかかって来ただけで仲間と一緒にひとしきり盛り上がれる。

 他にも、壁紙、デコメ、電卓画面のボタンなどなど、「ドラクエ」仕様になっているポイントを上げるとキリがないが、特筆すべきなのは「すべての意匠に物語が感じられる」というところだろう。旅立ちを思わせる起動画面があり、勇者ロトへの誓いを彷彿とさせるアクセス画面があり、宝探しの楽しさが味わえる隠しアイコンがあり、旅の終わりを感じさせるスリープオフアニメがある。ただ単に「ドラクエ」っぽいデザイン要素をギチギチに詰め込んでいるのではなく、冒険を追体験させようという思いが感じられ、その思いが、完成度の高さにつながっているのだと感じられた。

こちらがホーム画面。右上に表示されている電波アイコン/電池アイコンがスライムの形になっている。下部に表示されているホームボタン、電話アイコンにも注目。あちこちに「ドラクエ」を思わせる演出が!!
「しゃべってコンシェル」のアプリ画面。ひつじのしつじくんが、勇者ロトのコスプレで出迎えてくれる。「IV」、「V」、「VI」のコスプレ姿も
着信と同時に戦闘画面が! インパクトは絶大だ。企画段階では「たたかう」、「にげる」などのコマンドを入れる構想もあったそうだが、電話としての使いやすさを優先したという
ロトの紋章の中央にタッチすると、ホーム画面に移動できる。誓いを立てて封印を解くような、なんとも神聖な気分
スライムが画面を飲み込むようなアニメーションが表示され、スリープオフ
壁紙やデコメ、電卓ボタンなど、なにからなにまで「ドラクエ」仕様。特にデコメのアニメが豊富で、メールでのコミュニケーションがぐっと楽しくなりそうだ

ナンバリングタイトルの名曲がプリセットされている!

着メロサイトにアクセスして、曲を検索し、ダウンロードする、という一連の作業は、意外と面倒くさいもの。プリセットされているのがありがたい

 「ドラクエ」を語る上で欠かせないのが、すぎやまこういち氏の音楽だ。あるときは冒険の壮大さを、あるときは戦いの厳しさを、そしてまたあるときは仲間がいる喜びや旅の楽しさを感じさせ、巨悪を倒すまでの道のりを音楽で支えてくれた。印象深いBGMを聞くと、いまでもグッとくるという人も、きっと少なくないことだろう。

 そんなファンにぜひとも注目してもらいたいのが、プリセットされているBGMだ。FC版の序曲から「IX」の「酒場のポルカ」まで、名曲がズラリと勢揃い。定番のレベルアップ音や宿屋のME(Music Effect)もしっかり収録されている。個人的に嬉しかったのが、「II」の「Love Song探して」が入っていた点。シリーズ中、もっとも夢中になったタイトルで、当時、牧野アンナ氏がボーカルを担当していた歌入りCDシングルを購入した思い出がある。

 長く愛されているタイトルだけに、プレーヤーにとって十人十色、さまざまな記憶があることだろう。「ドラクエ」スマホの音楽を聞きながら、プレイ当時の思い出を振り返ってみるのも、また一興である。

日常が冒険になるすごろくゲーム「いつでも冒険ダイス」

 プリインストールされているアプリの中で、特に注目したいのが「ドラゴンクエスト いつでも冒険ダイス」(以下、冒険ダイス)だ。「メール受信」や「着信」、「歩いた歩数」や「スマホを使った回数」に連動したすごろくゲームで、スマホを使えば使うほど冒険が進む仕組みになっている。

 ゲーム開始時に選択できるキャラクターは、戦士、武闘家、魔法使い、僧侶の各男女、計8種類。レベルが上がるとダーマの神殿で転職できるようになり、まったく新しい職業や、よりハイクラスのスペシャリストにジョブチェンジできるシステムになっている。うまく育てれば、伝説のあの職業に就くことも夢ではない、かも……? タイミングや順番をよく考えて、慎重に転職を進めていこう。

 転職と並ぶやり込み要素が、モンスター図鑑だ。新たに出会ったモンスターを倒すと図鑑に記録され、少しずつ空欄が埋まっていく。記録できるモンスターは、なんと800種類以上! 上級職に転職しないと出会えないモンスターも多いので、うまく転職しキャラを成長させつつ図鑑のコンプリートを目指していこう。なお、図鑑の下段には「出現職業」という項目が設けられている。どの職業のときに当該モンスターと出会ったかが記録されるので、あらゆる職業に転職してモンスターと出会いまくり、どこまでこの項目が埋められるかに挑戦してみても面白そうだ。

 プレイしていて感じたのが「日常が冒険になる」というコンセプト。自分が歩いた歩数の分だけキャラクターが前進し、そして成長する。成長したキャラに会いたくて、ふと電車の中や会社でアプリを立ち上げると、そこで戦闘が始まったり、マップが切り換わったりと、また新たな旅が始まるのだ。「ドラクエ」の世界をこれまでにないほど身近に感じることができる、スマホならではのゲーム。いまのところ他の端末向けに配信される予定はないそうなので、「ドラクエ」スマホに触るチャンスに恵まれたら、まずは「冒険ダイス」をプレイしてみていただきたい。

スタート時に選べる職業は4つだけ。残りの6職種が気になるところだ。職業、性別を選んだら、いざ、冒険の旅に出発!
「スマホを使った回数」、「着信した回数」、「メール受信回数」、「パケット通信料」、「歩いた歩数」で、ポイントがたまっていく
たまったポイントを消費してダイスを振り、すごろくを進めよう
赤いマスに止まると戦闘が発生する。ただし、複雑なコマンド選択は不要なので安心を。タップするだけで戦える
戦いに勝利すると、「ちいさなメダル」をもらえることがある。メダルを集めると、オリジナルの壁紙やデコメキャラを入手できる
レベル5以上になると、ダーマの神殿で転職できる。ジョブやモンスター図鑑の収集に影響するので、転職するタイミングは慎重に見極めたい
すごろく画面の左上に表示されているステータスをタップすると、詳細なパラメータに切り替わる。職業レベルも確認可能
こちらがモンスター図鑑。モンスターに関する豆知識が描かれた解説文が面白い。これまでの登場ナンバリングタイトルがわかるところもユニーク

ハード自体の性能が高く、「ドラクエ」を抜きにしてもおすすめできる

 「ドラクエ」スマホは、シャープのスマホ「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」をベースにして製造されている。約5インチのフルHD対応IGZO液晶ディスプレイを採用しており、画面の大きさは折り紙つき。また、一般的な印刷物が350ppiであるのに対し、440ppiという高密度を保っており、その美しさについても評価が高い。

 また、本端末には「ワンセグ」と「フルセグ」、ふたつの電波に対応したチューナーが搭載されている。ごくごく簡単に噛み砕いて説明すると、携帯端末向けの粗いが安定したデジタル放送電波が「ワンセグ」で、家庭内に設置されているような固定テレビ向けの高画質なデジタル放送電波が「フルセグ」だ。「ドラクエ」スマホは双方の電波を受信することができるため、フルセグ電波が届くところであれば家庭用のデジタル放送と同等の美しい画質で、届かないところではワンセグ電波で、安定的にテレビ番組を楽しむことができる。

 カメラの性能も高い。新たに搭載された「NightCatch」という機能によって、従来のスマホでは難しかったレストランやカラオケルームなどの暗い室内でも、フラッシュなしで明るくきれいに撮影できるようになった。また、一眼レフなどに使われている高性能なレンズを搭載しており、背景がほどよくボケた雰囲気のある写真も撮影できる。

 また、同梱物の「冒険の導き書」、「ロトの紋章クロス」、「宝箱パッケージ」も作品世界を再現するのに一役も二役も買っている。

 ゲーム、テレビ、カメラ。エンターテインメントに関する機能が高い水準で揃っており、「ドラクエ」を抜きにしてもおすすめしたい端末だ。デザイン性やコンテンツだけでなく、ハードの強みや機能性の高さにも、ぜひぜひ注目していただきたい。

「ドラゴンクエスト」懐かしさはそのままに、圧倒的にスマートフォンでプレイしやすいようにインターフェイスも再構築されている
12月12日より配信が開始された「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」。2004年にプレイステーション 2用としてリリースされたタイトルをスマートフォン用タイトルとして展開
横位置でプレイする「ドラゴンクエスト モンスターズ ウォンテッド!」。左右の広がりが感じられ、テレビに近いような印象。ただし、縦位置に比べると操作のしにくさは否めない

(秋山由香)