2月29日までクローズドβテストが行なわれていたPS Vita用タイトル「サムライ&ドラゴンズ」。こちらのタイトルについて詳しく知らない方だと、「PS Vita用のゲームでクローズドβテストをしているってどういうこと?」と不思議に思われるかもしれないが、本作は完全なオンラインゲームであり、ソフトは無料。有料でアイテムやサポート要素を購入するスタイルの、いわゆるアイテム課金方式のオンラインゲームなのだ。
リアルタイムにゲームが進むソーシャル要素を持ち、同じ世界でプレイしている他のプレーヤーとコミュニケーションを取りつつ同盟を組み、魔獣カードのユニットを出撃させて領土を支配していく。そんな本作について、クローズドβテストからわかったことをお伝えしていこう。
■ 同盟を作り、熾烈な領土争いを繰り広げるシミュレーション&アクションな新機軸タイトル
「シミュレーションパート」で施設を作り資源を蓄えて、遠方へと占領地域を拡大していくのがプレイのメインとなる |
「アクションパート」ではオンラインでの最大4人プレイが可能。アクション操作で敵を倒し、クリア報酬の魔獣カードを目指す |
ゲーム全体の進行は常にリアルタイム。施設の建設に15分かかるなら、現実世界の15分待つことになる |
「サムライ&ドラゴンズ」は自分が領主となって領地を広げていき、他のプレーヤーとフレンドや同盟を組んだり、さらに他の同盟と争いながら、フィールドに複数ある「デブリズタワー」と呼ばれる巨大な塔を占領するのが目的。1ゲームの期間は約3カ月となっていて、その期間の終了時に最も多くの「デブリズタワー」を持つプレーヤー達が勝者となる。
本作は、カードバトルや街の発展などを行なう「シミュレーションパート」と、最大4人のオンライン協力プレイでダンジョンを攻略する「アクションパート」という、2種類のパートがある。プレーヤー間の競争のメインとなるのはシミュレーションパートで、アクションパートでは協力プレイを楽しみ、クリア報酬の魔獣カードでバトル用の部隊を作るというバランスになっている。
まずはシミュレーションパートだが、本作はリアルタイムに進行する。例えば街に新しい施設を作るとき完成までに15分必要という表示なら、現実時間の15分後に施設は完成する。その間はゲームをプレイしていなくとも構わないし、アクションパートに行くのもありだ。
そうして資源を作り出す「畑」であったり「採石場」といった種類豊富な施設を作り、その施設が一定間隔で作り出してくれる資源を元にして、さらにいろいろな施設を充実させていくというのが基本の進め方になる。このあたりはソーシャルスタイルな育成ゲームそのものだ。
自分の拠点の外にもマップ画面である「地図」を見ると、フィールドが広がっている。数万人のプレーヤーが同時にプレイできる広大なマップで、近所のプレーヤーと同盟を組んだり、また敵対しつつ、領地を広げていく。プレーヤー間のやり取りはゲーム内にメール機能があり、同盟を組めば同盟用の掲示板も使用できる。積極的にコミュニケーションして仲間を増やすのは重要だ。
シミュレーションパートの操作は全て前画面でのタッチ操作になっているのも特徴的だ。シミュレーションのインターフェイスにタッチ操作は相性がよく、手軽に操作できる。
領地を奪い合う手段、「魔獣カード」を組み合わせた部隊 |
領地争いのバトルは派兵した部隊の到着時に自動進行のターン制バトルが行なわれる方式。魔獣のレベルやステータス、そして兵士の数やスキルが勝敗をわける |
領地を支配するには、自分の領地の隣接地に向けて「魔獣カード」で構成した部隊を送りこみ、その地にいる魔獣にバトルで勝利しなければならない。バトルは自動で行なわれ、勝敗の結果と戦闘のログが後から確認できるというものだ。領地にはレベルがあり、その地にいる敵の強さを表している。何もない平原ならレベルは1で弱い敵が、森や山ならレベルは3や4となって、強い魔獣が複数いて兵数も多い。
勝利が続いて順調に領土を拡大していっても、いつか強敵のいる領地の戦闘で敗北する時がくる。そうなってからが本番と言えるところがあり、その領地の戦闘に勝てるようにアクションパートをプレイして魔獣カードを増やし、部隊に組み込むカードを吟味し、資源を消費して兵士の数も増やす。魔獣は戦闘すれば経験値が手に入ってレベルが上がるので、戦闘を重ねてレベルも上げていく。
また、オークションで他プレーヤーと魔獣カードを取引したり、カードを合成して魔獣のスキルを強化・習得したりといったことも可能だ。
そうして強力にした魔獣の部隊を、「これだけ強くなった部隊ならきっと勝てるはず! 」と言わんばかりに送り込んでいく。戦闘の結果が出るまでドキドキだ。負けて全滅してしまえば、多くの資源をつぎこんで集めた兵士の数は1になってしまい戦力が失われてしまう。だが、勝ちさえすれば新たに領地が増える。負け続けだった領地に勝利したときの喜びはひとしおで、それを味わう頃には本作を逐一チェックして進行状態を気にするような状態になっていることだろう。
戦闘の内容はログで確認できる。特に敗北した時は、敵部隊の数や能力を見て、次に送る戦力がどの程度必要か測るのが大事だ | |
魔獣カードはカードパックから手に入れるほかに、オークションでプレーヤー同士のやり取りも可能 | |
魔獣カード同士を掛け合わせて、スキルを合成。スキルレベルの強化や、別のスキルを加えることができる |
「アクションパート」は自分のキャラをアナログスティックやボタンで操作する最大4人プレイ可能なアクションゲームになっている |
アクションパートはダンジョンに挑み、最深部にいるボスを倒してクリア報酬として魔獣カードやアクションパート用の装備品カードを手に入れるというパート。ルーム制になっていて、他のプレーヤーのルームに参加してもいいし、自分でルームを作成してもいい。最大4人が参加可能だ。
アクションパートで操作するのは領土の主である自分。ゲーム開始時に職業を5つから選択するので、その職業の能力を活かして戦っていく。職業は、片手剣とシールドを持ち敵の攻撃を引きつける「剣士」、魔法での遠距離攻撃が可能な「魔法使い」、パーティーの傷や状態異常を治す回復魔法が使える「僧侶」、近距離の連続攻撃やクナイによる遠距離攻撃を使う「忍者」、攻撃範囲が広く与えるダメージも大きい「侍」となっている。
クローズドβテストでのプレーヤーの傾向を見ると、やはり和風テイストが加わった本作だけに侍や忍者が人気だったようだ。だが、回復魔法の使える僧侶の存在はオンリーワンなだけに大きく、遠距離攻撃ができる魔法使いやガードが可能な剣士にも魅力はある。なお、レベル15以上になれば転職ができるほか、製品版では上位の職業も用意されているようなので、アクションパートでもやり込み要素が用意されている。
選択できる職業は初期状態では5種類。アクションパートのレベルが上がってレベルが15以上になると転職も可能になる ※製品版ではレベルが20以上で上位職に転職、もしくは他の下位職に転職可能 |
他の参加プレーヤーとはタッチ操作で選ぶ簡易チャットでコミュニケーションがとれる |
ダンジョンの最深部ではボス敵が待っている! |
戦闘不能になってしまった場合、蘇生するにはCPが必要になる。だがパーティーメンバーが蘇生してくれればお互いにメリットがあるという仕組みだ |
アクションパートでは、タッチ操作ではなく、アナログスティックやボタンを使ったプレイが可能。これはPS Vitaならではの要素といえる。左アナログスティックで移動、○/△/□/×ボタンで4種類の攻撃スキルを使い、Rボタンで回避という操作になっている。
また、画面にあるチャットボタンをタッチすると、簡易チャットも利用できる。ダンジョン攻略開始時に「よろしく! 」と挨拶したり、回復してもらったりしたときにお礼を言ったりと、定型文を選ぶだけのものではあるが、コミュニケーションが手軽に取れる。
ダンジョンはフロアごとに敵が待ち受けていて、全滅させることで次の階層へと進んでいける。アクションの感触はスピーディーで、いわゆるハックアンドスラッシュ系な感触だが、その中でもライトなテイストだ。シビアな操作を求めるようなところはなく敵とダメージをザクザク与え合うという印象で、逆に言うと少しざっくりした感触ではあるが、最大4人パーティーでワイワイと戦う手軽さと楽しさが重視されたものになっている。
フロアごとにHPは回復するのだが、そのフロアで戦闘不能になってしまうと、蘇生するために「CP」というポイントが必要になる。CPについて詳しくは後述するが、正式サービス以降では有料のポイントとなる貴重なもの。ちょっとシビアな印象ではあるが、他のパーティーメンバーがCPを代わりに払って蘇生してあげることも可能で、その場合ゴールドチケットがもらえる。ゴールドチケットは、集めるとレアリティの高い魔獣が出やすいパックを引けるチケット。味方の蘇生にゴールドパックが付いてくるため、積極的に蘇生してあげたくなるというバランスにしているのが上手いところだ。
ダンジョン最深部にいるボスはいずれも特殊な攻撃を繰り出してくるものばかり。ファンタジー調のミノタウロスやドラゴンといったボスもいるが、和風な歌舞伎役者っぽい姿をしている「自来也」というボスとも戦えた。ドラゴンが炎のブレスを吐き、ミノタウロスは攻撃範囲が広い巨大な斧を振り回し、自来也は巨大なガマガエルに乗り込んで地形ダメージを与える術を駆使してくる。そうした特殊な攻撃をかいくぐりつつ、攻撃のチャンスを逃さず戦うことが重要。
いずれもダンジョンのボス敵で、上から「ミノタウロスバトラー」、歌舞伎役者風な「自来也」、巨大なドラゴンの「グランジ」。ダンジョンごとに異なっているボスと戦ってみたい、どんなボスが出てくるのか見てみたいというのも、ひとつの魅力になっている |
クリア後にカードパックから魔獣カードやアイテムカードを引けるのが、アクションパート一番の魅力 |
クリア後には、クリア報酬としてダンジョンのカードパックから2枚カードを引ける。ダンジョンの難易度に応じてカードパックが異なっていて、レベルの高いダンジョンを攻略したほうがレアリティの高い強いカードのパックから引けるという方式だ。
魔獣はそれぞれ種族があって、獣、亜人、不死、精霊、巨人、魔族、といったファンタジー調の種族が中心となっているが、レアリティの高いパックからは「武将」というまさに“侍”な魔獣カードも手に入った。「武田信玄」や「前田利家」、「風魔小太郎」などのカードが確認できた。他にもたくさんの有名武将のカードが存在するようだが、中には不死族ではあるが「落ち武者」という和風テイストの魔獣カードもあった。
レアリティの高いカードが出た時の嬉しさとテンションの高まりはかなりのもので、「このカードで強い部隊を作ればさくさく領地が手に入るかも……」なんていう期待とともにプレイの意欲が高まっていく。こういうところからグイグイとハマってしまうというわけだ。
魔獣カードは有名なファンタジー世界の魔獣もたくさんいるが、本作ならではの「武将」カードも存在する。有名武将を自分の部隊に組み込んで戦わせられる |
「塔」の奪いあいは熾烈! 同盟同士の攻防が繰り広げられる |
こうしてシミュレーションパートとアクションパートを楽しみつつゲームを進めていくわけだが、領土争いの大きな目標は、「塔」を占領することにある。3カ月スパンで展開されるゲームの最大の目標である「デブリズタワー」はもちろんとして、その前段階の目標として各地に点在する「塔」もぜひ抑えたい。塔を占領すればアクションパートで特別なダンジョンに挑めるようになり、そのダンジョンでは普通に行けるダンジョンよりもより魅力的なカードが手に入る。
ある程度ゲームを把握してからの筆者も、もちろん塔を占領しようとプレイを進めていった。自分の街がある最初の領地から1マスずつ魔獣を送って占領し、魔獣ユニットの兵力を補充しつつ塔へと向けていく。だが、塔を占領したいのは他のプレーヤーや同盟も同じ。筆者が進めたルートの逆側から別のプレーヤーが塔を目指していたのだ。こうなってくるとなかなか熱い展開。塔を巡って熾烈な戦いが繰り広げられた。
同盟を組んでいる同士なら同盟員の領地を経由して占領することもできるので、塔を抑えるために同盟メンバーに掲示板やメールで連絡し、支援を求めるのも手だ。そうして同盟のメンバーと交互に攻め立て塔を占領し、そこからは他同盟からの激しい攻撃を兵力を補充しつつ守っていくという流れになっていく。一喜一憂する戦いの日々だ。
有料ポイントである「CP」で得られる効果は大きい。画像のゴールドパックはレアリティの高いカードが満載のパックだ。ただ、基本的なゲームの魅力は全てCPなしでも楽しめる |
最後に「CP」こと有料課金のポイントを使った効果や影響の度合いについて触れよう。CPを使うと、「強力な魔獣パックの購入」、「施設建設の即時完了」、「魔獣の即時帰還」、「成功率の高いスキル合成」、「資源産出量ブースト」といった強力な機能が使えるようになる。いずれもあったら絶対に嬉しいというものばかりで、「強力な魔獣パックの購入」あたりはついつい手が伸びるという印象だ。
CPで手に入る要素はゲームバランスとしてもだいぶ影響が出るとは思うが、中でも「魔獣ユニットの組み合わせコストの最大値アップ」というものがあって、これは強力なカードを組み合わせられるようになるので、影響が大きいと感じたところがある。
一方で、課金はあくまで要素のブーストやプラスアルファに留められていて、ゲーム全体は無料で遊べる範囲だけで充分に楽しめる。もちろんCPによるプラスアルファは効果が大きいのだが、楽しむだけならCPを使わなくても問題ないぐらいに、かなり影響を抑えめにしてあるという印象だ。まずは一通り楽しんでみて、ハマってきたらCPを使う要素もチェックしてみるぐらいの姿勢で、試してみるのがオススメだ。
■ タッチ操作、ボタン操作を適材適所で使い分けられるのが魅力な、本格ソーシャルスタイルゲーム
実際にクローズドβテストで本作をプレイして感じたのは、システムや要素が豊富にあり、「次はあれをしよう、その次はこれをしよう」というのが次々に湧いてくる魅力があるということ。資源を稼ぎ、魔獣を強化し、たまにオークションをチェックしたり、同盟メンバーの様子を見たり、新たなメンバーを誘ってみたり。資源を投資して同盟自体のレベルを高めることも重要になる。塔のような重要な領地を維持し、さらに魔獣を強くするため、アクションパートにも挑んでいく。チクチクと遊ぶシミュレーションパートの息抜きとしても楽しめるものだ。
システムや要素が豊富なだけでに最初は戸惑うところもあるにはあるが、ゲーム側からチュートリアル的に「これをしてみましょう」というガイドが用意されているので、1ステップずつ理解していけるのが嬉しいところ。そうして1つずつ理解していくことで、徐々にハマっていくような魅力がある。
集中して遊びこむようなスタイルよりも、いろんな合間にちょこちょこ進捗を確認してチクチク遊んでいくスタイルのゲーム。より本格的なゲームが楽しめるようになったPS Vitaにおいて、こうしたソーシャル形式のゲームも楽しめるところは面白い進化のひとつ。PS Vitaではシミュレーションをタッチ操作で、アクションをボタンやアナログスティックを使ったキー操作で楽しめるというように、向き不向きのある操作を使い分けでき、本作がそれをちゃんと活かしているのも嬉しいところ。なによりダウンロード版は無料という敷居の低い切り口がインパクト抜群だろう。製品版でぜひ手を出してみてもらいたい。
(2012年 3月 5日)