本格的なレースゲームをプレイするなら、やはり本格的なコントローラーを使用したいと思うのがレースゲームファンの心理というもの。「F1 2010」(コードマスターズ)に「グランツーリスモ5(以下『GT5』)」(ポリフォニーデジタル)と、本格的なレーシングゲームは出揃った。では、ハンドルコントローラーは?
その決定的な答えとなるが、ロジクールから11月25日に発売された本製品「G27 Racing Wheel」だ。「GT5」と同日に発売された本製品は、プレイステーション 3とPCの両方で使用できるハンドルコントローラーだ。作りは本当に本格的で、強力な新型FFB(フォースフィードバック)エンジン・6速H型シフト・ステンレス製ペダル(クラッチ付き)と、37,800円という価格設定も納得の製品仕様となっている。
さっそく「GT5」と「G27」を手に入れて本格的な環境でドライビングを楽しんでいるファンの方も多いかと思うが、本稿ではまだ本製品の導入を迷っている方に向けて、本製品の利点と弱点をつまびらかにしていきたい。
■ 名作「G25」をベースに、様々なリファインでさらに完成度を挙げたゲーミングデバイス
ハンドル、シフター、ペダルの3点ユニット構成 |
ハンドル部には6つのボタンとパドルシフトを装備 |
6速シフトレバーと各種ボタンのあるシフトユニット |
ステンレス製ペダルを3系統装備するペダルユニット |
本製品「G27 Racing Wheel(『以下G27』)」は、ハンドルユニット、ペダルユニット、シフトユニットの3点で構成されるゲームコントローラーだ。主な製品仕様は本製品の前モデルにあたる「G25」を踏襲。本革製のハンドルカバー、最大900度のロックトゥロック角度、デュアルモーターによる強力なFFB効果、ステンレス製ペダル、H型6速シフトレバーなど、考えうる限りの贅沢な仕様が取り入れられている。
その上で、本製品では「G25」に比べていくつかの強化・リファインが行なわれている。特に大きなポイントとなっているのは、「FFBエンジンのギア」、「ハンドル部のボタン追加」、「シフトレバーユニットの操作方法一本化」の3点といえる。
まず「FFBエンジンのギア」について。本製品では前モデル「G25」と同様に2つのモーターによりFFBエンジンを駆動させているが、その動力をハンドルに伝えるギア部に、前モデルでは“平歯車”を使用していたところ、本製品では“はすば歯車(ヘリカルギア)”を採用した。これによりFFBの駆動音がぐっと抑えられ、「G25」に比べればほぼ無音というレベルの静音性を実現している。操作時のゴリゴリ感も軽減されており、じつにスムーズだ。
次に、「ハンドル部」のボタン追加については、前モデルで2ボタンだったところを、本製品では6ボタンに強化されている。これによりシフトユニットに手を伸ばさなくても操作できる項目が増え、格段に便利になった。多機能なステアリングを持つF1系のゲームなどではより臨場感のあるプレイが可能になる。
最後に、「シフトレバーユニットの操作方法統一化」というのは、強化というよりリファイン項目にあたる。「G25」ではH型シフトを機械的なスイッチ操作で上下動のみの2ボタンスイッチに切り替えることが可能だったが、本製品ではそれが削除された。このためH型シフト部から機械的に無駄な構造が取り除かれ、よりスムーズなシフトチェンジ操作が可能になっている。そもそも、ボタンによるシフトチェンジはハンドル部のパドルボタンで可能な操作であるため、「G25」の仕様は無駄が多かったという判断だろう。
その他の点、元々完成度の高かったハンドルユニットの質感や、シフトユニットのボタン構成、ペダルユニットのペダル数や質感、各ペダルの重さ(アクセル・クラッチ・ブレーキの順に重くなる)などの仕様は「G25」とほぼ同じか、全く同じである。本製品はこれまでの最高級ハンドルコントローラーであった「G25」を純粋に置き換える製品というわけだ。
ハンドルユニット。ハンドルカバーは本革製で実車感覚。回転式の固定具でしっかりと机に固定できる。固定可能な最大幅は筆者実測で32mmほど。 | |
シフトユニット。十字ボタンと8つの独立ボタンを装備。ボタン機能配置はPS3に合わせてあるようだ。6速シフトは「G25」のものよりもスムーズに動作する |
ペダルユニット。ペダル部はステンレス製で非常に重量感がある。独特のスプリング機構で、踏み込み量に関わらず常に一定の抵抗がかかるため、正確なペダル操作が可能 |
ハンドルユニットが全体の「ハブ」となっており、他のユニットをこのように接続。そこから1本のUSBを通じてPC/PS3に接続する | 「G27」で新たに追加された多目的LED。主にゲーム中のエンジン回転数を示すように作られている |
■ PC、PS3ともに満足できる感触。FFBエンジンが路面状況を的確に伝える
PC上でのコントロールパネル |
詳細設定。ロックトゥロック角の設定やFFB関連の設定ができる |
続いて、実際のゲームでの使用感をまとめておこう。本製品はPS3とPCの両プラットフォームで使えるデバイスなので、それぞれの最新レースゲーム「F1 2010」(PC)と、「GT5」(PS3)を用いて確かめてみた。
まずPCでの使用感から。ロジクールによる国内流通版である本製品は、戦略的な判断から公式にはPC対応を謳っていないものの、Logitechによる海外流通版では普通にPC向けとして売られている。日本語版ではPC向けのドライバーソフトウェアは含まれていないが、公式サイトからダウンロードすることで利用が可能となる。この場合、当然のことながら、ドキュメントも英語となってしまい、ロジクールへの公式サポートも受けられないので注意したい。
ドライバーをインストールすると、PC上でコントローラーの各種設定が可能になる。「ロジクールプロファイラ」ではボタン毎に任意のファンクションを指定できるほか、コントロールパネルの[Settings]ウィンドウではFFBの効き加減をはじめ、細かい調整ができる。特に重要なのは[Rotation]という項目。ここでハンドルのロックトゥロック角度を設定できるのだ。
デフォルトでは最大900度(2.5回転)のロックトゥロック角度を持つハンドル部は、ゆっくり走行する一般車ならともかく、レース仕様車を操作するならある程度認識角度を狭めて、クイックに動かせるようにするのがセオリー。筆者はGT系のゲームでは240度ほど、F1系のゲームでは200度ほどに設定するようにしている。これをドライバ側で設定しておくと、最大蛇角まで操作した瞬間、FFBエンジンが「ガッ」と抵抗し、認識角度の終わりを示してくれる。
・「F1 2010」PC版
「F1 2010」PC版 |
今回テストに使用したコードマスターズの「F1 2010」はF1のシミュレーションゲームなので、上記のようにロックトゥロックを狭目に設定。それでも本製品の精度がそもそも高いため、非常に精密な操作が可能だ。
それにプラスして、コードマスターズのゲームはFFBエンジンを使ったタイヤインフォメーションの伝え方が非常に上手いメーカー。「F1 2010」でもハンドルを通してタイヤと路面の接触状況が細やかに伝わってくる。縁石に乗った瞬間の「ガゴゴ!!」という振動はもちろん、コーナリング時にこれ以上ハンドルを切ったらトラクションを失う!というギリギリの線もしっかり認識できる。これは、本製品の強力・精密なFFBエンジンのおかげという面も大きい。
また、F1カーはピットロードでの速度制限スイッチや、走行時のウィング角度調整など、走行中に呼び出したいファンクションが多いのも特徴だ。その点、本製品ではハンドル部に6つのボタンを装備しているおかげで、ほぼすべての操作をハンドルとペダルユニットだけで完結することができる。こういった面も含め、本製品「G27」を使用しての満足度は非常に高い。
本製品のボタン数を生かして、ハンドル部に多くのファクションを割り当て可能。また、デッドゾーンやハンドルの効き加減などもゲーム中で調整可能なので、自分好みの調整が自在にできる |
・「グランツーリスモ5」
「グランツーリスモ 5」 |
デバイス設定項目に「G27」はないが、ボタンに関しては「Driving Force GT」の項目を触れば反映される |
PS3の2010年の目玉タイトルとしてついに発売された「GT5」も、「G27」を使用してプレイしたいゲームのひとつだ。公認ハンドルコントローラーとしては、「G27」の弟分であるロジクールの「Driving Force GT」が存在するが、「G27」でもしっかり楽しむことができる。
なお、“公認”ではないためか、ゲーム内のデバイス設定に「G27」の項目がない。そのため、「GT5」では、PCで設定できた本製品の特徴のひとつであるロックトゥロック角度の調整が不可能だ。ゲーム内では最大角度240~270度程度で認識されているようで、ニュートラルから右か左におよそ0.7回転したあたりでゲーム内のハンドルの切り角が最大となる。一般車なら違和感のない設定だが、ピーキーなレーシング仕様車には若干大きい切り角となってしまうので、今後のアップデート等で調整が可能になることを期待したいところ。
FFBの感触に関しては、「F1 2010」とは異なる解釈で作られているようで、タイヤインフォメーションの伝わり方は多少緩やかだ。とはいえ路肩を踏んだ瞬間の「ゴンッ」という感触や、高速で直進している際にグラグラとステアリングが不安定になる感触、ドリフト時にステアリングの抵抗が「フッ」と抜ける感触など、走行中の様々な挙動に独特のフィードバックが得られ、慣れるに従ってしっかりと路面と対話できるようになる。
運転テクニックに自信があるのなら、クラッチペダルを使ったドライビングも存分に楽しめる。クラッチはアナログ入力なので、「半クラ」でギアをギャリギャリ言わせることも可能。クラッチを踏みながらアクセルを同時に踏んで回転数を維持するヒール・アンド・トーのようなテクニックもしっかりとゲーム内で再現可能なので、H型6速シフトレバーを活用するためにも是非お試しいただきたい。
(12月1日編集部追記)
記事初出時、「デバイス設定メニューでボタン設定が可能」と表記しておりましたが、誤りであることが判明しました。正確には以下のとおりです。「GT5」において、前モデル「G25」では「GT FORCE PRO」の項目を通してボタン設定が可能ですが、今回取り上げた「G27」では、2010年12月1日時点で、いかなる項目を使用してもボタン設定を変更することはできません。誤った情報を記載致しましたことをお詫び申し上げます。
「GT5」における「G27」の制御プログラムは、H型シフトレバーおよびクラッチペダルの動作に対応するため、「GT FORCE PRO」と制御プログラムを兼用している「G25」とは別系統で実現されている模様です。このため「G25」と「G27」ではボタン周りの動作も異なるということとなり、「G27」では「G25」のような手段でのボタン設定が不可という状況にあります。「GT5」プロデューサーの山内一典氏は、12月1日早朝、Twitter上で「G25」および「G27」への対応状況についてのユーザーの質問に答え、「完全対応はちょっと待ってほしい」旨のコメントを発し、将来のアップデートでの対応を表明しています。
ステアリングやFFBの設定はきちんと反映される。「G27」の精度を活かすために「プロフェッショナル」か「シミュレーション」がオススメ | 「Driving Force GT」用の画面なのでわかりづらいが、ここからボタン設定が可能 |
■ 手のひらがヒリヒリするまで走りこみたいならぜひ「G27」を!
「G27」を使用してみて最大の強みだと感じられるのは、やはりハンドルユニットの作りがしっかりしていることだ。ツインモーターによる強力なFFBエンジンは、最大で10kg近い荷重を感じられ、ゲーム内からしっかりとしたフィードバックを体に伝えてくれる。その分、かなりの力を込めてステアリング操作をすることになるが、本革製のハンドルカバーのおかげもあってグリップ感は完璧。机への固定具も強力であるためまったくグラつかないというのもいい。
とはいえ弱点もある。まず、PS3で使用する場合、シフトユニット側に充分なボタン数は確保されているものの、「各ボタンに表記がない」、「配置が独特」といった理由のため、レース外でのUI操作時などの利便性は微妙なところ。「GT5」などをプレイする際は、別途通常のコントローラーを本体に接続して併用したほうがいい。
次に、ロックトゥロック角度の設定がPCドライバー上でしかできない点も弱点だ。高級ハンドルコントローラーとして海外で売られているFanatec製「Porsche 911 Turbo S Wheel」(通称『ポルコン』)では本製品と同様に最大900度の切り角を実現している上、コントローラー側でのロックトゥロック角度調整が可能だ。その上「ポルコン」はXbox 360にも同時対応している。個人輸入すると6万円以上かかるという価格設定はネックだが、全プラットフォームで使用するコントローラーを金に糸目を付けず手に入れたい人にとっては「G27」の強力なライバルになりうる。「GT5」、「G27」双方のアップデートに期待したいところだ。
そういったライバルの存在はありつつも、「G27」は37,800円という価格で、国内流通品としてベストな製品仕様を実現している点は非常に高く評価できる。タイヤインフォメーションを強烈に感じつつ、グッとステアリングを握り、手のひらがヒリヒリするまでレースゲームを走りこみたいなら、「G27」は現時点でもっとも現実的かつベストな選択肢だ。
(12月1日編集部追記)
上記「Porsche 911 Turbo S Wheel」は、2010年12月1日現在、すでに販売終了となっており、現在ではPS3/PC両対応タイプの「Porsche 911 GT3 RS V2 Wheel」がFanatecの主力製品となっていることが判明しました。こちらは上記のものとほぼ同等のスペックを実現しながら、Xbox 360を非対応とした製品で、諸費用込みでおよそ45,000円前後で購入可能です。
http://www.logicool.co.jp/
□「G27 Racing Wheel」の製品情報
http://www.logicool.co.jp/ja-jp/gaming/wheels/devices/5184
(2010年11月29日)