DSゲームレビュー

前作から30年後の世界が描かれる
「黄金の太陽」シリーズ第3弾がDSで登場!

「黄金の太陽 漆黒なる夜明け」

  • ジャンル:ファンタジーRPG
  • 発売元:任天堂
  • 開発元:株式会社キャメロット
  • 価格:4,800円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:10月28日発売
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


本シリーズに欠かせないのがジン。ジンをどう組み合わせるかでキャラクターの能力が変化する

 10月28日、株式会社任天堂かDS「黄金の太陽 漆黒なる夜明け」が発売された。本作は、2001年8月1日に発売されたGBA「黄金の太陽 開かれし封印」、2002年6月28日に発売されたGBA「黄金の太陽 失われし時代」に続く、シリーズ3作目となるRPG。前作から8年もの年月を経てのリリースということで、楽しみにしていたファンの方も多いことだろう。

 キー&ボタン、タッチスクリーンどちらの操作にも対応しており、場面を問わず、どちらでも操作可能となっている。なお、ニンテンドーWi-FiコネクションやDSワイヤレス通信といった通信プレイには対応していない。早速、本作の特徴や魅力について紹介していこう。



■ 前作から30年後を舞台に前作の主人公の子供達が活躍する物語

4つのエレメンタル「地」、「水」、「火」、「風」が
すべての根源とする科学、それを錬金術という。
はるか昔、その錬金術の法則が封印された。
エレメンタルの力は、世界を滅ぼしかねないほど
巨大なものだったからである。

だが、エレメンタルは全ての活力の源でもあった。
錬金術の法則を封印したときから、世界は滅びへと向かっていった。

「黄金の太陽」現象でエレメンタルは解放され、世界は救われた。
しかし、世界に災害を起こすほどのパワーはすさまじく、
その代償は大きかった。

世界を救い、世界を傷つけた「黄金の太陽」から30年―

力強く生まれ変わったこの世界で育った子供達が
今、初めての冒険の旅に出ようとしていた。

 前作同様、舞台はエレメンタルを根源とする錬金術が存在する世界ウェイアード。地、水、火、風からなる4つのエレメントが衝突して膨大なエネルギーを生み出す黄金の太陽現象から30年後の物語となっている。

 主人公のムートはシリーズのプレーヤーならお馴染みのハイディア戦士ロビンの息子。ムートは、ロビンと同じハイディア戦士であるジェラルドの息子テリー、イワンの娘カリスらと共に冒険の旅に出かける。

 前作からのプレーヤーには言うまでもないが、本作から始めるならこの世界観やストーリーを気に入るかどうかが、本作を楽しめるかどうかの重要なポイントになるだろう。ゲーム中のイベントシーンは非常に多く、物語を重視した作りになっている。

ある日、主人公の親友であるテリーは、風の力を利用して飛ぶことのできる貴重な道具グライダーウィングを許可なく使ってしまう。しかし、グライダーウィングはレベルの高いエナジスト(エナジーを操る力を持つ者)や風のエナジストでなければ使いこなすことはできない。飛んでいってしまったテリーを探すべく、前作の主人公であるロビン、その息子のムート、テリーの父親ジェラルド、イワンの娘カリスの4人はテリー救出に向かう。幾多の困難を乗り越え、テリーの救出に成功する一行。だが、グライダーウィングは壊れていた。グライダーウィングの修理に必要なロック鳥の羽を入手すべく、ムート、テリー、カリスの3人は冒険の旅に出る
大人になったロビンやジェラルドも登場。シリーズファンにはたまらないシチュエーションだ「うれしい」、「いかり」、「かなしい」、「たのしい」からなる喜怒哀楽コマンドも本作の特徴の1つ。選択したコマンドによって、リアクションが変化する
本作より前の物語を絵本のように紹介してくれるアイテムが存在する。本作から始めるプレーヤーには嬉しい配慮だ

 低年齢でもプレイしやすいよう、ルビを表示する機能を搭載。表示のON/OFFは設定可能で、OFFにした場合、用語をタッチするか、L/Rボタンで選択することでルビを表示できる。また、赤色の文字をタッチするか、L/Rボタンで選択すれば、上画面に用語説明が表示される。ゲーム内用語を忘れてしまっても安心な機能だ。用語は自動的に「ようごじてん」に登録されるため、会話中にチェックできなくてもメニューから「ようごじてん」を選択すればいつでも閲覧することができる。なお、1度でも閲覧した用語は茶色の文字に変化するので、チェックした用語かどうかすぐにわかる。

用語をタッチするか、L/Rボタンで選択することで用語の説明が上画面に表示される。1度でも出てきた用語は「ようごじてん」に登録され、いつでも閲覧できる。用語はあいうえお順に並んでいるので検索も簡単


■ どこか懐かしさを感じさせる馴染み深いゲームシステム

 本作は、フィールドを歩き、街で情報を集め、謎を解きながらダンジョンを探索するというRPGによるある馴染み深い作りになっている。戦闘は、誰もが1度はプレイしたことがあるであろうコマンド選択式で、じっくりと考えながらプレイできる。特徴的なのが、錬金術に基づく万物を構成する源であるエナジーとエレメンタルが実体化したジンのシステムだ。

■ ワールドマップを歩いて目的地を目指す

 目的地へはワールドマップを徒歩で移動する。歩いているとモンスターに遭遇し戦闘に突入することがある。移動速度はあまり早くなく、遠距離への移動は時間がかかってしまう。ワープなど目的地へ一気に飛べる手段があればと思うことが多かった。物語が進むと船で航海できるようにもなる。

 街やダンジョンにたどり着くと、フィールドマップへと遷移する。街には多くの人が生活しており、話しかけて情報を得たり、武器屋などの施設でアイテムを売買することが可能。貴重なアイテムは売ってしまっても掘り出し物として買いなおせるので安心だ。ゲームを進めると特殊な素材から装備品を作れる施設なども登場する。ダンジョンについては次項で詳しく紹介する。

基本となる移動手段は徒歩。迷わないように上画面を確認しながら進みたい。地形によってエンカウント率が異なるフィールドやダンジョンでは敵とエンカウントする可能性があるので常に一定以上のHPを保っておきたいゲームを進めると船が手に入り、行動範囲が一気に広がる。航海中も敵と遭遇する可能性があるので気が抜けない

■ エナジーを駆使し、多くの仕掛けが待ち構えるダンジョンを突破

 ダンジョンでは多くの仕掛け、謎がプレーヤーを待ち構えている。謎解きに欠かせないのがエナジー。ツタを伸ばせるグロウ、物体を水平に動かせるムーブ、火を消したり、水を溜められるアクアなど様々なエナジーが存在する。これらエナジーを駆使して仕掛けや謎を解いていくのだ。ゲームが進むと使えるエナジーが増える分、仕掛けの種類も増えていく。複雑な謎解きは少ないので、使えるエナジーをしっかり確認すれば詰まることはないだろう。

 ダンジョンは無駄に広いだけで覚えるのが大変といったものではなく、、エンカウントの発生頻度も低めで、謎解きを主眼に作られていると感じた。行きは大変であっても楽に帰れたりと面倒さも排除されている。

物体を水平に動かせるムーブ。ムーブを使わなくても物体を押すことはできるが、引くことはできない。物体を引きたい場合や少し離れた場所の物体を動かしたい場合に有効竜巻を発生させるスピン。突風を放つことで軽いものを飛ばして浮かせることができる。浮かせた物体は足場として利用できるゲームを進めると使えるようになるプレビジョン。隠された真実を見つけて映像化してくれるエナジーで、どんなエナジーを使えば解ける仕掛けかわからない場合に便利

■ キャラクターに様々な能力を付加してくれるジン

 本シリーズに欠かせないジン。地、水、火、風の4タイプが存在し、武器や防具を装備するようにキャラクターにセットする。セットする組み合わせによって、ステータス、クラス、エナジーが変化する。

 基本的にセットするジンの数が増えるとキャラクターのステータスは向上する。ただし、ジンはメンバー全員に公平に分配されるというルールがあるため、所持しているジンを1人に集中してセットすることはできない。例えば、パーティーが3人いて、ジンを10体所持している場合、1人が4体、残り2人が3体となるわけだ。どのタイプを組み合わせるかでクラスやエナジーが変化するため、その組み合わせが重要になる。特にエナジーの変化には気をつけたい。新たなジンを獲得したことで戦闘に欠かせない回復タイプのエナジーがなくなってしまうこともあるのだ。特に序盤はジンの所持数が少ないため、どう組み合わせても問題を解決できない場合がある。そんなときには、スタンバイという選択肢を取ろう。スタンバイさせるとジンが外れてしまいパラメーターが下がってしまうが、クラスチェンジによって使えなくなっていたエナジーは使えるようになる。

 ジンの所持数が増えれば増えるほど組み合わせのパターンは増えていくため、どう組み合わせるか考えるのが楽しい。だが、中には組み合わせをどすうればいいか悩んでしまう人もいることだろう。そんな場合には、タイプを固定してセットしてやればいいだろう。例えば、地のエナジストであるムートには地のジンで固めてしまうなどだ。これでもかなり強く、ゲームをクリアするのに十分な能力を発揮してくれる。

ジンをセットするとステータスが変化。特定の条件を満たせばクラスが変化することも。受け渡し後のステータス、クラス、エナジーの変化が事前にわかるので、実行する前によく確認しておきたい
街やダンジョンなど様々な場所にジンは存在する。なるべく多く仲間にして、キャラクターを強化したい。中には戦闘に勝利しないと仲間になってくれないジンもいる。それほど強くないので落ち着いて撃破しようジンの数が増えれば、組み合わせのパターンも増える。組み合わせでどんな変化が起きるのか探すのが楽しい

■ 武器攻撃、エナジー、ジン、召喚を駆使して戦う戦闘

 戦闘開始時に使えるコマンドは、「たたかう」、「いれかえ」、「ステータス」、「にげる」の4つ。「たたかう」は敵と戦うコマンドで、これを選択すると各キャラクターの行動コマンドを選択することになる。「いれかえ」はパーティーメンバーの入れ替えに、「ステータス」はキャラクターのステータス確認に、「にげる」は戦闘から離脱したい場合に使う。なお、「にげる」は失敗することがあり、失敗すると1ターンの間、敵の攻撃を一方的に受けてしまう。

 キャラクターの行動コマンドには、「こうげき」、「エナジー」、「ジン」、「しょうかん」、「アイテム」、「ぼうぎょ」がある。

 「こうげき」は武器による攻撃コマンド。最も多く使用することになるコマンドといえるだろう。本作には武器に熟練度が設定されており、熟練度を上げると、「かいしんのいちげき」や「かいてんぎり」といった必殺技が使用できるようになる。必殺技は自動で発動するもので、任意に発動することはできない。毎回同じ攻撃が繰り返されるのではなく、必殺技として様々な攻撃が繰り出されることがいいアクセントになっている。熟練度は戦闘を重ねることで増えていく。熟練度の上昇は早いため、気にしなくても戦闘していれば次々に必殺技を習得してくれる。

武器には熟練度が設定されている。戦闘を重ねることで熟練度がアップし、必殺技を習得できる必殺技は、単体に強力なダメージを与えるものだけでなく、範囲ダメージを与えるものなど武器により様々。その演出も多彩だ

 「エナジー」はベーシックなRPGの魔法にあたるもの。前述の通り、ジンの組み合わせによって使えるものが異なり、使用することでEPを消費する。攻撃、回復、補助とその性能は様々なので状況に合わせて使っていきたい。本作ではワールドマップやフィールドマップを歩くことでEPが回復するため、長期間のダンジョン探索も安心。「たたかう」をメインとした戦闘をするなら、EP切れの心配はないと言えるほどだ。

エナジーの効果は様々。中でも重要になるのが回復系のエナジーだろう。最低でも1人は味方全体を回復できるエナジーを使えるメンバーをパーティーに入れておきたい

 「ジン」はセットしているジンを解き放ってジンの能力を使ったり、スタンバイ状態のジンをセットするコマンド。エナジーと同様に、ジンの能力も攻撃、回復、補助と様々。ただ、ジンの能力は発動してもエナジーと違ってEPを消費することはないが、ジンを使うとそのジンがスタンバイ状態となってしまう。前述の通り、ジンのセット状況に応じて、キャラクターのパラメーターや使用できるエナジーが変化するので、むやみやたらと使うのは危険だ。1ターン消費してしまうが、スタンバイ状態となったジンをセットしなおすこともできる。また、スタンバイ状態のジンは次に紹介する「しょうかん」に関わってくる。

EPの消費はないが、ジンのセットが外れてしまうというリスクのあるジン能力の発動。エナジー同様、攻撃だけでなく、回復や補助能力など、その能力は様々

 「しょうかん」はスタンバイ状態のジンの力を用いて強力な精霊を呼び出すコマンド。呼び出せる精霊はスタンバイ状態のジンの種類や数により決まる。特定の条件を満たすことで呼び出せるようになる精霊も存在する。演出も派手で、その威力もなかなかのものだ。召喚後、ジンはリカバリー状態となり、1ターン経過ごとにリカバリー状態が解け、キャラクターに自動でセットされる。複数のジンがリカバリー状態の場合は、1ターンごとに1体ずつセットされる。基本的にはジンを使い、召喚する流れになるのだが、事前にスタンバイさせておけば、戦闘開始時に召喚することもできる。

上画面にはスタンバイ状態のジンが表示される。スタンバイ状態のジンの種類や数により召喚できる精霊が決まる
複数のジンや異なるタイプのジンを要する召喚は演出が派手で威力も高い

 「アイテム」は消費アイテムを使うコマンドで、HPやEPの回復などに用いる。「ぼうぎょ」は被ダメージを下げるコマンド。HPが低い場合だけでなく、ジンのリカバリー状態解除を待つ場合にも有効だ。

 十分にレベルを上げておけば、「こうげき」と回復エナジーだけでも十分に戦える程度のバランスで、ジンやしょうかんを使うことで戦闘はより有利に、楽しく進められるようにデザインされている。少し残念に感じたのはオートバトル機能がないこと。雑魚戦やレベル上げ向けに、たたかうをただ繰り返してくれるだけの機能でいいので欲しかった。



■ 最後に

 長い年月をかけ、プラットフォームを越えてリリースされた本作。“正統派RPG”というのが最も相応しい表現といえるのではないだろうか。RPG初心者でも安心して遊べる戦闘や謎解きの難易度、ルビ表示機能など、誰でも遊べるようにデザインされている。筆者のクリアまでの時間は22時間ほど。かなり寄り道をしてのプレイタイムなので、進行重視でプレイした場合はもっと短いと思われる。クリア後の要素もあるが、あまり多くはなさそうだ。

 特徴的なジンのシステムは、組み合わせを考えたい人には楽しいし、悩みたくない人には同タイプで揃えることでもゲームが進められるようになっている点は嬉しいところ。見つけるのは簡単ではないが、組み合わせによるクラス数は多く、クラスによってパーティー内での役割が変わり、使用できるエナジーも大きく変化するため、クラスを探すことも本作の楽しみの一つといえるだろう。

 前作から30年後の物語が紡がれる本作。続きが気になっている方はプレイしてみてはいかがだろうか。



(C)2010 Nintendo/CAMELOT

(2010年11月18日)

[Reported by 木原卓 ]