★オンラインゲームレビュー★

2つの勢力が激しくぶつかり合うMMORPG
いつかはアストラルシップでより広い世界へ!

「ALLODS ONLINE」

  • ジャンル:MMORPG
  • 開発元:MAIL.RU
  • 運営元:ゲームオン
  • 対応OS:Windows XP/Vista/7
  • 利用要金:無料(アイテム課金)
  • 発売日:11月10日より正式サービス中

 ゲームオンの「ALLODS ONLINE(アロッズ オンライン)」は11月10日に基本プレイ無料アイテム課金制の正式サービスを開始した。本作の開発は、ロシアのデベロッパーMAIL.RUで、東アジアや欧米とも違う独特な雰囲気を持っている。「ALLODS ONLINE」はリーグとエンパイアという2つの種族が争うMMORPGで、プレーヤーはどちらかに所属し、敵対勢力と戦っていくことになる。

 今回は、エンパイア側を中心にプレイしてみた。厳格な支配体制の中、威圧的な都市で不気味な敵と戦い続け、さらに侵略してくるリーグ側とも抗争を繰り広げるシナリオは面白い。一方でシステム的にはまだまだ煮詰められるのではないか、という部分も感じた。多少荒削りながらも、独得のテイストが楽しめる作品である。


■ オープニングからプレーヤーを魅了する世界観が魅力。2つの勢力の争いの先には?

羽が生え、目が光っているエルフ。癖の強いキャラクターデザインだ
エンパイア側のオープニングでは巨大なアストラルデーモンと対峙する
リーグ側は1つの島そのものが消滅する危機に襲われる

 「ALLODS ONLINE」は独得の世界観が魅力のMMORPGだ。この世界ではリーグとエンパイアという2つの勢力が戦いを繰り広げており、プレーヤーもこの戦いに巻き込まれていく。勢力によって所属する種族は異なっており、標準的な人間に見える種族も「カニア」と「ザータガニアン」と名前が異なる。

 リーグ側には目が光っていて羽の生えている「エルフ」や、毛むくじゃらのぬいぐるみのような姿をしていて常に3人で行動する「ギバーリング」といった種族がいる。エンパイア側は厳つい「オーク」や1度死んで復活した際に、その腐敗した肉体を機械によっておぎなったという、ロボットのような、ゾンビのような「アリソン」という種族がいる。雰囲気的にはリーグ側はどちらかといえば正統派ファンタジー風で、エンパイア側は悪役っぽいダークな感じだ。

 筆者は以前先行体験会でエンパイア側をプレイし、そのダークな雰囲気に魅了された。このため、今回もエンパイア側でプレイしてみた。エンパイア側はオープニングから非常に派手だ。「ALLODS ONLINE」最大の特徴である宇宙空間を進む船「アストラルシップ」からスタートし、リーグ側の襲撃のまっただ中に放り込まれる。しかもアストラルに住む怪物、アストラルデーモンが介入してきて、リーグ側の船もろとも破壊されてしまうのだ。

 絶体絶命の危機、ふと気がつくとプレーヤーは暗い地下室にいる。どうやらプレーヤーキャラクターは「転送装置」によって転送され、一命を取り留めたようだ。エンパイアの科学者はこれまで60名以上の生き物が転送に失敗したのに何でプレーヤーは無事だったのかをいぶかしみ、「実験」のため様々な任務をプレーヤーに課してくる。エンパイア側はこのような感じで、「命令」でクエストを受けることが多い。

 この後、エンパイア側のキャラクターは「ネゼブグラッド」という巨大な都市で冒険を繰り広げることになる。キャラクターに比べ建物のスケールはオーバースケール気味で、それが威圧感をもたらす。街の中心にある「インペリアルスクウエア」は見上げきれないほどに大きい。衛生状態は悪く巨大なナメクジなどがいる。ならず者が闊歩してたり、敵対勢力が一角を占領していたりと、治安も悪い。ダークで危険な街をプレーヤーは走り回りクエストをこなしていく。

 リーグ側のオープニングもプレイしてみた。こちらも「戦い」から幕を開ける。グレートメイジによる演説を皆で聞いていたプレーヤーの前に突然暗殺者が現われ、周りの聴衆を倒してしまう。同時にアストラルデーモンの大軍が襲いかかってくる。プレーヤーのいる場所はアストラルに浮かぶ島の1つだったが、デーモンの襲来により放棄せざるを得なくなってしまう。

 リーグ側のオープニングもエンパイア側に劣らず派手だ。巨大なマンティコアや、島を破滅に追い込んだ裏切り者との戦いなど、1レベルのキャラクターでは体験できないような大冒険が体験できる。そしてエバーミート島という緑豊かな島へと逃れる。リーグ側の冒険はこの島からスタートするのだ。リーグ側は一見正統派ファンタジーの雰囲気の中に独得のSF要素が盛りこまれているのが魅力だ。

 「ALLODS ONLINE」はファンタジー的な魅力と、“SF的な魅力”も注目して欲しい。アストラルに浮かぶ“島”という設定の冒険フィールド、プレーヤー達はいつかはアストラルを進むことができる「アストラルシップ」にのりこみ広大な世界へ旅立っていく。また、リーグ、エンパイアのクエストはそれぞれの世界観を活かしていて楽しい。エンパイアにとってリーグのエルフは憎むべき敵なのだが、ピンナップ写真をこっそり見る軍人がいたり、捕まえたエルフが人気の踊り子になっていたりする。クエストを重ねることで深まっていく世界もたっぷり楽しみたいところだ。


左がギバーリング、中央が人間、右がオーク。それぞれ独特の世界観を感じさせる
エンパイア側のオープニングでは、アストラルシップの中で、リーグ側の襲撃にあう。しかもアストラルデーモンが襲いかかってくる
エンパイアの序盤は巨大な都市の中でクエストに挑戦していく
リーグ側は集会が一転多くの者が倒される。、裏切り者がアストラルデーモンを呼び込み、島が崩壊していく。プレーヤーは仲間を脱出させるためしんがりを務める
リーグの冒険フィールドは自然が豊かで、ファンタジー色が強い


■ 多彩なタレントを持つキャラクター。パーティー推奨のゲームバランスだが、募集システムは未実装

スカウトは矢を準備して攻撃する。遠距離からの攻撃が得意だ
スカウトのタレントツリー。どのタレントを上げていくか
エンパイア側のマップ。クエストのマークが数多く表示されている

 「ALLODS ONLINE」では様々な職業がある。戦士系のウォーリア、ペットを使うウォーデン、強力な魔法を使うメイジ、従者を呼び出すサマナー……種族ごとに職業名が変わったり、ペットや従者に違いがある。さらに習得するタレントによって自分なりのキャラクター育成を目指していける。

 今回筆者はスカウトでプレイしてみた。矢と片手武器を使うアタッカーキャラクターで遠距離からの攻撃が得意だ。面白いのは炎の矢を使う「インセンディアリーアロー」等のタレント(スキル)を使う際、“準備”が必要なこと。あらかじめ矢をエンチャントしてストックしておかなくてはならない。タレントレベルを上げることで一度にストックできる数が増え、効果も強くなる。敵の移動速度を遅くしたり、ノックダウンさせたり弱体化効果を与える攻撃も多い。

 遠距離から敵を狙撃し、近寄るまでに様々な矢を当て、近付いてきたら近距離攻撃で仕留めるというプレイスタイルだった。「ALLODS ONLINE」の序盤では敵を遠距離から攻撃してもリンクしない場合が多く、引っ張って狩るという方法はやりやすかった。反面防御力が低めなため、近寄られると戦いがきついと感じる場合も多かった。

 次にクエスト部分を語っていこう。ゲームはクエストが中心となる。NPCに話しかけ、クエストを受けそれをこなして報酬を得てレベルアップを目指していく。1カ所で受けられるクエストは5個以上でそこから新しい場所でさらにクエストを受けるという感じでプレーヤーは常に10以上のクエストを抱えているような感じになる。

 気になった点としては、「ミニマップがないこと」が不便に感じた。クエストの目的の場所を探すにはマップを開くしかなく、そのマップも拡大縮小できないので、ちょっと使いにくい。また、「ALLODS ONLINE」は同レベルの敵でも強めで、ギリギリの戦いになる。1レベル低い敵を倒すのが丁度いいのだが、経験値バランス的には「クエストをこなす」というのが中心なため、目標のモンスターを常に提示されている感じだ。クエストの敵が強すぎて、何度もギリギリで倒されるという状況も多かった。

 「ALLODS ONLINE」のクエストとキャラクター強さのバランスも評価の難しい部分がある。クエストは対象レベルが同じでも難易度がまちまちで、きついと感じた場合は他の場所で他のクエストをクリアし、レベルを上げてから挑戦した方がうまくいくことも多い。クエストは2レベル上まで受けられるのだが、自分より高いレベルのクエストでも簡単なものがあったりする。1つのクエストクリアにこだわりすぎず場所を移動してクエストをこなすのもいいと感じた。

 きついクエストもほとんどが、2~3人でパーティーを組めば楽々こなせるのだが、非常にパーティーが組みにくかった。原因として、この膨大なクエストが逆にネックになり、パーティーを組みにくい状況にしていると感じた。プレーヤーごとに求める目的が一緒かどうかもわからないため、近くにプレーヤーがいても声をかけにくい。

 この状況の中、現在パーティー募集はゾーンチャットで叫ぶ事で行なっている。クエストの名前で募集を集めるのが一般的だが、これでは対象レベルがいくつなのか、自分も手伝えるのか、同じクエストを受けていなくては把握できない。このためか、筆者自身何度かパーティー募集をしてみても応えてくれる人は少なかった。この状況を改善するためには、自分が挑戦しているクエストを提示し、そこに合わせて気軽に参加できるような高度なパーティー募集システムが必要だと感じた。

 今回に関しては、募集に応えてくれるプレーヤーが少なくて途方に暮れていたところ、自分よりも10以上もレベルの高いプレーヤーがヘルプに来てくれてクエストを進めることができた。彼等もまた募集に人が応えてくれず、同じように上級者に助けられたという。彼等に助けてもらってクエストは楽々こなせ、とてもありがたかったが、クエストでは上級者が活躍するのみで、達成感は薄くなってしまった点も否めない。パーティー前提の難易度と、ゲームシステムのフォローがかみ合っていないのではないかと感じた。

 「ALLODS ONLINE」はボリュームはたっぷりで、やりごたえがある反面、最新のMMORPGに比べシステムにまだまだ荒削りな部分がある。これからどう進化していくかにも期待したいところだ。


地下から始まるエンパイアのクエスト。ネゼブグラッドという大きな都市での冒険となる
エンパイア側は街の犯罪者と闘うクエストが多い。ゴブリンは工場の作業員など労働者が多いが、街でのならず者として暮らしている者も
中央と右は街の中心のインペリアルタワー。ここでは多くのクエストを受けられる他、生産スキルの習得、職業向け装備の購入ができる
パーティー前提の敵も多い。パーティープレイができたが、呼びかけに応えてくれる人は少なく、先輩プレーヤーに助けてもらった


■ いつかは船に乗りアストラルへ! 課金アイテムはコアプレーヤーにこそ必要

港で見ることができるアストラルシップ。購入はもちろん、乗り込み闘うためにも高レベルの実力が必要となりそうだ
アイテムショップ画面。まだアイテムの数は少ない感じだ。能力を24時間上げてくれる「インセンス」は必須ともいえるアイテムだ

 11月10日の正式サービス開始時に「アストラルシップ」が実装された。この船はアストラルを渡り、他の場所へ向かうことができる。このアストラルシップこそが、「ALLODS ONLINE」の最大の特徴だ。「ALLODS ONLINE」のゲーム内フィールドはアストラルの海に浮かぶ“島”でありいままで冒険してきた場所以外にも沢山の島が浮かんでいる。プレーヤー達は新しい大地を求めてこの海にこぎ出していくのだ。

 アストラルシップはキャラクターがレベル35になり一定のクエストをクリアすることで入手できる。船を手に入れるには膨大な資産が必要で、最初はギルドなどの協力がなければ入手は難しいようだ。アストラルは常に変化するという。プレーヤーは島を見つけたり、アストラルに棲息するモンスター「アストラルデーモン」と戦うことでレアアイテムや、船のパーツなどを見つけていく。

 アストラルシップは操縦者だけでなく、砲手や、コース設定をする航海士など何人かの人手がいなくてはスムースに運行できない。アストラルではアストラルデーモンだけでなく、敵対勢力の船との遭遇の可能性もある。宝を求めて仲間と旅したり、冒険から帰ってきた敵の船を狙って儲けを奪うなどアストラルシップを手にしてからはゲーム性は変わってくるという。この船を目標にがんばっていきたいところだ。

 課金アイテムは高レベルプレーヤーにとって必要性が高い印象だ。キャラクターのバッグが拡張できる「ドラゴンハイドバッグパック」、銀行が拡張できる「セーフティボックス」、ステータスをリセットできる「生命の水」などの定番の便利アイテムは本作でもラインナップされている。そして、デスペナルティーにより装備が呪われてしまった場合、これを解除する「ホーリーチャーム」、装備の性能をアップさせるルーンに必要な「クリスタルチップ」といったアイテムも販売している。

 また、騎乗ペットはクエストでもらえるものの制限時間があり、これを長時間使用する「エンチャントサドル」や、成長させられる「マウント食料の袋」は課金アイテムだ。この他、ほぼ必須と思えるアイテムが「インセンス」という総合的な能力をアップさせてくれるアイテム。ゲーム序盤のクエストやイベントで配布されたため、筆者はまだこれを使っているが、このアイテムがないとかなりキャラクターの力はダウンする。ソロ傾向が強い本作においては、このアイテムは力強い味方となってくれる。ストックが切れたらすぐ購入したいアイテムだ。

 「ALLODS ONLINE」は初心者を脱した当たりからPvPの要素が強くなる。パーティーで敵対勢力を狩るプレーヤーに対抗するためにもギルドに入って繋がりを濃くするといったことも必要になっていくと感じた。また何よりもアストラルシップに乗りたい。仲間と共に、宇宙の深淵に向かってこぎ出したい。「ALLODS ONLINE」の真の魅力を知るためにも、まだまだプレイしていきたいと思う。


ネゼブグラッドは街の中、そして周辺でも様々な表情を見せてくれる
左は死ぬと一定時間送られる煉獄。中央はある場所から逃れてきたエルフだ
高レベルキャラクターに手伝ってもらい、一気にクリアしたクエスト。インスタントダンジョンになっていて、パーティーのみが入れる

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(2010年 11月 19日)

[Reported by 勝田哲也 ]