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PSPゲームレビュー

考えさせられるテーマよりも
配慮の行き届いたシステムに注目

「ナルキッソス〜もしも明日があるなら〜Portable」

  • ジャンル:オムニバスノベル
  • 発売元:角川書店×HOBIBOX
  • 開発元:有限会社レジスタ
  • 価格:5,040円(通常版)
       6,090円(DXパック)
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(6月24日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:B(12歳対象)


 「ナルキッソス〜もしも明日があるなら〜Portable」は、ホスピスを舞台にしたオムニバスノベルだ。原作の「ナルキッソス」は、同人サークル「ステージなな」が作った全年齢向ビジュアルノベルソフトで、第1作目はたくさんの人に見てもらいたいということから、全編無料公開され、全世界で100万以上のダウンロードを記録している。今回発売された「ナルキッソス〜もしも明日があるなら〜Portable」は、いままでに頒布された「ナルキッソス」、「ナルキッソス 2nd」、「ナルキッソス3 Die Dritte Welt」だけでなく、新たにシリーズ原点とも言える最終章や、エピローグを収録した“「ナルキッソス」完結作”になっている。

【ストーリー】

 7Fという場所……

……とある保守派系病院。
 小さなエレベーターで向かう最上階。
 高い天井、白い壁、無機質な場所。

 末期ケア病棟……いわゆる"ホスピス"という場所がこの物語の舞台である。


【登場キャラクター】

 何本ものエピソードが収録されており、エピソード別に主要なキャラクターが登場。一部のエピソードを除き、同じ場所を舞台としているため、複数のエピソードに登場するキャラクターも存在する。選択可能なエピソード順に読み進めていれば、読み手側としてスムーズに受け入れられるだろう。

● 佐倉瀬津美
  CV:江上リノ

 第1章のヒロイン。見た目は小中学生のようにも見える22歳。6年前の7Fを舞台にした第2章にも登場。幼い頃から入退院を繰り返すうちに、望みや憧れを持つことを諦め、心を閉ざしてしまった。無口で滅多に感情を出さない。ナルキッソスや地理、自動車などに詳しい。


● 篠原姫子
  CV:柳瀬なつみ

 第2章のヒロイン。明るくカラッとした性格で、根はとても真面目で優しい。自分で修理してしまうほど車が好きな23歳。大学生になる妹の千尋は、ボランティア活動で病院のヘルパーをしている。


● 日下陽子
  CV:友永朱音

 最終章のヒロイン。14歳。病気のせいで少し内気なところもあるが、本当は明るい性格。ただ、すぐに焦ってしまいがち。趣味はテレビを見ることと、切手集め。



■ 1つのシナリオを読み終えると新たなシナリオが選択できるオムニバスノベル

 本作は、ホスピスを舞台にしたシナリオを複数収録したオムニバスノベルだ。シナリオは主に3章で構成され、章をクリアすることで、次の章へと進めるようになる。進めていくうちに、4つの外伝や複数のエピローグを選べるようになる。また、各シナリオはリンクしながらも独立したストーリーになっているため、すでに読み終えた章は、自由にプレイすることが可能だ。

 ノベルソフトなので、画面に表示される文章を自分のペースで読み進めていく。選択肢は一部のシナリオ(外伝「死神の花嫁」のみ)にしか存在しない。純粋に物語が堪能できるようになっている。

○ボタンで画面内に表示されるテキストを送って、物語を読み進めていく。オートモードを使用すれば、ボタンを押さずにテキストを送ることもできる 章をクリアすると、チャプターセレクト画面に新たなシナリオが追加され、選択可能になる。すべてのエピローグを読み終えると、表示を時系列順に並べ替えられるようになる



■ ノベルソフトとしてはパーフェクトに近いシステム設定

【ゲームシステム一覧】
メッセージ速度:自由設定
音量設定:自由設定(BGM/効果音/操作音/音声)
スキップ:あり(未読スキップ可能)
オート:あり
バックログ:あり(音声再生/ログロード)
セーブ数:99カ所
音楽鑑賞:あり
CG鑑賞:あり
ムービー鑑賞:あり

 基本的な操作は、画面内の文章を○ボタンで送っていき、新たな文章を表示させる。また、△ボタンでバックログの表示、Rボタンで入力中のみのスキップ、STARTボタンでスキップモードへの切り替え、SELECTボタンでオートモードへの切り替えを、それぞれ行う。快適に文章を読み進めるためのプレイ環境は整っていると言える。

 メッセージ設定だが、表示速度を自由に設定できるのはもちろん、音声付きメッセージの表示速度を音声の長さとシンクロさせられる。また、メッセージ送りについても、○ボタンで行うだけでなく、設定を変更すれば方向キーで行うこともできるため、左右どちらにも限定されない片手でのプレイができる。ノベルソフトとしては必須のオートモードも、文章を送るスピードを自由に設定できる状態で搭載されているので、極端な話、手を使わずに鑑賞することも可能だ。

 セーブは、通常のセーブとは別にクイックセーブが用意されている。電源を切ったり、リセットをしたりするまで有効なシステムで、通常のセーブよりも短時間で行える。普通にプレイしていても、新しいシーンに切り替わった際は自動的にクイックセーブされる。少し戻って読み返したいときなどに便利なシステムだ。ただ、セーブについては、ストーリー分岐するような選択肢もないし、シーンセレクトでやり直すこともできるし、PSP自体のレジューム機能などもあって、本作品に限っては使用する機会が少ない。とはいえ、環境が万全なのは、プレーヤー側にとって安心してプレイできる要素だろう。

 CG鑑賞や音楽鑑賞については、タイトルメニューから選べる「おまけ」から閲覧および鑑賞が可能だ。「おまけ」はプロローグを読み終えた時点で選択できるようになるが、CGや音楽はゲーム中に見たり聴いたりしたものでないと、このモードからは閲覧および鑑賞することはできない。ムービー鑑賞は、CGと同様にアルバムから鑑賞できる。

 システム面から見ると、プレイに支障のある要素はまったく見当たらない。ノベルソフトをプレイするうえでの配慮が各所に感じられ、最後までストレスなく文章を読み進められるだろう。

 死生観を扱った内容部分ばかりに注目が集まる本作だが、ゲームレビューとしては、このシステム部分を絶賛しておきたい。

環境設定画面からは、ボタン割り当てが表示されるヘルプも呼び出せる。説明書が不要なレベルだ。この画面には、全テキストのうち、どれだけ読み終えたかも表示される Lボタンを押すと表示されるショートカットメニュー。Lボタンと他のキーやボタンを組み合わせて使用することで、画面や機能を直接呼び出すことができる △ボタンで呼び出せるバックログ画面。音声付きメッセージは、カーソルを合わせて△ボタンを押せば音声が再生。カーソル位置で□ボタンを押せば、そのシーンをロードできる



■ 実験作からエンターテインメント性を持つ作品へ

 「ナルキッソス」は当初、絵や音を排除したほうが、読み手側に対して、よりイメージできるのではないかと、実験的な意味合いを持って公開された。ただ、そういった手法よりも、シナリオ内容のほうに注目が集まってしまったため、読み手側のイメージを膨らませることよりも、均一にイメージを伝える方向へ進んでいった。「ナルキッソス3 Die Dritte Welt」では、手法の実験はせず、内容部分を重視して複数のエピソードを用意する形になっている。

 そのような流れもあってか、「ナルキッソス〜もしも明日があるなら〜Portable」も、最終章やエピローグの追加など、内容部分を重視し、その部分が目立った形になっているが、それと同時に演出部分にも配慮がなされている。できるだけシンプルにしていたグラフィックは、背景のみだった画面から、描き込まれたゲーム画面へと一新。また、原作では数点しかなかったイベントCGも約100枚追加。音声の追加や、新たなオープニングテーマやエンディングテーマも追加されるなど、臨場感を持たせるような演出が行われている。制作者が考えていたシンプルな「ナルキッソス」は、当初とは方向性が違っているのかもしれないが、内容部分に注目された結果、エンターテインメント性を持つ「ナルキッソス〜もしも明日があるなら〜Portable」が完成形なのだろう。実際、原作も含めてプレイした側としては、「特に気にならなかった(スムーズに受け入れられた)」というのが正直な感想だ。

「ナルキッソス」「ナルキッソス 2nd」については、キャラクターデザインが「ナルキッソス3 Die Dritte Welt」に統一されつつ、各所にリメイクが施されている 全エピローグを見終わった後に選択できるクラシックモード。パソコン版の一部をプレイできる。読み手側がイメージを膨らませやすいよう、シンプルな作りになっている



■ ノベルソフトだからこそダウンロード版の配信に期待

 プレイしやすい環境作りに配慮されている作品だけに、唯一気になるのは、読み込みの多さだ。プレイ中に読み込みで待たされることはほとんどないが、頻繁に読み込みが発生することで、読み込み時の音がどうしても気になってしまう。小声で会話するキャラクターも多いので、プレイの際はヘッドフォンを用意した方がよさそうだ。また、ダウンロード版があれば解決される問題でもあるので、ダウンロード版の配信を期待したい。

 ホスピスを舞台にしたエピソードがほとんどなので、どのエピソードも、相手を残す側と相手に残される側について深く考えさせられる。読み終えた後、“後を引く”ものばかりだが、エピローグまで読み終えることで、少し重くなった気分を抜けさせてくれる印象だ。ちょっとした時間の合間ではなく、まとまった時間にじっくりと腰を落ち着けて、最後までプレイして欲しい。

(C)角川書店/HOBIBOX/ステージなな

(2010年8月16日)

[Reported by 梶原製作所 ]