★ブラウザゲームレビュー★
新要素を追加し、英雄をより強力な存在に!遊びやすさはそのまま、新種族やペット育成も可能に 「ドラゴンクルセイド2」 |
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ベクターはWebブラウザ用シミュレーションRPG「ドラゴンクルセイド2」の正式サービスを7月14日より開始した。「ドラゴンクルセイド2」は前作にあたる「ドラゴンクルセイド」からいくつもの点をパワーアップした作品で、開発は同じく中国Sun Groundが担当している。
「ドラゴンクルセイド2」でも前作同様、城の施設を充実させ、英雄を育成していくのが基本的な展開となるが、様々な追加要素があり、よりキャラクター育成が楽しくなっている。プレーヤーの種族が3種類から6種類になり、ペットの育成要素もできる。また、ギルド拠点を建設できるといった要素も盛り込まれている。今回はこれらの新要素を中心に紹介したい。
■ 前作の手軽さを継承しつつ、新要素を盛り込んだ正当進化
個性豊かな6つの種族。キャラクターイラストも魅力的だ |
「ドラゴンクルセイド2」の城画面。前作同様、シンプルでわかりやすいゲーム性だ。前作のプレーヤーはもちろん、初心者でもすんなりとゲームのルールを覚えていける |
「ドラゴンクルセイド」はオンラインシミュレーションの「Travian」タイプのゲームだが、部隊の指揮官となる「英雄」の存在を軸に濃厚なRPG要素をプラスし、自分の分身として、世界を探索しながら育てていくという方向性を打ち出した。中国のみならず日本でも高く評価され、現在も11のサーバーが稼働するという人気を誇っている。
「ドラゴンクルセイド2」はこの前作からいくつもの要素をプラスした、正当進化の作品となっている。ゲームの基本的な構成は、8角形の城画面、マス目状のマップ画面と、細かい書き込みはなされているものの、前作同様シンプルだ。他のブラウザゲームでは城画面を増やしたり、グラフィックスを大幅に強化する方向で差別化を計るタイトルが多いが、「ドラゴンクルセイド2」はほとんど変わっていない。まず、このシンプルさに好感を持った。
「ドラゴンクルセイド2」ではプレーヤーはスタンダードな能力を持つ「ヒューマン」、攻撃力と防御力は低めだがスピードの速い「エルフ」、スピードは遅いが防御力と生命力の強い「ドワーフ」、高い攻撃力と回復力を持ち、死者を蘇らせる「アンデッド」、魔法に対して防御力を持ち、2番目に足が速い「ダークエルフ」、魔法攻撃力と魔法防御力の高い「アルケミスト」の6種類の種族が登場する。
6つの種族はヒューマンなら槍兵やグリフォン、エルフならケンタウロスやペガサスといったように率いる兵も変わる。雇うこととなる英雄も同種族の者となる。英雄には各種族複数のイラストが用意されていて、アンデッドはどこか悪役チックで、ドワーフの女性は子供のような姿をしている。英雄の顔画像はプレーヤーが差し替えることもできるが、これらのイラストで種族を決めるのも良いかもしれない。
プレイの基本は前作とまったく同じだ。木材、石材、食糧、水晶の資源を集め、街に様々な施設を建てる。英雄を雇い、周囲の探索へ向かわせる。この2つの行動を繰り返すのが基本的なプレイとなる。最初から建設可能な建物の種類は非常に多いが、クエストで1つ1つ細かく指示をしてくれるので、プレーヤーはクエストをこなしながら無理なくゲームの遊び方を学んでいくことができる。
マップ上にはモンスターのいる森林や湿地、丘陵などがあり、さらに悪魔のいる「悪魔城」がある。これらに英雄を派遣し戦闘をしていくことで英雄は経験値を得て、成長していく。悪魔城は誰かが攻め入ると破壊されてしまい、一定時間攻め込めなくなってしまう。また、今作では「探索」というコマンドが加わり、探索することでアイテムを入手できるようになった。
他にもマップ上には占領することで資源が生産できる野外施設がある。「ドラゴンクルセイド2」ではこの野外生産地もレベルアップさせることができる。野外生産地は豊富に用意されており、一時期、サーバーでの新規ユーザーを制限していたためか、他プレーヤーとのぶつかり合いは少なく感じた。しかし、いくつかの資源地は「豊かな」という名前の付いた肥沃な資源地になっており、こちらの奪い合いは激しい。
また、マップ上には稼動しているときに英雄が向かうと資源をもらえる「水車」、「風車」といった施設がある。これらも他のプレーヤーが入ると一定時間機能しなくなるので、早い者勝ちの競争となる。筆者は前作の「ドラゴンクルセイド」をプレイしたときは、風車や悪魔城はいつも誰かに取られており、ほとんど恩恵にあずかれなかった。
しかし、今作では再出現時間が短縮されている様に感じた。筆者も悪魔城に攻め入ったり、風車、水車から資源を取ることができている。時には他のプレーヤーに先を越されることもあるが、序盤の段階で大量の資源が入手できるのは施設の充実にかなり役に立った。ゲームが進んでくると資源地の生産量も増えてくるので魅力は小さくなってくるが、ゲーム序盤にはとてもありがたい。
「ドラゴンクルセイド2」ではオープンβ開始から2日後に新サーバー「Taurus」が開設され、筆者がプレイしている第1サーバー「Aries」の新規ユーザーの登録は停止されていた。このためか筆者の回りはプレーヤーが少なかった。周りを見回すと密集したところも多く、状況は変わってくるようだが、前作をプレイしていた経験も活きて、すんなりプレイが楽しめた。前作のプレーヤーはもちろん、ブラウザゲーム初心者にもオススメしたいタイトルだ。
■ ペットを従え、様々なアイテムに身を固めて、より強く成長する英雄
英雄のステータス画面。レベル30になると種族専用スキルを習得できるようになった |
ペットは基本的なプラス能力は選択できるものの、どのペットが生まれるかはランダムだ |
「ドラゴンクルセイド2」でも前作同様、英雄の育成が面白い。RPG感覚で近くの丘や森林に狩りに行かせ、兵を与えてより遠いところに向かわせる。悪魔城では強敵に会うこともある。強敵を撃退することができれば装備品などを入手できることもある。英雄を育て、手に入れる装備で強化していくと、英雄が自分の分身に思えてくる。この英雄を育てる感触は、前作の楽しさをきちんと受け継いでいると感じた。
「ペット」や「乗り物」は前作から引き継ぐ要素だが、「ドラゴンクルセイド2」ではペットの成長要素が加わった。ペットは最初「卵」の形で購入する。この時、英雄のどのステータスをアップさせたいのかによって購入する卵は変わってくる。また、卵から生まれてくる可能性のあるペットは数種類いて、優秀なものからそうでないものまで孵化するまでわからない。ペットによっては複数のステータスをプラスする種類もある。
こうして生まれてきたペットは持ち主の経験値を20%付与して成長できる。レベルが上がると、ペットは「餌」を食べてプラス数値を増やすことが可能だ。餌はステータスに対応した6種類あるが、生来持っている特性を+12にしなくては他のステータスをプラスできない。餌の値段は序盤ではかなり高価だが、ペットを育て上げた英雄は、かなり強力な存在になりそうだ。
英雄の装備は、初心者クエストで手に入るが、能力値をプラスするレア装備は敵を倒したときのドロップ品や、クエストなどで獲得できる「宝箱」から入手できる。新要素の探索でも手に入るのだが、こちらは失敗するとモンスターに捕まってしまい「保釈金」が必要になる、英雄の戦闘の機会も減り、実用性としてもう少しという感じだ。
種族用の装備が入手できればさらにボーナスがつくが、まずは手に入ったアイテムを、というところで、ヒューマンの兜にアルケミストの鎧、ドワーフの小手、といった雑多な装備になるのも面白い。ゲームが進むと複数の英雄を使えるが、序盤は2人目、3人目まで装備が回らない、最初の英雄の「お古」を使っていくのも楽しく感じた。
「商店」ではプラス修正のない種族の基本装備が入手できる。ゲームが進み、資金に余裕が出てきたり、アイテムを使えるようなレベルになったのに適当なアイテムがない、という時に商店は便利な存在だ。課金アイテムの「ダイヤ」を使うことで、「限定品」としてプラスのついた装備や、強化に必要なアイテムが入手できるのも助かる。「市場」では他プレーヤーからの出品を見ることもできる。こういった要素を組み合わせてキャラクターを強化していくのだ。
ゲームを進めていくことで、より細かく英雄を育てることができるようになる。連れ歩く部下も同様で、鍛冶屋でユニットの防御力を上げ、要塞で防御力を上げることができる。今作の新要素としては、最高級のレベル7の兵士を2体消費して、1体のレベル8の兵士を作れるというギミックがある。レベル8の兵士は「シャドードラゴン」や「熾天使」といった強力な存在だ。もう使いこなしているユーザーも出ており、お気に入りの装備をつけた英雄が、最強の兵士を従えて進軍する、というイメージはとても魅力的だ。
もう1つ、英雄を使った手軽なPvP要素として「闘技場」システムがある。全ユーザーが雇用しているすべての英雄はランキングに自動登録されており、闘技場で上位の英雄に挑戦することで順位を上げ、「栄誉度」を得ることができる。闘技場のランキングは作られた初期の配置か、上位プレーヤーの2人目、3人目の英雄が自動配置されるのか、上位のランカーでもレベルが低いキャラクターがいて、彼らと戦えばランクを上げていくことができる。英雄同士を戦わせるPvPだが、勝てばランクアップ、負けても資源など失うことはないので手軽にできる。ただ、他のプレーヤーが自分を踏み台にのし上がっていく場面も多々あり、英雄を育てるモチベーションにも繋がっていくところは面白い。
■ 細かくゲームをフォローする課金アイテム。徐々にプレイの呼吸を覚えていけるバランス
本作のダイヤの使い道は多彩だ。税金の徴収や闘技場での挑戦を自動でやってくれる機能まで用意されている |
徐々に施設が充実してくる。強力な攻撃力を獲得できるが、反面より強いプレーヤーには「美味しい狩場」になってしまう危険性も |
7月14日から発売された有料ポイント「ダイヤ」は、様々な便利機能を使うことができる。ダイヤの値段は40個で500円、1個あたり12.5円になる。3,000円で購入するとダイヤ 240個に加え、他のプレーヤーにプレゼントできるダイヤの代替アイテム「ギフト券」が10枚、 集めることで装備を強化できる「宝石の欠片」が200個といったボーナスがつく。
「ドラゴンクルセイド2」は他のブラウザゲーム同様、1つ1つの行動に時間がかかる。ダイヤはこの時間を短縮できる。建物の時間短縮、英雄の即帰還、行軍の食料消費不要、英雄の経験値増加……などなど多彩な機能がある。同時建築数を1枠分、3日間増やすのにダイヤ3個、資源の増加に各資源ごとに7日間でダイヤ5個と、うまく組み合わせれば城のパワーアップに有効だ。また、戦争するときにもダイヤを使うことで一時的な戦力アップが図れたり、逆に戦争を無理矢理回避することもできる。
今回筆者は500円分、40個のダイヤを購入してみたのだが、有効に使うとかなり便利だ。建物の同時建設数を増やし、風車や水車で資源を得て建物を建てる。英雄が資金を持ってきた場合は、他のプレーヤーから資源を購入して建築に当てる。また、探索に失敗して英雄が捕まったときにもダイヤは有効だ。向かった先で他のプレーヤーに先を越されていた場合、英雄を瞬時に戻したりと、いろいろな使い方をした。1個12.5円という価格が手軽さを生むと感じた。コアプレーヤーは英雄を強化したり、もっと熱心に使っているとは思うが、プレーヤーのペースに合わせた使い方ができると思った。
「ドラゴンクルセイド2」は前作同様、他のプレーヤーから資源を奪い、自分の城を一層強くし、世界の覇者としての君臨を目指すところにゲームの究極的な目標がある。今回は「ギルド拠点」という要素もあり、今後はギルド対ギルドで城を奪い合い、大陸全土を巻き込むような大きな戦いが待っているようだ。しかし、この要素はハードルが高く、手に入れるためには大量のギルド資産が必要で、多くの人員と時間を投入する必要がある。
ギルド拠点の仕様に関しては、現在まだ明らかになっていないことが多い。運営に問い合わせてみたのだが、「ユーザー自身で色々調べていって欲しい」とのことだ。現在明らかになっている点は、「毎日維持費がかかる」、「倉庫があり、資源が管理できるほか、英雄を駐留できる」、「ギルド研究所でギルドスキルが研究でき、巻軸として生産できる」といった点だ。現在はまだ未実装だが、ギルド戦争のための施設も紹介されている。
今回筆者は、コアプレーヤー達のパワーには驚かされた。ほとんどのコアプレーヤーが「ドラゴンクルセイド」のプレーヤーなのだと思われるが、最強兵士を作り上げ、施設を効率よく作り、他の城を積極的に攻めている。筆者まだその段階にはたどり着いておらず、ようやく城を育てる楽しさがようやくわかってきて、1つ1つ施設を充実させているところだ。「攻められるのではないか」と怯えつつも、せっせと城を拡張している。
自分なりのペースでプレイできるが、それではコアプレーヤーには勝てない。コアプレーヤーは積極的に常に英雄に指示を出し、最も効率よく城を建造している。やはり「他のプレーヤーを攻撃できる」というところは魅力的だ。同じように育てて、どちらの腕が上なのか、最強の兵士と、攻城兵器を揃えて、他のプレーヤーと直接腕を競うことに夢中になるプレーヤーは多い。
筆者の場合は、周りの人も所属しているギルドに入れてもらい、現在のところ安穏な日々を過ごしている。続編だけあって、前作のプレーヤーも多いようだ。筆者はギルドにはいって経験者からこつを教えてもらったり、雑談からゲームの基礎を学んだりしている。「ドラゴンクルセイド2」は前作以上に防御側が有利なようで、城壁や矢塔等のレベルを上げておけばかなりの防御力を発する。筆者はまず防御を固めているところだ。
ギルド間での同盟や不可侵条約なども結ばれていて、プレーヤーの“繋がり”の面白さも感じている。しかしだからこそ、ルールがわからないプレーヤーには少し厳しく、個人ギルドや、プレイを止めた城は周りから積極的に攻められているようだ。そこそこ大きなギルドにはいって、本作のプレーヤー達の「ルール」を把握することも大事だと感じた。
「ドラゴンクルセイド2」はシンプルな基本ルールにより細かく英雄の強化要素を盛り込み、前作以上に育成の楽しいゲームだと感じた。足りないと感じたのは他のゲームに入っている「チャット機能」くらいだろうか。「ドラゴンクルセイド2」でのコミュニケーションは前作同様掲示板で、雑談や、ギルド間での相談などがちょっとしにくい。ギルドによってはIRC等外部ソフトを使っているが、公式ならば初心者が参考にしたりと活用の幅も大きい。今後実装してもらいたい機能だ。
もう1つは、これは本作のようなブラウザゲーム全般の問題なのだが、運営が提示する「1日5分で」というキャッチフレーズの通りにプレイをしていては、とても本作の醍醐味は味わえないところだろう。ゆるいプレーヤーはコアプレーヤーにとって「美味しい資源地のひとつ」でしかなく、ライトにプレーヤーはコアプレーヤー同士が繰り広げる激戦を眺めているだけだ。1日5分プレイでは、寝る間を惜しんでプレイし、ダイヤを豊富に使うユーザーの輪に入ることも難しい。
このギャップを今後どう言った要素で埋めていくか、他のゲームでもライトユーザーでも大規模戦争に貢献できるなど、様々な方法が試みられている。「ドラゴンクルセイド2」では「ギルド拠点」そして「ギルド戦争」の存在が、ユーザーのモチベーションに大きく影響していくことになるのではないだろうか。今後もブラウザゲームの進化に注目していきたいところだ。
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(2010年 7月 22日)