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★PCゲームレビュー★

鉄道会社運営シミュレーション最新作登場
バスやトラックも運営、ダイヤと路線が生む巨大都市

「A列車で行こう9」

  • ジャンル:都市開発鉄道シミュレーションゲーム
  • 開発元:アートディンク
  • 発売元:サイバーフロント
  • 価格:12,390円
  • 対応OS:Windows XP/Vista/7
  • 発売日:2010年2月11日
  • プレイ人数:1人

 株式会社サイバーフロントはWindows向け都市開発鉄道シミュレーションゲーム「A列車で行こう9」を2月11日に発売する。本作は「鉄道会社経営」をテーマとした長い伝統を持つシミュレーションゲーム。プレーヤーは鉄道会社のオーナーとなり、鉄道を基幹にした街作りを行なっていく。企画・開発はこれまでのシリーズ同様アートディンクだ。

 多くのファンを獲得している「A列車で行こう」シリーズもついに9作目。本作では蒸気機関車までもラインナップに含めたシリーズ最大の224種類の車両データを搭載。美しいグラフィックスで描き出された街に自由自在にレールを敷き、発展させる楽しさを体験できる作品に仕上がっている。



■ 日本ならではの風景に、日本の電車を走らせる楽しみ。「A列車」シリーズ最新作ついに登場

「A列車で行こう9」のオープニングムービー。何本もの路線とバスが交差している
11のシナリオが用意されており、様々なシチュエーションに挑戦できる

 「A列車で行こう9」は鉄道を中心とした街開発を目指す都市開発鉄道シミュレーションゲームだ。プレーヤーは鉄道会社の利益を上げ、資金10兆円を目標としていく。10兆円を生み出す、豊かで美しい都市と、効率の良い鉄道システムを作り出すのがユーザーの目的だ。

 メインとなるコンテンツは大都市を中心に小さな街が囲んでいる「大都市構想」、小さな街を広げていく「広域都市計画」など、11個のシナリオに挑戦するモードだ。大きな湖があったり、山がちだったりと様々な地形で、「電力供給を考える」、「リニアの駅を作る」などの課題に挑戦していく。プレーヤーはシナリオの土地を丹念に調べ、線路を増やし、街を発展させていくのだ。

 「A列車で行こう9」では蒸気機関車から都電まで224種類の鉄道が収録されている。駅と路線も大型ターミナルから立体交差、高架駅など様々なパーツが用意されていて、壮観なレール敷設ができる。乗客だけでなく、貨物列車の資材移動は都市全体の成長を支える基幹となっている。貨物列車でどう資材を提供していくかも街発展の大きな鍵となっているのだ。

 加えて、今作では“バス・トラックの運営”という要素も入っている。バスも近距離の通勤用ノンステップバスから長距離用バスといったいくつもの車種が収録されていて、街と街を繋いだり、駅から少し離れた人達を運んだりと鉄道をフォローする使い方ができる。トラックは手軽な資源の輸送手段として有効だ。山間地方を発展させる。「バスのある風景」ではバスとトラックの運用がゲームの要になる。

 もうひとつ「電力」という新要素が追加された。火力や原子力だけでなく、風力発電ができる風車の発電所や、太陽光発電ができるソーラーパネルなども用意されている。自然エネルギーを利用する発電所は供給力に幅があり、ソーラーパネルの場合は夜には供給量が下がるなど使い勝手が難しい部分がある。街が大きくなったとき、発電所をどう確保するかも問題になってくる。

 本作のメインはやはり「鉄道のある風景を作る」ことだ。どんな電車をどのくらいのペースで走らせるか、単線の鉄道を複線にし、さらに他のところと駅を繋いで大きな路線にしていく。増えた乗客をフォローするためにたくさんの車両を繋げたり、路線に電車を増やしたりする。ダイヤを組むことで中央の駅に列車を集中させたり、環状線に何本か列車を走らせたりと効率の良い列車運行を目指す。

 鉄道ファンの場合はダイヤを丁寧に作る楽しさがあるだろう。特急と快速と普通電車のバランス、待ち合わせなど詳細にダイヤを組むことも可能なのだ。コンビニやファミレスなど日本ならではの街並みに、日本の列車が走るゲームというのはそれほど多くはない。本作はその風景を自由自在に作れるのである。さらに本作では「フライトモード」を搭載しており、作り上げた街を飛行機で飛ぶように眺めることも可能なのだ。


蒸気機関車から新幹線、リニアモーターカーなど224種類を収録。どの電車を街で走らせるか考えるのも楽しい
線路の敷設は直感的にできる。駅も高架駅や地下鉄も用意されており、路線を作成する楽しさが充分に味わえる。オブジェクトの多くは日本風なのだが、ランドマークはロンドンのビッグベンなど外国のものも用意されている
鉄道施設の難しい山間の開発を行なっていく「バスのある風景」
こちらは「島の繁栄」。島を縦断する道路がきっかけで開発が加速する



■ 最初のシナリオ「大都市構想」では、基本的なルールが学べ、改良する楽しみも

大都市と周りの3つの街を発展させていく「大都市構想」
小さな街から大きく発展させていく「広域都市計画」

 今回、筆者は大きな街の周辺に3つの街がある「大都市構想」と小さな街を発展させていく「広域都市計画」を集中的にプレイしてみた。プレイして最初に直面した問題は「何をしていいかわからない」ということだ。ゲームの開始時にはある程度目標は設定されているが、それをどうしていいかわからない。それというのも、本作には「チュートリアル」がなく、いきなりゲームの中に放り出されるのである。

 このため、プレーヤーが最初に求められるのはマニュアルを熟読することである。「都市開発のヒント」を読んでから、マニュアルに従って子会社の経営状態の把握、列車やバスの運行状況、資材や電力の量などを調べていく。プレーヤーは見切り発車でゲームを進め、わからないこと、やりたいことを模索し、試して、機能を覚えてやり直していく。少しずつゲームのルールを体得していくゲーム性となっている。

 こういった初心者を突き放したようなゲームの作りに疑問を感じたため、アートディンクに問い合わせたところ、「シミュレーション性を重視した作品のため、こういったデザインになっている」という。チュートリアルやゲーム内でのガイドの少なさも、ユーザーを誘導するよりも、自分たちでよりよい方法を見つけて欲しいという意図だとのことだ。

 実際に、ゲームをプレイしていくと、様々なルールがわかってくる。街を発展させるためには“資材”が必要となる。資材は「資材工場」で生産するか、港から運び込んだり、線路や道路をマップ外に繋ぐことで外部から運び込むことができる。しかしこれらの資材は「資材置き場」に運び込まないと使用できないのだ。貨物列車を使えない場合、トラックが有用だ。街の発展に必要な資材を確保するために、資材置き場と資材工場を隣接して作り、トラックを目まぐるしく動かして運ぶのが有効だ。

 ダイヤに関しては、シリーズの「伝統」がある。プレーヤーがまず最初にやることは「列車のダイヤをいじり、深夜の運行を止めること」なのだ。深夜は乗客がいないため、運行しても赤字になってしまう。この作業はシリーズを通して最初にやる「お約束」になっている。デフォルトで深夜は進行しないようにしておけばいいのにとも思うが、「設定してほしい」というスタッフの意識もあるという。

 ダイヤに限らず、「最初に全体を見回して手直しをしていく」というのは、本作の大きなキーワードである。特に最初のシナリオである「大都市構想」のマップはどこに無駄があり、どう直していくかを考えるのが楽しいマップになっている。資材工場から資材置き場に運ぶトラックを大きくした方が収入が安定するし、電車は複線にすることで効率よく運用できる。

 最初から人口が多いマップのため、4〜5両の通勤電車で黒字に運営ができるし、近くの街に絞った注力ができる。また、港から貨物列車で都市に運ぶ建物の組み合わせなど、「施設をどう使うか」を提示してくれているのはありがたい。「A列車で行こう9」はプレイし始めはかなりハードルが高く感じるが、「大都市構想」をプレイすることで、ゲームに登場する要素をバランス良く再現し、どう手を入れていくのかが理解できるようになっている。

 「大都市構想」のマップで筆者がまだ手をつけていないのが、鉄道が開通していない観光中心の小さな街だ。この街の開発は最初は他の街との連携は考えず、バスで運営していくか、地下鉄を通してアプローチするのがいいようだ。「大都市構想」は最初のマップではあるが長い期間試行錯誤ができるマップであると感じた。

 「広域都市計画」のマップは最初は1両の列車が2つの駅の間で走るだけの小さな街だけだ。自分のセンスでたっぷり拡張できるマップである。今回は、線路を延長しつつ新たな駅を作り、3両の電車を走らせて運べる乗客を増やした。

 また、中央の大きな資源工場から複数のところで物資を運べるように操車場を工夫した。「A列車で行こう9」では資源を積みおろしする駅や配送所と資材置き場が一定の距離にあれば隣接していなくても機能する。このルールを活用することで1カ所の資材工場から複数の場所へ資材を運ぶことができた。スピードを重視してトラックを2台ぐるぐる回すように配置してみた。

 最初に進めた「広域都市計画」では自分の“将来的”な視点が足りないと感じた。「大都市構想」では大きな都市の真ん中にある駅はいくつもの路線が準備されていたが、今回の駅の1つは更地から作っていったため、拡張するときに窮屈なのだ。田舎町にふさわしい小さな駅の1つのホームだけの駅舎を選んでみたが、今後周囲の施設をつぶして思い切った拡張が必要になると感じた。せめてホームは2つ以上にしておくべきだった。将来を見据えた拡張計画の大事さを感じた。

 もうひとつ、今回プレイしてみて学んだことは「むやみに大きな設備を作ってはダメだ」ということだ。資材が足りない時、これからの発展も考え資材工場の大きなものを建てようと考えても、まずその資材を運ぶだけのスペースを準備しなくてはならないし、バランス良く配置しなくては消費しきれず回せなくなってしまう。焦らず小さくまとめていくのが段階的な都市開発の手法なのだと改めて痛感させられた。


「大都市構想」は本作の基本ルールを把握するのに適したマップだ。まずダイヤを設定し深夜の運行を止め、街を観察して特徴をつかむ。左は1番小規模な資材工場と資材置き場の配置
路線を複線にして交通量を増やす。電気街のような店舗が建ち並ぶ商業区画や、荷物を積みおろす港など、ゲームを理解していくことで街の機能が見えてくる
「広域都市計画」では広大な土地を開発できる楽しさがある。駅を設置することでほとんど何もなかった場所が街になっていく。資材の供給は隣町も使っている工場から運んでみた
鉄道が走っていないところにバスを走らせる。このマップの電力は太陽発電のため夜は極端に供給電力が落ちる。これをどうするかが課題だ



■ プレイ意欲を後押しする目標提示や、ゲームを進めるためのサポートが不足気味。より間口の広いゲームを目指して欲しい

株取引。目まぐるしく変化するので安いときに買えば簡単に大金が稼げる
「マップコンストラクション」。テンプレートを元に自分の好きな地形が作れる

 線路を引き、電車を走らせる。資材を活用し、地域を発展させる。何度もトライアンドエラーを繰り返すことで基本的なゲームプレイは見えてきた。しかしここで大きく筆者の前に立ちはだかったのが「黒字経営ができない」ということである。見回してもどこもかしこも赤字だらけ、黒字に持って行く方法すら見えない。実際、本作は袋小路に陥りやすいバランスだと感じた。

 例えば、「古都再生」というシナリオでは“電力不足が深刻”ということなので、専用の貨物列車と資材置き場のある路線を造り、今後のことも考え原子力発電所を作ったのだが、電力が過剰すぎて全く無駄になってしまった。電力が不足しているとすれば何を建てればいいのか、都市の現在の状況に合わせたリアルタイムの報告とアドバイスが欲しいと感じた。地域を見て、何が足りないか、何を求められているか、どうすれば黒字になるのか、それを提示してくれるシステムが欲しい。

 じっくり地域を見て、推論を組み立て、アプローチしていくという手順と、うまくいったときの喜びは大きいと思うが、「プレーヤー」という視点から見れば、自由度は保証されていても、失敗の理由が提示されないのはやはり不自然に感じる。経営を黒字化しようとすると、まさにこの「何をやって良いかわからない」という点がプレーヤーを圧迫するのだ。

 ゲームを進める上での最重要課題である「黒字経営」での大きな収入をもたらすのが「子会社経営」だが、こちらもやはり難しい。最初のマップ情報で「工業地域が必要」と言われたので正直に工場をつくるとものすごく赤字になったりする。手っ取り早く利益を出すのは商業地域が良く、土地の値上がりのバランスなども考える、というルールは見えてきたのだが、街のどのくらいの発展でどうすればいいのか、状況に合わせたアドバイス機能があればゲームは格段にプレイしやすくなると思う。

 この難しいバランスをフォローするため、「株取引」が救済策として用意されている。本作では株が短い時間で高低を繰り返すバランスになっており、株が安い時期に買い、高くなったら売ることで非常に手軽にお金を得ることができるのだ。10兆円のエンディングが見たければ株を売り買いするだけでも見ることができる。ゲームを進める上では助かるが、手軽すぎるためにリアリティーを大きくスポイルしてしまっているようにも感じられる。

 鉄道・交通機関を基幹に街作りを行なう、子会社を買って利益を出すというコンセプトは非常に魅力的だ。また現実とオーバーラップするのも楽しい。例えば、「古都再生」での“発電所建設のための貨物列車”が発電所建設完了と共に廃棄されるというシチュエーションはリアルで、高度成長期の1つのエピソードのようなロマンを感じさせる。「バスのある風景」もまた、昔はバスがやっとだったのに地下鉄も充実して……と昔を懐かしむようにプレイできたら楽しい。このように、風景と時代を想起しながらプレイできるポテンシャルを「A列車で行こう9」は持っている。

 ゲームはシナリオを進めるだけではない。「マップコンストラクション」で自由な地形生成が可能だ。今はもう廃線となってしまったが、急斜面を上っていく「碓氷峠の鉄道」など、難事業といわれた地形での鉄道の開通に挑戦するのも面白いし、自分が住んでいる地元と同じ地形を再現し、その地域を鉄道で活性化するといった楽しみ方もできる。本作のオープニングムービーは様々な地形やオブジェクトを配置してあり、「こんな街を作ってみたい」と思わせる魅力がある。

 チュートリアルがない、何をして良いかわからないという意見は「A列車で行こう」シリーズで繰り返しファンが指摘している問題点だ。DSで発売された「A列車で行こうDS」はチュートリアルがファンから高い評価を得ているところからも見ても、もっと間口の広げたゲームシステムへの要望は高い。今回、PCで発売することも意識してシミュレーション色を強くしたと言うことだが、初心者にはかなりハードルの高い作品になってしまっている。

 街の状況に合わせたアドバイス機能というのはプログラム的にもかなり難しいかもしれないが、技術集団のアートディンクならば成し遂げられるはずだ。多くの人がPCを持っている昨今、本作のポテンシャルを初心者でも引き出せるようなアップデートを望みたい。もっと多くの人が遊べるゲームに進化して欲しい。


トラックは開発に大活躍する。バスも長距離から近距離まで様々な種類が用意されているのがうれしい。中央は隣町より資材を持ってきて作った原子力発電所だ。右は地下鉄の車窓モード
「マップコンストラクション」では陸地と水の割合を決めて地形をランダムに作ることも可能だ
「混迷する交通都市」。鉄道の赤字を解消していくマップだ
「水面に映ゆる鉄道」。海の上を高架を巡らせるマップ

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(2010年 2月 10日)

[Reported by 勝田哲也 ]