Wiiゲームレビュー

誰もが気持ちよく大暴れできる
超定番タクティカルアクション

「戦国無双3」

  • ジャンル:タクティカルアクション
  • 発売元:株式会社コーエー
  • 価格:7,140円(通常版)
        27,300円(with Wii)
        8,715円(特製クラシックコントローラPRO セット)
        11,865円(TREASURE BOX)
  • プラットフォーム:Wii
  • 発売日:発売中(12月3日発売)
  • プレイ人数:1~2人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)

 「戦国無双」シリーズ久々のナンバリングタイトルということで、高い注目を集めていたWii「戦国無双3」が、ついに発売された。先日行なわれた発売イベントでプロデューサーの鯉沼久史氏から「プレイステーション 2からWiiに移り集大成とも言える。戦国全般を描くよう作りあげた。前作を踏襲しながらもさらに様々な要素を追加していきこの3作目のボリュームとなった」とコメントされたとおり、本作は「戦国無双 KATANA」のような“Wiiならでは”ではなく“無双らしさ”を重視した、シリーズ正統進化の系譜にある。色々と気になるところはあるが、まずはゲームの基本部分からチェックしていく。


【オープニングムービー】
無双武将がこれでもか! と暴れまわるオープニングムービー。毎度のことながら無双シリーズのムービーは本当に見栄えがする




■ 全コントローラーの操作に対応 ~個人的オススメはクラコンPRO~

  Wiiといえば、やはりWiiリモコンとヌンチャクによる操作系が思い浮かぶ。前述の「戦国無双 KATANA」はWiiリモコンとヌンチャクという操作系を重視した作品だったが、従来シリーズの延長線上にある本作は体感操作を必須としないため、クラシックコントローラまたはクラシックコントローラPRO(以後:クラコンPRO)でのプレイが1番しっくりくる。個人的には、同梱版も発売されているクラシックコントローラPROがオススメ。じっくり腰をすえてプレイするなら、ホールドに安定感があるクラコンPROの快適さが身(というか指先)に染みる。なお、便宜上記事中でのボタン表記もクラコンPROを基準とする。

 ゲームモードは、各武将の戦国ドラマを追っていくストーリーモード「無双演武」、好きなステージと武将を選んでプレイする「模擬演武」、オリジナル武将の作成や各モードで使える武将の追加など各種設定が行なえる「武家屋敷」、任天堂の名作アクションアドベンチャーをモチーフにした「村雨城」がそれぞれ用意されている。デフォルトで使える武将は10人だが、ストーリーモードなどをクリアすることで得られる“石高”を消費すれば、使える武将が増えていく。ちなみに、100万石を要する武将は全モードで使えるが、80万石の武将は模擬演武、村雨城でのみ使用可能。個人的には全武将に「無双演武」を用意して欲しかった気もするが、作り手側の労力を考えると、それはさすがに贅沢すぎる望みというべきか……。


コントローラーは自動認識。筆者個人としてはクラコンPROがオススメデフォルトで使用可能な武将は10人。それ以外は無双演武などをクリアして得られる石高を支払い、ひとりずつ獲得していく。100万石の武将は全モードで使用可能




■ 一騎当千の爽快感 ~ワラワラとうごめく雑兵を片っ端から蹴散らせ!~

 いまさら説明も不要かと思われるが、アクションの基本部分は“無双”シリーズそのまま。Lスティックで武将を操作し、Yボタンの通常攻撃、Xボタンのチャージ攻撃、Rボタンの特殊技、aボタンの無双奥義で、それぞれ敵を攻撃。Lボタンでガード、シフト、受身、ZRボタンで緊急回避、bボタンでジャンプ、ステップ、影技、十字ボタンでアイテム選択と使用、ZLボタンでマップ表示の切り替え、Rスティックでカメラ視点の操作と、他も従来シリーズとほぼ同様。このあたり、シリーズをプレイし慣れた人なら特に問題はないだろう。

 新要素は「影技」と「無双奥義・皆伝」のふたつ。影技は、攻撃が敵にヒットもしくはガードされた瞬間にbボタンを押すと、ガード崩しを兼ねたダッシュ攻撃が繰り出されるというもの。使用するたび、画面左下に青い玉で表示される「練技ゲージ」をひとつ消費する。練技ゲージは、敵に攻撃を加えるか、特定のアイテムを消費して増やすことが可能。影技の直後は通常攻撃がヒットするため、ゲージが残っている限り立て続けにコンボが叩き込める。「ガンダム無双」シリーズのブーストダッシュの「戦国無双」版ともいえるシステムだが、難易度を上げると敵がガードを多用してくることもあり、1度使ったらヤミツキの気持ちよさだ。

 無双奥義・皆伝は、前述の練技ゲージが最大の状態で無双奥義を発動するというもの。今作の無双奥義は、武将固有の無敵攻撃を繰り出す「無双奥義」、体力ゲージが赤いときに発動する「無双秘奥義」、他の武将と電撃で結ばれているときに使える「無双最終奥義」、そして「無双奥義・皆伝」の4バリエーションが存在する。“皆伝”というだけあって、無双奥義・皆伝の威力は絶大で、演出もド派手の一言。唯一かつ最大の難点は、発動すると練技ゲージがすべて消費されてしまうこと。高難易度でプレイしているときは、この“うっかり皆伝”が地味に危険だったりもする。慣れてくるとお遊び以外で使うことはなくなるが、演出は一見の価値あり。プレイされるときは、ぜひ全武将の無双奥義・皆伝をチェックしていただきたい。


【影技】
練技ゲージを消費してチャージ攻撃を繰り出す。ガード崩し能力があるため、高難易度や敵武将のガードが固いときに重宝する
【無双奥義・皆伝】
最大最強の無双奥義。ド派手な演出と威力は凄まじいの一言。ただし、練気ゲージをすべて消費してしまう




■ 無双演武 ~魅惑の武将たちが織り成す迫真の戦国絵巻が展開~

 本シリーズのメインともいうべきモード。基本的には各ステージに設定された目標(ミッション)をクリアしつつ勝利条件の達成を目指していくが、極限まで力強く美化された武将たちの“からみ(ナレーションやムービーシーン)”が、プレーヤーの魂を熱く揺り動かしてくれる。

 合戦の流れを説明すると、まずはスタート前に難易度を選択。最初は「やさしい」、「普通」、「難しい」の3段階だが、クリア後の再プレイでは最高難易度の「地獄」が選択可能になる。武器、鎧、籠手、足袋といった装備品は、事前に「鍛冶屋」でパワーアップできる。パワーアップには、ステージ中で獲得した「素材」が必要。それぞれパワーアップに必要な数が決められており、後述する技能によってそれぞれ異なる。高レベル、レア技能になるほど貴重かつ多量の素材を消費するため、よくわからないうちにテキトーに散財しないようくれぐれも注意されたい。

 開始前は、ナレーションのあと作戦やルートについて説明が行なわれる。ステージ中での行動は基本的にプレーヤーの自由だが、全体の戦局を無視するわけにはいかず、合戦中はプレーヤーの行動や戦況の流れに応じて、さまざまな「ミッション」が発生する。大半は「○×を倒せ!」というものだが、成功させると戦況が有利になり、クリア後にもらえる勲功が増える。基本的には、各ミッションを断続的にクリアしていくことが勝利条件達成への近道ということになる。

 また、ミッションと違い必須ではないが「撃破効果」が設定された武将がステージ中に散在している。特定条件下でこれらの武将を倒すと、自軍に有利な効果が得られたり、もしくは武器や防具などの装備品が獲得できる。条件は情報画面で確認できるため、余裕があれば倒しておくといい。ただし、装備品を持った美味しい武将に限って重要なミッションから1番離れた場所に配置されていたりと、一筋縄ではいかない。撃破効果を追い求めてミッションに失敗というのは、本作では実にありがちなシチュエーション。味方武将の生存が条件に関わるときは、特に注意が必要だ。


シナリオ開始前にミッションの流れが説明される。無双シリーズ初体験の人でも、ステージ中で何をすればいいのかすぐわかる
合戦前は身支度、携帯道具、鍛冶屋で装備パワーアップなどをきちんと済ませておくこと
ミッション達成を目指すのが基本だが、余裕があれば「撃破効果」を狙っていきたい。ただし無理は禁物だ


 シナリオをクリアすると、ミッションや撃破効果の発動、獲得勲功、能力やアクションの成長、獲得した戦利品などの「合戦結果」が表示される。これは無双演武、模擬演武、村雨城の各モードすべて共通。合戦を繰り返して武将を成長させ、装備品を充実させていく。

 こうしたアクションRPG的な要素は、もはや無双シリーズには絶対に欠かせないものといっていい。武器や防具にランダムで付与される「属性」や「技能」は、そのランダム性ゆえに「あー、またロクな技能がついてない!」、「惜しい! これにあの技能がもうひとつ付いていれば……」など、何度でも繰り返したくなる魅力に満ちている。プレイする難易度、さらには落ちている宝箱ではなく撃破効果で得られる装備品のほうが質がいい傾向にあることも、さらなる挑戦意欲を掻き立ててくれる。

 お気に入りの武将を、コツコツと地道に育てていく楽しさ。新作が出るたび、雑兵をなぎ倒し名だたる武将を仕留める日々。たまに人から「毎回よく飽きないねぇ」といわれるが、筆者は逆に「毎日食べるご飯やパンに飽きることがありますか?」と問いたい。そりゃぁ、たまに違ったものが食べたくなることもあるが、無双シリーズの根本にある“アクションゲームとしての味わい”は、もはや主食のそれに近い。TVゲームは本来“嗜好品”なのだから、ご飯やパンにたとえるのは基本的に大間違いなのかもしれないが……それでも「いいものは、いい!」と声を大にして言いたくなってしまうのだ。


クリア後に表示される「合戦結果」。武器や防具を拾ったときは、どんな技能がついているか、ちょっとしたお楽しみタイムでもある。ハズレはさっさと解体して素材に変えてしまおう




■ 村雨城 ~無双アレンジで懐かしの名作が蘇る!~

 発売前から、なにかと話題になっていたモード。プロデューサーの鯉沼氏によれば、当初は「村雨城モード」は素材集めの場所として用意されたが、そのうちボスを出したいなど膨らんでいき、最終的には「『無双』で遊ぶ『村雨城』となった」という。

 念のため、本モードのモチーフとなった「謎の村雨城」について説明しておくと、同作は1986年4月14日にファミリーコンピュータ(ディスクシステム)向けに発売されたアクションゲーム。主人公の鷹丸を操作して刀や術を使いわけながら敵と戦い、ナゾの生命体を倒すべく村雨城へと乗り込む。昨年8月よりWiiバーチャルコンソール版が配信中。本モードは、任天堂プラットフォームだからこそ実現できた“夢のコラボ”といえる。

 ゲームの基本システムは、当然ながら「戦国無双」そのもの。変な言い方だが、無双エンジンを使った「謎の村雨城」といった印象で、世界観、ストーリー進行、登場人物、ステージや敵構成が「謎の村雨城」テイストにうまくアレンジされている。3Dグラフィックスで再現された「謎の村雨城」の主人公・鷹丸の姿は、オールドファンには感慨深いものがある。序盤は他モードの武将でプレイするが、仲間になる以降のステージはプレーヤーキャラクタとして操作することが可能だ。

 本モード最大の特徴は、やはり「難易度」にある。序盤は極めてシンプルだが、ファミコン時代のゲームよろしく、ステージが進むごとに“ガツン!”と難易度アップが伝わる作りは手ごたえバツグン。一定以上まで鍛えた武将でないと、新たな城に進んだとたんに大苦戦といったことも珍しくない。バランス調整そのものが「無双」シリーズとは違った方向性で味付けがなされており、どちらかといえばギミック(仕掛け)勝負。単なる力技では限界があるため、人によってはイライラしてしまうかもしれないが、逆に「こんなのヌルイよ」と感じた猛者は、ぜひともクリア後に出現する高難易度「奈落」に挑戦していただきたい。クリア特典も豪華で、楽しめること請け合いだ。


地雷を最初に見たとき、つい「(形まで)そのまんまやんけ!」と突っ込んでしまった。城内の仕掛けも再現されており、オールドファンならニヤリとせずにはいられない




■ 戦国史 ~新武将で年表に足跡を残せ!~

 本作には、有料ダウンロードコンテンツが用意されている。「武家屋敷」→「宝物庫」→「コンテンツ購入」を選択すると、有料ダウンロードコンテンツ「戦国史」が出現。ダウンロードには「ニンテンドーWi-Fiコネクション」に接続する必要がある。全3章構成で、各章ごとに5つのシナリオがプレイできる。価格は各章300Wiiポイント(300円相当)で、12月3日から第1章が配信されている。

 戦国史は、いわば史実のエピソードに沿って展開されるモード。本編との違いは、使用武将が「新武将(エディット武将)」に限られること。「戦国史年表」に表示された合戦を選び、難易度を決めてプレイ開始。シナリオをクリアすれば、稼いだ勲功とともに新武将の活躍が年表に記入されていく。現在配信中の第1章だけでは埋まらないことから、3章すべてをクリアすることで年表は完成するようだ。

 武将の個性やノリなどは“無双”そのままだが、シナリオ展開は史実に沿ったもので、ある意味“渋めな大人の味わい”といった雰囲気。無双武将と新武将の会話もあり、自分の分身が歴史上の戦いに参加しているようで、思わずニヤリとさせられてしまう。相当なボリュームがあるゲーム本編だが、もし「もう何もかもやり尽くしちゃったよ」という人がいたら、有料ダウンロードコンテンツはさらなる楽しさを与えてくれるはずだ。


使用できるのは新武将のみ。忘れないうちに「武将編集」できちんとエディットを済ませておこう
各章ごとにシナリオが5つ用意されている。12月3日から第1章が配信されており、現時点では全3章構成となっているようだ




■ 初心者からコアなファンまで幅広く対応するバランスの取れた内容

 もはや“コーエーの屋台骨”といっても過言ではない無双シリーズだが、それだけに内包するファン層の幅広さたるや、尋常なものではない。ナンバリングタイトルのプラットフォームにWiiを選択した理由は、8月に行なわれた制作発表会で明らかにされたとおり。「1番売れているハードで」という言葉の意味は重く、当然本作は「シリーズ初体験」という人を想定しなければならない。既存シリーズのユーザーだけでなく、その外周も積極的に取り込んでいくという姿勢が、Wiiを選択させたともいえる。

 その一方で、無双シリーズにはハード・コアなユーザーが少なくない。シリーズ初期からを熱心に支えてきた彼らは、愛情の裏返しからか、少しでも気に入らない部分があると苛烈な反応を示す。コアな方向性も、単純にゲームシステムやアクション性が気に入っている人から、いわゆる“武将萌え”まで多種多様。彼らに「完全に初心者がターゲットで、俺たちはないがしろにされた」と判断されたら、それはそれで非常にやりにくい。完全に確立されたブランドイメージがあるからこそ、作り手側としては相当悩む部分もあっただろう。

 そういった点を踏まえると、本作は徹頭徹尾“全体のバランス”を重視して作られているように感じられる。ゲームオーバーでも経験値や装備品がもらえるなど甘くなった部分もあるが、だからといって全体が緩く締まりのないものになったわけではない。シリーズによって高難易度のバランス調整がピーキーだったりすることもあるが、本作に関しては“手堅くまとめられているなぁ”という印象が強い。どんな武将でもコツコツ育てていけば必ず強くなるし、限界突破でパラメータMAXという手段も用意されている。各武将のフィーチャー度合いに関しても同様で、「キーッ! 私の大好きな○×様がこんな扱いなんて、絶対に許せない!!」などという声は……未来永劫、決してなくならないのだろうが……それでも「あぁ、色々考えた末に、こういう展開にしたんだろうか」などと考えさせられる部分がある。

 シリーズ初体験の人向けに敷居を下げつつ、さりとて家屋の全体像を崩さない。個人的に嬉しかったのは、「真・三國無双5 Empires」ほどではないにせよ、雑兵の出現数を従来シリーズ比でもかなり多めにキープしてくれたこと。雑兵のワラワラ感が好きでたまらない筆者は「Wiiってことは、やっぱりザコの数は相当減っちゃうのかな」と覚悟していたが、開発チームの並々ならぬ努力により、製品版は“嬉しい誤算”といったてい。もしかしたら、その代償としてフレームレートが落ちてしまったのかもしれないが、フレームレートは数時間プレイすれば慣れてしまう程度の違いでしかなく、爽快感の本質的な部分は損なわれていない。“最大公約数”と表現すると悪い意味に捉えられそうだが、本作に関してはまったく逆。ひたすら尖ったものを求めるのではなく、その対極にある安心感と完成度。アクションゲームが好きな人はもちろん、もし苦手だったとしても、世界観やグラフィックなどひとつでも惹かれるものがあったなら、この機会にぜひ1度触れていただきたい。


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謎の村雨城: (C)1986-2009 Nintendo

(2009年 12月 16日)

[Reported by 豊臣和孝]