★DSゲームレビュー★

根強いファンを持つアクションゲームが
遊びやすくなってニンテンドーDSに登場!!

「海腹川背・旬 セカンドエディション完全版」

  • ジャンル:ラバーリングアクション
  • 発売元:株式会社Genterprise
  • 企画・開発:株式会社朱雀/エアータッチ株式会社
  • 価格:5,040円(税込)
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(10月29日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)

 10月29日に株式会社Genterpriseから、ニンテンドーDS用ラバーリングアクションゲーム「海腹川背・旬 セカンドエディション完全版」(以下、本作)が発売された。「海腹川背」シリーズは、ゴムのように伸び縮みするロープが繋がったルアーを投げながら、ステージの出口を目指すアクションゲームで、一般的にはあまり知名度が高いとはいえないが、かわいいキャラクターに見合わない歯ごたえのある難易度と、上達する手ごたえが感じられるゲーム性を持つことで、根強いファンを持つシリーズだ。

 本作は、プレイステーション用として発売された「海腹川背・旬 ~セカンドエディション~」(以下、「セカンドエディション」)を忠実に移植するだけでなく、チュートリアルなどを追加して遊びやすさが大幅にパワーアップ。さらにシリーズの原点ともいえるスーパーファミコン版「海腹川背」をも収録した、まさにシリーズの決定版といえる内容となっている。

 今回のレビューでは本作の内容について、基本的なゲームの紹介はもちろん、どのように遊びやすくなったかなどの変更点も含めて紹介していこう。




■ ゲームの目的は主人公をゴールに導くという単純明快な内容

 まずは本作の基本的なルールを紹介しよう。ゲームの目的は、主人公である海腹川背さん(以下、川背さん)を出口であるドアに導くこと。川背さんがドアに入るとクリアとなり、次のフィールドに進むことができる。

 続いて、操作方法についても説明しよう。十字ボタンの左右で川背さんを移動させることができ、BまたはXボタン(初期設定はBボタンのみ)でジャンプ、そしてAまたはYボタン(初期設定はAボタンのみ)で、ロープがついたルアーを投げることができる。なお、このルアーは地形に触った際にボタンを押しっぱなしにすることで引っ掛け続けることが可能だ。また、その状態で十字ボタンの上を押すとロープを伸ばすことができ、下を押すとロープを縮めることができる。基本的な操作はこれだけで、ステージ上の地形にルアーを引っ掛けてロープの長さを調節しながらドアを目指していくアクションゲームとなっている。

 しかし、パステル調の色彩やかわいいキャラクターデザインとは裏腹に、難易度はかなり高め。川背さんは、フィールドにいる大きなモンスターに触るだけで1ミスとなってしまうし、小さなモンスターに触れるだけで気絶してしまうなど、非常に脆弱だ。また、高い場所から落下しただけではミスにならないものの、地面のない場所へ落下してしまった場合も即1ミスとなってしまう。そのため、ロープを使ったアクションをする際には細心の注意を払う必要がある。普段ならなんともないような場所でも、油断するとあっという間にミスとなってしまうシビアな内容だ。

 ただし、序盤のフィールドについては攻略のポイントとなるテクニックについてのデモが表示されるので、いきなり行き詰ることはないようになっている。また、高度なテクニックを使えなくても、ほとんどのフィールドは遠回りすればクリアできるようになっており、まずは遠回りをしながら地形を覚えていき、ゲームに慣れてきたら高度なテクニックを使ってショートカットしていく、という遊び方も可能だ。このように、遊びながらテクニックを覚えていくことができ、別の攻略法を思いつくような作りになっているため、何度も通った序盤のフィールドでも違った楽しみ方ができる、自由度の高いゲーム性となっている。

フィールドに配置された敵キャラクターのおさかな達に触れるとミスになってしまうので注意。ほとんどのおさかなは、ルアーをぶつけると気絶させることができ、気絶している間にルアーで捕まえられる不意な落下によってミスにならないように、地形のどこかにルアーを引っかけておくとより安全だ。初心者は慣れるまでは、常にルアーを引っかけながら進むといい
配置されているドアの前で方向ボタンの上を押して入ると、そのフィールドはクリアとなり次のフィールドへ進む。ドアが複数配置されているフィールドでは、入るドアによって違うルートに進めるので、自信がついたら、難易度の高いドアに挑戦していこうフィールドに配置されているリュックをルアーで捕獲すると、川背さんが1人増えるようになっている。リュックは気づきにくい場所や難しい位置に配置されていることが多い。できれば確保したいところだが、無視して進んでも一向に構わない



■ 多彩なアクションを可能にするさまざまなテクニックたち

 本作がただのアクションゲームと違うのは、投げるルアーについたロープがゴムのように伸縮することにある。ロープに荷重をかけて伸ばし、縮むときの反動を使って加速することで、他のロープを使うアクションゲームとは一味違ったアクロバティックな動きが可能だ。この動きこそが「海腹川背」シリーズに根強いファンがいる最大の理由ともいえる。

 この、ルアーとロープを使った自由度の高いアクション性は、振り子の動きや、川背さんの速度とゴムのようなロープの反動など、さまざまな物理法則から成り立っている。そのすべてが慣れ親しんでいるもののため、特に説明を受けなくても、誰でもすぐに理解できることだろう。

 そして、これらのアクションには、偶然や運がからむ要素はほとんどないため、うまくいくもいかないもプレーヤーの技量次第。最初はうまくいかないことがあっても、プレイし続けて上達するほど自由自在に川背さんを動かすことができるようになり、それによってフィールドの新たな攻略が可能になることも本作の楽しみのひとつだ。

 ここからは、この独特のラバーリングアクションによって可能になる、本作ならではのテクニックをいくつか紹介していこう。


・ 振り子を作っての振りあがり

 天井にルアーを引っかけた後、川背さんを操ってブランコのように振り子運動を作れる。上方へ登る際には、この振り子運動を作ることが基本。振り子運動をすることで速度をつけ、ロープを縮めてルアーが引っかかっている支点方向へ川背さんを加速させることで、上方向へ振りあがれる

川背さんを左右に振って振り子を作り、十分に勢いがついたところでロープを縮めよう。最下点付近でロープを縮めることで、上方向に加速して振りあがることが可能だ

・ 垂直登り

 ジャンプで乗り越えられないような高い壁も、ロープの反動を使うことで登っていくことができる。具体的には、ロープが下に伸びきったときにロープを縮めて上方向に加速し、もっとも上昇した地点でルアー投げて、元の位置より高い場所にルアーを引っかければいい

ロープを伸ばして落下した勢いでロープを伸ばし、最下点でロープを縮めると、上方向へ伸び上がることが可能だ。最も上に到達した時にルアーを投げれば、垂直の壁も少しずつだが登っていくことができる

・ 反動ダッシュ

 足元の地面にルアーを引っかけ、ロープを行きたい方向と逆に伸ばした後、反動を使って加速すると通常よりも速くダッシュすることができる。慣れるまでは難しいものの、使いこなすことができるようになれば、通常のジャンプでは届かない場所に行けるのはもちろん、タイムアタック時の時間短縮にも役立つテクニックだ

行きたい方向と逆にロープを伸ばし、反動を使って加速すれば、通常よりも速く移動できる。ロープが縮んだ瞬間にルアーを離す必要があり、離すタイミングを間違えると十分な加速を得られないため、慣れるまで練習しておこう



■ さまざまなトラップや敵キャラクター達に立ち向かえ!

 こういったアクションと共に、ゲームを彩るのは、フィールドに配置されたさまざまなトラップと敵キャラクターのおさかな達。トラップはフィールドのクリアを難しくするものがほとんどだが、使い方によっては川背さんの役に立つものもある。

 こういったトラップをどうやって攻略に利用するか考えることも、本作の魅力のひとつだ。最初はクリアの攻略法のわからないフィールドも、トラップやおさかな達の動きを考慮しつつ前述のテクニックを組み合わせていけば、必ず道は開けるようになっている。


通常の床の代わりにベルトコンベアが設置されている場合もある。ベルトコンベアにルアーを引っかければ、そのまま引き上げてもらえる
川背さんの体重がかかると沈みだすブロック。モタモタしているとブロックが下がってしまうため、すぐに次の足場を確保しなくてはならず、素早く正確な操作が要求される

大きい敵キャラクターに触れると、即座に1ミスとなってしまう。大きい敵キャラクターは動きが遅いものが多いので、確実にルアーを当てて回収していきたい小さい敵キャラクターに触れた場合は、即座にミスとはならないものの、川背さんは吹き飛ばされて気絶してしまう。気絶中に移動はできないものの、ルアーを投げることはできるので、気絶したらとにかくルアーを投げて落下を防ごう



■ 遊びやすさがアップした完全版ならではの要素を紹介

初心者向けにチュートリアルも用意されており、プレイしながら基本的な操作を学べるようになっている。十分に遊んでチュートリアルが必要なくなったならば、設定でチュートリアルを切ることも可能だ

 ここからは、完全版ならではの要素について紹介していこう。

 まずは、もっとも大きな追加要素といえる「DS新ルート」について。これは「海腹川背・旬 ~セカンドエディション~」を基にしながら、初心者向けの難易度の調整や、新たなフィールドに挑戦できる新ルートが追加されたモードだ。プレイステーション版「セカンドエディション」でも後半にはクリアするのが相当難しいフィールドが用意されていたが、DS旬ルートの新フィールドもそれに勝るとも劣らない難易度。シリーズを極めたという人にとっても、一筋縄ではいかないやりがいのある内容になっているのではないだろうか。

 また、DSの下画面には全体マップが表示されるようになっている。ドアの場所がわかってしまうため、ドアを探す楽しみは薄れてしまうものの、目標が定めやすく、攻略ルートを考えやすいため、初心者には嬉しい機能といえるだろう。

 同様に、ボス戦においては、ボス攻略のヒントも下画面に表示されるようになった。かつて筆者も、プレイステーション版でボス戦の攻略法がわからずに死にまくった経験があるので、地味に嬉しい追加要素といえる。


新ルートのマップのひとつであるF16には、ベルトコンベアーが多数配置されている。このベルトコンベアーを利用して大きな速度をつけることが要求されるなど、新ルートでは難易度の高いマップが次々と登場してプレーヤーを悩ませる
下画面には、フィールドの全体マップが表示されるようになった。川背さんの位置は黄色、ドアの位置は緑、敵キャラクターの位置は赤で表示されている。リュックの位置は表示されないので、自力で探し出していこうボス戦のフィールドでは、下画面に攻略のヒントが表示されるようになった。たとえば、この巨大なおたまじゃくしは倒せないので、いなくなるまで逃げ回っていればいい。



■ 初代「海腹川背」やギャラリーなどおまけ要素も充実

スーパーファミコン版の元祖「海腹川背」も楽しめる。「海腹川背」は「セカンドエディション」よりもロープが長く伸びるため、さらにダイナミックな動きが楽しめる

 本作では、シリーズの元祖ともいえるスーパーファミコン版の「海腹川背」も収録されている。こちらは「セカンドエディション」とは違い、基本的には単なるベタ移植となっており、下画面にはイラストが表示されるのみで、アドバイスやマップが表示されることもない。そのため、初心者にはややとっつきにくいかも知れない。それでも昔からのファンには、「海腹川背」が遊べるということは嬉しい要素といえるだろう。

 そのほかにも、ゲームを進行していくと見ることができるイラストを鑑賞できるイラストギャラリーや、ゲーム中のBGMを聴くことができるサウンドギャラリー、ゲーム中に捕獲した敵キャラクターを見ることができるおさかな図鑑の3つおまけとして用意されており、根をつめすぎた際の気分転換に最適だ。

 また、DSのワイヤレス通信機能を使って、リプレイデータを他のプレーヤーに渡すこともできる。友達と攻略法を相談したり、スーパープレイのデータを交換したりする際に利用するといいだろう。


イラストギャラリーでは、特定の条件を満たすことでシリーズのイラストを閲覧可能。条件には、一定のフィールドを進むといったものから、難しいものや特殊なものまでさまざまにあるゲーム中のBGMなどを聴くことができるサウンドギャラリー。こちらもイラストギャラリーと同様に条件を満たしてアンロックしないと聴くことはできないようになっている
おさかな図鑑では、捕獲した敵キャラクターの情報を知ることができる。生息する場所や重さなど、攻略の役に立つ情報のほか、捕獲した数なども確認可能だワイヤレス通信を利用して、リプレイデータの受け渡しもできる。保存できるデータ量に制限はあるものの、かなり余裕があるので、すぐにいっぱいになることはないはずだ



■ シリーズファンも納得の完成度
  やり込みがいのあるゲームが好きな人にオススメ

 単純なアクションゲームとして遊ぶことから始めて地形を覚え、さまざまなテクニックを覚えたところで、ショートカットするルートを考えたり、通常進めないルートへ進むことで違った世界が見えてくる。そしてクリアした後は、ギャラリーのアンロックのための縛りプレイやタイムアタックなどのやり込み要素も充実しており、噛めば噛むほど味が出てくる長く遊べる作品だ。

 少しずつ川背さんが自分の思い通りに動かせるようになり、何度もミスを繰り返した難易度の高いフィールドをやっとクリアできたときの喜びと充実感はひとしおだ。ラバーリングアクションというジャンルになっている本作だが、何度もミスを繰り返しながら地形や細かい操作タイミングを覚えていき、すべてがピタリとハマる瞬間を狙っていくゲーム性は、細かい修正を繰り返しながらコンマ1秒を削っていくレースゲームに近いといえるかもしれない。

 気軽に楽しめるアクションゲームという側面もあるものの、それはあくまでも氷山の一角。それ以上に、やり込んだ先にこそ本当の面白さが見えてくる。そのため、1本のゲームをやり込むこと好きなコアなゲームファンにも満足してもらえるに違いない。シリーズのファンはもちろん、やり込みがいのあるゲームを求めている人に、ぜひ手にとってもらいたい1本だ。


(C)モーションバンク(C)2009 朱雀/エアータッチ