PS3/Xbox 360ゲームレビュー

超絶ダートコースで華麗なトリックを決めろ!
クセになる爽快感がウリのATVレースゲーム

「エクストリーム・レーシング -PURE-」


地を蹴り、空を舞う! 破天荒なATVレースを楽しめるタイトルだ

 ゲームパブリッシャーとして新たなブランドイメージの確立を目指すウォルト・ディズニー。一般的なイメージとしては「キャラクタービジネスの巨人」といったところだが、近年、コンピューターゲームを専門に扱う部門、ディズニー・インタラクティブ・スタジオを立ち上げ、既存のIPに頼らない、本格的なゲームの開発・販売に力を注ぎつつある。

 そんなディズニー・インタラクティブ・スタジオが贈るゲーマーのためのゲームタイトルが、今回紹介する「エクストリーム・レーシング -PURE-、以下『PURE』)」だ。これは4輪駆動の小型バギー、ATV(All Terrain Vehicle)のレースゲームで、起伏豊かなダートコースを疾走し、数十メートルの大ジャンプで華麗な空中トリックを決める。アクション性たっぷりのレースゲームに仕上がっている。

 また本作「PURE」は、タイトルにある通り非常に「純粋」なつくりのゲームに仕上がっている。ウリは、ATVの滑るような挙動と空中トリックの爽快感。「レース」、「スプリント」、「フリースタイル」という3種の種目で、より良い走りとトリックによる高スコアをただひたすらに目指すという、楽しくもストイックな内容が特徴だ。



■ 個性的なコースでダイナミックなライディングを! リスキーな空中トリックはクセになる爽快感

16台のATVがひしめき、いっせいにスタート。土煙を上げ、個性豊かなダートコースを駆け巡る
大ジャンプ!空中で難しいトリックを決め、「スリルバー」を高めよう
各コースは起伏に富み、多くの地点で複数のルートを取ることができる。高低差を含めて立体的に把握することが重要だ
姿勢制御を誤り大クラッシュ! 大きなタイムロスにつながるので、各ジャンプポイントの特性を体で覚えよう

 「PURE」は、パワフルなATVを使用する本作オリジナルのゲームならではの架空のモータースポーツだ。米国で盛んに行なわれている現実のATVレースとは異なり、「PURE」では起伏に富んだ危険なコースが舞台。滞空時間が10秒にもなるような大ジャンプを交えたダイナミックなライディングを展開する。

 プレーヤーが操縦することになるATVは、エンジンパワー毎にDクラスからAクラスまで4種に分類されており、車体を構成する全てのパーツを自分でデザインすることも可能だ。パワフルなエンジンでダートコースを滑るように走る操縦特性のため、全てのコーナーリングはドリフトしながらの激しい動きになり、ちょっとした起伏でも激しくバウンドする。俄然、空中での姿勢制御が非常に重要なゲームになっている。

 本作でチャレンジすることになるレースモードは「レース」、「スプリント」、「フリースタイル」の3種だ。「レース」では1周2分程度の長く複雑なコースを3週し、1位獲得を目指す。「スプリント」はより短い距離のコースをぐるぐると回るスタイルのレースだ。そして「フリースタイル」は本作ならではの種目で、ジャンプ中の空中トリックを連続して繰り出すことによるトリック・スコアでトップになることを目指す競技だ。

 舞台となるコースはアメリカ、メキシコ、イタリア、タイ、ニュージーランドなど12のロケーション。それぞれのコースは「レース」、「スプリント」、「フリースタイル」の各種別にコースが異なるため、都合全36コースとなっている。そのどれもが通常のレースゲームでは有り得ないほどの起伏に富んだ構造と、複数のルートを選択できるオープンな構造になっており、攻略の手ごたえはかなりのものだ。

 オーソドックスなレースモードである「レース」においても、本作「PURE」ならではのテクニックが重要になる。その基本となるのは、コースの起伏を知り尽くした上でジャンプを正確に制御すること。本作では起伏を乗り越えてジャンプ状態に移行する際に、うまくタイミングを合わせて左スティックを下、上と入力することでジャンプ力を最大にすることができる。これは本作で「プリロード」と呼ばれる基本操作で、ちょうど体の重心移動でATVの動きに勢いをつけるような感覚だ。

 レースではこれを利用し、ジャンプの着地点がうまく下り坂になるよう、距離と高さを制御する。反対に、着地するときに登り斜面に激突してしまうと大きなタイムロスになってしまうので、あらかじめコースの起伏を把握しておくことが重要になってくる。いずれにしても着地点の角度を瞬時に把握し、急激な角度で激突しないよう、空中で姿勢をうまく制御することがスムーズなライディングの秘訣だ。

 そして極めつけは、ジャンプ中に左スティックと各ボタンの組み合わせで行なう「トリック」だ。トリックはAボタン(Xbox 360版)で発動する簡単なものから、Bボタンで発動する中級トリック、Yボタンで発動する上級トリック、そしてLB、RB同時押しで発動するスペシャル・トリックがある。

 トリックを決めることで画面右下にある「スリルバー」が蓄積されていき、より上位のトリックを発動できるようになるほか、スリルバーを消費してATVを急加速する「ブースト」が利用できるようになる。「レース」や「スプリント」ではブーストを使ってライバルに差をつけることができるが、そのためには大ジャンプの機会がある度、積極的にトリックを決めスリルバーを稼ぐ必要があるわけだ。

 しかし、トリックの所要時間と着地までの時間をきちんと読んでおかないと、トリック中に地面に激突して大クラッシュだ。それを避けるのは難しいが、コースの立体的な構造を把握し、どの地点でどの程度の滞空時間が稼げるかを体で覚えることだ。スペシャル・トリックが狙えるような大ジャンプ地点では大量のスリルバーを獲得できる。空中でどこまでリスクを冒すか、それが本作の醍醐味であり、成功すれば大きな爽快感が得られるポイントだ。


「レース」や「スプリント」では、いかに速くゴールに到達するかを目指す。そのため着地をスムーズにするためのジャンプ力調整がとても重要だ。また複数のルートが選べるコースでは、ライバル車の動きを良く見て、最短の時間で通過できるルートを見つけよう

「フリースタイル」競技では空中トリックを成功させ続けることがハイスコアの秘訣。各ジャンプポイントの滞空時間を把握し、ジャンプする瞬間に左スティックを下、上と入力する「プリロード」操作を正確に実行しよう。同じ種類のトリックを連続して出すとスコアが下がってしまうため、技の選択にも注意深さが必要だ


■ 全50のツアーイベントで実力を証明せよ! よりパワフルに展開していくワールドツアー

「ワールドツアー」には総計50のイベントが用意されている。その全てで勝利することが目標だ
ガレージでは各種目にあわせたマシンを組み立てることができる。パーツの選択が重要だ

 本作に搭載されているゲームモードは4種類。ひとりのレーサーとして世界の「PURE」イベントを転戦していく「ワールドツアー」、各コースを別個に走ることのできる「シングル・イベント」、ライバル車なしに各コースの練習ができる「トライアル・モード」、そして最大16人でのオンラインマッチが楽しめる「オンラインゲーム」だ。

 この中で、まずチャレンジしたいのはメインのゲームモードである「ワールドツアー」だ。このモードでは最も低いDクラスのイベントから参戦し、各カテゴリのレースに勝利することでより高いクラスのイベントに参加できるようになる。それに伴ってゲーム中で使用できるATVの新規パーツがアンロックされているので、オンラインマッチに挑戦するまでにひととおりはクリアしておきたい。

 「ワールドツアー」では、Dクラスのエンジンで参戦する最も低いカテゴリのレースから順に、Cクラス、Bクラス、Aクラスと駆け上がっていくことになる。その中で各カテゴリの「レース」、「スプリント」、「フリースタイル」で勝利していく必要があるのだが、そこで重要になるのがATVの適切なカスタマイズだ。

 本作のATVは、車体を構成する全てのパーツを選択して組み立てることができる。パーツ構成は、まず車体の骨組みとなるフレームに始まり、後輪を支えるスイングアーム、前輪を支えるAアーム、衝撃を吸収するショックサスペンダー、そしてホイール、タイヤ、エンジン、ハンドルバー、ギア、ブレーキ、ブーストボトル、さらにボディの各部位など、なんと20部位以上に分類されている。全てオリジナル構成で1台を組み上げるのは、なかなか手ごたえのある作業だ。

 車体の組み立てでは「レース」、「フリースタイル」向けのマシンを自動で組み立てる「クイックビルド」を利用することで簡単に済ませることも可能だが、最低でも1台は自分で組み立てておきたい。マシンの性能は「最高速度」、「加速度」、「ハンドリング」、「ブースト」、「トリック」の5パラメーターに分類されるが、パラメータへの各パーツの影響を理解することで各イベントを有利に戦えるからだ。

 例えば「レース」種目では、「最高速度」、「加速度」、「ハンドリング」が非常に重要なパラメーターとなる。直線の多いコースでは特に「最高速度」がものをいう。短いコースを周回する「スプリント」種目では「加速度」と「ハンドリング」が最重要だ。そして空中トリックを決めまくる「フリースタイル」では、「加速度」と「トリック」を最大限に引き上げたい。「トリック」が高いほど、滞空時間が長くなり、難しいトリックを多く決められるからだ。


ATVを構成するありとあらゆるパーツを選択できる。自動で組み立てることもできるが、レースに勝てないときは自分の手でしっかりと各パーツを吟味し、コース攻略の計画を立てたい。イベントをクリアするごとに使用できるパーツのバリエーションが増え、より高性能なマシンを組み立てることができるようになるので、ちょくちょく各マシンのメンテナンスを行なおう



スペシャル・トリックを決める。長い滞空時間が必要なので、ジャンプへの進入から技を出すタイミングまで、各操作を正確にこなそう
ハイスコアのコンボに成功! 一気に大量のポイントが入る。途中で失敗したらコンボスコアは没収だ!

 ATVカスタマイズの極意を学べば、あとは各レースを順調に勝ち抜くことができるだろう。Dクラスのイベントに全勝したらCクラス、そしてBクラスと、マシンに乗せられるエンジンのパワーがどんどん強力になっていく。最高のAクラスでは凄まじいパワーとスピードだ。それが特に感じられるのは「フリースタイル」種目。低いクラスに比べてジャンプ力が増す分、難しいトリックでスコアを稼ぐことがハイスコアの秘訣になってくるのだ。

 「フリースタイル」の基本戦略は、各ジャンプポイントの飛距離を完全に把握した上で、着地ギリギリまでトリックを出し続け、綺麗に着地するなりすぐに次のジャンプポイントを目指すことだ。トリックを決めたあと、短い時間で次のトリックを決めれば「コンボ」となり、スコアの倍率が上昇する。倍率はトリックを連続で決めた回数で決まるので、最初に大技、次に小技を連続で、というふうに組み立てると効率がいい。

 そして5秒、10秒と長い滞空時間が期待できる大ジャンプのポイントでは、「ブースト」を使ってさらにジャンプ力を高め、最高難易度のスペシャル・トリックを決めよう。スペシャル・トリックは単体でも7,500点という高いスコアが期待できるが、綺麗に着地してすぐに別の基本トリックを連続で繰り出せば信じられないようなコンボが完成。とてつもないスコアが期待できる。

 華麗なトリックを繋ぎ、ハイスコアのコンボを完成させることは、本作の中で特に夢中になってしまうポイントだ。とにかくギリギリまでリスクを取り、可能な限りの空中トリックを組み立てる。そして着地を正確に行ない、すぐに次のジャンプが行なえるようなライン取りを徹底するのだ。正確なコースの知識、そして緻密な操作とダイナミックな動きが融合し、得られる達成感がプレーヤーを虜にする。そして10万点以上のコンボをコンスタントに決められるようになったら、いよいよオンライン対戦でも上位を狙えるはずだ。


簡単なトリックから難しいトリックまで、コースを知り尽くした上で計画的に繰り出そう。失敗してクラッシュしてしまえばコンボは途切れ、それまでのコンボスコアも没収される。ライン取り、プリロード、ブースト、トリックのタイミング、全てを正確に行なう必要があるため、非常に奥が深いのである


■ オンラインで出会う猛者達のテクニックに驚き、大クラッシュに笑う
 シンプルながらパーティゲームとしても秀逸

オンラインでは世界中の猛者と腕を競うことができる。「レース」、「スプリント」、「フリースタイル」、どの種目も楽しい
「フリースタイル」ではうまいプレーヤーほど長く走行することができるので、先に終わってしまったらトッププレーヤーの走行ぶりを観察してみたい

 「ワールドツアー」である程度腕を磨いたら、是非オンライン対戦に挑戦してほしい。本作の対戦マッチングロビーは世界共通となっており、全世界のプレーヤーと同時最大16人の対戦を楽しむことができる。欧米では一足速く発売になっているため、海外のプレーヤーには凄腕も多く、そのプレイを見るだけでも本作の奥深さを体感できるだろう。

 オンラインモードでもゲームの基本ルールは同じで、「レース」、「スプリント」、「フリースタイル」のいずれかの種目でトップを目指すことが基本になる。どのゲームモードもおおむね同じくらいの人気があるのだが、なかでもプレーヤーの腕の差が如実に現われるのが「フリースタイル」だ。

 前述のように「フリースタイル」では空中トリックを連続して成功させ「コンボ」を成立させることがハイスコアの秘訣だが、本当に上手なプレーヤーとなれば、コースを1周する間、ほとんどの区間でコンボをつなぎ続け、1回のコンボで数十万点のスコアを記録してしまうのだ。

 そのプレイを見てわかるのは、スペシャル・トリックのような大技を出すのは本当に確実な場所だけで、あとはごく簡単なトリックを確実に成功させていることである。さらに、各ジャンプの着地点を制御し、すぐに次のジャンプが狙える場所を確実に狙っている。ときに平坦なルートが続く場合は、コース外の不正地に侵入してジャンプし、強引にコンボをつなぐような技もあるのだ。

 とはいえ、大雑把な操作でもそれなりの走りができるのが本作の特徴でもある。それほどレースゲームが得意ではない人や、本作をほとんど始めて触るような人でも、オンラインでのにぎやかなプレイは大いに楽しめることだろう。慣れないうちは滞空時間がぜんぜん足りないのにトリックを決めようとしたり、無理な姿勢で着地してしまうため大クラッシュが続出して、思わず噴き出してしまうことも。「無茶しやがって……」と突っ込みを入れ、爆笑しながらワイワイ楽しめばいいのである。

 

 本作はこのようにごくごくシンプルでありながら、ATVで破天荒なレースをするという基本のゲーム性が秀逸で、プレーヤーを大いに楽しませてくれる。ただ、昨今のレースゲームに必要とされる奥行きと広がりには欠けており、ひとりでストイックに楽しむゲームと言うよりは、仲間やフレンドとわいわい楽しむタイプのゲームだ。そのためにも、「ワールドツアー」をコンプリートして、オンラインプレイで腕を磨くプロセスを大いに味わって欲しい。


【スクリーンショット】

(C) Disney


(2009年 7月 7日)

[Reported by 佐藤カフジ ]