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iPhone/iPod touchゲームレビュー

「スネーク、今度の戦場はiPhoneだ」
「MGS4」のブランド拡大は成功したか?

「METAL GEAR SOLID TOUCH」


現われる敵を銃で倒していくタッチシューティングとなった「METAL GEAR SOLID TOUCH」

 株式会社コナミデジタルエンタテインメントは、2008年末にiPhone/iPod touchに参入し、初期タイトルとして4作を発表した。業界大手の参入にiPhoneユーザーからは大いに期待が集まったが、中でも発表当初から注目されたのが、3月に満を持して投入された「METAL GEAR SOLID TOUCH(メタルギア ソリッド タッチ)」だ。

 「METAL GEAR SOLID(メタルギア ソリッド、以下MGS)」の最新作であるプレイステーション 3用「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS(メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット、以下MGS4)」の世界観をベースに、「MGSに触れる」をコンセプトに作られた本作は、リリースされるや否やApp Storeのランキングを駆け上り、ユーザー間で論争を巻き起こした。6月12日の時点では、国内App Storeでの平均レートは星3つ(最高は5つ)で、星の分布状況も1つと5つに偏っており、見事に賛否両論だ。

 本作の大きな特徴は、ゲームシステムがシリーズの顔である「ステルスアクション」から、画面上の敵兵をタッチして撃退する「タッチシューティング」になったことと、徹頭徹尾「MGS4」の世界観とストーリーでゲームが展開していくことだ。そのため「MGS4」をクリアしたユーザーにとっては、PS3版よりライトなゲーム内容で、すでに知っているストーリーを「追体験」することになる。これをどう見るかで、本作の評価が大きく異なるのは当然だろう。

 もっともコンセプトからもわかるとおり、本作は「MGS」のタイトルは知っているが、まだプレイしたことがないカジュアルゲーマーに対して、フランチャイズ拡大を狙ってリリースされたと考えられる。しかもiPhone/iPod touchユーザーの多くは一般ゲーマーとは嗜好が異なっており、iPhone/iPod touchの販売台数はPS3を上回っている。あえて本作でカジュアルゲーマー向けに大きく舵を切った理由の1つに、こうしたプラットフォーム属性があるかと思われるが、その開発陣の潔さは賞賛したい。

 その上で、本作は果たして「MGS」のフランチャイズ拡大に貢献したのか否か。この点を軸にレビューを展開していく。ポイントは前述のように「ゲームシステムの変更」と「ストーリーの追体験」だ。ちなみに幸か不幸か、筆者はゲームメディアで仕事をしながら、いまだに「MGS」シリーズをほとんどプレイしたことがなく、アクションやシューティングも得意ではない。その点では本作の格好のターゲットではないかと考えている。




■ 画面全体をバーチャルパッドに見立てて操作

 iPhoneプラットフォームで1人称/3人称シューティングを作る場合、これまで「画面上の標的を直接タッチする」か、「画面上のバーチャルパッドをスライドして操作する」という2つのUIが存在した。しかし本作では、画面の好きなところをなぞると照準が動き、タップして射撃するという、新しい方式を採用している。いわば画面全体を1つのバーチャルパッドとみなした形で、両者のハイブリッド方式だ。

 ステージは前後に奥行きを持って設定され、敵兵も近距離と遠距離に分かれて出現する。主人公のスネークが操る武器は大きく2つで、射程は短いが連射性能が高いM4アサルトライフルと、射程と威力に勝るが、連射能力に欠けるSVD(スナイパーライフル)だ。画面を2本の指でピンチアウト(指を開く)すればスコープ画面となり、SVDが使用できる。逆にM4に戻すにはピンチイン(指を閉じる)しなければならない。敵キャラクターには弱点が設定されており(敵兵士の場合は頭部)、ここを攻撃すると効率的に倒せる。


【ゲームの流れ】
画面から指を離すとスネークは防壁に隠れ、スライドして照準をつけると身を乗り出す。このポジションで画面をタップすると射撃だ。ピンチアウトするとスコープ画面に切り替わる。この繰り返しでゲームは進んでいく

【M4による近接射撃】
画面から指を離せばスネークは防壁に身を隠す。敵の攻撃から身を守れるばかりか、ライフも回復する 画面を指でなぞって照準を敵兵に重ね、タップするとM4で射撃する。敵兵サークルの周囲にある白いバーが敵のライフだ 弱点の頭部を狙うと、効果的にダメージを与えられる。すぐに指を画面から離し、防壁に隠れながら進めよう

【SVDによる遠距離射撃】
ライフバーが灰色で示されている敵はSVDでなければ攻撃できない。攻撃意志サークルが緑色の者は民兵だ 画面をピンチアウトするとスコープ画面が表示される。もたもたして敵に攻撃を受けないように注意 画面をタップして射撃。スコープ画面では無防備状態なので、敵兵を倒したらすぐにピンチインしよう


 敵兵の頭上には攻撃意志を示すアイコンが表示され、このアイコンが1周して赤色に変わると、敵兵から攻撃を受ける。攻撃を避けるには指を離し、防壁に身を隠せばいい。しばらく隠れると、体力回復もできる。この「身を乗り出して射撃」、「遠方の敵はSVDで狙撃」、「敵の攻撃時には防壁に身を隠して休息」の繰り返しでゲームは進んでいく。背景グラフィックスもPS3レベルに迫る美しさで、雰囲気がよく出ている。ただしゲームは完全2Dで、スネークが画面上を走り回ったり、匍匐前進をしたりすることはない。

 ゲーム中はランダムで「ガーコ」、「ケロタン」が登場し、攻撃すると特殊な効果が得られる。ガーコならライフが回復し、ケロタンならロケットランチャーのRPG-7で攻撃できるか、スネークの体が透明になり一定時間無敵になるステルス効果が得られる。ただしRPG-7では自動的にスコープ画面となり、射撃するまで敵に身をさらすことになる。ケロタンの効果はMISSIONで異なるが、同じアイテムで異なる効果があるのは、今ひとつ不親切だ。RPG-7とステルスで別アイテムにしても(ダンボールアイコンを撃つとステルス効果など)よかったのではないだろうか。

 このほか敵からの攻撃や自然環境(風雪など)で、画面に土塊がこびりついたり、氷結して見えにくくなったりする。この場合は本体を振ると画面を綺麗にできる。このように本作は、「指でなぞって照準、タップで攻撃」、「指を離して防御、回復」、「ピンチアウトでスコープ画面、ピンチインで通常画面」、「本体を振って画面の清掃」など、iPhoneプラットフォームのギミックをフルに活かした操作系になっている。ステルスアクションよりもタッチシューティングへの方が、画面を見ただけで遊び方がわかりやすいし、こうしたギミックも組み込みやすい。ユーザー層に合わせた配慮だろう。


【ストーリーパート】
MISSIONの前にストーリーと状況説明があり、各ミッションのクリア条件が表示される。MISSIONをクリアすれば、戦績に応じてDP(ドレビンポイント)と称号が与えられる。1度クリアしたMISSIONは後から自由に選択して遊べる
画面上のガーコを撃つとライフが回復し、ケロタンを撃つと一定時間ステルス状態になるか、RPG-7で攻撃できる。ガンシューティングのお約束どおり、撃つとライフが減少する民兵も登場するので気をつけよう
ゲームはストーリーパートとアクションパートの繰り返しで進んでいく。MISSIONの開始時にはオタコンから内容に即したアドバイスがもらえる。リトライ時に更なるアドバイスがもらえることもある



■ 「MGS4」のストーリーを手軽に体験

 続いてストーリー面を見ていこう。本作は全20面のMISSIONとストーリーが交互に進む、いわゆるサンドイッチ構造だ。ゲームプレイの報酬としてストーリーが位置しており、ゲームを続けさせる原動力となっている。ストーリーは「MGS4」の概要に沿って進み、ゲームをクリアすれば、全容が理解できる。個人的には「MGS」シリーズをほとんどプレイしていなかったため、よい点もあれば、残念だった点もあった。

 よい点としては、PS3版をプレイしなくても、重厚なストーリーや設定の概要が楽しめた点だ。完全にネタバレである点には批判もあると思うが、個人的にはiPhone版でストーリーがきちんと完結した点に好感が持てた。これで「続きはPS3版で」などと言われたら、そちらの方が不満だっただろう。ちなみにApp Storeでコミックス配信が増えているが、大手出版社のタイトルには最初の数話のみ配信して、続きを単行本で買わせるものが多い。これでは何のための配信かと思ってしまう。

 コアユーザーとしては、ついコンソール視点でゲームを見てしまいがちだが、世界には様々なプラットフォームがあり、それぞれに異なる属性のユーザーがいる。ゲームの大作化に伴い、昨今ではマルチプラットフォーム展開が増えつつあるが、今後はコンソール、PC、携帯アプリ、iPhoneなどのように、全世界を異なるプラットフォームで切り分け、世界観とキャラクターを共通にして、それぞれ個別のコンテンツを展開する、より広範囲なマルチプラットフォーム展開が求められていくと予測できる。本作はその先駆けとして位置づけられるだろう。

 個人的にも「MGS」の他のタイトルであったり、「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」といった他のストーリーゲームでも、同じ例が増えて欲しいところ。PSP版デジタルコミック「METAL GEAR SOLID BANDE DESSINEE(バンドデシネ)」のiPhone移植も歓迎だ。現在、動画共有サイトで大作ゲームのムービー映像が数多くアップされていたり、WEB上でストーリーだけを整理した「まとめサイト」などが存在するが、これもムービーだけみたい、ストーリーだけ知りたい、というニーズによるものだろう。であれば、これをうまくゲームに落とし込んで、カジュアルゲーマー向けに提示する手法もアリだと思う。これはコンテンツの安売りではなく、市場とユーザー属性に応じたマルチ展開だと捉えるべきだろう。

 逆に残念だった点は、スネークや雷電、メリルといった、シリーズでおなじみのキャラクターに対する予備知識がまったくなかったので、世界観やストーリーがよくわからなかった点だ。プレイ結果に応じてDP(ドレビンポイント)がたまり、待ち受け壁紙などがゲットできるフィーチャーもあるが、世界観やキャラクターへの思い入れが乏しいので、収集意欲がわかなかった。非MGSゲーマー向けにキャラクター情報をゲーム内やWEBで補完するか、それ以外のフィーチャーが欲しかったところだ。


【スクリーンショット】
ゲームは「MGS4」の各シーンをなぞる形で進んでいく。ストーリーパートのグラフィックスはPS3版に迫る美麗さで、App Store内では1、2を争うものだろう



■ ゲーマー化の試みは成功したのか?

 タッチシューティングというキャッチーなゲームシステムと、先のストーリーが知りたいという動機づけ。これらに隠れるように、本作では隠された意図が存在する。それが「カジュアルゲーマーのコアゲーマー化」作戦だ。MGS4の強力なブランド力を武器に、カジュアルゲーマーを真のゲーマーに導くための戦略タイトル。そう勘ぐってしまうほどに、本作の難易度設定は段階的に設定されており、実に教科書的な内容になっている。ただし結論から言うと、後半部分で少々破綻してしまった印象も否めない。ともあれ、ここでは全20個のMISSIONのうち、先行配信された12個のMISSION構成を見ていこう。

 ACT1はチュートリアルだ。#1でM4による射撃、#2でSVDによる射撃を学ぶ。#3ではアイテムを用いた攻撃(RPG-7)だ。ここまではサクサクと進めるが、最初の「ネズミ落とし」が#4で、PMC兵より強力なヘイブン・トルーパーが登場する。天井からぶら下がって攻撃してくる敵もおり、照準あわせに苦労するだろう。ただし全員M4で撃退できるなど、敵が強くなった分だけ、操作上の配慮がなされている点も見逃せない。


【ACT1】
ACT1はチュートリアルだ。主に#1でM4、#2でSVD、#3でRPG-7の操作を学ぶ。#4では画面全域に照準を合わせる必要があるが、ピンチアウトは必要ないので、落ち着いて狙おう


 ACT2では強力な敵兵が次々に登場し、これまで絶対だった防壁の存在も危うくなる。#5ではミサイル兵が登場し、攻撃によって防壁が次第に崩れていく。さらに#8では初の中ボス「ラフィング・オクトパス」が登場し、難易度がぐっと上がる。本ステージでは防壁が最初から存在しない。さらにラフィング・オクトパスにもスネークと同じステルス機能がある。これまでの敵兵は射撃体勢に入ると移動しなかったが、ラフィング・オクトパスは画面上を移動したり、消滅と出現を繰り返したりもするので、照準をずらしながら射撃するという、より微細な照準操作が必要になる。


【ACT2】
敵が次第に強力になるACT2。中でも初の中ボス戦となる#8は要注意だ。ラフィング・オクトパスはステルス能力があり通常は見えないが、SVDを使うと発見できる


 ACT3はACT1、2の総決算という内容だ。#9ではM4とSVDの切り替え頻度が増し、#10、11ではヘリや月光といった、大型兵器と敵兵が連携して攻め立ててくる。大型兵器には、共に防壁を破壊する機能がある点もポイントだ。そして第2の中ボス「レイジング・レイブン」が登場する#12では、#8と同じ微細な操作が必要になる。左右に動き回ったり、スネークに向かって突撃してくる標的を正確に狙い撃つのは、なかなか難しい。


【ACT3】
敵兵と大型兵器が共同で攻めてくるACT3。攻略のコツは1度に欲張らないこと。#12では突撃してくるスライダーに照準があわせにくいので注意。進行方向をあらかじめ予測して狙おう


 #8、#12で必要となる、画面上を移動する標的にあわせて照準を動かし、攻撃する操作は、他の通常攻撃よりも、さらに正確な指の動きを必要とするものだ。しかもiPhoneの画面が汗などで滑りやすくなるため、熱中するほどに操作ミスが頻発する。そうなるとミスのたびに十字キーとボタンのような、ハードウェアによる操作が恋しくなる。あるいは画面上の敵に直接タッチして攻撃したいという気持ちになってしまうのだ。これってiPhoneのハード特性とミスマッチではないか……そう思わせてしまっては、もったいない。

 これに加えてストーリー後半のACT4、ACT5では、これまでの操作方法がまとめて求められるようになる。ところが操作が煩雑になればなるほど、操作ミスによる失敗も増えるため、難易度が理不尽に上昇していくように感じられる。特に画面が氷結して見にくい#14、メタルギアREXに乗って戦う#16、通常攻撃が効かない#18で、この印象が強い。本来ならボス戦は、通常ステージよりも挑戦度が高いゆえに、より楽しいゲームプレイを提供するべきなのだが、本作では単に操作がやっかいで、面倒なだけのステージになっている。

 もっとも、アクションが苦手な筆者でも全ステージをクリアできたように、何度も繰り返してプレイすれば、自然にコツがわかるように配慮されている点はさすがだ。1度クリアしてしまえば、なぜこの内容で詰まっていたのかと思うほど、楽に進めるようにもなる。この「何度もミスを繰り返しながら、クリアのコツを自然に習得する」というのは、ゲームプレイを通した作り手と遊び手のコミュニケーションであり、アクション系ゲームのキモだろう。ミスするたびにオタコンによるアドバイスが表示されるのも気が利いている。

 また、敵兵がある程度パターンに沿って出現するのに対して、ガーコやケロタンはランダムで出現する。このときに感覚値ではあるが、ミスを重ねるたびにアイテムの出現率がアップするような印象を受ける。もしこれが正しければ、プレイを重ねるたびに難易度が下がっていくわけで、カジュアルゲーマー向けの配慮といえる。

 しかし迂回路が一切ないのは疑問で、途中で止めてしまうユーザーも多いのではないだろうか。イージーモードの追加であったり、DPを消費して武器のアップグレードができるなどで、より多くのユーザーにストーリーを最後まで楽しませるための配慮があれば、よりよかっただろう。



■ カジュアルゲーマーでも遊べる「MGS」として

 一部繰り返しになるが、本作のプレイを通して筆者が感じたのは、一種の「読書体験」だ。ゲーム部分とデモ部分のサンドイッチ構造でストーリーを体験させるのは、国産RPGなどでよく見られる手法だが、本作はそのキモの部分を取り出して、iPhoneプラットフォーム向けに凝縮して提示している。

 そのための「課題」としてタッチシューティングを採用したのはキャッチーだし、ストーリーを最後まで楽しませてくれたのも素晴らしい。前半部分の難易度設定も妥当だ。その上でカジュアルゲーマーに、「アクションゲームのクリア体験」を提供するための手段が、もう少しあってもよかっただろう。フランチャイズの新規ファンを増やすためには、実際にゲームをプレイして、クリアしてもらうのが1番だからだ。

 一方でシリーズの熱烈なユーザーにとっては、iPhone/iPod touch向けにも、オリジナルストーリーによる派生作を期待したいところだ(実際、本作はシリーズファンのニーズとタイトル内容で、不幸な食い違いを見せた点も否めない)。それがPSP用の「METAL GEAR AC!D(アシッド)」のようなカードゲームとの融合になるか、同じくPSP用「METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS(ポータブルオプス)」やゲームボーイカラー用の「METAL GEAR Ghost Babel(ゴーストバベル)」のようにステルスアクションになるかは不明だが、新しいスネークの活躍に期待したいところだ。


【スクリーンショット】
全てのMISSIONをクリアすると、「SURVIVAL」モードが追加される。ライフ回復なしで全MISSIONに連続して挑む上級者向けのモードだ メインメニューで「OPTIONS」を選ぶか、ゲーム中に本体を縦向きにすると、オプション画面が表示される。サウンドや振動の設定などができるほか、操作説明も見られる 「DREBIN'S SHOP」を選ぶと、プレイで獲得できるDPを消費して、待ち受け画像をゲットできる。本体の待ち受け画面に設定可能だ 「SPECIAL」から「HIDECHAN!RADIO」を選ぶと、小島監督の公式サイト「HIDEOBLOG」で配信中の音声版ブログ「ヒデオチャンネルラジオ」へのリンクが表示され、ダウンロードして聞ける

【プロモーションムービー】


(C)2009 Konami Digital Entertainment

(2009年 6月 12日)

[Reported by 小野憲史]



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