★DSゲームファーストインプレッション★

“ロジック”と“推理”で御剣検事を真相へ導く!
自分のひらめきが試される新感覚の最新作!!

「逆転検事」

  • ジャンル:推理アドベンチャー
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:5,040円(通常版)
       9,490円(LIMITED EDITION)
       23,940円(PREMIUM EDITION)
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(2009年5月28日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)

※「LIMITED EDITION」はカプコンオフィシャルショップ「e-CAPCOM」専売です


 「逆転裁判」シリーズの「逆転検事」がついに発売! 裁判をエンターテイメントにした“法廷バトル”を繰り広げる人気シリーズ「逆転裁判」シリーズ(以下『逆転』シリーズ)から新たな作品が登場した。今作の「逆転検事」は、事件現場を舞台に“推理アドベンチャー”を繰り広げる。主人公もライバル検事として登場してきた御剣怜侍となった。事件現場で捜査し、ひらめきから御剣を真相へと導き、そして“逆転”していく。新たな魅力を備えた最新作だ。

 今回は「逆転検事」を発売前にプレイすることができたので、その魅力をファーストインプレッションとしてお伝えしていこう。プレイしたのは、はじめから1話の「逆転の来訪者」が終わるまでで、所要時間は約3時間ほどとなった。第1話だけなので、「逆転検事」の新要素を全て体験できたというわけではないのだが、それでも第1話はなかなかのボリュームと歯ごたえのあるシナリオで、新要素の“ロジック”や“推理”の面白さをたっぷり楽しめた。

 なお、「逆転検事」は「DSステーション」の「Touch!Try!DS」で配信されている体験版や、公式サイトで公開中のWeb体験版も用意されているので、実際にプレイしてみたいというかたはぜひアクセスしてみよう。ただし、体験版は製品版とは収録されている内容が異なっており、このファーストインプレッションとも内容が異なるところがあるのでご注意頂きたい。



■ 第1話「逆転の来訪者」――御剣検事を待っていたのは事件と謎の来訪者だった

「逆転」シリーズでおなじみの印象的な導入部。男が銃を撃つところから事件が始まる

 冒頭シーンは、暗がりの部屋の中。2人の男が対峙しているシーンから始まった。2人はなにかもめているようだ。片方の男は説得し、もう1人はその言葉を突き放す。そして、銃声が響いた……。「逆転」シリーズの話はいつも、事件の瞬間など、印象的かつ衝撃的なシーンから始まっていく。その伝統は「逆転検事」にも引き継がれているというわけだ。

 場面が暗転後、その部屋にはなんと御剣検事がやってきた。約1カ月ぶりに海外出張から帰ってきたという。「帰ってきた?」この言葉に疑問が沸き上がる。そう、第1話「逆転の来訪者」の事件の舞台は、なんと検事局内であり、あろうことか御剣検事その人専用の執務室なのだ。

 暗がりの部屋、御剣検事は部屋の様子がおかしいことに気がつく。荒らされた部屋。暗がりには人が倒れていて、おそらくはもう息をしていない。「……これは!」状況を理解しつつあった御剣検事の背後に影が迫る。


暗闇の部屋の中、なにやらもめているらしき人物が2人。室内には、インパクト抜群の、あの検事服が飾られていた。そう、事件の現場は、御剣検事の執務室なのだ


■ 事件の現場は御剣検事の執務室! イトノコギリ刑事をパートナーに真相を追求せよ!

 同日。時間が経って、電気が付いて明るくなった執務室。鑑識班が被害者の写真を撮り、室内に証拠が残されていないか丹念に調べている。御剣検事は部屋の中央に立ってその様子を眺めていた。そこへ「ウォォォォ!」と声を張り上げながら、ドタドタと糸鋸(イトノコギリ)刑事(以下イトノコ刑事)が入ってきた。イトノコ刑事は所轄書の刑事で、御剣検事を敬愛してやまない。「逆転」シリーズでもおなじみのキャラクタだ。

 イトノコ刑事は、事件うんぬんよりもまず、御剣検事の事が心配なようだ。「顔色が青ざめているッス!」と心配し、「あぁ、御剣検事の部屋がひどい有様ッス!」 と、御剣の部屋が荒らされていることに怒っている。相変わらずの御剣検事への愛情の高さである。

海外出張から帰ったばかりの御劔検事は、自分の検事室で謎の人物と鉢合わせになる。さらに部屋には死体が残されていた。慌ててやってきたイトノコ刑事をパートナーに、事件を探りはじめる。この第1話でのイトノコ刑事は操作のガイド的な役割を担っている。会話すれば捜査の基本やボタン操作方法などを教えてくれる

・「ロジック」―― 情報をまとめて真相へと近づいていく!

こちらがロジックの画面。下に3つあるのが情報だ。ここから2つを選んで、まとめるを選ぶとロジックがまとめられていく

 イトノコ刑事が騒ぐなか、御剣検事は静かに考えを巡らせていた。彼が思案しているのは、“なぜ私の執務室で事件が起きたのか”だ。ここで、画面がキラリと光って、光る玉のようになって吸い込まれていった。疑問に感じた重要な情報が、頭の中に入ったのだ。次に御剣検事は執務室の鍵を手に取り、“ドアには鍵がかかる。偶然入ることは不可能だ”と考える。これも情報として同じように収まっていった。

 情報をうまくまとめて真相へ近づいていくのが、「逆転検事」の醍醐味「ロジック」だ。収集した情報はロジック画面にブロック単位で収まっている。必要な分を選択して最後に「まとめる」を選ぶ。すると、情報を表わす光の球が2つ浮かび上がり、ぶつかり、収縮していく。

 御剣検事はこの2つの情報から、「執務室は機密保持のため、鍵が掛かるようになっている。この部屋で事件が起きたこと、偶然では済まされまい!」と考えをまとめていった。そしてまとめた情報から、「犯人の目的は? なぜ私の執務室で事件が起きたのか?」という、もっともな疑問を生み出した。2つの情報をロジックによってまとめたことで、あらたな1つの情報ができあがったわけだ。

 ロジックは収集した情報が個別に表示されているだけで、基本的にはノーヒント。プレーヤーはロジックに入っている情報を眺めて、「この情報とこの情報を組み合わせれば、御剣検事ならこういう考察をしてくれるんじゃないだろうか!?」と予想して組み合わせていくことになる。


御剣検事の真剣なまなざしがカットイン。情報が光となって集まり融合していく。正しい組み合わせをまとめれば、真相に1歩近づき、新たな展開を見せる
ロジックで不正解の組み合わせを選んでしまうと、上画面の左上にある真相ゲージが減ってしまう

 私はこの体験プレイのとき、常にしゃべりながらプレイして、ボイスレコーダーを使って声でプレイ模様をメモするというスタイルを取っていた。ロジックを解いているときに喋っていた言葉を書き出してみよう。

 「さぁロジックだ。いっぱい情報が集まったぞー。“犯人の目的は?”、“拭き取られた指紋”、“もうひとつの拳銃”、“争った形跡”、と4つもあるね。これがまとまるのかぁ……。うーん。“もうひとつの拳銃”と“争った形跡”というのは、こう、犯人と被害者が争って撃ち合った結果、弾痕が2つできて、残されていた物とは別に拳銃があるのでは、というような。そういう考察になってくれるんじゃないだろうか……。2つを選択して、まとめる! ……あぁ、真相ゲージが減ったー! ダメだー。うーん……。あ! それなら、こっちとこっちをまとめるといいんじゃないかな? どうかな!?」

 とまぁ、こんな感じだった。個別の情報と情報を、自分の想像で保管して繋がりを見いだしていく。ゲームでも小説でも映画でも、途中で、「これはもしかして、こういう展開になるんじゃないかな?」とひらめくことがあるだろう。「逆転検事」は、そのひらめきをロジックに活かすことになる。ロジックを繋ぎ合わせていくために必要なのは、プレーヤーの発想だ。ある意味、プレーヤー=御剣検事となり、同じ立場に立って考えていくことになる。

 ロジックはうまく繋がらないものを選んでしまうと、真相から遠ざかってしまったということで「真相ゲージ」が減ってしまう。ゲージが無くなってしまったらゲームオーバーだ。そのため、適当に組み合わせて強引に進めるという手段はあまり使えない。

 ちなみに、組み合わせる情報は2つだ。3つとか4つとかを1度に組み合わせるということはないということだ。ただし、2つの情報をまとめて新しくできた情報を、さらに別の情報にまとめていくような、順番に複数の情報を扱うということはある。

 第1話はチュートリアル的な意味合いが強いので、御剣検事側から「そろそろロジックをまとめてみよう」といったように促してくれるのだが、先の話になってくると自発的にやらなければいけないのだろう。どのタイミングでまとめていくべきか、そもそもロジックをまとめるための情報がちゃんと集まっているのかどうか、もっと捜査で調べなければいけないのか、それとも人と話すのか? 証拠品を調べるのか? そうした迷いどころも出てくるはずだ。なかなか歯ごたえのある要素になっている。


捜査パートの画面。タッチパネル側にある上面図をタッチペンでなぞれば御剣が自由に動き回る。十字ボタンでもタッチペンでも操作可能だ
怪しい箇所をどんどん調べていこう。何か見つかれば、ロジックの情報が増えたり、証拠品ファイルが増えていく

・「捜査パート」―― 自分の手で御剣検事を動かして捜査する!

 初めてのロジックを体感したあとは“捜査パート”が始まった。事件現場を捜索して証拠品や情報を集めていく。捜査パートの画面では、御剣検事を自分で動かせる。タッチペンでタッチパネルの上下左右にタッチして操作するか、十字ボタンでも操作可能だ。自由に気になった場所を調べたり、人に話しかけたりできる。逆に言えば、自由なだけに見落とさないよう、細かく調べていかなければならない。先に進めず詰まってしまうと、どこもかしこも怪しく思えてくるものだ。

 自分でキャラクタを操作して動き回れるのは、「逆転」シリーズにはなかった新鮮さがある。事件現場全体が見渡せる画面の中で、御剣検事が走り回る。イトノコ検事がその後ろを、まるでRPGのパーティーメンバーかのようについてくる。その動きは軽快でかわいらしい。特に、御剣検事の後ろをドタドタとついてくるイトノコ刑事が健気でいい感じだ。

 この捜査画面では、思ったよりもキャラクタがいろんな動きを見せてくれる。これまでの「逆転」シリーズだと、アドベンチャーテイストの画面でキャラクタの上半身の動きしか基本的に見られなかったのだが、「逆転検事」ではディフォルメされてはいるものの、全身の動きでやりとり全体が見られる。「逆転裁判」になかった“場面の動き”が見えて面白い。

 メニュー画面には、パートナーという枠にイトノコ刑事が表示されている。話や場面によって別のパートナーも登場するのだろう。捜査中にパートナーと会話することもできる。イトノコ刑事は「捜査のプロとして的確なアドバイスをするッスよ!」とアピールしてきたのだが、御剣検事は「暇な時は声をかけてみるか」と、さらりと受け流す。遊んでいる側は「暇な時だけなのか!」と自然にツッコミたくなるというもの。かわいそうなイトノコ刑事だが、それがまたいい。「逆転」シリーズはコミカルな会話も魅力だが、それは「逆転検事」でも健在だ。

 早速現場を調べていく。現場には見るからに怪しい箇所が散らばっている。タッチペンで御剣検事を向かわせて調べてみる。まずは床に落ちている拳銃だ。明らかに凶器ではないかと思える。拳銃を調べると、イトノコ刑事が「自分、これをどこかで見たことがあるような気がするッス」と言い出した。さらに「あ、思い出したッス! 自分も同じ拳銃を使ったことがあるッス!」とイトノコ刑事は話す。ボケの効いた言い回しだが、要するに警察官が携帯している拳銃というわけだ。ここで、拳銃の情報がロジック画面に加わった。

 続いて被害者を調べる。被害者をアップに映した画面になり、自分で気になる箇所を指定して調べていく。「逆転」シリーズでもおなじみの画面だ。被害者のそばには黒い手帳が落ちていた。手帳を調べてみると、またもやイトノコ刑事が「自分も同じ手帳を持ってるッスよ。奇遇ッスね」と話し出した。つまり警察手帳だ。イトノコ刑事のいい味わいをしたボケっぷりにも相当な磨きがかかっていて、遊んでいると、自然とツッコミを入れたくなってくる。「奇遇とかっていう問題じゃないぞ!」と私は遊びながら自然に声に出していた。

 警察手帳を調べたことで、被害者の詳細が判明した。被害者は29歳の刑事だ。ここで、被害者が刑事だったという情報がロジックに加わる。また、被害者の体を調べていくと、「死体の所見メモ」という証拠品ファイルも加わった。ロジックに加わる情報と、証拠品のファイルは別のものだ。捜査を進めて現場を調べていけば、情報も、証拠品ファイルも増えていく。

証拠品ファイルは、3D画面で詳細を調べることができる。入念に調べた結果、新たなロジックの情報が手にはいることもある

・「推理」―― 現場の中に隠れる“ムジュン”を推理し、暴く!

 ロジックと並ぶ「逆転検事」の新要素が、「推理」だ。これは、捜査現場の状況にムジュンを見つけて、つきつけるというもの。証拠品ファイルに記されている詳細と、現場の状況とで食い違っている、そういうムジュンを暴く時に「推理」を使う。

 怪しいと感じる場所にカーソルを合わせ、そこにムジュンがあることを示す証拠品を選んでつきつける。例えばこの第1話の事件現場では、被害者の死体には腹部を撃たれて貫通したあとがあるが、反対側の壁にかかっている検事服を飾った額縁にも弾痕が残っている。そして、落ちていた拳銃を調べると、弾は1発しか発砲されていないことが判明する。これは明らかなムジュンだ。

 ムジュンしている場所に証拠品をつきつけると、「これだ!」というボイスとともに推理が展開される。うまくムジュンを証明できる証拠品を選べば、ムジュン点が明らかになって新たな展開を見せるというわけだ。ただし、不正解の証拠品をつきつけてしまった場合は、真相ゲージが減ってしまう。

 この推理をうまく展開するのにもやはり、プレーヤーの想像力が必要だ。証拠品ファイルやロジックの情報、人物との会話など、あらゆるところから、事件の詳細をつかんで流れを想像し、御剣検事を導いていく。

現場に隠された“ムジュン”を暴く「推理」。怪しい箇所をカーソルで選び、その箇所のムジュンを証明する証拠品をつきつける

・「対決パート」―― 犯人はイトノコ刑事!? 揺さぶり、つきつけて、ウソやムジュンを暴け!

被害者と面識がある優木検事。爽やかなスポーツマンのようだが、どことなく濃いキャラクタをしているのは、「逆転」シリーズならでは
関係者と意見が対立した場合は、「対決パート」が始まる。相手の意見にひそむウソやムジュンを暴く、真相追求のパートだ

 捜査を進めていると、突如見慣れない男性が部屋に飛び込んできた。被害者の死体へ駆け寄り、「リョウ! どうしてなんだ、どうしてこんなことに!」と、取り乱している。彼は、御剣と同じく検事をしている優木検事。被害者とは親しくしていたようだ。

 優木検事はスマートな体型で、爽やかなスポーツマンのようだ。だが、頭にはヘアバンドをつけ、襟を立てたシャツに、大きなメダルのようなものがついたネックレスと、「逆転」シリーズならではの濃いキャラクタをしている。彼は手に白いジャケットを持っていて、ことあるごとにジャケットをババッとひるがえす、いわゆるジャケットプレイを激しく行なう。ユニークな人物だ。

 優木検事も捜査に協力してくれるようだ。だが、彼はある証拠から、イトノコ刑事が犯人だと主張しだした。確かにイトノコ刑事は、普段から掃除するために御剣検事の部屋に出入りしている。なんと、「休日の半分は御剣検事の部屋の掃除に費やしているッス!」という会話まであった。どれほど、御剣検事への愛情が深いのか……。というわけで、そういった事を踏まえ、イトノコ刑事が怪しいというわけだ。だが、イトノコ刑事が犯人のはずはない。

 このように関係者と意見が対立したときは「対決パート」が展開される。「逆転」シリーズの「法廷バトル」のように、相手の意見を聞き、そこにゆさぶりをかけ、おかしな点に気づいたらそれを示す決定的な証拠をつきつけてムジュンを指摘する。もちろん、うまくムジュンを指摘できないとゲージが減少してしまう。

 「対決パート」の面白さは、「逆転」シリーズの「法廷バトル」の面白さそのものだ。証言をよくチェックし、怪しいところでゆさぶりをかけ、決定的なムジュンをつきつける。優木検事のジャケットプレイもバッ!バババッ!っと激しくなっていく。もちろん、対決が進んでいけば音楽も盛り上がっていく。「逆転」シリーズでも追求のテーマ曲がプレーヤーのテンションを一気に高めてくれていたが、そこは同じ。「逆転検事」ではここぞという場面で、御剣検事のテーマこと「大いなる復活 ~御剣 怜侍」をアップテンポにアレンジした曲が流れていた。また、追い詰めたときの曲はいくつかあったが、いずれもかなりかっこよくて、どんなに冷静な人でもテンションが上がらざるを得ないほどの曲が聴けた。必聴だ!

 対決パートも終盤に近づいていくと、さらに盛り上がりは加速していく。事件の真相に近づいているという手応え、音楽が盛り上がり、プレーヤーのテンションが高まっていく。「逆転検事」でもクライマックスの面白さは「逆転」シリーズそのものだ。だが、成歩堂龍一が法廷で窮地に追いやられることがあったように、御剣検事もまた窮地に追い詰められる。絶体絶命のピンチをひっくりかえすのは、もちろん“逆転”だ。御剣検事の逆転はロジックの中にある……!


ゆさぶり、つきつける。対決パートは「逆転」シリーズの法廷バトルと基本的に同じ流れだ。うまく異議をつきつけることで、真相に近づいていく


■ 犯人は須々木マコ!? 第1話ながら後半はより、プレーヤーのひらめきが求められる

「逆転」シリーズでもおなじみの“不幸な女の子”こと須々木マコ。今回も見事な不幸っぷりで事件の関係者となる
廊下で捜査が行なわれている様子を観察しているのは、あの亜内検事だ
捜査パートの画面をはじめ、このチビキャラクタ画面でもキャラクタたちはよく動く。御剣を自分で動かせることを含め、「逆転」シリーズよりも全体に動きが感じられるようになっていた

 後半は現場の部屋から、廊下へと「捜査パート」の舞台が広がっていく。そこにはあの亜内検事が様子をうかがっていて、話すこともできる。シリーズファンには嬉しいばかりだ。もちろん亜内検事はたいした役には立たない。だが、それがいい。それでこそ亜内検事なのである。御剣検事の亜内検事に対する反応も面白いので、ぜひ実際にプレイして話しかけてあげて欲しい。

 廊下でももちろん、調べて新しい情報を収集し、ロジックをまとめていく。証拠品も見つけていかなければならない。廊下では、あからさまに怪しい箇所が見えていた検事室内とは違い、より細かにチェックしていくのが大事だ。私はプレイ中、偶然に見つけることができたのだが、かなり見落としやすいのでは、と思えるポイントもあった。第1話から、なかなか歯ごたえのある難易度と感じた。

 ある事実から、検事局の警備員をしている須々木マコさんも事件の関係者として登場する。彼女もまた亜内検事同様、シリーズファンにはおなじみ。須々木さんの人生はまさに不運と敗北と大番狂わせの見本市なのだ。そして今また、イトノコ刑事が紹介した警備員の仕事でも、事件に巻き込まれてしまった。最新作でもやっぱり不運なのである。

 廊下では、彼女にも詳しく話を聞き、ときには彼女の話の中にあるムジュンをつきつけ、入念に廊下を調べ、そしてロジックを組み立てていく。

 廊下に入るといよいよ本格的に自分で調べていくことになる。途中では話を進展させることができず、少しプレイが詰まってしまった場面もあった。詰まっている時に喋っていたのはこんな感じだ。

 「うーん……。ちょっと証拠品ファイルを見てみようかな。いや、ここはマコさんにつきつけてみたほうがいいのかな。この証拠品をマコさんにつきつける! どうだ……。マコさんの不幸なエピソードを聞けたけど、進展はしないっ……! イトノコ刑事はどうかな……。イトノコさんの面白エピソードが聞けただけで、やっぱり進展はしないっ……! ロジックはどうだろう、情報は増えていないかな? 増えていない……。あれぇ? あ、こういう情報があるということは、もしかして……。これをマコさんにつきつけたらいいのかな!? どうかな!? よーし、これだー! 進んだー!!」

 といった具合に、いろいろと喋りつつ考えを巡らせ、試行錯誤して遊んでいた。実際にこんなに喋りながらプレイする人はそうそういないとは思うが、遊んでいるときの頭の中は、これに近いのではないだろうか。頭の中にいろいろな考えが巡り、ある時ピカーンとひらめきが起こる。「逆転」シリーズでもあった面白さだが、「逆転検事」ではそこに推理アドベンチャーの魅力が加わっている。

 なにしろ、ロジック、推理、証拠品、人物の会話と、様々な要素がある。たくさんの要素をきちんと頭の中で整理して、組み立てていく。御剣検事がロジックをまとめるように、プレーヤーの頭の中でも常にロジックが駆け巡る。行き詰まってしまう場面があっても、行き詰まった分だけ、先へ進めたときには嬉しい。ゲームだからこそできる、「自分で操作して新事実を発見し推理していく」という魅力を実感できる。



■ 自分のひらめきが御剣検事を真相へと導く! 新たな魅力が加わった“逆転”!!

プレーヤー自身のひらめきが、御剣のロジックを導いていく。自分で捜査しているという感覚、御剣検事と考えを合わせて捜査する、というテイストが強い。新しい魅力だ

 「逆転」シリーズのテイストや魅力はそのままに、推理を中心とした全く異なる魅力を備えている「逆転検事」。特に印象深かったのは、“ロジック”で情報をまとめることや、自分で御剣検事を操作して調べていくところに感じた、“自分の力で真相に近づいている”という感触だ。

 どのタイミングで何をするべきか。ロジックをまとめるのか、捜査して調べるのか、推理するのか、はたまた証拠品を調べるか、人と話すべきか。それらは自由にできるぶん、自分の考えをしっかり持たなければ何をしていいかわからなくなるかもしれない。だが時には、自分の考えを堅めすぎず、柔軟に構えておかないと、展開を見誤ってしまうかもしれない。「逆転」シリーズファンはもちろん、初心者の人、さらに推理ものが好きな人にもオススメできる面白さだ。自分の推理を活かせる、というのがゲームならではだろう。

 一方で、「対決パート」の魅力は、「逆転」シリーズから受け継がれた確かなものだ。会話をゆさぶり、ムジュンをつきつける爽快感。キャラクタのリアクションの大きさ、展開が進むにつれ盛り上がっていく音楽、異議の応酬、窮地を乗り切った先に待つ真相。テンションが高まっていく。

 今回はチュートリアル的な役割を持っている第1話のみのプレイだったが、第1話にしてはボリュームがあり(なにしろ喋りながらとはいえ3時間かかった)、歯ごたえも十分。一筋縄ではいかないと感じた。それだけに手応えのしっかりとした“面白さ”を感じることができた。ぜひ実際にプレイして挑んで頂きたい。



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(2009年 5月 28日)

[Reported by 山村智美 ]