2017年1月11日 00:00
インテルが8月に正式発表した第7世代Coreプロセッサ“Kaby Lake”。2014年の第5世代Core“Broadwell”から続く14nmプロセスルールの進化版となる14nm+と表現される新たなプロセスルールを採用したことで、前世代よりも1割程度性能が向上している。
そんな第7世代CPUに、Pascal世代の省電力GPU、GeForce GTX 1050Tiを搭載したコストパフォーマンスに優れたゲーミングノートPCが、今回紹介するMSIの「GE72 7RE Apache Pro」だ。
GTX 1050 Tiは、現行のGeForce GTX 10シリーズの中では下位のモデルだが、前世代のGTX 960と同等以上のパワーを備えている。そんなデスクトップPC用のGPUが安価にノートに搭載できるようになるとは、本当に良い時代が来た。
「GE72 7RE Apache Pro」最大の魅力は、ゲーミンググレードのGPU GeForce GTX 1050 Tiと、快適なPCゲーミングに必要不可欠な120Hzモニターを搭載しながら、185,000円前後(税別)という低価格だ。これまでノートにゲーミング性能を確保しようとすると、どうしても20万円超は覚悟する必要があった。それが18万円代という20万円台を大きく割り込む価格で購入できる。問題はどれだけの性能なのかということだ。
セールスポイントはずばり17.3インチ120HzHz対応モニター
まずは外観からチェックしてみよう。ボディは艶消しのアルミニウムシャーシ、上部にはMSIのエンブレム。正面、背面と底面にエアフロー用の吸排気口が付いている。インターフェイスは、USB3.1(Type-C)が1カ所、USB3.0が2カ所、USB2.0が1カ所、ヘッドフォンポート、有線LANポート、SDHC/XC/UHS-I/-II対応SDカードスロット、HDMIポート、ミニディスプレイポート、DVDスーパーマルチドライブ、セキュリティスロットがそれぞれ配置されている。
ディスプレイは17.3インチの非光沢パネル、リフレッシュレートは120Hzで、かつ反応速度も5msとゲーミングモニターとしても十分及第点の性能だ。ゲーミングモニターは120Hz欲しいというFPSゲーマーにとっては、120Hzのパネルが採用されていることはかなり大きな意味があるだろう。
さらにMSI独自のMSI TURE COLORテクノロジーで、100%に近いsRGBでの画像出力を可能にしている。17.3インチというサイズは、普段使いにはやや大きいと感じられる存在感だが、ゲームにはまさに最適なサイズ感で、小さなアイコンやチャットの文字が画面中にちりばめられているMMORPGでもユーザーインターフェイスにわずらわしさを感じることなくプレイすることができる大きさだ。
キーボードは、ゲーミングデバイスメーカーSteelSeries製の10キー付日本語アイソレーションタイプ。マルチカラーLEDバックライトが付いているので、自由な色にカスタマイズすることができる。
基本的なスペックは以下の通り。
【「GE72 7RE Apache Pro」スペック】
CPU:Intel Core i7-7700HQ
GPU:NVIDIA GeForce GTX1050Ti(4GB DDR5)
チップセット:Intel HM175
メインメモリ:DDR4 16BG(8GB×2)
ストレージ:128GB SSD/1TB HDD
ディスプレイ:17.3インチ非光沢パネル、ワイドビュー(1,920×1,200)、120Hz、5ms
光学ドライブ: DVDスーパーマルチドライブ
サイズ:419.9×287.8×29.8~32nn(幅×奥行×高さ)
重量:2.7kg(標準6セルバッテリー含む)
OS:Windows 10 64bit
CPUは第7世代のIntel Core i7-7700HQ。GPUは冒頭にも書いた通り、デスクトップ用のGeForce GTX 1050 Tiが搭載されている。メモリは速度と安定性を兼ね備えた8GBのDDR4-2400が2枚。合計で16GBと大容量を標準搭載。ゲームだけではなく、画像処理や動画編集などメモリを使う重い処理でも力を発揮してくれる。
また、無線LANアダプタとして最大433Mbpsの伝送速度が可能な、インテルDual Band Wireless-AC 3168アダプタ(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)が搭載されている。有線LANはRivet Networks Killer E2500 GBLAN+Killer Shield K9000で、ゲームに必要な安定性と速度を実現している。
多数の機能を持つ本機だが、その機能の制御とカスタマイズはすべて「MSI DRAGON CENTER」にまとめられている。起動すると、常にタスクトレイにあるので、そこからPCのモニタリングや、キーボード、画面、スピーカーの調整などが可能だ。
ゲームベンチマークでは好成績! VRマシンとしてはやや力不足か
次にゲーミングPCとしてどの程度の実力があるかを、定番のベンチマークソフトで調べてみた。「3DMark」のDirectX 12対応ベンチ「Time Spy」では、「2,457」をマークした。Futuremarkの公式ページでは、HTC ViveやOculus Riftのミニマムスペックが「3,362」とされているので、VR機を使うにはややパワー不足といえるが、ノートPCとしてはかなり優秀なスコアだ。
それ以外のベンチマークでは、ハイエンドPC向けにDX11を使ったGPUの高負荷な描画性能がテストできる「Fire Strike」では「6,603」、「Sky Driver」が「19,987」、そして「Cloud Gate」が「21,982」を記録した。GTX 960の「Fire Strike」スコアは7,000代前半なので、かなりいい勝負をしているのではないだろうか。
続いてメジャーなPCゲームタイトルでもベンチマークを計測してみた。条件はすべて1,920×1,080のフルスクリーンで計測している。また、本機には128GB SSDと1TB HDDが搭載されているが、ゲームはすべてHDDにインストールした。
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」では、DX11(DirectX 11)の最高品質で「7,773」、評価は「非常に快適」だった。「FFXIV」では、7,000以上のスコアが「非常に快適に動作すると思われます。お好みのグラフィック設定でお楽しみください。」という最も高い設定になっている。本機では、鏡面反射や、立体感の向上、テッセレーションを使った水の立体的な表現など、ビジュアル面が強化されたDX11モードの最高品質で、「FFXIV」を遊ぶことができる。
下の図で、「最高品質(デスクトップPC)」が「最高品質」を凌駕するスコアを出していることに、疑問を持つ方がいるかもしれない。「最高品質(DX9相当)」は、DX9モードでの最高品質を、DX11モードで描画するとどうなるかという比較用のためのモード。「FFXIV」では、DX11への対応で、DX9よりも描画速度が上がるようになったため、DX9モードの「9,448」よりも高いスコアが出ているわけだ。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
最高品質 | 7,773 | 非常に快適 |
最高品質(DX9相当) | 10,429 | 非常に快適 |
最高品質(デスクトップPC) | 8,948 | 非常に快適 |
高品質(ノートPC) | 10,805 | 非常に快適 |
標準品質(デスクトップPC) | 14,307 | 非常に快適 |
標準品質(ノートPC) | 14,302 | 非常に快適 |
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
最高品質 | 9,448 | 非常に快適 |
最高品質(デスクトップPC) | 10,816 | 非常に快適 |
高品質(ノートPC) | 12,209 | 非常に快適 |
標準品質(デスクトップPC) | 15,355 | 非常に快適 |
標準品質(ノートPC) | 15,263 | 非常に快適 |
カプコンの「ドラゴンズドグ マオンライン」のベンチマークでは、最高品質で「9,686」の「とても快適」。こちらも「FFXIV」と同じ「7,000」以上が「とても快適」となっているので、かなり余裕のあるスコアが出せている。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
最高品質 | 9686 | とても快適 |
標準品質 | 10056 | とても快適 |
低品質 | 10089 | とても快適 |
同じく「バイオハザード6」のベンチマークは、スコア「11635」でランクは「S」。「バイオハザード6」のベンチは「D」から「S」までで「S」が最高設定。「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」では、スコアが「16814」で「すごく快適」という、こちらも高い評価を記録した。
「PSO2キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」はEPISODE4の公開に合わせて公開された「PSO2」の新しいベンチマークソフト。今までのものよりもグラフィックスのクオリティを高めた、「設定6」での動作を検証してみた。結果は「18920」。スコア評価では5001以上で快適に動作するとされているので、こちらもゆとりを持ったプレイが楽しめそうだ。
最後にVR性能はどうだろうか。まずは、VR対応タイトルが快適に動作するVR Ready PCかどうかを測定するベンチマーク「VRMark Orange Room」では、「3,947」を記録した。
VR用のベンチマークはほかに「SteamVR」と「Oculus Rift」の「VR Ready」を試してみた。「SteamVR」では、GPUがやや不安ながらも、「中程度の忠実度のVRレンダリングが可能」という判定が出た。これは推奨スペックは満たしておらず、プレイするためには描画クオリティを下げたり、動作しないタイトルがある可能性があるということになる。NVIDIA謹製の「VR Ready」プログラムでは、バッサリとダメ判定を受けてしまった。Oculus RiftのミニマムスペックはGTX 960同等以上なので、もっと快適に動作すると期待していただけに少々残念な結果となった。
実際に使ってみると、音も操作感もデスクトップと遜色なし
今回は年末に出張が立て込んだこともあり、本機を旅行鞄に詰め込んで、ホテルで普段遊んでいる「FFXIV」で遊んでみたり、YouTubeやニコニコ動画を見たり、Photoshopで作業をしたりと、家にあるメインPCと同じように使ってみた。
出張などで外泊するとき、ノートPCの貧弱なスピーカーに不満を感じることが多いのだが、今回に関しては満点を上げてもいい。ノートPCのスピーカーにありがちなシャカシャカ音ではなく、低音もきちんと聞こえて、Netflixの動画も大変快適に視聴することができた。
「FFXIV」では、DX11最高品質のフルスクリーンで、fps60制限を外してプレイしてみた。フィールドでは80前後、街中の人が多い場所では20~50fpsくらいで推移していた。これは家にあるGTX970と同程度のスコアで、プレイにまったく支障がでないレベル。CPUが最新のものでも、GPUがないノートPCでは、プレイ人の多い場所に行くとfpsが一桁まで落ちるので、GTX 1050 Tiのパワーがいかんなく発揮されているということだ。
これまでも、様々なゲーミングノートPCを紹介してきたが、普段デスクトップPCでやっているような、重い画像処理作業や、複数のクライアントを立ち上げての作業など、デスクトップPCと同等のことをノートでやろうと思うと、パワー不足を感じることが多かった。しかし、ついにデスクトップの性能をそのまま薄型にしたノートPCだとはっきり言えるようなものが、手の届く価格帯に降りてきたという印象だ。
18万円という価格設定を安いと思うかどうかは人によるだろうが、ムーアの法則の崩壊で1台のPCを使い続ける期間が以前よりもずっと長くなっている今、これだけの快適さを手に入れるための投資としては決して高くないと思う。ゲーミングノートPCの購入を検討しているのであれば、ぜひ候補の中に入れて欲しい1台だ。