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「ファンタジーアース ゼロ」3年ぶりの大規模オフラインイベントを開催

2016年のアップデート方針を発表。「バンクェット」決勝では新たな戦術が誕生

3月19日 開催

会場:ベルサール秋葉原

 スクウェア・エニックスは、Windows用オンライン対戦アクション「ファンタジーアース ゼロ(FEZ)」のオフラインイベント「バンクェット2016 ~The NEW AGE AWAKEN~ 決勝大会 in ベルサール秋葉原」を3月19日に開催した。

 このイベントでは、「FEZ」の中でも7対7の歩兵戦に特化したゲームモード「バンクェット」によるゲーム大会が開催。オンラインで行なわれた予選を勝ち抜いた4チームによるトーナメント戦で、日本一のチームを決める戦いが繰り広げられた。

 「FEZ」の大規模なオフラインイベントは2013年以来3年ぶりで、その間には数々のアップデートや、スクウェア・エニックスへの運営移管などもあった。「バンクェット」の大会としても久々で、チーム構成や戦略もトレンドの変化が見られた。また会場では、2016年の今後のアップデート方針についてのプレゼンテーションも行なわれたので、合わせてお伝えする。

【【イベントライブ配信動画】】

10周年に向けて50対50の「戦争」の土台固めから進める

スクウェア・エニックスの内山スグル氏
目指す「FEZ」像は“50対50で仲間と共に勝利を目指す戦争ゲーム”

 まずは今後のアップデート方針に関する話題からお届けしよう。「FEZ」は2015年11月、サービスの運営会社がGMOゲームポットからスクウェア・エニックスに移管されている。その詳細はこちらの記事をご覧いただきたい。今回のイベントでは、「GMウチヤマ」こと内山スグル氏がプレゼンテーションを行なった。

 内山氏は最初に、「FEZ」がサービス開始から今年で10周年を迎えるにあたり、運営側が目指す「FEZ」像は、“50対50で仲間と共に勝利を目指す戦争ゲーム”であると語った。

 本作のメインコンテンツが、50対50、計100人のプレーヤーが1つの戦場で争う「戦争」であることは、サービス開始当初から現在まで変わっていない。しかし現状では戦争で勝利するメリットが薄く、チームプレイよりもダメージやキル数といった個人のスコアを重視する傾向が強くなっている。内山氏は、50人の仲間が結束して勝利を目指すという「FEZ」本来の形を、運営としても目指していくということを強調したわけだ。

 そのため、今後は新要素を実装するのではなく、まず土台固めに注力するという。システム周りでも何ができるのかを改めて洗い出しており、今までにないことができることも確認している。最近行なわれている期間限定イベントに新たなルールが増えているのも、この辺りと関係しているようだ。

 続いて土台固めが必要とされる問題点が挙げられた。まずは100人に満たない“割れ戦場”問題。「50対50のためのてこ入れは必須」としている。またサーバー間の人口格差と戦場数格差についても、てこ入れするとした。

 さらに国家ごとの人口格差について、「人数が多い国は攻めてくるし、他国からも強い国の戦争に乗っかってくる」と問題点を指摘。ただこの対応においては、頑張った国にペナルティを与えるのではなく、少数の国にメリットを与えるなど、方法は考える必要があるとしている。また攻撃側が有利なマップもあるため、「防衛するメリットを考えている」とも語った。

 続いては戦争のシステム関連の問題点について。利敵行為を働くプレーヤーをキックできないという問題について、「(利敵行為は)50対50で戦うところに反しているので対応はするが、悪用されないようにする必要がある。また前線だけに集中したい人もいる」と慎重な調整を加えるとしている。またスキル調整は、「バンクエット中で触れなかったが、手を入れていく。1つ1つのスキルに役割を与えていきたい。一気にやるのではなく少しずつやりたい」とした。

 戦争の勝利の意味という点については、「物をあげるのではなく、勝ちに行きたくなるモチベーションになるものを考えたい」とした。また戦争で逆転が難しいことについて、「みんなの心が折れて、なあなあになる。これも目指す目標に合わない」とし、改良を検討していく。他には召喚の意味が薄くなっていることについて、「アグレッシブに出られるようにする」とし、運用のしやすさで調整を加える方針のようだ。

 そのほか、実装後あまり意味を成していない階級システムや、部隊ポイント等の価値を失った各種ポイントも改修する方針。また「部隊同士や、50対50でどこが強い国なのか、などもやりたい」、「UIは初心者にわかりやすく、既存プレーヤーに使いやすくする」とも語った。

 土台が整った後には、新しい施策も始めていくという。会場では、「例えば……」としていくつかもシルエットを紹介。以前から度々話題には挙がる首都戦らしきものもあり、内山氏は「そろそろたどり着かねばならない場所。どこにオベ立てるのかなど、悩むと思う」と語っていた。

 最後に内山氏は、「土台固めをしてから、10周年ででっかいことをやる。50対50で仲間と勝利を目指すゲーム、をしっかりしていきたい」と述べた。

まず土台固めを始め、イベントを拡充した後、新要素を検討する
“割れ戦場”や人口格差問題にも対応していく
勝利の意味や逆転の難しさ、召喚の価値なども見直していく
階級システムや各種ポイントなど、入れっぱなしの要素も改修
新施策の一部。このシルエットは……?
こちらも新施策。これはプレーヤーならすぐにわかる
2016年はサービス開始10周年。土台固めの後に“でっかいこと”を予定
3月のルーレット景品も紹介。クリスタルの部分が動くギミックもあるそうだ

準決勝第1試合「あいうえおちーむ VS Orphanage」

優勝賞金100万円と特別防具をかけた大会となっている
内山スグル氏とタレントの小森未彩さんが大会を進行

 続いては、「バンクェット」決勝大会の様子をお伝えする。決勝トーナメントは現地で組み合わせ抽選を実施。準決勝と3位決定戦は10分1本勝負、決勝戦のみ3本勝負で行なわれた。

 第1試合は敗者復活戦から勝ち上がった「あいうえおちーむ」対、Cブロック代表「Orphanage」。この2チームは予選トーナメントで1度顔を合わせており、その時には「Orphanage」が勝利している。

 メンバー構成は、「あいうえおちーむ」がウォリアー4、スカウト1、フェンサー2。「Orphanage」はウォリアー3、スカウト3、ソーサラー1。

 「あいうえおちーむ」はフェンサーの「イレイスマジック」でソーサラーの魔法に対応しつつ、「オブティンプロテクト」で耐性を上げ、接触時に当たり負けしない形を作っていく。序盤から「Orphanage」がじわじわ押される展開で、先にキルを取ったのは「あいうえおちーむ」。「Orphanage」も素早くキルを取り返していくも、キル数は「あいうえおちーむ」が優勢に進める。

 中盤からは逆に「Orphanage」が押し込んでいき、「あいうえおちーむ」を壁際まで追い詰めた。しかし押していたはずの「Orphanage」が乱戦の中でキルを献上する形に。その後は断続的に戦いが続いていくが、終盤に9対8でリードしていた「あいうえおちーむ」が冷静に対応し、最後の1キルを取って勝利を決めた。

 「あいうえおちーむ」で目を引いたのが、唯一のスカウトが放つ「ピアッシングシュート」。「バンクェット」ではあまり使われないスキルであり、またスカウトは短剣スキルとのハイブリッドにすることが多い中、常に弓スキルで戦っていた。ウォリアーは「クランブルストーム」を持っている人が多く、味方の救出スキルも充実しており、非常に守りが固い。「Orphanage」は氷からの連携が作れず、相手の変則的な構成に対応しきれなかったという印象だ。

「あいうえおちーむ」の「ピアッシングシュート」が実に有効に機能しており、会場の度肝を抜いた

準決勝第2試合「まってください VS Re:member」

 第2試合はBブロック代表「まってください」対Aブロック代表「Re:member」。メンバー構成は、「まってください」がウォリアー4、ソーサラー1、フェンサー1、セスタス1。「Re:member」がウォリアー2、スカウト3、ソーサラー1、フェンサー1。

 序盤の接敵で「Re:member」が一気に3キルを奪うと、一瞬引いて体制を確認した後、そのまま「まってください」の陣地へ押し込み、ほぼ全滅させてしまった。10対0という、あっという間のパーフェクトゲームだった。

 「まってください」はセスタスを入れているのがポイント。ソーサラーの「ブリザードカレス」で足止めしてから、ウォリアーの「シールドバッシュ」、さらにセスタスの「アースバインド」で足止めして拘束時間を伸ばす作戦だ。しかし、「アースバインド」はある程度敵に接近する必要があり、そこを「Re:member」に狙われて早々に倒されてしまった。

 さらに「Re:member」はスカウト3の構成で、短剣の妨害系スキルが同時多発的に入ると、相手は対応が難しくなり、一方的な展開になりやすい。一瞬の勝負とはいえ、「ウォリアー2人という少ない構成で最初の打ち合いを完璧にしのいだ「Re:member」の実力は相当に高い。

スカウト3の構成がはまり、あっという間の決着となった

3位決定戦「まってください VS Orphanage」

 3位決定戦は、「まってください」対「Orphanage」の組み合わせ。メンバー構成はどちらも準決勝と変わらず、「まってください」がウォリアー4、ソーサラー1、フェンサー1、セスタス1。「Orphanage」はウォリアー3、スカウト3、ソーサラー1となっている。

 序盤から「Orphanage」が押し込む展開で、「まってください」を水場まで押し込んでいく。しかし「まってください」が耐えて倒されたメンバーの復活が間に合い、無理に攻めすぎた「Orphanage」の方に大きな被害が出てしまう。

 「Orphanage」が一旦引いて態勢を立て直す中、今度は「まってください」の攻めがかみ合わず、突出したセスタスが倒されてしまう。反転した「Orphanage」は再び押し込むと、今度はスカウトの妨害スキルが見事に連携し、一気に勝負を決めた。短時間の戦闘だったが、「Orphanage」のスカウトが妨害系スキルで戦線を分断し続け、優位に立ち続けたのが勝因だろう。

「Orphanage」は序盤の無理な攻めが危なかったが、その後は安定した強さを見せた

決勝戦「あいうえおちーむ VS Re:member」

 決勝戦は「あいうえおちーむ」対「Re:member」の組み合わせ。決勝戦は試合ごとにクラスチェンジ可能というルールで、試合結果を見てチーム構成やスキルを変えることが許可された。

 第1試合の構成は、「あいうえおちーむ」はウォリアー4、スカウト1、フェンサー2で変わらず。対する「Re:member」はウォリアー3、スカウト3、フェンサー1と、ソーサラーを抜いてウォリアーを追加した。準決勝で「あいうえおちーむ」はフェンサーの「イレイスマジック」で強いプレッシャーを与えていたが、相手にソーサラーがいなければ「イレイスマジック」は無駄なスキルになってしまう。「Re:member」はそれを狙った構成だ。

 序盤は互いに散発的な戦いでキルを奪い合う形になるが、徐々に「あいうえおちーむ」がキルを重ねていく。接敵した瞬間は「Re:member」が有利な形になっていることが多いのだが、「あいうえおちーむ」のスカウトによる「ピアッシングシュート」が冴え、攻撃を仕掛けようとしていた敵だけを一掃。残された敵だけに火力を集中して確実にキルを取るという形が綺麗にできていた。

 フェンサー2人を擁する「あいうえおちーむ」は、まとまって動かないでも力を発揮しやすい上、近接攻撃系が6人という構成のため、「Re:member」のスカウトも妨害系スキルを入れづらい。さらに危ない時には「あいうえおちーむ」のスカウトから、遠距離スキルの「ピアッシングシュート」によるサポートが飛んでくる。「Re:member」は最後までペースを掴めず、第1試合は「あいうえおちーむ」が勝利した。

 第2試合は「あいうえおちーむ」は構成変わらず、「Re:member」はウォリアー2、スカウト3、ソーサラー1、フェンサー1と元の構成に戻してきた。たとえ「イレイスマジック」が脅威であっても、攻めるきっかけを作り、自分たちのペースで戦おうという判断だ。

 戦いは序盤、「Re:member」が押し込んでいく展開に。しかし押してもキルに繋がらず、「あいうえおちーむ」は水場まで押し込まれても広く展開してスカウトの妨害系スキルを警戒し、崩れにくい体制を作る。徐々に「あいうえおちーむ」が押し返すと、壁際の戦いで1試合目と同じ「ピアッシングシュート」による戦力分断に成功。着実にキルを重ねていく。

 終盤になっても「あいうえおちーむ」が6対1と大差でリードしつつ、「Re:member」を押し込んでいく。競り合いの中で「あいうえおちーむ」が1デッドしたが、それでも状況的に有利と判断した「あいうえおちーむ」は敵の水場まで攻め込む。そこで手痛いカウンターを受け、「Re:member」が一気に5キル。「あいうえおちーむ」が7対6で辛うじて1キル有利の状況に。

 残り1分を切って「あいうえおちーむ」は時間切れを狙って引いたが、終了直前に「Re:member」が一か八かの突撃で2キルを取り逆転。慌てて「あいうえおちーむ」も転身したが、乱戦で僅かに競り負け、2戦目は「Re:member」が取った。「あいうえおちーむ」は最後の最後でやや弱気になったことを悔やむ内容となった。

 第3試合はどちらのチームも構成変わらず。「Re:member」はスカウトの妨害系スキルで崩すのを控えたのか、とにかく固まって動いているように見えた。戦場を広く使って敵を分散させたい「あいうえおちーむ」は攻めあぐね、中盤までには「Re:member」が6対1と大きくリード。しかし中盤で大きく崩されて一気の逆転を許してしまう。

 そのまま勝ちきりたい「あいうえおちーむ」だったが、「Re:member」も態勢を立て直しつつ反撃。中盤戦の激しい打ち合いの結果、9対9のイーブンに。先に1キルを取った方が勝ちという状態の中、互いに牽制を加えつつ慎重な戦いが続く。

 残り時間が少なくなってきたところで、強気に押していったのは「あいうえおちーむ」。「Re:member」はメンバーが離れないよう、水場に押されても固まって1キルだけを狙っていたが、最後は「ピアッシングシュート」で1人が分断されてしまう。最後まで攻め続けた「あいうえおちーむ」が落ち着いて1キルを奪い、優勝を決めた。「Re:member」も1キルまであと僅かという惜しいシーンがあり、まさに紙一重の勝負だった。

第1試合は「あいうえおちーむ」が終始優勢に運び、安定した強さを見せた
第2試合も有利に進めた「あいうえおちーむ」は、弱気になったところを「Re:member」に突かれた
第3試合は中盤以降、ラスト1キルを争う緊張感満点の試合となった

バンクェットのトレンド分析。新たなブームは生まれるか?

優勝した「あいうえおちーむ」のメンバー

 優勝した「あいうえおちーむ」には、賞金100万円と優勝メンバー専用の特別防具が贈られた。「あいうえおちーむ」の「みょるにる」選手は、「決まったチームで戦うのは初めてだった」とコメント。長年のチームではなかったことも、新たな戦術の誕生に寄与したのかもしれない。2位の「Re:member」からは「練習の成果が出せなかった」という声も聞かれた。やはり戦いにくい感覚を持っていたのだろう。

 「あいうえおちーむ」の戦術の特長は、基本が受け身の態勢にあることだ。「ブリザードカレス」による足止めや、スカウトの妨害系スキルで敵の態勢を崩してから攻め入るのが「バンクェット」のセオリーだが、「あいうえおちーむ」は自ら相手に切り込むことをせず、敵に先手を取られても構わない構成になっている。

 敵と打ち合いになりそうな時には、フェンサーの「イレイスマジック」と「オブティンプロテクト」で防御を固める。いざ打ち合いになると、「ピアッシングシュート」で動ける敵を減らし、攻撃を集中してキルを奪っていく。もし打ち合いが不利と見れば、「ピアッシングシュート」や「クランブルストーム」、フェンサーの牽制によって敵のチャンスを潰していく。

 この動きの実現には、攻防の判断をチーム全体で意思統一する必要がある。「あいうえおちーむ」は進退の切り替えが見事で、フェンサーのルーンなどで状況が有利と見ると、全体が一気に攻めの動きに変わる。またフェンサーや大剣ウォリアーの機動力を活かし、戦場を広く使って敵を散らすように引き付け、「ピアッシングシュート」で完全に戦力を分断させるという作戦も見事だ。独特な構成ながら動きがよく練られていて、対戦相手は対応しきれなかったという印象だ。

 これに対する方策としては、「Re:member」のようにチームがまとまって動き、分散させないこと。同時に、打ち合いで負けない構成にすることだろう。ウォリアー4、フェンサー2という高火力に対抗するには、ウォリアーの数で勝るか、同数のフェンサーでテクニックの勝負に持ち込むかだろう。

 理想的なのは、起点となる「ピアッシングシュート」を封じることだが、機動力のある前衛職で固められた「あいうえおちーむ」に対してはスカウトによる妨害も難しい。弓で撃ち合うというのも現実的ではないので、やはり当たり負けしない火力で対抗するのが最有力かと思う。

 「あいうえおちーむ」の戦術には高度な連携が必要になることからも、これが今後の定番構成になるとは思えない。ただ「ピアッシングシュート」中心の弓スカウトを入れ、氷系ソーサラーなしで戦場を広く使うという戦術が成立し得ることは証明された。今回も「バンクェット」の可能性を広げる戦いが見られたことを、1プレーヤーとして喜びたい。

「FEZ」のイベント恒例の「行くぜ! メルファリア!」で終幕
恒例のリアル掲示板は横長の1枚(リンク先は高解像度の画像です)

(石田賀津男)