ニュース

ライアットゲームズ ディレクター齋藤亮介氏ロングインタビュー

気になる日本サービスの行方。「桜が咲くころまでに日本サーバーを出したい」

気になる日本サービスの行方。「桜が咲くころまでに日本サーバーを出したい」

「声優情報は出さない」という斎藤氏
ツイステッド・フェイトは日本語版ではフェイトになる
Facebookページでは、少しずつ日本語訳が公開されている
ライフスティールはフィードバックの結果、“物理吸命”から変更されるようだ

――LJL 2016は日本サーバーがまだ立ち上がっていない段階で始まることになるわけですが、ずっと海外サーバーでやるのですか? それとも途中で切り替えるのですか?

齋藤氏:そこも、どこかのタイミングで日本サーバーが立ち上がりますので、協議しながらですが、途中で切り替えていくことになると思います。

――その場合、バージョンの違いは問題にならないのですか?

齋藤氏:Riot Gamesでは世界的な規模でパッチをあてていきますので、ピーク時間の時差の問題で若干のずれはありますが、試合をするときのバージョンは日本だろうとアメリカだろうと同じです。

――その日本サーバーについてですが、いつ立ち上がるのかというところが知りたいと思いますが、準備状況はいかがですか?

齋藤氏:着々と進んでおりますというのが状況です。いつ出すかという話も、本来はRiot Gamesは世界でどこでもしないものなのですが、ちょっと日本でここまで遅れていて、プレーヤーのフラストレーションも溜まっているのを理解しておりますので、私もいろいろと交渉をして、まあこういった形で表現することになるのですが、“桜が咲くころまでには日本サーバーを出したい”と思っております。

――それはOBTという形ではなくて正式サービス?

齋藤氏:OBTと正式サービスって明確な線引きがないと思うのですが。

――マネタイズしたらそれはもう正式サービスだと思います。

齋藤氏:そうですね。どちらにしても同じ時期になると思います。

――いまモニタリングテストを本社の中で実施していますよね。私も1度拝見させていただきましたが、現在どのぐらいの回数やられているのですか?

齋藤氏:10月と11月で3回やりました。

――実際にやられてみて手応えはいかがですか?

齋藤氏:そうですね。まずプレーヤーの皆さんからは真摯なフィードバックをいただいています。やはり英語だとなんとなく理解していたんだけれど、日本語版を見て「ああそういうことだったのか」と理解される方もいらっしゃるので、そこは好評をいただいています。ただ一方で、このローカライズ部分はどうなんだろうというフィードバックも頂いているので、そこはサーバーをリリースするまでには解決しようと思っています。

――そのあたりのフィードバックを受けて、場合によってはテキストのみならず、音声の再収録も行なったりするわけですか?

齋藤氏:まずはテキストの改善が主になるかと思います。モニタリングテストに来た方に説明させていただいているのですが、実は日本語版にするにはクライアントに制約条件があるんですね。シングルバイト、ダブルバイトの違いから文字数の制限があるのです。例えばもう公開したチャンピオンで言うと、“ツイステッド・フェイト”というのがあるのですが、これ英語だと収まるのですが、日本語でカタカナにした場合は収まらないのですね。なので単に“フェイト”になってますとか。

 ほかにも最近ちょっと話題になったところでいうと、“ライフスティール”、これをカタカナにすると8文字になってしまいます。これを頻繁に使うとけっこう収まらないという問題があって、そういったところがあって、割と漢字中心にしようという方針でローカライズをしているところがあるのですが、これが漢字が多すぎてわかりにくいとか、訳がそもそもちょっと違うんじゃないのというご意見も頂いていたりしますので、ここは適宜柔軟に字数制約も考えながら変えていきたいとは思っています。

――吹き替えも結構イメージが違うという意見がありますが、吹き替えについては制限は一切ないのですか?

齋藤氏:吹き替えには特にないですね。

――ということは、依頼した声優さんの個性をたっぷり活かした吹き替えになっているということですか。

齋藤氏:そうですね。声優さんの選定に当たっては、当然社内でも色々上がりましたし、去年の東京ゲームショウの後に、ネットなんかにこのチャンピオンはこの声優さんがいいなというのが出ていたのを実は割と見ていまして(笑)、それもある程度反映する形になっております。もちろん、皆さんいろんなことを言われるので全部が全部そうはならないのですが、やはりそこらへんはまさに今おっしゃっていたように、今英語版でプレイしていた方って日本語を見た時にどうしても最初に「あれちょっと違うんじゃない?」という違和感を持つと思うのですね。漫画や小説から映画化されたときに感じるように。それはたぶん避けられないことだと思いますが、逆に日本語版ならではのところで、日本のプレーヤーの方と一緒に作っていくようなことをするのがいいかなと思っております。我々としては当然プロフェッショナルとしてのローカライズは進めますが、当然プレーヤーの声も聴きながら、そこは柔軟に対応していきたいと思っています。

――声優さんは何人ぐらい起用されたのですか?

齋藤氏:いまチャンピオンが128体くらいあるのですが、60人くらいの声優さんが参加されていると思います。

――ということは、何人かの声優さんは、複数のチャンピオンの声を担当している?

齋藤氏:幾人かはあてていただいています。

――起用声優リストはいつくらいに発表するのですか? 今はまだ小出しなのでやきもきしているファンの方は多いと思うのですが。

齋藤氏:起用声優リスト一覧みたいなものは発表しません。

――おー! 今後、少しずつ出していくわけではなくて、基本的に出さない?

齋藤氏:ビハインド・ザ・シーンでは、収録している背景にはこの声優さんがいて、こういう想いでやっていただいてますよというのを特集したみたいな形ですね。だから例えばほかのチャンピオン紹介としてアニーとか、ツイステッド・フェイトとか、ナサスとか出してますが、声優さんが誰ですとは発表していません。

――それはどうしてですか? それも1つ話題のネタになりますよね?

齋藤氏:それはですね、我々、ゲームの楽しさを伝えたいのであって、声優さんで売るのではないという方針だからです。当然皆さんがそこに注目されるのはわかるのですが、それはみなさんで盛り上がってくださいと。我々の意図として盛り上がってほしいのはゲームですというところです。

――そのポリシーは潔いですよね。今の日本のマーケティング手法だと、絶対に出していく要素のひとつですからね。私も、モニタリングテストで、担当の方に「これ聞いてみてください」と1人のチャンピオンの声を聞いたのですが、聞いた瞬間、キャラ名が飛び出てくるような、誰もが知っているような超有名声優さんの声で驚きました(笑)。

齋藤氏:まあ多かれ少なかれ見破られちゃうと思うのですけどね(笑)。

――多分、声優好きな方は、このチャンピオンはこの声優だよとリスト表みたいなものをすぐ作るでしょうね。ただ、ライアットさんの方からアピールすることはないということですね。

齋藤氏:ないですね。

――現在、モニタリングテストを実施中ですが、一般のユーザーが自宅で遊べるようなクローズドβテストはいつからやる予定でしょうか?

齋藤氏:そこも具体的な日取りはお伝えできませんが、まあおそらく来年になってから桜の花が咲くころまでのどこかで行なわれると思いますね。

――モニタリングテストは日本サーバーではないですが、CBTの段階では日本サーバーになりますか?

齋藤氏:はい。

――CBTはどれぐらいの規模感で実施する予定なのでしょうか?

齋藤氏:規模感は実は今調整中でして、マッチメインキングがちゃんとできるように十分な規模の数は確保しようと思っております。今も実際には我々が把握しているだけで、日本からNAサーバーでプレイしてくださっている方だけでも十分数はいますので、逆にその中の一部になってしまうのがいいのかどうかとか、そういったことも踏まえて数としてどこらへんが最適なのかという検討中ですね。

――CBTではどういったコンテンツが遊べるようになるのでしょうか?

齋藤氏:基本的には皆さんが普通に遊んでくださっているSummoner's Rift。あとはARAMと呼ばれる5人が1カ所でがちゃがちゃっとやるHowling Abyssは開けようと思っています。

――日本サーバーはどういった形で設置することになるのでしょうか? データセンターはすでに選定済みで、もう設置済みだったりするのですか?

齋藤氏:はい。ほぼ選定済みですね。今はもうスペースは押さえているので、いろんなものを設定していく形になります。

――わかりました。気になるのはビジネスモデルなのですが、グローバルと全く同じなのか、それともアバターや何か日本独自のものがあったりするのでしょうか?

齋藤氏:そういう意味ではまずゲーム内はグローバル共通です。いわゆるスキンとか、Riotポイントをお買い上げいただいて、それを収益源とするところはかわりません。各国で若干変わってくるのは、2つあります。1つはいわゆるネットカフェです。ネットカフェにゲームを入れていただいて、プレイしていただいたら付加価値を付けるみたいな要素があったりするのですが、それを日本でどうするかはまだ検討中です。

 もう1つはマーチャンダイジング、グッズとかですね。これを日本独自で企画して販売していくのかというのはまだ決まっていません。もちろん、していきたい方向性では考えていて、そこに関してはグッズ販売だけではなく、アニメとか漫画とかがあるのですが、現段階ではそこはちょっとまずは置いておいて、日本サーバーを出すことに集中して、それがある程度軌道に乗ってからいろいろと手を回そうかなと考えております。

――ネットカフェ対応に対しては、やはり強豪国である韓国、中国では、しっかりとしたシステムが存在し、ユーザーも数多く存在しますが、基本的にはそういった既存のシステムを利用するのでしょうか、それとも独自に組み上げるのですか?

齋藤氏:ネットカフェなどでもLoLがプレイできるようにはしていきたいと検討しています。ただ、日本でのネットカフェというのは韓国や中国にあるPC房といわれるものは若干違っていまして、漫画を読む静かな雰囲気の日本のネットカフェでどれだけ「LoL」をやるのかというところがありますので、その後の展開は利用シーンを見ながら考えていこうと思っています。

――齋藤さんとして、どのような形がいいかなと思っていますか?

齋藤氏:今のところで言うと、ネットカフェではいろんなチャンピオンが使えるとか、プレーヤーがネットカフェに来てお金を払うのだから何らかプラスアルファのメリットがあったほうがいいかなとは思っています。そこはどういったものができるのかは、未定ですがおそらくそういった形がいいのではないかと思っています。

――どのチャンピオンでもいきなり使えるとか?

齋藤氏:そういうことができないかと検討しています。それにはバックエンドのシステムとか、いろいろな仕組みを作らなければなりません。特にPCカフェ周りはまだできてませんね。今はまずメインサーバー、そちらをどう作るかということに日本のリソースや海外のシステム周りの人たちにも注力していただいているので。

(中村聖司)