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酔わない! 楽しい!「Project Moprheus」の完成度を体感

5人で遊べる「PlayRoom VR」、「The London Heist」新章もスゴい!

6月16日~18日開催



会場:Los Angeles Convention Center

巨大な「Morpheus」デモゾーンが設置されていたSCEAブース

 去る3月のGDC 2015で新型の「Project Morpheus」が発表されておよそ3カ月。SCE ワールドワイドスタジオのプレジデント、吉田修平氏が「E3ではたくさんのVRゲームを出したい」と言っていた通り、このE3ではさらにグレードアップしたVRゲームやデモを多数体験できる。

 その中から今回、SCE Japan Studioによる「The PlayRoom VR」とSCE London Studioによる「The London Heist」のそれぞれ新バージョンをプレイすることができ、そのどちらも、PS4におけるVRの可能性を大きく引き出す内容を見ることができた。

みんなで遊ぶVR。「The PlayRoom VR」はPS4の底力を極限まで引き出す!

「The Playroom VR」の画面構成。1台のPS4から、「Morpheus」とテレビに異なる映像を出力している
1対4プレイの様子はこんな感じ
AR Botたちの視点
モンスターの視点

 特に、PS4というゲームプラットフォームの良さを最大限に引き出していると感じられたのが「The PlayRoom VR」の新しいデモだ。

 GDC 2015ではたくさんの小さなAR Botたちが遊びまわるミニチュアの世界を見ることができた「The Playroom VR」だが、今回のデモは多人数参加型のゲーム仕立て。このミニゲームは「モンスターエスケープ」という名前で、モンスター1匹と4人のAR Botが対戦するというものだ。

 巨大モンスターはAR Botの群れを追いかけまわしつつ、頭の動きで道路上の看板などを破壊、地面に叩きつけて攻撃。4人のAR Botたちはスーパーヒーローに変身して、空から投下されるいろいろなオブジェクト(ドラム缶や椅子、机、ピアノなどなど)をモンスターに投げつけて撃退を目指す。「Evolve」みたいな非対称形の対戦ゲームだが、そのルールはとてもシンプルだ。

 このシンプルなゲームの何がスゴいのかというと……、1vs4の対戦が、1台のPS4で完結できるのである。

 どういうことかというと、モンスター役のプレーヤーは「Morpheus」を装着してプレイし、AR Bot役の4人は普通のテレビ画面を見ながらDUALSHOCK 4を使ってプレイするという形だ。このとき、「Morpheus」とテレビには、全く違った視点でのゲーム映像が描かれているのだ。

 AR Botをプレイする4人は、伝統的な俯瞰視点にて、AR Botの目線でプレイ。そこに見上げんばかりの巨大なモンスターが迫ってくる。他方、「Morpheus」を装着したプレーヤーは、巨大モンスターの目線でプレイ。ちょこまかと動き回るAR Botたちを見下ろして、圧倒的な優越感だ。

ゲーム序盤は追いかけっこ。モンスター側は圧倒的優越感だ

港についてAR Botたちが変身!物を投げつけて反撃だ
頭の動きでAR Botたちの攻撃を避けまくり!
がおー、とモンスターになりきってみる

 この2つの異なる視点が、1台のPS4で描画されている。まるで魔法だが、これは「Morpheus」に備わっている「ソーシャルスクリーン」機能の応用によって実現している。通常、テレビ側には「Morpheus」で見ている風景をフルスクリーン化したものが表示される仕組みなのだが、そのかわりに、別の視点の映像をテレビに送っているわけである。

 技術的には、PS4から「Morpheus」に対してはHDMIで映像を送りつつ、テレビ側に映す映像はPS4内蔵エンコーダーでH.264エンコードを行なった信号をUSB経由で「Morpheus」のコントロールボックスに送り、そこからHDMI信号に再変換してテレビに送るという仕組みをとっているという。

 こうして実現されたのは、「みんなで遊べるVR」だ。視界を閉ざされるため孤独な体験になると思われがちなVRも、ソーシャルスクリーンを通じることで皆で体験を共有するどころか、本質的な意味で一緒に遊ぶこともできる。それも自然で、簡単で、とても楽しい方法で。

 その上で、「Morpheus」側はリプロジェクションで120Hz描画、テレビ側は60fps描画を実現しているというのも凄いことだ。絵作りをつるりとした質感に統一して、シェーダー負荷を抑えて作っているにしても、VR映像と通常のゲーム映像を並列で出力できるというPS4のポテンシャルには驚かされるばかりだ。

 ちなみにモンスター側をプレイする人はコントローラーを使わず、「Morpheus」のヘッドトラッキングだけで遊ぶ。モンスターの攻撃は頭突きのみで、AR Botたちが投げつけてくるオブジェクトを避けるのも頭を動かしてスウェーする感じである。いきおい、プレイが白熱すると「Morpheus」をかぶったままグリングリンと頭を動かすことになる。

 筆者の経験上、VRヘッドセットで頭を動かしまくるようなことをすれば速攻でVR酔いになってしまうはずなのだが、「Morpheus」では酔わないのである。ひととおりプレイを終えたあと、全く気持ち悪さがないことに本当に驚いた。

「The London Heist」新章はVR×カーアクション×シューティング!

2つのPS Moveを持ってプレイ
カーチェイス&ガンシューという合わせ技
窓から手を出してサイドの敵を撃破中
クルマのスピード感、助手席の日常感、銃撃戦の非日常感がめまぐるしく交錯する

 GDC 2015でお披露目された「The London Heist」も新バージョンが公開されており、こちらでも「Morpheus」の底力を感じられた。

 「The London Heist」はMorpheus向けのクライム・アクションシューティングゲームで、GDC 2015ではカバーアクションを基調とした銃撃戦を楽しめた。今回の新バージョンではカーチェイス&ガンシューティングの合わせ技で、さらにド派手なアクションを楽しめる内容になっている。

 2本のPlayStation Moveを両手に見立ててプレイする基本操作は同様だが、今回の舞台は爆走する車の助手席。カーラジオのボリュームやチャンネルを変えたり、ダッシュボードを開いて弾薬を取り出したりと、いろいろなことができるのだが、日常生活でも慣れ親しんだ環境であるだけに、目をつぶっていても迷いなくいろいろできるというのが今回のデモにおける面白いところだ。

 デモ開始まもなく、こちらを付け狙うギャングのバイクや車が次々に追い付いてきて、銃撃戦開始。UZI的なマシンピストルを手渡され、窓からにょきっと手を伸ばして五月雨撃ちをお見舞いする。カーチェイスのものすごいスピード感と、車内のリアルな環境もあいまって、凄い臨場感と迫力だ。

 さて、敵車に向かって撃ちまくっていると残弾はあっという間にスッカラカンだ。ダッシュボードや、シート脇に用意された予備マガジンを掴んで銃のマガジンスロットに突っ込むことでリロードするのだが、この車内環境というのが現実で見慣れたものと同じレイアウトを踏襲しているおかげで、わざわざ目をやらずとも「だいたいこのへん」という感覚で、マガジンを掴んで引き寄せることができる。

 実際、デモの最中、筆者の視線は襲い来る敵車にずっと集中していて、シート脇のかばんに詰め込まれた予備マガジンを直接視界に収めたのはほんの一瞬だ。だいたいの位置が把握できているので、わざわざ見ずとも、感覚で手を伸ばすだけでリロードすることができる。

 こういう、非常に「現実と同じ感覚」が作中で実現されているだけに、追い越してくる車両に対してバリバリと銃を撃ちまくり、ドライバーをなぎ倒し、タイヤをパンクさせて爆発四散させるという非現実的なアクションが、より真に迫った体験として成立しているのだ。日常的な感覚があるからこそ、非日常的な体験が際立つのである。

 というわけで、これは本当にすごい体験だった。PS Moveを使ったVRゲームには恐ろしいほどのポテンシャルを感じる。このE3期間中、さらなるVRタイトルの試遊レポートをお届けするつもりなので、お楽しみに。

(佐藤カフジ)