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映画「マッドマックス」、ジョージ・ミラー監督降臨!

来日記者会見を開催。スタッフで最もマッドだったのは、監督自身?

6月20日 公開

「マッドマックス 怒りのデスロード」監督のジョージ・ミラー氏

 シリーズとしては約30年ぶりにスクリーンに蘇る映画「マッドマックス 怒りのデスロード」。6月20日に予定されている公開日を前に、全シリーズ作の監督を務めたジョージ・ミラー氏が来日し、日本メディア向けに記者会見を開催した。

 会見前日の6月4日には本作のジャパンプレミアが開催されているが、カンヌ映画祭での上映イベントよりも印象的だったようで、「日本はエネルギーがたっぷりで、炎が出たりして圧倒された。大きな会場だったし、ロックスターのような気分だったよ(笑)」と感想を述べた。以下では、主な質疑応答を抜粋して紹介したい。

【映画「マッドマックス 怒りのデスロード」】
爆発しまくり、謎改造車が走りまくりのジョージ・ミラー監督最新作は6月20日公開!

ジョージ・ミラー監督一問一答!

ミラー監督は1945年生まれの御年70歳。「マッドマックス」シリーズのほか、「ベイブ」などのファミリームービーも監督している

・撮影でのこだわりは?

 本物にこだわったこと。本物の人が本物の砂漠で、本物の車をぶつけあうことで、どっしりと印象が出るはず。130日間連続で撮影したので、安全の確保は苦労した。

・この撮影は困難だった、というものはあるか?

 実際に、車上に伸びたポールに人がいて、ポールを揺らしながら車と車を乗り移っていくというシーンは撮影が無理だと思った。走りながらの撮影となると少しのタイミングの違いで大事故に繋がるので、最初はCGで合成する案も出ていたが、スタントチームの努力によって完全に安全な状態で撮影できた。このスタントは(主人公マックスを演じた)トム・ハーディーも挑戦している。

・黒澤明監督の映画で何が1番好き?

 「七人の侍」! クロサワ監督の映像は、頭の脳裏に焼き付いているよ。

・トム・ハーディーとシャーリーズ・セロンをなぜキャティングしたのか?

 トム・ハーディーは「マッドマックス」が公開されたとき、生まれて6週間目だったそうだ。彼がオーディションに来た時、(前3部作で主演の)メル・ギブソンのオーディションの時と同じ雰囲気を感じたんだ。どちらも好感が持てる一方で、ミステリアスでもある。動物的なカリスマ性みたいなものがある。

 シャーリーズ・セロンはフェリオサという役を演じているが、彼女のほかに演じられる女優は世界にいないと思っていた。存在感があるし、バレエダンサーでもあったので身体能力が高く、空間の使い方もわかっている。ジェスチャー1つで感情を伝えるのに長けている。

・続編は作るのか?

 今は「怒りのデスロード」を作り終えたばかりで休養が必要。しかし制作過程で新たなストーリーも浮かんだ。それは頭のなかにある。

・メル・ギブソンから本作について反応はあったか?

 ロサンゼルスのプレミアで、メルは私の隣にいて、後ろにはトム・ハーディーがいた。メルはクスクス笑ったかと思ったら、大きな声で笑い出したり、私を肘鉄で突いたりして、最後には素晴らしいと言葉をかけてくれた。彼も色々トラブルがあったが、素晴らしい映画監督だ。それからトムとメルと私で、大きなハグをしたよ。

・寿司は好き?

 好きだよ!

・スタッフの中で最も“マッド”だったのは誰?

「自分が見たい作品」を作るのが信条だそう。会場となったnicofarreのコメントが流れる仕組みに「誰かの脳に入ったようだ」と興味津々だった

 私だろうね(笑)。映画は夢の世界だし、シュール過ぎるし、狂っている。撮影が終わってからも膨大な量のフィルムを細かく繋ぎあわせていった。こうした作業を続けていると、私の作品というよりは皆のものような気がしてきて、「私がこれを作ったのか? クレイジーだな」と思っていたよ。

 それとイモータン・ジョーを演じたヒュー・キース・バーンは撮影中毎日衣装とマスクを付けていたが、作品中だけでなく周りのスタッフにもV8サイン(イモータン・ジョーに敬意を表する挨拶)を求めていて、ふざけながら楽しんでいた。ヒューは私の次にマッドだったね。

・どのような映画から影響を受けて、スタントシーンが生まれているのか?

 私はフィルムスクールでなく医学を専攻していたのだが、絵を描くことが大好きだった。そのうち映画の言語を知りたいと思って、サイレントムービーをたくさん見た。言葉がない分、アクションが詰まっていた。

 ハロルド・ロイド、バスター・キートン、マック・セネットのコメディをよく見た。それからジョン・フォードの「幌馬車」や、黒澤明の「七人の侍」、「用心棒」、「蜘蛛巣城」のアクションシーン、「ベン・ハー」の戦車競走、スティーブン・スピルバーグの特に「激突!」などといったものから映画言語を学び、今のアクションに繋げていった。

・プライベートではどんな車に?

 信用をすべて失いそうだが……レクサスのハイブリッドだ。

・日本に来てからどこかに行った?

 ジブリ美術館に行った。宮﨑駿は、私にとって神。彼の色々な作品の展示を見ている中で素晴らしいアーティストだと感じたし、素晴らしい体験だった。ものすごくハートを感じるし、正直なもの、叡智も感じる。

・ジブリ作品で好きなのは?

 「千と千尋の神隠し」かな。驚きがあるし、優れた作品というのは、先程も言ったがそのイメージが脳裏に焼き付く。それは一生忘れないんだ。

・日本語版の吹き替えはどうか?

 聞きなれない言語と声に変わるのは毎回不安があるが、(マックス役の)AKIRAはマックスのエッセンスを突いていて、良いと思ったよ。

・撮影は大きなトラブルがあったと聞いたが?

 最初はオーストラリアのブロークンヒルで撮影準備していたが、15年ぶりの大豪雨が降った。それまで荒野で、赤土で、砂漠地帯だったところに花が咲いて、花畑になった。ペリカンとカエルも現われて、全く違う地形になったんだ。

 それから1年待ったんだが、結局アフリカ南西部のナミビアにある砂漠を選んだ。そこは絶対に雨が降らないからね。

・「ベイブ」や「ハッピーフィート」しか見たことがないのですが?(20代女性)

 「怒りのデス・ロード」には強い女性が出ていて、20代女性でも楽しめる。最初の3本(「マッドマックス」3部作)を作った時は、子供がまだいなかった。それから子供ができてアニメーションをたくさん見て、「ベイブ」や「ハッピーフィート」が生まれた。そしてその子供が成長しきったので、「マッドマックス」の世界に戻ってきたんだ。

・日本のファンにメッセージを。

 映画を作るのが好きだが、すごく難しいものがある。「マッドマックス」は私にとって最初の映画だったので、どういう反応かわからなかった。結果的に受け入れられたが、最初に受け入れてくれた日本に深い感謝をしている。

(安田俊亮)