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「Ingress」、京都で開催の公式イベント「Shonin」に参加してきた

エージェント同士の情報共有力を目の当たりに。5,600人以上参加の一大イベント

3月28日 開催

場所:京都市

オープニングイベント参加でもらえたバッジ、アイテム等

 Googleのスタートアップであるナイアンティック・ラボは3月28日、iOS/Android用ARタイトル「Ingress」の公式イベント「Shonin(証人)」を京都市で開催した。

 「Shonin(証人)」は指定された4つのエリア「クラスタ」を時間ごとに順番に移動し、そこで陣地争いを繰り広げていくというイベント。日本では昨年末に開催された「Darsana」に続く大規模な公式イベントで、少くとも5,600人が参加したという。「Darsana」は5,000人規模だったので、「Darsana」と同等かそれ以上の一大イベントとなった。ちなみにあまりの盛況ぶりに、ポータル状況全体を俯瞰視点で見られるサイト「Intel Map」がイベント中のほとんどダウンしてしまっていた。

 最初の集合場所となった円山公園音楽堂では、開始のスピーチにナイアンティック・ラボ創業者でGoogle副社長のジョン・ハンケ氏とナイアンティック・ラボ UX/Visual Artistの川島優志氏が登壇した。

 ハンケ氏は「桜も見られる完璧な季節に開催できた。京都は以前に家族で来て、その時のインスピレーションが『Ingress』に活かされている。なので里帰りのような思いがある」と述べた。川島氏は、「京都は歴史の建造物も多くあるが、一方で血みどろの戦いが行なわれてきた地でもある(笑)。ここしばらくは行なわれていないので、ぜひ今日は思い切り戦って下さい」と冗談交じりにコメントした。

ナイアンティック・ラボ創業者でGoogle副社長のジョン・ハンケ氏
ナイアンティック・ラボ UX/Visual Artistの川島優志氏
約3,000人収容の円山公園音楽堂が瞬時に満杯に。入りきれなかった人がかなりの数いた
左から知恩寺、鴨川。京都は観光スポットがたくさんあるが、イベントが始まるとそれどころではなくなる。「Ingress」のイベントついでに観光を考えるなら、泊まりがけがオススメだ

Resistanceチームに飛び入り参加してみた!

桜の季節で、しかも快晴。イベントは天候にも恵まれた
街の至る所にエージェントが出没。スマホは高確率で充電器に繋がっているので、すぐわかる(笑)
スタート直後の画面。ポータルキーが落ちまくっている特異な光景

 「Shonin」のルールは、4つに分けられたクラスタについて、14時から14時10分、15時から15時10分、16時から16時10分、17時から17時10分と計測時間をわけ、それぞれ10分間のある瞬間の状況が計測対象となるというもの。いかに多くポータルを確保しているか、リンクを貼っているか等が競われるが、どの瞬間が計測されるかエージェント(本作のプレーヤー)にはわからないので、各10分間は全力で戦い合うこととなる。

 クラスタは、円山公園音楽堂から出発し、京都御苑を経由してアフターパーティーが開催された京都国際会館に向かうようにして約10kmの間に設置されていた。それぞれ歩くと30分くらいの距離に配置されており、エージェントは各継続時間の合間を休憩や作戦会議、戦闘までの準備に使うことができる。

 参加者は、地元のエージェントや県外から集まった精鋭メンバーで賑わっていた印象で、元々活動しているチームがイベントのために合流し、協力している姿が多く見られた。各陣営のシンボルカラーである青と緑の服を着ていたり、小物を身につけているエージェントも多く、街を歩けばしょっちゅうエージェントの集団に出くわす。さながら、カラーギャングの抗争をリアルで体験しているようだった。

 青の「Resistace」である筆者は、イベントでたまたま出会ったチームに混ぜてもらうことができた。チームのメンバーに話を聞いているとイベントの何日も前から他チームと情報交換していたようで、どのチームがどのポータルを攻撃/防御するかがすでに共有されていた。他にもこうした合同チームはたくさんあるようで、多くの自警団が各自できることをポータルにぶつけていくこととなる。

 もちろんそれは相手も同じで、目標となるポータル周辺には同様の集団が現われる。その全員が通行人の邪魔にならないように道路の端に寄り、計測の10分間は無言でバースターの発射、レゾネーターとシールドの設置というポータルの奪い合いを熾烈に繰り広げる。

 筆者は恥ずかしながらレベル5で、攻撃力的には役立たずだったのだが、ポータルを維持するために不可欠なレゾネーターを設置し続けるという役割を与えられ、まったく貢献できないということはなかった。しかしそれも、チームで行動しているがゆえのことだ。

 それと印象的だったのは、地元の人にとっては集団がスマホに向かっているのはやはり異様な光景に映るようであったということ。「何かされているんですか?」と実際に声をかけられることもあり、いかに迷惑をかけないよう、不審に思われないようにゲームをプレイしていくかがエージェントの当面の課題であることを感じさせた出来事だった。

世界を巻き込む大規模CFが発生。エージェントたちの本気を見た!

 イベント中話題をさらったのは、各陣営による大規模コントロールフィールド(CF)の展開だ。本作はポータル同士をリンクして三角形を作ることでCFとなり、陣地とすることができるのだが、これがとにかく大規模に展開されたのだ。

「Resistanceがフィールドを真っ青に!」からの「Enlightenedが100倍返し!」の図。イベントへかける両陣営の執念を感じる

攻防はチクチク行なう。反映されるまでのラグも考慮して、エラーもお構いなしに行動し続けるのがポイント

 1つ目の大規模CFはResistance側によって展開した岐阜―小豆島―奈良を結んだCF。京都がすっぽり覆い尽くされ、プレイ中の画面は真っ青に染まる事態となった。我々のチームでは「Resistanceやるねー」などとぬか喜びしていたのだが、その直後に画面が緑にひっくり返されてしまう。

 これが2つ目の大規模CF発生で、公式発表によるとカムチャッカ、台湾、八丈島を結ぶ大三角形が形成されていたという。これにより日本列島の特に本州の大部分がすっかり緑陣営「Enlightened」の陣地となった。振り返れば似たような事態は前回の「Darsana」でも起きていて、今回はResistanceも事態の予測ができたはずなのに、それをさらに上回って大三角形を実現してしまうあたりが、さすがの攻防だ。

 京都のイベントなのに、京都どころか世界を巻き込んだ攻防戦に発展しているのは、「Ingress」のダイナミズムとエージェントたちの行動力があってこそだ。そこで何が起きているかはいち凡庸なエージェントには知る由もないが、真のエージェントたちの狂気すら感じる「大人の本気」ぶりを清々しいまでに感じさせるエピソードと言える。

 そうしたことも影響したのか、最終的な判定はEnlightenedに軍配が上がることとなった。Resistanceとしては少し寂しい結果だったが、ハンス氏はイベント最後の挨拶で、公式イベントの開催を年末に再度行なうことを明言してくれた。氏によれば「史上最大の、歴史に残るような戦いを作りたい」ということなので、こちらも今回以上に楽しみだ。

 なおナイアンティック・ラボでは、今年開始予定のもう1つのゲーム「End Game」が準備中となっている。現在βテスト版を実施中となっているので、こちらの展開も期待しておきたい。

【アフターパーティー】
アフターパーティーでは、川島氏とハンケ氏は横須賀制の「Ingress」スカジャンを着て登場した
グッズの即売会も目玉の1つ。人で溢れかえっていた
ほかにも、かづぐちイズミ氏らによるパフォーマンスや、京都市長による挨拶、またコラボ企業からの景品授与などが行なわれた

(安田俊亮)