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日本のキャラクターを好む人たちに届けたい! バンダイ台湾の取り組み
日本のこだわりを活かしつつ、独自の活動で幅広いユーザー層の発掘を
(2015/2/5 00:00)
台湾の日本のコンテンツへの愛はとても深いものがある。Taipei Game Showを取材していると特にその想いの強さを感じる。弊誌ではTaipei Game Showで台湾を訪れるたびに、ホビーという側面からも台湾をみているが、今回、台湾での代表的なホビーメーカーであるバンダイ台湾を5年ぶりに訪問した。
バンダイ台湾は5年前から比べると急激な成長を遂げている。出荷ベースは当時と比べ250%となり、当時7人だった社員は20人を超えているという。今回も5年前と同じバンダイ台湾ディレクター兼ゼネラルマネージャーの中村真也氏に話を聞いた。中村氏は5年前は赴任したばかりだったが、そこから5年で様々な施策を行なってきたという。そこで今回は、台湾バンダイの取り組みを中心に取り上げていきたい。なお、5年前の記事はこちらを参照してほしい。
250%以上の成長、台湾市場で存在感を増すバンダイ
バンダイ台湾は5年で急速な発展を遂げた。商品の出荷量は250%となり、台湾市場でバンダイの玩具の存在感は確実に増している。人口や市場規模ではるかに大きい日本以上に台湾で売れた商品もあるとのことだ。台湾では「ワンピース」が大ヒットとなり、台湾でのフィギュア市場拡大への強力な追い風となったと中村氏は語った。
5年前からの取り組みとしては、「仮面ライダー」、「スーパー戦隊シリーズ」、「プリキュア」といったテレビ番組との連動がある。こちらも好評で「日曜の夕方はスーパーヒーロータイム」というような、定期的な番組放映がされるようになり、関連商品も安定して販売できている。台湾では「仮面ライダーフォーゼ」、「獣電戦隊キョウリュウジャー」、「スマイルプリキュア」などが放映されており、中でも特に「キョウリュウジャー」は好評だという。
キャラクタービジネスとしては、バンダイは台湾オリジナルなどの展開は行なっていない。以前は中国のキャラクターを扱っていたが、台湾自体で中国キャラクターの展開は少なくなっている。バンダイ以外のキャラクター商品としては、韓国の、車がロボットに変形するキャラクターシリーズ「TOBOT」が好評だという。最近存在感を増しているとのことだ。
中村氏が台湾で積極的に取り組んでいったのがリアル体験ができる“イベント”と情報を圧倒的に広げる事ができる“Web”の融合だ。イベントでは一昨年に夏だけで大小含めて17イベントと、かなり力を入れた展開を行なっている。「お客様の顔を見よう」というのがテーマだという。「魂フィーチャーズ」、「ガンプラエキスポ」など、日本で行なわれているバンダイならではのホビー系のイベントに一般ユーザーを呼び、新商品の展示や商品販売をする手法を、台湾でも展開しているという。
最近は、東京、大阪、台湾でイベントを実施したり、また、海外でのイベントとしては台湾のみ開催という試みもある。アジアでは香港が最も大きい市場とされているが、台湾で初お披露目になる商品もあり、台湾の存在感は確実に増していると中村氏は語った。ホビー系だけでなく、カプセル玩具(ガシャポン)商品のイベントや、カードゲームなども行なっている。バンプレストの「一番くじ」も海外では初めて台湾で展開し、その足がかりとしてのイベントも開催した。
さらに子ども向けのアプローチとしては、各店舗のイベントや、着ぐるみキャラクターの握手会などが加わる。台湾でバンダイは、販売代理店を通して、積極的な握手会イベントを展開し、存在感をアピールしている。そこでも日本のアクターが、きちんと台湾のアクターを指導し、技の決めポーズや、仕草など、日本の本物に近いものを台湾の子どもたちに届けるために、日々台湾のメンバーと努力を重ねているという。
また、イベントとの融合で大事な“Web”での展開も積極的だ。Gundam.infoや魂Web、例えばコレクターズ事業部の開発者インタビューを翻訳してのせたり、盛んに情報発信を行なっている。カプセル玩具(ガシャポン)商品、食玩の発信のほか、プレミアムバンダイも台湾でスタートさせた。プレミアムバンダイに関しては、商品は限定されるが、プラモデルを中心に展開している。日本同時展開を目指し受注活動を行なうと同時に、こちらもイベントやWebプロモーションを積極的に行ない3D、2D両方の世界でファンや会員獲得を目指している。
コンビニや小学校など、より台湾の生活へ浸透していく商品を
台湾独自の展開としては、日本の「Suica」のような、コンビニや鉄道などで使用するICカード(YOYOカード)でガシャポンを購入できる“マネーカード対応タッチパネル式カプセル自販機のサービス”を12月より開始している。これはまだ日本では展開していないマシンだ。
ユニークな取り組みとしては、ファミリーマートを「ガンダムジャック」するというキャンペーンがある。特定の店舗を、陳列商品すべてをガンダム関連のグッズにし、看板までも“ガンダム版”を用意し、店すべてをガンダムで染め上げてしまったという。そのような店舗を5店舗ほど展開し、話題を集めた。そしてこのコラボがきっかけになり、ファミリーマートでガンプラの販売が開始された。店舗は限られているものの、高雄や台南でもガンプラを置く店舗ができた。これは販路拡大を目標としたコラボレーションであり、成功例だという。
また、「小学生の授業」にプラモデルを取り上げているという。授業でプラモデルを作るというフォーマットを用意し、各小学校に働きかけ、プラモデルを提供しているのだ。台湾の小学校には、先生が自分で考えた自由授業を行なう時間が設定されており、ここにプラモデルを使ってもらおうという働きかけをしており、実際に授業に使われており、好評を得ているとのことだ。
台湾ではガンプラ(含むプラモデル)が人気だ。その比率は日本、香港と比べても高く、バンダイ台湾の40%近くの売り上げがガンプラとなっている。これはそのまま、台湾のバンダイユーザーは高年齢の傾向があることを示している。だからこそ、子ども、低年齢のユーザーへのアピールをしていかなくてはいけないと中村氏は感じているという。
戦隊シリーズやプリキュア、アイカツなど低年齢向けコンテンツをさらにアピールしていく必要性を感じており、今後台湾でも展開予定の「妖怪ウォッチ」にも期待しているとのことだ。将来のバンダイファンを獲得するために、子供ユーザーを発掘していきたいと中村氏は語った。
こういった台湾ならではの施策を展開するバンダイ台湾だが、それと共に、各事業部ならではの展開をきちんとフォローする動きも重視している。魂フィーチャーズなどのバンダイコレクターズ事業部の比較的高年齢ユーザーに向けた施策や、ホビー事業部のガンプラエキスポのフォーマットなど、各事業部ならではのこだわりは、そのまま台湾ユーザーに届くように気をつけているという。
中村氏はこの5年で台湾がどんどん好きになる自分を発見していると語った。客先との商談など、ビジネスではもちろんシビアなところはあるが、台湾の人たちが日本のコンテンツ、そして日本そのものに向けてくれる好意は、中村氏の心を強く動かしている。2011年の東日本大震災の1週間後にちょうど台湾で単独イベントを行った。その時に応援のメッセージを書いてもらうコーナーでは、あふれてしまうほど多くの応援メッセージをいただき、心から感謝した事は今でも忘れないという。台湾への思い入れが、個人的にも大きくなったとのことだ。
中村氏は最後に、「海外と聞くと、ちょっと距離を感じてしまうところがありますが、台湾はその障壁が低いと思います。日本のキャラクターが好きで、愛している人が多い台湾に、ぜひ皆さんも足を運んでください。そして台湾で日本のキャラクターに触れてもらって、キャラクター商品に触れてもらえば、台湾の方と皆さんの心が近づいている事が実感できると思います。自分の愛するキャラクターを同じように愛してくれる仲間がここ台湾にいることを、感じてもらえると思います」と語った。