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【CEDEC 2014】「ぷよぷよ」に学ぶ! シリーズが長期で成功し続ける理由
セガ細山田氏が「ぷよぷよ」を9年間プロデュースして感じたこと
(2014/9/5 00:46)
人気落ちものアクションパズル「ぷよぷよ」。普段ゲームをプレイしない人でも恐らく名前を聞けば「あぁ、あのゲームね」となるのではないだろうか。シリーズ最初の作品「ぷよぷよ」が発売されたのが1991年、そこから誕生した続編や派生タイトルなど関連タイトルは相当数になる。
そんな「ぷよぷよ」シリーズで現在総合プロデューサーを務めているのが、セガの細山田水紀氏だ。2006年4月から現在に至るまでの約9年間「ぷよぷよ」シリーズに関わり続けているのだという。
細山田氏が関わった9年間だけでも、「ぷよぷよ」シリーズから様々な作品が誕生した。コンシューマ機向け新作「ぷよぷよ!!」を始め、スマートフォンアプリ「ぷよぷよ!!クエスト」、パチスロ機「パチスロぷよぷよ!」などプラットフォームの垣根を越えて新作が生み出され続けている。
これほど歴史が長いシリーズ作品では、古いファンから新しいファンまでを納得させられる新作を開発するのは困難に思われるが、そんな中「ぷよぷよ」シリーズは新作を世に送り出し続け、しかも成功を続けている。その理由はどこにあるのだろうか。本稿では、セガの細山田氏による「ぷよぷよをプロデュースして感じたこと」のセッションレポートをお送りする。
シリーズの新しいファンを獲得し一緒に盛り上げていくためにはどうすべきか
実は「ぷよぷよ」シリーズは、一部のファンから「アーケード版の『ぷよぷよ通』で完成している」と言われているという。そして細山田氏も「確かにそうかもしれない」としつつも、「新作を作らなければ『ぷよぷよ』シリーズは終わる」と話す。
というのも、放っておけばファンは「『ぷよぷよ通』で満足なのでシリーズの新作を求めない」し、一方の開発者は「全く新しいものを作りたい」、会社は「新しくて面白いものを求める」ため「ぷよぷよ」のことなど考えない。このままでは誰も「ぷよぷよ」シリーズの新作を開発せず、シリーズが過去のものになってしまう。
そこで細山田氏は「今のファンや過去のファンだけでなく、新しいファンを獲得し一緒に盛り上げていくためにどうすべきか? 何ができるのか?」を常に考えて進めているという。
そして「ぷよぷよ」シリーズの新作を開発し、今後も長く継続させるためには、「大事な要素を残しつつ、時代やタイミングにあわせて変化させる事」の繰り返しが必要だとした。ここで言う“大事な要素”とは「アクションパズルであること」、「かんたん操作」、「同じ色を4つ繋げて消す」など、「ぷよぷよ」の根幹になる要素だ。
新作は、これらの「ぷよぷよ」の根幹要素を残しつつ、「細分化するユーザーのニーズに対応できるように、新しいことにチャレンジしてみる」というスタンスでプロデュースを進めているという。
会場では、その例がいくつか紹介された。例えばシリーズ15周年を記念して制作された「ぷよぷよ!」では「お祭り感」をコンセプトに、「ぷよぷよ」、「ぷよぷよ通」、「ぷよぷよフィーバー」といった定番ルールと、新ルールを盛り込むことで、今のファンや過去のファン、また新しいファンも一緒に楽しめる作品になっている。この作品はその狙い通りで、75万本以上の売り上げを記録したという。
他にもメダルゲーム「メダリンク『ぷよぷよ! THE MEDAL EDITION』」、パチスロ機「パチスロぷよぷよ!」、モバイル向けサービス「★ぷよぷよ!セガ」などなど、多方向に展開し、新たなファン層の獲得を狙いつつ、旧作を「バーチャルコンソール」や「ゲームアーカイブス」で配信するなど、過去のファンの声にもできるだけ応えている。
更に新しいチャレンジとして、スマートフォン向けの基本無料アプリ「ぷよぷよ!!クエスト」、アーケードで楽しめる「ぷよぷよ!!クエスト アーケード」が誕生した。「ぷよぷよ!!クエスト」は合計1,000万ダウンロードを達成、「ぷよぷよ!!クエスト アーケード」も500万プレーヤーを動員するなど人気を博している。
またこの「ぷよぷよ!!クエスト」はCEDEC AWARDS 2014の優秀賞にノミネートされるなど、ゲーム業界関係者からも高い評価を得ている。
そして今年、「ぷよぷよテトリス」が制作された。実はシリーズ20周年記念の「ぷよぷよ!!」を最後に家庭用ゲームはしばらく作らない予定だったのだが、「アクションパズルや対戦の面白さを最新機種で楽しんでもらいたい」、「『ぷよぷよ』IPの新しい展開にチャレンジしたい」、「『テトリス』が今年30周年なので日本でも盛り上げたい」などの理由から、企画が前進することになったという。
細山田氏が「ぷよぷよ」シリーズをプロデュースして感じたこと
続いて細山田氏が「ぷよぷよ」のプロデュースで重要視していることについて発表された。
それは「ぷよぷよ」の要素にプラスして、「お客様がやってほしいこと」、「自分・チームがやりたいこと」、「会社がやってほしいこと」、「利益が得られること」といった要素を追加し、更に優先順位を付けることが重要だと話す。
そして優先順位を付ける際は「やりたいことを必ず1つ以上入れる」、「そのやりたいことの1つはお客様が欲しいもの、やりたいことであるべき」、「そのやりたいことをやる場合 お客様≧自分・チーム≧会社>利益」であるべきだという。
近年求められる企画は面白さだけではなく、「面白さ+商売」を考えて、どうやったらお客様が喜んでくれるか、どうやったら売れるのかと、企画の段階から突き詰めていく必要がある。それに加えて時代やタイミングをあわせる事が大事だという。
最後に細山田氏はゲーム業界関係者へのメッセージとして、プロデューサーや管理職に対して「若手にチャンスをあげてください」と語りかけた。「ディレクターは経験しないと育たないので、できそうな若手がいれば経験させてあげて欲しい、もし荷が重すぎるものしかなければ経験できるプロジェクトを立ちあげてください」とした。
ゲーム開発者に対しては「コンシューマ、アーケード、モバイル、スマホ……とプラットフォームの壁を越えて、色々なことにチャレンジしよう」というアドバイスが送られた。
長く続いているシリーズの新作を出し、古いファンから現在のファンまで満足させ、更に新しいファンを獲得する作品をプロデュースしていくというのは容易いことではない。それを成功させているからこその、説得力が感じられるセッションだった。