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カプコン、「ウルトラストリートファイターIV」発売記念
新キャラについて聞く!
(2014/8/7 00:00)
「Evolution 2014」、そして新キャラクターについて
――「Evolution」のお話が出ましたが、優勝キャラクターや戦い方について何か感じられたことはありますか?
杉山氏:最初に思ったのは「あっ、ユンがベスト8にいない!」って。研究されたのか、下馬評がアテにならなかったのかはわかりませんが。
綾野氏:目立って強かった、というのはあると思います。皆がユンを使い出して“量産型ユン”と呼ばれるものが一杯でてきて「はいはい、そこで赤セビでしょ」みたいなのがあったと思うんで、そこは対策されていたのかなと。
杉山氏:海外版は6月3日に配信されて、日本も同じタイミングでアーケード版に調整を入れています。「Evolution」までの期間が短く、ユンが強いからといって「俺、今からユンを使おう!」という人もそれほどいなかったのかもしれませんね。バトルバランスを刷新したといっても、今まで培ってきたキャラクターの経験値がある。そういった意味でも、どう対応するかを今までのキャラクターで考えた人が多かったかな、というふうには思います。まさかLuffy選手(海外のプロゲーマー)が“パッド(いわゆる手のひらサイズのコントローラー)”で優勝するとは思わなかったですけどね(笑)。
――毎年パッド勢の活躍には驚かされます。
杉山氏:アケコン(アーケード型コントローラー)じゃないほうが、仕込みはバレにくいですね。そういった利点もあるかもしれません。
――横並びで対戦するスタイルでは、音プレイ(ダミー的なスティックとボタンの操作音で相手を惑わす)は「ストリートファイターII」時代からの定番ですものね。
杉山氏:どなたかは忘れましたが、日本のプロゲーマーが他の日本人参加選手に「とりあえず、画面の真ん中寄りに真っ先に座れ!」ってアドバイスしてました。海外選手が真ん中にドーン!と座られると色々厳しい。位置取りの大切さとか、どんどんスポーツっぽくなっていくなと。
――ローズが優勝キャラクターになったことについては、いかがですか?
綾野氏:ローズが出てくるのは、ぼくは意外でした。
杉山氏:ただ、よくいわれる「優勝したから、どうせまた弱くするんでしょ!」とか、そういうのはよほど何か変なことがない限り、ないです!。
――チャット欄がまぁ酷かったですね。「弱体化確定!」とか。
杉山氏:あまりゲームセンターなどで見かけないキャラクターが優勝して「じゃぁローズを使ってみようかな」と脚光を浴びるのは、うれしいです。
――開発側からすれば、44キャラクターそれぞれが均等に活躍してくれるのが1番ですものね。
杉山氏:もちろん!
綾野氏:ダンを除く、ですけど(笑)。
杉山氏:持ちキャラのこともあるし、壊れ性能というわけでもないので、この先ローズを使う人が極端に増えることはないと思います。Luffy選手が今後もずっと最強で居続けるかというと、基礎対策や新しい選手がたぶん出てくる。新陳代謝が行なわれていくのを見ているのも面白く、また楽しみです。
――逆に「もうちょっと上にいくと思っていた」といったキャラクターはいますか?
杉山氏:「殺意の波動に目覚めたリュウ(殺意リュウ)」とか。アーケード使用率も凄く高くて、バランスもいい完成されたイメージ。もうちょっといくのかな? と思っていたらイマチイ伸びなかった。
綾野氏:あとはジュリですね。ヤバイ! って聞いてましたけど……。
杉山氏:ディカープリはどうかな? と思っていましたけど、そんなでもなかったかな? まったくの未知数というか、研究中でしょうし。
――そういう意味では今後の伸び代が期待される?
綾野氏:いやもう、わからないですね。何がどう伸びるのか……ちまたでは、新キャラ5人のなかでポイズンが1番強いとは言われていますね。
杉山氏:ポイズンは技が揃っている。まぁ、最強にはなれないと思いますけど。
――弾撃ちがメインだからですか?
杉山氏:それもありますし、キャラによっては飛び込みに凄く弱い。対空がもうちょっと強かったら、ヤバいキャラになるのかな? という感じですね。
綾野氏:全然強くてもいいですけどね!
杉山氏:それは自分が使ってるからでしょ!(笑)
綾野氏:もっと強くていいと思いますけど(笑)。
杉山氏:だったらロレントに無敵を返してくださいよ~。
――ロレントはずいぶんと叩かれましたからね……。
杉山氏:EXパトリオットの無敵がなくなったのが、いまだに響いています。コンボパーツにしかならない。
――心残りだけど、仕方ないですか?
杉山氏:心残りですけど、スタッフのみなさんが頑張って調整してくれたので、ハハーッ!って。これで頑張ります!(笑)。
綾野氏:「えっ!?」っていうとき、ありますよね。
杉山氏:ありますね。「ああっ! 出しちゃった!」って。
――その匙加減は本当に難しいですよね。かつてブイブイいわせていたのが、今はもう……。
杉山氏:一転して5弱とか言われている。「オーイ!」。悲しい。
――新キャラで思い入れがあるのは?
杉山氏:ボクはロレントを使っていますので、ロレントです。「ストリートファイターZERO2」のとき、カッコいいしトリッキーで面白そうだな、と思ったけど難しいので敬遠しちゃったんですよ。で、今度復活したから「やろう!」と思って。
ディカープリは、ゲーム性とバックグラウンドストーリーの比較で、「キャミィのクローンだからあまり技を変えちゃいけない」というシナリオ企画側の意見と、「新キャラだし、遊びを全然違うものにしないと面白くないじゃん」というバトル企画側の意見が衝突して、1番キャラ作りに苦労した子なので、そういった意味でも凄く思い入れがあります。
綾野氏:ボクもディカープリですね。こう見えて難産で……。まずデザインからしんどかった。「マスクをかぶるだけだろう」と思ったんですけど。
――キャミィという土台があるから楽だろうと?
杉山氏:いまマスクの話が出ましたけど、キャミィにマスクをかぶせたんですが、マスクの下ラインが“ほうれい線”みたいに見えて猿っぽくなっちゃった。「いやいや、もっとかわいいキャラでしょう!」って、マスクの形をめっちゃくちゃ整形して……。
――マスクを着けてかわいくしろって! 見えなくするのにかわいくしろって無茶な話ですね。
杉山氏:そうそう!(笑)ここのラインをなおして、もっとエラをなくしてとか、それだけで何日もかかりました。
綾野氏:最初はバルログの仮面みたいな全面マスクだったのを「変えたい」というのがありまして。新しいキャラクターにしたい! というのがあって「ええんちゃう?」とやったのが、しんどい、しんどい旅の始まり。マスクひとつとってもそうですし、仮面の下にある痕もそう。最後には「キャミィよりも幼いのでバストサイズを小さくしよう!」っていう“ディカープリ・バストサイズミーティング”までやりました。いい大人が、何をミーティングしてるんだ!と(一同笑)。
――逆にそれだけマジメに作っている証でもあると。
綾野氏:でかくしろ! いや小さくしろ! 同じだ!みたいな。結局クローンだから同じになるんですけど。
――でも育ちが違うんだからサイズ違っててもいいじゃん! みたいな意見は?
杉山氏:本当にそういう意見がありました。
綾野氏:結局は一緒になりました。
――その一方で、操作などは差をつけなくてはいけない。
綾野氏:タメキャラにしましょうというのは、ディカープリを出すときに決めていました。
――タメ前提ということは、初心者向けのキャラクターで考えておられた?
杉山氏:意識していました。武器はダガー。これもそこにいたるまでにカギツメ、バルログみたいなクロー、チェーンソー……今の形は、キャラクターの背景にある「キャミィへの憎しみ」というので、1番それを表現している形が「これだね」って感じで落ち着いた。ダガーといえばやはり突進形が多いから、コマンドじゃなくてタメだよね、というのもあったり。設定とゲーム性が入り組んでいます。
UDONさんのコミックではバルログみたいなツメをつけていたので、綾野ブログでふざけて筐体の上でコスプレ用のバルログのツメつけて「イエーイ!」ってやってるのを見た人が「絶対にディカープリだ!」みたいな話が発表前にでたんですよね。色々違うけど、結局は合ってるみたいな結果になった。
綾野氏:まぁヒントを出しすぎる小野が悪いと思うんです。「女性です」とか「プレイアブルになったことはありません」とか、ヒント出しすぎるだろ!。しまいには「ディカープリといわれてるけど」って(笑)。
――直前に情報が錯綜しましたよね? 烈(ストリートファイターに登場する敵キャラクター)じゃないかって。ボクらみたいな世代はちょっと胸がときめきましたけど。あの飛び蹴りやれんの!? 他に技なんもないけどいいの!? みたいな。
杉山氏:激とか烈はいまだにネタでいわれますね。
――結構もっともらしい理由もついてましたよね。皆あっちゃこっちゃ探してきて「このイラストのここにいる!」とか。
杉山氏:この影は! とか(笑)。
綾野氏:書かないっすから、そんなキャラ! 盛大なネタバレじゃないっすか!(笑)。
。
――ディカープリはシナリオとバトルで丁々発止があり、“刷新する”なかで、シナリオ側と説き伏せて「新しくする」というほうをとられたのですか?
綾野氏:説き伏せる、ということは別になかったんですけど、「キャミィとまったく一緒のタメキャラじゃ、ちょっと」と思っていて。プレイしたらキャミィとの違いがわかるように、しんどい思いをしながら作って、実際そのとおりになったと思いますが、最初の印象があまり良くなかったのは反省点ではありますかね。「キャミィっぽい」というのが先行して出てしまった。
――設定にひっぱられた面もありますし、いたしかたないところもあるのでは……。
綾野氏:殺意リュウのときは何もいわれなかったんですけどね。
――この温度差はなんだ?と。
綾野氏:「かっけー!」まで言われましたからね(笑)。一方でディカープリは「あれ?」って。
杉山氏:あまりいいたくないですけど、キャミィは簡単で強いというイメージがあったのも影響したかもしれません。あくまでも予想ですけど。
綾野氏:アメリカで初プレイアブルを披露したときの調整がめっちゃ強くて、そのときのディカープリはバトルバランス的に輝いていました!。
杉山氏:最強時代の調整。メチャクチャ強かった!。
綾野氏:名だたるプレーヤーをボコボコにして「やっちまったぁ……」。
杉山氏:それが動画で世界中に流れて「ゆがみキャラ」とかいわれて。「いやいや、これはまだ調整中ですから」と。いざ出てみたら、シェア率が結構高い。わりと「カッコいい」と好意的に受け入れてもらえています。
――家庭用は本日発売なのでまだわかりませんが、アーケード版の新キャラクター使用率は相当健闘していますね。エレナも調整で相当弱くなったといわれつつ、使用率に影響はあまり見受けられない。
杉山氏:調整リストだけ見ると「めちゃくちゃ弱体化されてるじゃん」となりますが、あれは弱体化ではなく“意図どおり使いやすくなる調整”なんです。「いや、そこじゃないよ!」といわれる可能性もありますが、アタリとかも色々いじったり。以前よりも“思ったとおりに動いてくれる”はずです。ただ、ジャンプの軌道がフワッとしていたり、難しいキャラではありますね。
――今後、新キャラクターの研究もより進むといった感じでしょうか。
杉山氏:みんな上位争いに食い込んでくれると嬉しいなぁって思いますね。
――こうした調整は、開発内部でどのあたりが決め手になるんでしょう? いわゆるゴロゴロは、結果的にああいう調整になったわけじゃないですか。そこに至る決定打は、たとえばプロプレーヤーさんとか、内部のバランサーとか……。
杉山氏:プロデューサー側から「こうしろ」とは言わないです。言ったらそうなっちゃうから。バトル企画のディレクターが最終的な決定権を持っているんですけど、品質管理チームとかが色々な情報を集めてきたりとか、それらを総合して企画チームのなかで決める。たとえば春麗はスピード型、ザンギエフはグラップラーといったコンセプトありき。今回の調整方針は、なるべく平たくするような感じ。
システムの影響を受ける受けないはあるけど、まずはそれがベースであって、あがってきている所見から「これはこうしたほうがいいという意見は、正しいからやってみよう」、「いいたいことはわかるが、これはキャラクターのコンセプトには合っていないからやめよう」というのが方針としてある。そこに対していいか悪いかというジャッジを企画やディレクターがやっている。職人がシステマチックにやっている、という感じにはなります。ですから“鶴の一声でどうなる”というのは、ないです。
――我々がそうした立場になることはほぼないんですが、たとえば杉山さんの役職で下から「次のパトリオットサークルはこうなります」と上がってきたときの心境はどんなものなんですか?
杉山氏:「無敵……ちょうだいよ……」って(笑)。
綾野氏:たまにいいますけどね、ボクは。キャラクターバランスとは違いますけど、暴発系はよく言います。軽減してください、とか。あとは……ユーザーさんが決めているキャラクターランキングがあるじゃないですか。あれは、理論上極まった人たちがやるとああなるんです。トッププレーヤーがキワッキワでやったところが、そうなんですね。我々は、その人たちだけのために作っているわけじゃない。波動拳を出したことがない人たちまで、総合的に見て平坦になるように作っている。キワッキワの人たちだけなら、そりゃぁキャラクターランキングもいびつにはなるのかな、とは思いますね。全員が全員ゼロフレコンボを決められないですから。
――ああいうランキングは、あくまでもトッププレーヤー前提であると。
綾野氏:-3フレーム不利があるから小パンで反撃可能って、1フレームも遅れなければ当たるけど! みたいな。実践できるかって!。できる人たちがいってくるんで、まぁそうなんですけど。
――それは本当に極一部のトップだけですから……。今回はトレーニングモードも相当力が入ってますから、それこそ「波動拳って何?」というビギナーの方々にもぜひプレイしていただきたいですね。
綾野氏:本当に練習しやすくなっています。
杉山氏:オンライントレーニングは、手前味噌ですが秀逸だなと思っています。
――オンラインでトレーニング対戦は面白いと思いました。いい師匠を見つけて組み手をお願いするとか、色々楽しそうです。
杉山氏:対戦だけではなく、ユーザー同士でコミュニティを作れる要素をいっぱい用意しました。チームバトルモードもそうですし、YouTubeアップロード機能もそう。直接的ではないけど、誰かと誰かが「ウルトラストリートファイターIV」というツールを通じて仲良くなり、コミュニティを形成してもらえるための手段をご提供できたかなと思っています。
――エディションセレクトについておうかがいしたいと思います。こちらは集大成、お祭り的な要素と捉えていいのでしょうか? 個人的には「スーパーストリートファイターII The Anniversary Edition」を連想しました。
杉山氏:お祭りというか、今までの最強キャラを決めようぜ!って感じですね。無印サガット×AEユン、どや!? みたいな(笑)。
――そういった意味では、オンライン対戦に対応していてもよかったのではないでしょうか? ランキング非対応で。
杉山氏:正直、ネット対戦が荒れるのは嫌だなぁと思っていたんです。ただ、そういった要望が多いので、どうしたものかと今考えてはいます。我々としては「わぁ、そうなんだ?」と。
――えっ、あのバージョンのアレとやりたいの!? といった感じ?
綾野氏:みんなマゾいなぁと思いますよ(笑)。あのサガットとやりたいのか!と。
杉山氏:BPと関係ないイメージでお祭りネット対戦が望まれているのであれば、ちょっと考える必要があるのかなとは思っています。どうなるかはわかりませんが。
綾野氏:オンラインは、ただ強さを求めるだけになると思うんですよ。
杉山氏:皆で集まってやるなら「じゃぁ俺スーパーのガイルでやるわ」ってなると、たぶん楽しい。これが顔も知らない人とやると「……チッ、サガットかぁ~」とイヤになると思っていたんですけど。まぁわからないです。
――1回入れちゃったらもう外せないですからね。慎重になるのは当然かと思います。良かれと思ってやったことが……。
杉山氏:入れたら入れたで文句を言われるかもしれないし(笑)。最終的に殺伐とするのもなんかなぁ~と思ったりはしました。