ニュース
ついに今年もスタート! 「ミニ四駆ジャパンカップ2014」東京大会開催
噂のフジヤマチェンジャーの恐怖! さらなる課題も見えてきた!?
(2014/6/23 00:00)
タミヤは6月22日、品川シーサイドフォレスト・オーバルガーデンにて、ミニ四駆全日本選手権「ミニ四駆ジャパンカップ2014」のエリア代表決定戦・東京大会を開催した。当日午前中は雨だったが、昨年を上回る2,450人の選手がエントリーした。午後からは雨も上がり、激しい戦いが繰り広げられた。
「ミニ四駆ジャパンカップ」のエリア代表決定大会は、今回の大会を皮切りに10月まで日本全国で14回開催される。東京は最多の3回開催される。選手達の多くは複数の大会参加を考えており、様々な地方大会も出場してマシンをアップグレードしていく。
このため、今回の選手達は、2014のコースをまず試してやるという気持ちで挑んでいると感じた。何度も考えたセッティングを最初の大会で試し、これからの大会に繋げていくのだ。今回の“情報”が2014年のジャパンカップの今後の鍵を握ることとなる。選手達はどんな走りをし、どういった経験を得たのだろうか?
参加者を悩ませるフジヤマチェンジャー。勝利の鍵はしっかりしたブレーキ
「ミニ四駆ジャパンカップ2014」の最大の特徴はその長さである。昨年の213mを超えるコースの長さは232mとなった。レースではこれを5周回ることになる。今回のコースは立体交差のある「ハイパージャンクション」、そしてかなり長い上り坂「アップステップ」さらに30度のバンクのある長い直線「スーパーグラインドバンク30」がある。かなりのマシンパワーを要求する構成だ。
しかしただ早さを求めていると、次の「ダウンステップVer.2」で痛い目に遭う。ここからは一気に下りとなり、コースアウトの危険が高まる。特にコースチェンジ部分の1つは「フジヤマチェンジャー」という激しく車体を上下させるギミックがあり、セッティングの難易度を大きく上げている。フジヤマチェンジャーは5周の間1回しか通らない部分だが、それでもその1回が重要なのだ。
今回、選手達の走りを見て感じたのは、かなりスピードを抑えているなという印象だった。フジヤマチェンジャーを上るのもやっと、という車も多かった。選手達に話を聞いてみると「フジヤマチェンジャーで飛び出さないため」だという。ギア比やタイヤ径を変え、トップスピードを抑えたセッティングにしている人が多いという。
そして“ブレーキ”である。車体の下にウレタンパッドを張ることで車体がダウンフォースを発生させるほど早くなった時ウレタンと路面がこすれ車のスピードを抑えるミニ四駆ならではのこのブレーキ機構を重視したセッティングが今回のトレンドだということだ。ブレーキは前後のバーにウレタンを貼るのが基本だが、車体裏面の広い範囲に補強などに使う「マルチテープ」を貼り、補助的なブレーキとして使用する選手もいた。
ところが、雨のためのコースが濡れてしまうとこのブレーキの利きが悪くなる。このため会場で急遽セッティングを変えた人も多かったという。午後からは雨もやみ、コースを何度もミニ四駆が走り抜けることもあって、コースはどんどん乾いていった。
何人か選手に話を聞いてみたが、皆がフジヤマチェンジャーへの対策が重要だという。選手達にとっては、他の要素はこれまでのコースである要素でセッティングも経験が活きるがフジヤマチェンジャーのような急なアップダウンは未知の領域であるとのこと。他のコースと“材質”が異なるアクリル製なのも予測のできないポイントとのことだ。
予選ではフジヤマチェンジャーでコースアウトする人も多かったが、ダウンステップVer.2自体もブレーキをきかせすぎる車にとって急な下り坂が車体バランスを崩しがちで苦戦している人が多い印象を受けた。ただ、全体的に抑えがちのスピードのため、安定している走りを見せる人も多かったとも感じた。しかし予選を勝ち残った選手に求められたのは“スピード”だった。今回のコースはこれまで以上にテクニカルなものになっていると感じた。
参加者を悩ませるフジヤマチェンジャー。勝利の鍵はしっかりしたブレーキ
「ミニ四駆ジャパンカップ2014」からは、これまでの年齢制限なしの「オープンクラス」、中学3年生までの「ジュニアクラス」に加え、「チャンピオンクラス」が新設された。これまでの公認競技会のオープンクラス優勝者のみが出場できるクラスで、猛者達揃いのクラスだ。
オープンクラスの流行がトップスピードを抑える作戦だったのに対して、チャンピオンクラスの出場者は果敢に攻めるセッティングで挑んでいるのが印象的だった。そして彼らですらフジヤマチェンジャーの前にコースアウトを繰り返してしまっていた。やはり、今回のコースの最大の難関だ。
そして、予選を勝ち上がったオープンクラス、ジュニアクラスのマシンも低速セッティングだけで勝ち上がったわけではなかった。彼ら安定重視の低速モーターではなく、ハイパーダッシュモーターなどの高速モーターで加速を重視し、そして要所要所でしっかりとブレーキを利かせる、というセッティングで挑んでいるようだった。予選、第2予選、準決勝戦と勝ち残っていく選手達はしっかりとブレーキを利かせ、加速も充分というマシンが多かった。
こうして各コースの決勝戦が行なわれたのだが、ここで「ミニ四駆ジャパンカップ2014」の“真の面白さ”が現われた。チャンピオンクラス、ジュニアクラス共に“大逆転”と言える展開だったのである。前半快調に飛ばしていた車が、後半もたつき、抜き去られるという展開が見られたのだ。
その展開を生んだのは、“ブレーキ”にある。強力なグリップで車体に制動をかけるブレーキだが、逆にグリップが効き過ぎてしまうことで、走行が不安定になる場面があり、この隙に抜かれてしまったのである。特にスーパーグラインドバンク30に入る部分で安定を崩すのが多かった。坂を登り切りグラインドバンクに入るカーブは、これからの要注意ポイントになりそうだ。
チャンピオンクラスで逆転を演じ1位となったカワカミ選手は、とにかくブレーキのセッティングを気をつけたとのこと。ジュニアクラスではそれまで1位だった選手がゴール直前、ほんの数メートルでバランスを崩し逆走してしまいイカリ選手が勝利した。イカリ選手のマシンは後ろのローラーを特に念入りにセッティングし、安定性を重視したとのこと。オープンクラス1位のコウノ選手は特に耐久性を重視しセッティングを行なったという。粘り強い走りで勝利をもぎ取った。
「ミニ四駆ジャパンカップ2014」はとても見応えのある試合が多かった。特に上級者達がぎりぎりの戦いを繰り広げる後半は、コースが長いだけに様々なドラマがある。いかにフジヤマチェンジャーを攻略するかだけでなく、安定を保ち平均スピードを上げるかも大きなテーマとなる。
もう1つ改めて気が付いたのは、ドライブテクニックや反射神経が求められるわけではないためか、女性や年配の人まで、参加者の幅がとても広いという点だ。テクニックを磨き、情報を集め、工夫すれば幅広い層の人が勝利を目指して競える。スポーツや、対戦型ゲーム以上に幅広い対戦世界を実現しているなと感じたのだ。天気が悪かったにもかかわらず昨年以上に盛況だったのも競技そのものの盛り上がりを感じる。今後のさらなる発展にも期待したい。