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【GDC 2014】脱構築アドベンチャー「The Stanley Parable」のナラティブ
“ゲームの枠組み”と対決する「The Stanley Parable」が目指すゴールとは?
(2014/3/19 10:34)
Galactic Cafeによるアドベンチャーゲーム「The Stanley Parable」のセッションがGDC 2014の「Game Narrative Summit」に登場した。
「The Stanley Parable」は、誰もいなくなったオフィスを彷徨っていく主観視点によるアドベンチャーゲーム。本作ではゲーム進行にナレーションが入り、プレーヤーの行動を先回りして誘導してくるという奇妙な特徴がある。ナレーションの言うがままに行動するも良し、反抗して全く異なった行動するのもの良しで、本筋のストーリーはどこかに消え去り、ゲームが段々とナレーターとプレーヤーの対決の様相を呈してくるという、ゲームプレイの脱構築を狙った実験的なタイトルだ。
そのゲーム体験はかなり特殊となっているが、ゲームに没入していく感覚が大きく評価されている。それゆえに今回は「Game Narrative Summit」の1つとしてセッションが組まれており、その「ナラティブ」の秘密が注目された。登壇したのは、開発元のGalactic CafeからシナリオライターのDavey Wreden氏とゲームデザイナーのWilliam Pugh氏。
デームデザインの主軸はプレーヤーの「選択」。選択肢の幅がナラティブを生み出す
「The Stanley Parable」でのナレーターとの攻防は、全編に渡って展開される。例えば目の前にドアが2つあり、左側のドアを開けるように誘導してきたら、あえて右のドアを開けてもいい。その時はその時なりにナレーションが入り、ゲームは続いていく。一般的な語り口ではないが、それが故にプレーヤーには深い印象を与える。
Wreden氏は本作の制作に際して、ゲームにおける「選択」に注目したと話した。ゲームは、究極的には「選択」の連続で、プレーヤーが何かを「選択」することで先へと進行していく。プレーヤーは「選択」を繰り返し、「選択」によって試練を乗り越えたり、そこから何かを学んだりできる。
「The Stanley Parable」のポイントは、どの選択肢を選ぶか、プレーヤー自身が選択肢と「交渉」することに重きを置いたことだという。「The Stanley Parable」では、ナレーターが誘導する選択はもちろんのこと、他にも様々に用意された選択をすることでそれに反抗したり、大人しく従ったりもできる。プレーヤーの様々な行動に応じて、エンディングも変化するようになっている。
例えば、上でも挙げた2つのドアをはじめとして、さらに多く登場するドア、ナレーターへ反抗するため飛び降り自殺を計れる非常階段、またデモ版では「『Stanley Parable』は好き? YES/NO」という選択などが登場しており、「『Stanley Parable』という枠組み」と対決するような感覚がゲームプレイを通じて形作られていく。本作ではプレーヤーに状況をより楽しんでもらうため、状況に応じた実際にあり得る行動をピックアップし、可能な行動=「選択」を多く用意しているという。
一般的なゲームにおいて、「選択」はクリアのための足がかりであり、そのためにどの手段を選ぶかというものである。この時、ゲームにおける「ゴール」はそのままゲームクリアを意味するが、「The Stanley Parable」はそうではない。プレーヤー自身が積極的に考え、行動を選択した結果を通して、最終的に「このエンディングを生み出した」と感じさせることが「The Stanley Parable」の「ゴール」だと、Wreden氏は結んだ。
「The Stanley Parable」は、3月19日発表予定の「Game Developers Choice Awards」にてナラティブ賞など4部門にノミネートされている。本作はSteamでプレイできる(価格は15ドル、無料のデモ版もある)ので、未チェックという方はひとまず公式サイトを覗いてみるといいだろう。